警官の血 下 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 2004
感想 : 170
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  • Amazon.co.jp ・本 (467ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101223230

感想・レビュー・書評

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  • 安城清二(祖父)、民雄(父)、和也(本人)の警察官三代に渡る長編。清二の不審死を民雄、和也が真相を暴く。犯人は途中から分かったが、壮絶な変態でした。時代背景によって警察官の役割は多様で、また警察官としての在り様が警察官個人のパーソナリティに大きく依存する。それが警察官の血となり遺伝していく。最後、和夫が犯人の子(キャリア)と対峙するが、警察官としての在り様が遺伝しているのだなと実感。和夫の場面、加賀谷、永見由香が逮捕され緊張感がほぐれた。佐々木譲さん2作目ですが。松本清張とかぶる重厚感。超おすすめ。

  • (上下巻)
    「血」とは三代に亘って、地域警護に勤めた警察官の「血脈」を表す物語である。

    第一部 清二

    戦後の混乱を警戒して、警視庁は警官の大量募集をした。復員して定職のなかった清二は、それに応募して採用された。
    研修中に3人の親友ができ、希望通り谷中の派出所の巡査になる。公園には浮浪者が溢れ、孤児も住んでいた。
    ここで仲間同士の争いがあり、ミドリというホモが殺される。彼はこの事件の捜査を内偵していたが、捜査員でなく、巡査の身分では思うように進まなかった。
    派出所のすぐ裏にある天王寺の五重の塔が不審火で燃える。そのとき、不審な動きをする人物をつけていき、跨線橋から落ちて死ぬ。

    第二部 民雄

    父を尊敬し、自分も地域を守る警官になりたいと思っていた。成績が良かったが進学をあきらめかけたとき、父の同期で友人だった三人が「血のつながらないおじ」だと言って援助をし彼に高等学校の教育を受けさせる。
    無事、警察学校に入り訓練を受けることになったが、成績が優秀だったので、急遽北大に行けと言われる。そこではロシア語をべと命じられたのだが、内実は、北大内部の左翼グループの動きを探る役だった。
    この、学生生活と偵察員の二重生活は民雄を蝕み、精神を病む。
    やがて学生運動は鎮圧され、開放された彼は、父と同じ駐在所の警官になる。
    彼はなぜか殉職扱いされなかった父の死に強い不審を抱いてきた。
    だが、人質を取って立てこもった指名手配犯に向かっていき、射殺される。

    第三部 和也

    和也も大学を出て、地域警官になることを選んでいた。だが卒業間際に捜査官の素行調査を命じられる。
    彼が内偵を命じられた警官は、加賀谷と言った。加賀谷は一匹狼の刑事として数々の実績を上げていた、暴力団相手の刑事だった。和也は彼からさまざまな訓練を受ける。
    一方、祖父の不審死を父が探っていたことを知り、その遺志を継いで行こうとしていた。
    加賀谷は地域暴力団の顔になっている。やはり裏で繋がっているのだろうか。
    聞き込みで、父に援助した「三人のおじ」は亡くなったり引退していたりする。彼は当時のことを調べていく。



    警官三代の物語が、それぞれの時代背景の中でつながっているのが面白い。戦後の荒廃した街で生きている浮浪者や孤児に暖かいまなざしを向ける民雄。

    民雄は裏切りの生活の中で壊れていく。父が殉職扱いにならないという警視庁の判断のために、貧しい暮らしを余儀なくされた。しかし彼は父のような警官になることを目指した、だがあたら優秀な頭脳を認められたために特命を受けて利用される。貧しさ故といえるかもしれない。
    恵まれた頭脳が生かしきれない環境というものもあるだろう。

    和也もやはり組織の中では自由に生きられなかった、上司をスパイするという運命を受け入れなくてはならなかった。

    和也の最終章になって事件は解決するが、長い年月をかけた割にはあっけない。調査方法が進んだこともあるかも知れないが、話としてはいささか簡単すぎるように思った。
    祖父を殺したのは誰か、早くに思い当たる部分もある。

  • 話の内容はとても面白かったが主人公の恋人が上司に寝とられる部分は要らないと思った

  • 佐々木さん×公安モノ、という好みの掛け算になっていて最高。上下巻だったがほぼ一気読み。
    時代背景の考証が素晴らしい。かつ、ストーリーに不自然さが全く無いので、ノンフィクションと勘違いしそうになった。

  • あらすじ
    安城民雄は、駐在として谷中へと還ってきた。心の傷は未だ癒えてはいない。だが清二が愛した町で力を尽くした。ある日、立てこもり事件が発生し、民雄はたったひとりで現場に乗り込んだのだが-。そして、安城和也もまた、祖父、父と同じ道を選んだ。警視庁捜査四課の一員として組織暴力と対峙する彼は、密命を帯びていた。ミステリ史にその名を刻む警察小説、堂々たる完結篇。

  • 上巻に続き、下巻も素晴らしー。
    重厚感あふれる物語は、圧倒的な面白さ。
    これぞ小説の横綱本って感じ。

    グダグタ言わないので、黙って上下読みなさい
    とお勧めしときます。

  • 2016/10/23読了

  • 親子三代に渡る、警察官の物語。
    数年前にこのミスに選ばれた作品らしい。
    見せ場はそれぞれの時代にある。
    特に2代目の民雄がPTSDにかかってしまい、立ち直ったが、またまた発症して、自ら事件に巻き込まれて命を落とす。
    そして3代目の和也。現代においての警察官の正義のとらえ方が問われている。
    読後、親子3代に共通する正義とはなにか?正義のありかたについて考えさせらた作品となりました。

  • 民雄の、苦しんだ挙句ようやく取り戻した平穏な生活から始まり、やがて和也の章に移る下巻を読み終えて、明かされた事実が重い。
    すべての罪は相対的なものだ。いくつもの事件が秤にかけれて処理されている。
    そうだとしても、当事者にしてみたら、、、無念。

    二人とも、真相に行き着いて父は祖父は立派だったとわかったことは救い。

    やつのことは許せん‼︎一読書として。
    よくも退官までしゃあしゃあと勤めたな‼︎だからって殺していいのか?


    久しぶりの長編、大変読み応えあり引き込まれました。

    で、ここから警官の条件に繋がるのに、先に読んじゃったから。
    これ読んでからだともっともっと入り込めたなあ。
    もう一度読み直そう。

  • おもしろかった。天王寺駐在所も見に行ってしまった(笑)時代の移り変わりや、上野界隈の歴史とか大変興味深かった。そして私の好みは清二だなー。

著者プロフィール

1950年北海道生まれ。79年「鉄騎兵、跳んだ」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。90年『エトロフ発緊急電』で山本周五郎賞、日本推理作家協会賞を、2002年『武揚伝』で新田次郎文学賞、10年『廃墟に乞う』で直木賞、16年に日本ミステリー文学大賞を受賞。他に『抵抗都市』『帝国の弔砲』など著書多数。

「2022年 『闇の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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