ことばの歳時記 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (415ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215013

感想・レビュー・書評

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  • 初出から50版以上も版を重ねている超ロングセラー。
    知らない時代の本に、これほど親しみやすいものがあったということに驚いている。
    「文庫の整理学」で紀田順一郎さんがお勧めしていたものだ。
    1年365日にちなむ様々な言葉のトピックを集めたもの。
    1日1テーマ。一頁で収まる文章量だが、どれも非常に味わい深い。

    季節の彩り、野鳥や花、虫、天候、催事、食物、四字熟語、月の異称、二十四節気。。
    金田一さんとともにゆっくり365日の旅をするようだ。
    懐かしい話もあれば、目からウロコの話もある。
    前知識があっても、更に確認を重ねていく作業が愉しい。
    新聞連載の同名コラムだったという。
    「いいね」をクリックしたりコメントなどもないごく静かな時代だ。
    たぶん朝の穏やかな居間で読まれたのだろう。
    皆さんのおうちでも、親御さんが読まれたかもしれない。

    3月23日のタイトルは「沈丁花」だ。
    「長い間かたいつぼみのままだった沈丁花も、ようやく白い花びらをほころばせ始めた。
    この花は、沈香(じんこう)と丁字(ちょうじ)の香りを合わせ持つ花として、呼び名は正しくはジンチョウゲであるが、チンチョウゲという呼び名もかなり横行している。
    これは、日本人は漢字をおもんじる一方、その読み方の方はいいかげんなところがあり、ジンでもチンでも、字の方さえ合っていればいいという考えによるものだ・・・・」

    数日前に咲いて芳香を放っている沈丁花。
    「ジンチョウゲ」としか呼んだことがない。
    さて「桜」はいつ頃だろうと見てみると、4月5日の「かすみ」で登場する。
    「かすみか雲か」の「かすみ」は春の象徴で、「霧」は文学では秋のもの。
    8日の「花まつり」のあと、9日で「おシャカになる」の語源を探る。
    前日や過去の記事を補足などもしばしば行われているのが面白い。
    素敵だなぁと感じ入る記事もたびたび出てくる。

    後悔が生まれた箇所がひとつあった。
    8月24日の「地蔵盆」だ。私はこれを知らない。
    年中行事だが全国区ではないし、そもそもお地蔵様を直に見たことがない。
    「ごんぎつね」の冒頭の六地蔵も、「かさじぞう」の雪の中に立っているお地蔵さまも
    どちらも知らないのだ。
    お話を語るたびに、「しまった・・」と思いながらやり過ごしてきた。
    大人になって初めて「地蔵盆」という名称を聞いたほどだ。
    今も行われているのなら、この眼で見てみたい。

    手元に置いて日めくりカレンダーのように毎朝開いたら、一日の始まりが愉しいだろう。
    古来から受け継いできた季節のうつろいを感じ取る心が、自分の中にも芽吹きだす。
    「ゆかしい」とは、このことだ。
    雑学という枠で語るのはあまりに惜しい、豊かな言葉の世界。皆さんもぜひどうぞ。

    • nejidonさん
      地球っこさん♪
      ダイエットに効果があるのですか?!
      そ、そこまで思いつめなくても・・しかし、凄いわぁ。
      私は子どもの頃アーサー王伝説の...
      地球っこさん♪
      ダイエットに効果があるのですか?!
      そ、そこまで思いつめなくても・・しかし、凄いわぁ。
      私は子どもの頃アーサー王伝説の登場人物であるランスロット卿に夢中になりましたね。それがたった一度あるきり。
      今思えば、挿絵が相当良かったということなんですけどね(*^_^*)

      「津島いさめ」「虫送り」どちらも初耳です。なんとゆかしい地区にお住まいなのでしょう♡
      野辺のお地蔵さまが取り除かれずに残っているだけでも素晴らしいのに。
      良いですよねぇ。そいう素朴な信仰心がひとを育ててきたのだと思います。

      お!ツバメ!画像が貼れないのが悔しいです。
      この本では5月23日のトピックです。
      ツバメ、スズメ、カモメのように鳥の名前に「メ」が付くのが鳥の総称だったんだとか。
      生まれ変わったら深山の鳥になる予定なので、見つけたらぜひ「nejidonメ」と呼んでやってください(笑)(笑)
      2021/03/24
    • 地球っこさん
      nejidonメさん!

