魂 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101229263

感想・レビュー・書評

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  • 四部作の第一部、第二部まで読了。出産、育児と末期がん患者の闘病・看病を並行し、その間も書く仕事は続け、不誠実な相手に認知・養育費も求め。壮絶な手記。編集者たちとの濃密な関係、本来プライベートなことでここまで頼り、それを受けて立つ編集者がいる、というインパクト。以前読んだ自伝的な新書を読んだときより、東さんがすごく乳児の育児に積極的だったんだな、という印象を受けた。そして、ホスピス、末期という言葉は使いたくない、可能性がある限り最後まで闘いたいという姿勢には頭が下がる。第一部のあとがきで、結果を知っている身としては…だが。/心をとらえたのは/東の治療のためのニューヨークへの同行を拒まれた最相葉月の「ひとにはこころからやってみたい、どうしてもしなければならないことがあると思うんです」「黙ってればいいんです」の凛としたたたずまい。柳美里の「わたしは家族によって疵つけられた魂で、疵ついた家族を愛し、求めていたのだ。だから家族の崩壊をテーマにしながら、常に家族の再生のイメージを胸に抱き温めていた」という述懐。東の火を噴くような、医者は技術を鍛えるとともに、言葉も鍛えなければいけない、言葉で患者に影響をあたえるのだから、という叫び。

  • 福田和也氏の解説と重複する処があるが、前作『命』が外部への烈しい“祈り”に対し、『魂』はタイトルの通り、柳さんと東さん、丈陽の内面で静かに進行する“癌”のようなものだという印象を強く受けた。かといって起伏が無いわけではない。寧ろ闘病が深刻化するにつれ強く烈しくなってゆく“生”への執着が折りに触れて鋭く突出し、書き手のみならず読み手まで疵つけていく。
    丈陽の初宮参りのシーンが私の頭に色濃く残っている。写真を眺めている様に、丸親子亀の掛け着を着た丈陽と、丈陽を抱いた柳さんのおかあさん、そして和服に身を包んだ柳さんの姿が瞼に浮かんだ。それほど緻密に画かれた宮参りの情景と、対して、日本文化である和服を「他国の民族衣装」であるとしか認識するしかない書き手の苦しみは、日本でうまれ育ち、何の疑いもなく生きている日本人の私には一生をかけても理解し得ない。
    他人の経験したくるしみを、理解する、理解できる、とたやすく言える人間を、私は心底から疑ってしまう。考えることはできたとして、理解することなどできる筈がないのだ。それは日本人同士であっても同じだ。
    残りの二作で柳さんがどう考え、行動していくのか、ページを開くことに勇気は要るが気になってしまう。

  • もう、それこそ心身を削り尽くすような、柳さんと東さんと産まれたばかりの丈陽くんとの壮絶な生活です。

    ここまで生にこだわらなければ生き抜くことは、できないのか。
    ここに至るまで、他に方法はなかったのか、考えても仕方ないのかもしれませんが、考えずにはいられませんでした。

    東さんの命は、そうして尽きていきます。

  • 命<魂。
    夢中になって、読みました。

  • 最期までガンと戦い抜く姿勢の東由多加と、それを支える一児の母柳美里、3人を取り巻く誠実な友人・知人・家族。生き方を考えさせられる作品でした。

  • 丈陽と東由多加と三人の話
    重いです。

  • 読み進めるのが、苦しくて痛くて辛い。重い。

  • 2001年9月 読了

  • 05/02/17

  • もしあたしがガンとわかったら、もし近親者がそうだったら?生と死を少し身近に感じます。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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