8月の果て〈上〉 (新潮文庫)

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著者 : 柳美里
  • 新潮社 (2007年1月30日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (552ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101229317

8月の果て〈上〉 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 久々に長編小説を読んだ
    1000ページを越すこの長編を、毎晩寝る前のフトンの中で読んだ
    読みすぎて寝不足になった日もあった
    この本を読んで良かったと思う
    知らなかったことが、やっぱりたくさんあるんだ・・・

    変かも知れないけど、私はこの小説を読んでる間中、死ぬのが怖いと思った
    このまま息がなくなって、心臓が動かなくなって、考えてることとか消えていく感覚って
    怖いって思った
    やりたい事も、会いたい人も、行きたい場所も、聴きたい音楽も、観たい風景も・・・
    たくさんたくさん残っている
    まだ死にたくない
     
    この物語は著者である柳美里氏のお祖父さんから始まります
    第2次世界大戦真っ最中の韓国が舞台です
    いろんな人が、いろんな形で亡くなっていきます
    まだまだ生きたい気持ちでいっぱいなのに・・・

    もう感想なんて書けないです
    なんか胸がいっぱいです

    今は
    「ちゃんと、引き継がれた命を生きないといけないんだ」
    って感じています・・・

  • 生、死、愛、念、恨。

    上巻を読み終えて、頭の中に残っていたのは、こうした人の心に宿るあたりまえだけれども、根深くてほかの人を傷つけやすい数々の感情を表現する柳さんの文体でした。生きていること、生き抜くこと、愛すること、愛されることが、これほどまでに壮絶であるなんて想像できません。壮絶なんてものでも表現しきれていないと思います。ありきたりの言葉が、この本の前ですべて陳腐に帰すのです。誰もが翻弄されている感じです、身体も心も…。柳さんの本を読んだことのない私が、いきなり作家の一家と、日本の韓国併合時代から第二次世界大戦を通じて社会状況をとりあげた作品に飛び込んだわけですから、それなりに読者である自分も未熟であるがゆえに心の火傷を覚悟しなくていけない作品でした。文章を通じて、私の心が痛むとき、それが柳さんの文章によって、私が火傷したことに他なりません。

    特に、雨哲の父親で李容夏(イ ヨンハ)の不倫相手である美玲(ミリョン)の行動が描写された箇所は、特筆です。村八分にされながらも雨哲の子どもを身ごもりたいとの一心から迷信や慣習にすがりつく様。自分が言い伝え通りに行動を行いながらも妊娠できないことへの苛立ちが容夏の家族への恨み妬みに変わっていく様子を季節や風景にあわせてありありと描かれる様。美玲の産んだ子どもが女の子であったことから生じる育児放棄とその理由が冷酷なまで語られる様。こうした念、恨(ハンとハングル読みしますが)に驚かされました。

    20世紀初頭に日本が韓国を併合し、朝鮮総督府(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E7%B7%8F%E7%9D%A3%E5%BA%9C)を通じた支配から韓国人に対する同化政策をすすめていく一方で、多くの韓国人が外向きにはへつらっている行動しながらも、心まで侵されることなく、抗日運動や義烈団の活動に身を投じていきます。

    雨哲の友人達もその例外ではなく、マラソンに打ち込んで世間で有名になっていく自分と、政治闘争に自ら飛び込んでいく親友へむけた視点の描写は、かの国を侵した側の国に住まう人間として記憶しておくべき歴史の一断面だと思うのです。父・容夏(ヤンヒ)、母・喜香(ヒヒャン)をはじめ兄弟姉妹がわずか数年の間に死んでいく上巻後半も胸が締め付けられる思いです。

    この作品で、柳さんの「擬音」と「反復」を使った文章表現が、文中の多くの場所で使われていて、それらがとても効果的です。わたしにとっては記憶に残りやすいものになっていると思います。日本語とはことなる擬音ながらも、カタカナ表記して頭の中で読んでみると、反復表現であることもあいまってしっくり感じられる部分もありました。そして、今までに聞いたことのない音を思いつかない意外な音を組み合わせて表現しているとことも日本語とハングルの違っているようで似ているところを感じました。すっすっはっはっ、すっすっはっはっ。フィーン、フィーン。チルルア〜、チルルア〜。って耳鳴りがするんです。いまでも。擬音語の「妙」といえます。

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