博士の愛した数式 (新潮文庫)

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著者 : 小川洋子
  • 新潮社 (2005年11月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (291ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101215235

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博士の愛した数式 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 家政婦である「私」。
    事故により80分しか記憶が保てない元・数論専門の「博士」。
    その博士が「ルート」と名付けてくれた家政婦さんの「息子」。

    忘れてはいけない事柄を背広のそこかしこにクリップで留め、
    世の中のあらゆるものを美しい数式にあてはめ、
    瞬く星を線で結んで夜空に星座を描くように
    美しい作法で導き出した数字で人と人の間を結んでくれる博士。

    まだ空が明るい雲の切れ間から
    一番星に誰よりも早く気づくことができた博士。

    夜の準備はもう始まっている。
    一番星が出たのだから。

    博士の世界はいつも静かで敏感であったかくて優しい。

    こんなにも数式が、数字の世界が、美しいとは。
    あまりに美しくて、もうそれは下世話な意味ではなく、
    官能の領域にすら感じる。シャラシャラと音を立てて
    数字が薄い氷の上を滑るような透き通るような青く透明な世界。

    "なぜ星が美しいか、誰も証明できないのと同じように、
    数学の美を表現するのも困難だがね"

    確かにカタチがあるようでない"美"という観念を
    言葉で追うことは難しい。でもそれを1冊を通して
    いとも簡単なことであるかのように目の前に数字の美しさを
    取り出して見せてくれた博士たち。

    数字音痴で理数系の才能の欠片もない私が
    そこに広がる数式に、深まりゆく数字に、
    こんなにも静謐で美しい世界を感じられるとは。
    そんな魔法のような感覚を可能にしてくれる小川さんの
    筆力に驚嘆して、読後暫く茫然と呆けてしまった。

    3人で夕方に夕食をとり、ラジオで野球を楽しみ、
    今は見ることのできない江夏の姿に想いを馳せ、
    素数の中でも殊更に美しい素数「11」の誕生日を迎えた
    ルートの誕生日を祝い、ただただ穏やかで静かな時間を
    共有する3人の日々。

    どんな数字でも嫌がらず自分の中にかくまってやる
    寛大な記号「√ルート」。そのルートを広く自由で
    温かい数字の世界とともに育ててくれた庇護者、博士。

    連続した自然数の和で表すことができる完全数。
    数学、江夏、28。
    3人が証明してくれた美しい数式に涙が止まらなかった。

  • ずっと積読のままだったこの本を手にとったのが昨日のこと。寸暇を惜しんで読んでしまった。主人公の目を通して描かれる博士の人となりに惹きつけられ、また主人公とその息子の優しさに安心し、現在に生きることすら難しい博士の行く末を心から心配しながら読んだ。何度も涙がこぼれた。どうしたらこんなに優しい物語が書けるのだろう。数式を「美しい」といい、数字の並ぶ様子をレース編みと描写する。小川洋子さんは数学にも造詣が深いのであろうか?なのに私のレベルにまで降りてきて解説してくれて、数字アレルギーの私でもちょっと勉強してみたいなと思ったぐらいである。80分しか記憶が持てない人の悲哀は計り知れないけれど、記憶が残らないことで救われることもある。様々なモチーフが繋ぎ合わされて魅力的な物語となっている。

  • 今さらなんて思わずに読んでみた名作。
    映画は公開当時に観たからストーリーも大体知ってたけれど、(映画もよかったけど)小説はさらに素晴らしい。
    小川洋子さんの小説って、読みやすくて押し付けがましくなくて心に残るっていう絶妙なバランスで成り立ってると思う。そして何より文章が綺麗。

    事故の後遺症によって記憶が80分しかもたなくなった数学の教授“博士”の家に家政婦として派遣され働くことになった“私”とその息子“ルート”の物語。
    説明すると本当にシンプルにただそれだけの物語で、その日常が描かれているのだけど、温かさと愛に包まれた物語だと思う。

    記憶が80分しかもたない博士にとって、新しい朝は全てがリセットされた状態なわけで、そこに毎日訪問する主人公とルートは毎日が博士と初対面ということになる。
    人と人は事実ではなくそれを捉える人間の記憶によって結ばれていて、とても儚く弱々しいのだけど、それを繋ごうと強く思う気持ち次第で、いくらでも強くしっかりしたものに出来るのだと思った。

