まぶた (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215228

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  • どの登場人物も、音もなく崩壊していくようだった。彼らが纏う空気には確実に死が感じられるのに、誰もそれを恐れてはいないように見える。
    死とは息をひそめればいつでもそこにあり、生き物が必ず辿り着く終わりの時。でもきっと怖いものではないのだ。
    それぞれに悲しい出来事や上手くいかなかった事を抱えながら、今多くを求めず穏やかに生きている人々を見ると、心が静けさに満ちてくる。手の届く範囲の、目の前のものを愛していくことの大切さを教えてくれる。
    繋がりのない短編集なのに、全てにどこか共通したものがあった。
    「お料理教室」だけは誰も話が通じない感じがして、フワフワして拠り所がない感覚になった。確かなものがいつもあるのに、この話にはそれが無い不安感があった。

  • 「飛行機で眠るのは難しい」「中国野菜の育て方」「まぶた」「お料理教室」「匂いの収集」「バックストローク」「詩人の卵巣」「リンデンバウム通りの双子」を収録した短編集。
    いずれも滑らかで柔らかく丁寧な感触の中に一点、針で、あるいは指の先で突いたかのような闇を含んだ、小川洋子さんらしい作品。個人的に「匂いの収集」が1番わかりやすく好みであった。

  • 目次
    ・飛行機で眠るのは難しい
    ・中国野菜の育て方
    ・まぶた
    ・お料理教室
    ・匂いの収集
    ・バックストローク
    ・詩人の卵巣
    ・リンデンバウム通りの双子

    小川洋子の小説の体温は低い。
    それはひんやりと湿ったものだったり、かさかさに乾いたものだったりするが、決して温かくはない。
    たとえひとの命を救ったとしても。

    そこに「ない」ものを書くのも上手い。
    「ありえない」と言うほど強い「無」ではなく、気づくとそこには「ない」」ものの持つ気配。

    この絶妙な塩梅が、心地よかったり不気味だったりと、作品に彩りを与える。

    ストーリーを味わう作品集ではないと思うので、具体的なことを書いても意味わからんことになるだろう。
    ただ、これらの作品は、現実だとか事実だとかのしがらみとは無縁なところで味わえばよいのだ。

    私にとって小川洋子は、エンタメ小説から純文学への橋渡しをしてくれた作家の一人。
    未だ純文学はちょっと苦手意識があるけれど、小川洋子を読んだら、また次の純文学を手に取ろうと思えてくる。

  • 奇妙な味わいの短編集
    1・4・5・6編が特に好き
    バックストロークが一番印象深いかも

  • 多くのブグ友さんの本棚にあったのでお取り寄せ。
    薄暗い中で物語が進んで、淡々とした中に結末が急にやってくる。寒気を催すような不安のまま置いてけぼりされるような感覚や、忘れていた心の隅の想い出に気づくような不思議な感覚。
    「不可能な愛が一番美しいって、昔から言うじゃない?」(飛行機で眠るのは難しい)
    朝と夜で野菜の雰囲気はずいぶん違っていた(中国野菜の育て方)
    わたしたちは宿題を忘れた子供のように立ちすくんでいた(まぶた)
    先生は気づいたものを、いちいち口に出さないではいられない様子だった(お料理教室)
    匂いに関して、彼女は容赦がない(匂いの収集)
    「物事にすべて事情があるとは限らないものね」(詩人の卵巣)

  • 家にあった本。小川洋子さんの静かで奇妙な世界は、それぞれの話でしっかりと息づいてる感じがする。『匂いの収集』『バックストローク』『詩人の卵巣』『リンデンバウム通りの双子』が崩壊の現実を圧倒する静謐さを感じ印象的だった。

  • 段々儚くなくなっていく人たちが印象的。その場面に遭遇した人たちの心境の変化がよてもよい。

  • 死の影が浮遊するような小説
    バックストロークが尾を引く

  • 8話短編の小川ワールド!どの物語もラストはちょっと切なかったり悲しかったりするんだけど、決して悲劇ではない。この人たちの人生は、これからも続いていくんだって終わり方が素敵。「バックストローク」「リンデンバウム通りの双子」がお気に入り。

  • 不思議な世界観すぎて置いてけぼりになった
    解説と最後の話でエモさあふれた

    .

    たとえ身体が居間とキッチンに分かれたとしても、影だけは離れず、二つぴったりと寄り添い合い、一続きの輪郭を成しているようだった。

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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