      わたしって、けっこう一途なんです……てこともないか、な?
      いやいや、惚れっぽいのですが、この人と決めたら一途...
      nejidonメさん!

      わたしって、けっこう一途なんです……てこともないか、な?
      いやいや、惚れっぽいのですが、この人と決めたら一途なんですよ♡
      って、あはは笑えますよね~(*>∀<*)ノ

      まあ、久々のトキメキなので、少し?暴走気味なところも、呆れながら笑って許してくださったら嬉しいです。

      nejidonさんの挿絵の感じわかりますよ。
      わたしは文豪の白黒写真に、あ、格好いいと思うときがあります。
      人格とか写真に写らない部分は抜きにして 笑
      白黒写真やモノクロの挿絵ってクールに見えるからかな。

      ゆかしい地区と言ってくださり、なんだか嬉しいです。
      行事の多い田舎なので、いろいろ窮屈に感じる部分はあるので、そんなふうに考えられたら、また前向きになれそうです(^o^;

      そうそう、また余計なことばかり書いて肝心なことを書くのを忘れてました。
      わたしはnejidonさんのこと、これっぽっちも忘れたことはありませんから(*^^*)
      どうぞこれからもよろしくお願いしまーす♪

      あと、大人の本棚シリーズ、わたしも好きです。(まだ全然読めてないけど 笑)
      林芙美子の「放浪記」改造社版は、このシリーズで読みました⭐
      2021/03/24
    • nejidonさん
      地球っこさん♪
      「忘れたことがない」という告白にドキドキしちゃいました(笑)
      同じ吹奏楽部だったし同じ漫画読んできたし、お話も合うし妙に...
      地球っこさん♪
      「忘れたことがない」という告白にドキドキしちゃいました(笑)
      同じ吹奏楽部だったし同じ漫画読んできたし、お話も合うし妙に近いものを感じています。
      本棚の趣味はだいぶ違うのですが、全然気になりませんね。毎度レビューが面白くて!
      ああ、文豪の写真、よくわかります。
      白黒の写真て、上手いこと欠点を覆い隠して品があるんですよね。
      銀幕のスターという表現も、あの頃の写真だから生まれたように思います。
      ワタクシ、遺影を白黒にしようかなぁ。v( ̄Д ̄)v イエイ!!

      おお、大人の本棚シリーズもお好きで嬉しいです!
      もっと読みたいのですが、シリーズ丸ごとは図書館でも揃ってないんですよね。
      地球っこさんの趣味に合いそうな本もたくさんありますよ。ぜひとも。
      最後にとても大切なことを伝えます。
      私も地球っこさんを忘れたことはありませーん(#^.^#)

      2021/03/24
  • 本書の紹介から
    「移り変わる日本の美しい四季折々にふれ、ある日は遠く万葉の時代を回顧し、ある日は楚々とした野辺の草木に想いをはせ、ある日は私たちが日常生活の中で何げなく使っている言葉の真意と由来を平易明快に説明するー。著者のユニークな発想と深い学識によって捉えられ選ばれた日本語の一語一語が、所を得てみずみずしく躍動し、広い視野と豊かな教養をはぐくむ異色歳時記である。」

    読後のレビューに際し、この紹介文が本書の内容を的確かつ、美しく表現されていると感じた。一年365日、その日に関わるテーマを選び出し、そこから「ことば」にまつわるエッセイが、日本を代表する言語学者によって紡ぎだされる。

    例えばぱっと開いた2月7日のページのタイトルは「タニとヤ」だ。「谷」にまつわる話。このテーマは、この日が源平による一の谷の合戦が行われた日であることから取り上げられている。そこから、関東では「谷」を「ヤ」と読むことが多く、関西では「タニ」と読むことが多いという風に話が展開していく。

    確かに、東京では四谷、渋谷、世田谷、埼玉でも熊谷、神奈川でも保土ヶ谷だ。逆に関西では京都の黒谷、獅子ケ谷が挙げられている。私個人的には、大阪「谷町筋」の「タニ」が一番最初に浮かんだ。