    キーワードは“数学”と“阪神タイガース”というのも何か良かった。
    大人になったルートが選んだ道もまた心憎い。

    私は学生時代数学は苦手で今でも好きとは言えないけれど、公式を使って問題が解けた時の爽快感やその数字の美しさというのは理解できる。
    様々な数学用語も登場するけれど、苦手な私でもまったく問題なかったし、むしろ数学の奥深さに興味を抱いた。
    追究して壁にぶつかってそれでも追究をやめなかった過去の研究者によって、様々な定理が確立されたのだと感慨深い気持ちになった。

    新庄、中込、湯舟…って姉が阪神大好きだった頃の選手名も登場して、かなり懐かしい気持ちになりました。笑
    おすすめしたい一冊。

  • 80分しか記憶のもたない、数字にしか興味を示さない博士と、その家で働くことになった家政婦と息子の話。

    数学は苦手だから、大丈夫か不安だったけれど、映画が面白かったので、本でも読みたくなって手にとりました。
    意外とすんなり読めました。むしろ主人公と一緒に数字の不思議さや奥深しさに触れられて新鮮に思う場面も多くて良かった。

    博士の、もどかしいくらい不器用で、でも真摯な姿(数字に対しても、息子に対しても)がとても素敵で、読んでいてハラハラしながらも優しい気持ちになりました。
    文が上手だから、家政婦さんが博士と数学に対して愛情のようなものを持つ過程も違和感なく受け入れられたし。

    ちょっと疲れた時にふと読みたくなる本です。

  • 主な登場人物は博士、私(家政婦)、私の息子(ルート)、未亡人のみで、それに加えて重要な役割を果たすのが野球と数学、その全てが巧妙に絡み合ってとてもまとまっている本だと思った。特に江夏豊の背番号と完全数、両方の役割を持つ数字28がでできたときは鳥肌が立った。数学の勉強は結構している方だと思うけど、この本を読んで初めて数学に美しさを感じた。それは、完全数や友愛数のように数字として足してぴったりだから美しいとかではなくて、博士にとって数学はただの学問ではなく、コミュニケーションであり、崇拝する対象であり、そういう感覚を含めて感じたものだと思う。つまり、結局はこの本を書いた小川洋子のセンス、数学という学問の捉え方がすごいなと思った。

  • 約二時間ほどで読了。丁寧な文章で、特に大きな出来事がそうそうあるわけでもないのになんだか心にぐっと響いて、心理描写が細やかに描かれた作品。久々にこういうのが読みたかったんだというものに会えた気がする。一番感心したのは多分終わり方。博士が数年死ぬであろうことをさりげなく書いていた。よくお涙頂戴の小説なんかに描かれる葬式の模様や、彼がどんどん衰弱していくような様を書くじゃなくて、最後にルートとの触れ合いを優しく書いてくれたことがうれしかった。

  • こんな途方もない設定で、ラストを美しく締めくくれるのは本当にすごいと思った。

    恋愛とも友情とも違う、家族愛とも敬愛とも少し違う、そんな哀しくて美しいストーリー。

    野球の話が絡んでくることで、深刻になりがちな話にユーモアがプラスされて、良い味が出ています。


    しかし、数列とかいろいろ懐かしかった。
    ルートみたいに、小さい頃に博士のようなひとに出会っていれば、私ももっと数学好きだったかもしれない。
    答えを導き出す数学ではなく、読んで楽しむ数学なら拒否反応は出ないということを発見!

    「1-1=0。
    美しいと思わないかい?」

  • とてもやさしい言葉でスルッと柔らかい文章が印象的でした。巻を措くを能わず...とはこういう作品の事を言うんでしょうね。何か引きつけられちゃって感動しました。
    博士とルートと私がお互いに欠けている部分を補完しあうようにして生きていく様を直接的な愛情表現を交えず、数字と野球をさらり織り交ぜて...とても文章が良くてホント良い本でした。

  • 記憶が80分しかもたない博士とその家に家政婦として働き始めた女性の温かな物語。映画化されたので観たことがある人もいるかと思いますが、本の中で使われるすべての言葉に繊細さや数字の持つ美しさを感じられるので、本を読むのもおすすめ。新しい環境でせわしなく時間が過ぎる中で、この本を一人読むことでゆっくりとした時間を過ごしては?
    (電子物理工学専攻 修士課程終了)

