ゴールドラッシュ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.00
  • (24)
  • (59)
  • (210)
  • (57)
  • (25)
本棚登録 : 863
感想 : 111
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101229225

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2023.5.8読了
    著者の作品は学生の頃にトライしようとして挫折した覚えがある。
    あれから長い月日が経過してまた作品を手に取った時、同じ理由で諦めそうになった。
    暴力的な描写もその一つだが、何より、ごく一般的な暮らしを営む者にとって、主人公の周りを取り巻く環境が特殊なために読んでいて馴染めない。
    この作品で言えば、主人公はまだ14歳の少年だが、ドラッグや犯罪が身近にあって、それらがもたらす悪影響に怯えながらも解決しようとはしていない。また、親が羽振りのいい経営者であり、彼はその跡継ぎということもあって世間に対して上から目線だということも共感しにくい材料の一つだ。
    プライドが高くて繊細なこの少年が、どのようにして成長していくのか。自分の個人的な期待で言えば、社会のダークサイドから抜け出して欲しい、何かきっかけになるような出来事が起こって欲しいと思いながら読み進めていくのだが、物語はまったく反対の方向へ進んでいく。
    転落していく人生を描いた作品は数多くあるが、その転落には何かしらの教訓であったり、読者に訴えかけるものがあると思う。
    しかしこの作品では、少年が問題に突き当たっても前向きに解決しようとせず、ひたすらに自分の思うがままを通そうとするのでほとんど共感できなかった。
    文庫本としては少し厚めのページ数だが、読み終わるまでがとても長く感じた。

  • 途中で想像していた以上に、ラストスパートが怖かった。
    なぜ人を殺してはいけないのか、筆者にとっての答えになってるようだが、読みきれなかった。

    少年も憎みきれないし、いい大人もいる。
    救いはあるが、怖い、嫌悪感、の方が勝ってしまう。

    色んなことが過ぎ去った大人が読むには良いが、今現在、混沌としてる若者が読むにはどうか。
    闇が深すぎて引きずられてしまうのではないか。
    それとも、書かれてたように、18歳や20歳で大人になるのだろうか。
    若者でもこの本を受け止められるのだろうか。

  • いちいち文章が長くてくどくて一体どこで息継ぎをしていいのかわからず困惑しながら読み始めて、ものすごく苦しみながら読み終えたけど結局この話は何なの?でもつまらない小説だったなあというわけでもない。そこがとても不思議。
    主人公はお金持ちの息子で家族はめちゃくちゃで友達もいなくて誰もあんまり親身じゃなくて本来ならば読んでいてこの主人公に対してもう少しカワイソウだとかムカツクだとかの感情がこちらも生まれてきそうなもんだけど、あんまりにもこの少年が純一無雑というか本人は何が良くて何が悪くてなんてこと全然わかってもないし考えようともしないもんだから読んでいて彼の敵にも味方にもなってあげられないまま読み終えてしまった。
    ラストは本当に意味が分からなかった。小説ってこんなことしていいんだ、いいのか?どういう意図でこんな結末にしたのか全く理解ができない。うーんでもやっぱり全体を通して、つまらなくはなかったんだよなあ・・・。

  • 村上龍、罪と罰をミックスしたようなストーリーと表現。章立てはないが、明確に前半と後半に分かれていると感じました。
     暴力表現にパンチがあるので、疲れます。読み進めるのに時間がかかりました。

  • 少年犯罪、闇、グロい感じの作品は嫌いではないが、この作品は…だった。

  • これまず結論は置いておいて、閉塞感が物凄くて読むのに結構体力がいった。
    パチンコ屋の従業員、ヤクザの知り合い、中華屋はじめ黄金町の住人たち。
    そしてやることなすこと支離滅裂なのに、妙に達観していて妙に責任感がある14歳の少年。
    少年の一挙手一投足が読めなくて、理解できなくて、その不安定さが恐ろしい。
    常に誰に対しても敬語なところが不安感を助長する。

    父親を殺したあたりの描写は割とあっさりで、でも人並みにその後不安になっていたりして、とにかく描写が秀逸。

    最後が救いだったのか崩壊だったのかは私にはよくわからなかったけれど、ひたすら心を揺さぶられる作品だった。

  • 「どうして人を殺してはいけないのですか」と聞かれ柳美里さんなりのアンサー本だそう。

  • イタリアを車で旅行しながら読んだ
    それは正解じゃなかった

    私たちが生きなくてはならない世界の、嫌で嫌でたまらない部分を、ためらいもなく描いているから、読まずにはいられない

  • 黄金町が舞台ということで興味を持って手に取ったが、あまりに重く怖くて手に取った事を後悔した…。しかしなんとか読み終えたし、結果的には読んでよかった。
    闇の描写が秀逸すぎて、途中読むのを渋ってしまった。情景描写も素晴らしかった。夏の暑さにより増す息苦しさや焦りや不安からでる冷や汗など登場人物のリアルな体感が頭の中に広がった。人を頼ることも、自分を認めることもできず、そんな自分を殺すことも狂うことも出来ない人間の悲痛の叫びを感じた。罪を犯した少年は最後になって後悔し大人にすがっていくが、その姿に脆いけれどまだ取り返しがつくのかもしれないと感じた。でもどうやったら彼が救われるのかわからなかった。あのまま救いがなかったとしたら彼の闇はどこまでも深く、深く落ちていくのだろう。
    社会的マイノリティである登場人物たちがお金や宗教に縋り、自分を守る術として狡猾さを身につけているが、金本さんだけは少年に寄り添おうとし、側にいる大人として何もできない悲哀感を示したり、少年に現実を諭そうとする。物語で唯一光を見れた気がする。
    人は置かれた状況によって、いくらでも光にも闇にも進めるのだと感じた。

  • この毒々しさが好きな人はいると思うし、自分がそうだと思う。
    かといって憎しみや怒りに対する理解というよりも、情緒の末の逃亡に、どうしようもない無力感を感じ取ってしまう。
    そういう弱者の痛々しいところを、作者ははっきり書き切ってくれるから好き。

全111件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柳美里の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
吉本ばなな
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×