球形の季節 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101234120

作品紹介・あらすじ

四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた…。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した!新鋭の学園モダンホラー。

感想・レビュー・書評

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  • 1990年代2作目「球形の季節(1994年)」

    1作品目に続き、田舎、高校生が主人公。怨念に一見的な偶然を重ね(必然)、無念をはらすという作品と感じた。
    この後、全寮制作品も出てくるし、著者は高校生時代に思いが深いのだとしみじみ感じる。

    情報がない時代だと、アリバイ工作が簡単だが、情報化社会では簡単に位置情報でさえ、わかってしまう。仮想情報が完璧に出来たら、それはそれですごいけど。

    昔懐かしい作品といえる。

  • 例えば、夏の日の突然の夕立。激しい雨の中から、ふわりと抜け出したことがあります。振り返ればどんより雨雲が広がっています。でも、今わたしは晴れた空の下に。見慣れたはずのいつもの街並み。アスファルトの道路。なのに、こっちとあっちで別々の世界になったような、そんな違う空気に包まれたような不思議な感覚を覚えました。
    谷津のあっちの世界は、混沌とした葦原の中つ國のようなイメージがわたしの中では広がります。まだ何モノでもなくて、善も悪も光も陰も全てのモノが混じり合ったような。そんな世界に跳ぶことは、ある人にとっては不気味だったり不安になったりするだろうし、でも、ある人にとっては自分をがんじがらめにしていたしがらみから解放されたような気持ち良さを与えてくれるんだと思います。
    「ここは自分の場所じゃない」なんて思ったことがあります。実はこっちが夢の中で、わたしは覚めない夢の中で無意味に時を刻んでいるだけなんて。
    自分じゃない自分になる。望んでなる人もいれば、その方法しかない人もいるんじゃないでしょうか。逆に全く必要のない人もいるでしょう。でも、それを選ぶのは自分であって、あっちの世界に足を踏み入れること、それは間違いではないのかもしれません。きっかけを与えるものは噂だったり、ゼツボウだったり、そういうものだとしても、みんな何らかの期待や祈りや好奇心や残虐性やらいろんなものが心の奥底に眠っていて、実は目覚める時を望んでいたのかもしれません。ただ、待ってる人がいるということを忘れずにいてほしいです。
    今も谷津はうつらうつらとしながら、覚めない夢の中にいるのでしょう。

  • 登場人物が無駄に多く散文だなという印象だった。一気に読めばまた印象が変わるかも知れないけど、大抵の人は途切れ途切れになってしまうと思う。
    そうなってしまうともう、あれ誰だっけ? どういう人だっけ? の繰り返しで全然物語りに集中できない。
    最終的にどうなってしまうのか、気になってしょうがない終わり方でここまで苦労しながら読んだのにと嘆きたくなる。
    色々とキャラクターに細かく性格設定がされていたが、どのキャラも好きになれなかったのは残念。視点がころころ変わり感情移入しにくかったからかもしれない。
    結局の所、偽善でしかない噂の首謀者の鬱屈した気持ちの正体はなんだのだろうか。病弱ということだけなら、なんとも悪質。
    丹野静の役割は藤田晋で十分だったろうし、忠彦と孝彦が双子である理由もなかった。マサルがいなくても物語に支障はない。
    登場人物が減ることで恐怖が分散することなく伝わってきたような気がします。

  • 噂やおまじないがものすごい早さで広まっていく不穏さがとても上手に描写されていた。
    ホラー感はなく、人為的なものとファンタジーが融合したようであまり好みでは無かったかも…
    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    四つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が広がった。「地歴研」のメンバーは、その出所を追跡調査する。やがて噂どおり、一人の女生徒が姿を消した。町なかでは金平糖のおまじないが流行り、生徒たちは新たな噂に身を震わせていた……。何かが起きていた。退屈な日常、管理された学校、眠った町。全てを裁こうとする超越的な力が、いま最後の噂を発信した! 新鋭の学園モダンホラー。

  • デジャビュ(既視感)のような気分を味わった、物語の始まる東北の一地方「谷津」という土地に。
    「みのりやひろのり、ひとし」たちにいつか会っているような、自分のことのような。

    どこかであったような自分のことのような人たちが、住んだことのあるようなところで繰り広げる日常の非日常。私は恩田さんの書くファンタジーの気質ひとつだろうと思う。いや、羨ましい筆力の才能。

    でも、それは後から思ったこと、とっぷりとはまって楽しんでしまった。とくに第二章「いつの間にかこんなに違った生き物になってしまった」の「谷津」の町の情景描写は好もしい。

    『国道を車で走れば、谷津を通過するのに、もし運悪く信号待ちにひっかかったとしても五分とかからない。日本中に、これと同じような町がいったいいくつ位存在しているのだろう?』