    事故によって記憶が80分しか持たない博士、その博士のもとに通う家政婦“私”と、私の息子の3人の悲しくも温かい物語。数学の美しさと博士の温かさを感じます。第1回本屋大賞受賞。
    (機械科学科 B4)

    かつて数学者だった80分しか記憶が持たない博士と、家政婦の「わたし」と「わたし」の息子との家族のようなふれあいを描いている。ストーリーはもちろんのこと、本の各所にちりばめられたさまざまな数式をみて楽しむのもよいかもしれない。
    (高分子工学科 B2)

    理系学生は数学が好きか?これは非常に悩ましい問題です。受験勉強を潜り抜けた学生の中には、数学なんかダ~イ嫌いという方も少なくないかもしれません。物語ではかつてケンブリッジ大学に留学までしていたという数学の天才博士と、数学とは全く縁のない若い家政婦さんの交流が描かれています。天才博士が言葉として話す数学は意外なほどやさしく、純粋に面白く深遠で、こんな先生に数学を習いたかったなと思わされます。80分しか記憶が持たない博士と家政婦さんの切なくもさわやかな物語を通して、みなさんも数の不思議の世界へダイブしてみませんか。
    (機械制御システム専攻 M1)

    事故で記憶力を失った数学者と家政婦母子とのふれあいを描いた静かで温かな物語。はじめ博士とのコミュニケーションは困難かつぎこちないものであったが、息子の登場をさかいに関係が変わっていく。難しい数学は出てこないので、文系の人にもお勧めである。芥川賞作家が描く感動小説。
    (知能システム科学専攻 M2)

  • 数学と文学。数と文。一見の接点は「学問」という以外に関連性を見出だす事ができず、オマケに数学が苦手な事もあり「食わず嫌い」していた本書。しかし、284と220は「友愛数だ」の一言や、主人公の息子の宿題として出された文章題を博士と共に解く息子の姿を通して数と文が仲良く並んで歩き始める「言葉の妙」に激しく引き込まれる。
    e″{πi}+1=0は実軸の基準1、虚軸の基準i、三角関数π、指定関数(重要定数)0、4つの種類の数が全部重なる事で=0の「絶対調和」とする事でこれほど謙虚に力強く博士の心情を表した数式はない。

  • 薄い小説だから本屋で立ち読みきろうと思ってたんだけど
    読み出したら、立ち読みなんてほんともったいなくなって。
    しっかり読みたい。思わず買った。

    ほんとにあたたかい話。
    いつも新しいけど、続いていく愛情。
    流れていく時間は少しの悲しみ。

    とにかく
    愛と優しさがあふれてるんだ。



    「ぼくの記憶は80分しかもたない」




    みんなに読んでほしいな。

  • 病気ネタのいかにもな感動本ってあんまり好きじゃないんだけど…
    映画化された話題本って、毛嫌いしちゃうんだけど…

    こんなひねくれ者のわたしでも、まんまと泣いてしまった。それも、朝の通勤電車の中で。

    だって博士がほんとうにいとおしかったんだ!
    絶対的なルートへの愛情、毎朝1人きりで受ける
    残酷な宣告、数学への深い思い、江夏への情熱。
    全てを両手でぎゅっと抱きしめたくなる。
    博士はいつもまっすぐで、全力投球なんだ。

    博士にとても愛されたルートは、きっとすてきな教師になっただろうな。

    ストーリーを思い出すだけで、涙ぐんでしまう。

  • 映画にもなっていたので(そちらはまだ観ていません)、とてもドラマチックなものなのかと思って構えて読んでしまいましたが、大きな起承転結はなく、
    とてもゆったりとしたお話でした。あまりにも刺激の強い話に慣れてしまっている私には、ちょっとしたサプリのような本。
    世の中にそっと息をひそめている、数字の物語を、とても綺麗な言葉で描いていました。発見した時の喜びを、ただ「喜んだ」と描かないところがなおさら素敵です。

    起承転結はない、と言いましたが、80分の記憶しか残らないという事実に、朝、向き合う時の博士の描写は、本の中で最もきつかったです。
    私たちに想像ができない世界がそこにあるのですが、そこを無理に割り込んでいかない話で、むしろ良かったなと思います。