    ふーんなるど、と思っていたら、いやいや東京にも「鶯谷」「茗荷谷」と「タニ」と読む地名もあるではないかとくる。そして、その地は江戸時代の人が、京都にあこがれてつけた地名だというオチがある。

    一日ワンエッセイが、非常に教養深く、面白いのである。

    こうして読み返しているうちにまた、各ページの面白さに引き込まれていく。

    4月12日のタイトルは「スズメとシジミ」。東北では「シ」と「ス」の発音が同じで区別がつかないという話。

    6月2日は「背広」の話。civil clotheseが語源の言葉だと。

    11月20日は、万葉集の舒明天皇の歌から始まる。そこに出てくる「かまめ」とは何ぞやと。「かまめ」は「カモメ」のことだが、カモメは海の鳥で、歌に詠まれる内陸部にいるのはおかしいでから、違うものを指しているのではないかと。そこで、「ユリカモメ」という内陸部までくるカモメの話で謎解きされる。

    本書には、「最近、都の鳥が”みやこ鳥”と言われるこのユリカモメに決められた」と書かれていた。本書は昭和48年発行で、ユリカモメが都の鳥に指定されたのは、調べてみると昭和40年のことのようである。

    つまり、本書は一昔前の本であり、若干古いと感じる話題もある(長い歴史を扱っているので、大半はあまり古さを感じなく読めます)。

    現代版「ことばの歳時記」を誰かが書いてくださると、これまた興味深く読めると思う。

  • 知らない間に教養が身につく

    所蔵情報
    https://keiai-media.opac.jp/opac/Holding_list/search?rgtn=B16435

  • 百科事典とWikipedeiaは常に更新されるが
    この本は昭和四十年から動かない
    そこに価値

  • 語源、音韻、いずれも興味深い。

  • 一日一頁のエッセイ。テーマはその日の慣習事や暦になっている場合がほとんどであり,季節を意識するきっかけになりそうだ。月の最後にはその月の呼び名について。

    トイレ用に最適!

  •  多分買ったのは中学生の頃。一度通してよんだから終わり、という本ではなく、毎日1項目ずつ読んで 色々なことを考えるきっかけにしたい本。
     なので今は机のそばに置いてある

  •  私が生まれる前に新聞に連載されていた記事をまとめた本。言葉遣いで確かに古いところがあったので、言葉とは移り変わりゆくものなのだなと感じました。
     365日の言葉について書かれていて、著者が古文、方言、俳句、短歌に精通されているのがよくわかりました。季節、季節の言葉を大切にしたいと思いました。
     言葉の由来などさすがによく研究されていて、とても勉強になりました。言葉遣いも丁寧にしようと感じました。

  • 初参加でしたが、すごく楽しい時間を過ごせました。様々な人が独自の視点で本を紹介していて、今日紹介いただいた本はどれも読んでみたいと思えるものばかりでした。

    タレント本など普段読まない本と接することが出来る良い機会となりました。

    また都合が合うときに参加したいと思います。
    初参加でしたが、すごく楽しい時間を過ごせました。様々な人が独自の視点で本を紹介していて、今日紹介いただいた本はどれも読んでみたいと思えるものばかりでした。
    タレント本など普段読まない本と接することが出来る良い機会となりました。
    また都合が合うときに参加したいと思います。

  • 広く、浅く、知的好奇心を刺激される本。なるほど!そうだったのか!日常に埋もれている、日本に関する、言葉に関することを教えてくる本。1つのトピックスが短いから、少しだけのる電車とかで読むのに最適。

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著者プロフィール

大正2年、言語学者金田一京助の長男として東京に生まれる。昭和12年、東京帝国大学国文科を卒業。専攻は国語学。名古屋大学で助教授、東京外国語大学、上智大学で教授を歴任。東京芸術大学、ハワイ大学、在中国日本語研修センター(北京)、NHKアナウンサー養成所などで講師、玉川学園客員教授なども務め、日本ペンクラブ理事なども兼任した。著書に、『日本語』『ことばの歳時記』など多数。なかでも教科書や辞書『現代新国語辞典』他の編纂で多くの人に親しまれた日本語研究の第一人者。平成9年文化功労者に選ばれる。平成16年5月没。

「2016年 『美しい日本語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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