    映画も観てみようと思います。

  • 全体を通しての印象は、非常に美しい文章だということです。この作品を読んで、数学への畏敬の念がさらに深まりました。数学と文学を上手く融合させた素晴らしい作品だと思います。

  • 心温まる作品である。
    最後に3人でルートの誕生日会をしたのが、ジーンと心に響いた。博士と過ごすのがこれで最後になると、みんなにとって心に残る忘れられない思い出になって残るだろう。
    ルートは数学の先生になったが、きっと博士に教わった数学を生徒達に教えていくだろうと思う。
    博士の数学の教えは数学が苦手な人にもとっつきやすいと思われる。

  • 再読です。
    泣けるかと思ったけど泣けなかった。
    ぎりぎりまでいったけど後一押し足りなかった。
    なんとなくストーリーを覚えていたからかもしれない。
    でもすごく綺麗な話だし、読み進めていくと心が満たされていくのを感じた。
    「ルートのような素直さを持ってすれば、素数定理の美しさは更に輝く」
    数学者の美しい、美しくないという表現をよく聞く。
    (数学者の知り合いはいないから全部小説からの印象だけど笑)
    数学のことを、好きになれる気がする本です。

  • 博士やルートたちの生活と自分の毎日を比べてみるとなんて時間を無駄使いしてるんだろうと思う。
    どんなにコミュニケーション下手でもしようと思わないと仲良くなれない。凄く勇気が沸いた。

  • 障害を抱えた博士と家政婦、そしてその息子の心の交流の物語。
    何とも穏やかな愛に満ちた人々の世界でほろっときました。
    そして、その世界観を支えているキーワードとしての数学の神秘的なまでの美しさ、阪神タイガース、江夏、未亡人、どれも素晴らしい。
    久々にいい物語でした。

  • こんなに切ないんだ、忘れていくことって。こんなに自分でもやりきれないんだ。
    思わず泣いちゃう。

  • あとがきに数学と文学の結婚とありましたが、まさにその通り。博士とルートと主人公の友情。特にルートと博士の関係がとても素敵です。きらきらとした純文学に引き込まれつつも数学の美しさにも惹かれます。

  • 最初は他人だった博士と親子のどんどん距離が近くなる感じが良かった。
    ルートが羨ましい!数学は嫌いだけど、博士みたいな先生ならもうちょっと好きになれる気がする。

  • オイラーの公式で感情を表現するなんて!と思いますが,作者は“虚数の情緒”を読んでいるとみた!

  • 初めて数字を美しいと思った。なんとも切ない、美しい愛の物語。
    数学を再び学びたくなった。今度は楽しく勉強できそうな気がする。
    ちょうど私が阪神ファンになったきっかけの年の時代背景で、大好きな選手や記憶に残る試合について触れている部分を読んだ時、この本との出会いが友愛数のように偶然の運命のように感じた。
    終盤は、気付けば泣いている感じ。すばらしい本です。

  • 交通事故が原因で記憶が80分しか持たない数学者と、身の回りを世話することになった家政婦とその息子。自分の殻に閉じこもりがちな博士を家政婦の親子は温かく見つめる。頭の形が平らで「ルート」と名付けられた阪神タイガースファンの少年が博士の心を開かせる。
    小川作品らしく淡々とした描写で物語は進行する。博士が語る数に関するエピソードは深遠な数学の世界の面白さを垣間見ることができ、数学に関する本を読んでみたいと思った。
    「世界は驚きと歓びに満ちている。」とは帯の文句で著者自身が一番意味をかみしめていると語っている。

  • よく聞く名前だと思って図書館で借りてみたら・・・・・よく聞くのも納得、とても気持ちの良い、心温まる話でした。
    初めて小川洋子さんの本を読みましたが、他の作品も読んでみようと思います。

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博士の愛した数式 (新潮文庫)の作品紹介

「ぼくの記憶は80分しかもたない」博士の背広の袖には、そう書かれた古びたメモが留められていた-記憶力を失った博士にとって、私は常に"新しい"家政婦。博士は"初対面"の私に、靴のサイズや誕生日を尋ねた。数字が博士の言葉だった。やがて私の10歳の息子が加わり、ぎこちない日々は驚きと歓びに満ちたものに変わった。あまりに悲しく暖かい、奇跡の愛の物語。第1回本屋大賞受賞。

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