    ここを読んでドライヴ途中の旅愁を思い浮かべる人は多いだろう。

    そんな町が心を込めて描写され、みのりという女の子に『浮き立つような気持ちになる』と言わしめる、紅川の情景。如月山の四つの高校、男の子の高校二つ、女の子の高校二つ。そうして物語は始まる。

    「球形の…」と題名がいうようにこの地球上に幾千とある物語の一つ、ファンタジーに込められた普遍性。その普遍性として述べられている「ことがら」がこの物語のカギなのだが、それを言うのは控えよう。しかし、その「ことがら」は私にも生きる上でもっとも大切な、大切なことがらなのだ。

  • 閉塞感の漂う地方都市。学生たちの間で囁かれる噂話や密かなおまじないの流行。
    ”なにか”を待ち望む無意識の集団心理が、得体の知れない出来事を引き起こしそうで、作品全体がゾワゾワとする独特のムードをまとっている。
    子どもの頃って、確かに怖い噂とか、変なおまじないとか、不思議な世界の話とかに異様に熱中してたなぁと思いだし、ちょっとノスタルジックな気分にもなった。

  • 「噂」繋がりということで荻原浩さんの『噂』に続いて読んでみました。
    噂、おまじない。
    序盤の設定と展開が素晴らしいですね。あっという間に物語に引き込まれてしまいました。

  • 『球形の荒野』ではない。『球形の季節』だ。
    『六番目の小夜子』に続く恩田陸の2作目だが、恩田陸としてはすでに完成しているんだけど、でも、まだまだ途上みたいな?w
    続く『不安な童話』やその次の『三月は深き紅の淵を』になると、逆に(プロとして)暗中模索しているのが窺えるんだけど、これは、自分が書きたいのはコレ!(というよりは、今はコレしか書けない?)みたいな勢いがあって、そこがいいんだと思う。

    確か、『六番目の小夜子』のあとがきで、著者は“「少年ドラマシリーズ」のオマージュとして書いた”みたいなことを書いていたが、これもまさにそんな話。
    すごくそそられる展開に対して、結末は尻すぼみという流れは「赤外音楽」に近いw
    (もっとも、「赤外音楽」は怖すぎて最後まで見られなかったのでw、あくまで原作の結末)
    ただ、この話って。それなりの結末をつけたら、逆につまんなくなっちゃったんじゃないかなーという気もするかな。
    というのも、どうやらこの話の真相というか、底流にあるものは、晋や静の世界らしいんだけど、この話にその世界観でそれなりの結末をつけられてもなーという気がするのだ。
    その世界観って、普通に考えればホラーやファンタジーだし。
    もしくは、変な屁理屈もってきてSFにするというものあるとは思うんだけど、でも、そういう話になっちゃたら、主人公がみのりというキャラクターでいいの?ということになると思うのだ。
    この話の魅力は、みのりというどこにでもいる平凡な女子高生と、その周囲のやっぱり平凡な人たちが暮らす谷津という、やっぱりこれもどこにでもある平凡な東北の小さな町に起きる、“日常の”不思議な出来事という、あくまでそのレベルの話なところにあるんだと思う。
    解説では、ファンタジー云々と語られているけど、そうではなくて。
    言ってみれば、「日常の謎」として解釈してしまうなら解釈できてしまって(だって、ほとんどの人は晋たちの世界は知らないわけだもん)、後に誰もが「あの時のあれって不思議だったなー」と思い出すみたいな、たんなる淡い青春譚と読めるからこそ、読者(特に恩田陸のファン)は惹きつけられるんだと思うのだ

    例えば、変な話、心霊スポットに行ったところで、何もないことが普通なわけだ。
    でも、それだとつまらないから、写真に写った水滴を「オーブだ!」とみんなで共有することで思い出にする。
    と言ってしまったら身も蓋もなくなってしまうけど、でも、これってそういう誰しもの青春にあった出来事の話として読んだ方が楽しめる気がする。
    ていうか、恩田陸の小説の魅力って、そこなんだろう。
    プロットで書く小説全盛(なのかどうかは知らないw)の中、書くことで想像がどんどん膨らんで、ストーリーが勝手に動き出すタイプの作家の小説というのは独特の魅力があるし。
    なにより、読んでいて面白い。
    恩田陸という作家は、その極端なパターンなんだろうw

    とはいうものの、この小説、青春譚として読むには、主人公であるみのりの存在感が妙に薄いんだよなー。
    それこそ、みのりの関係ないところで、話がどんどん展開されていく。
    だからって、話を展開していく登場人物たちも、その展開の必要に応じてちょこっと出てくるだけだから、やっぱり存在感がなくて。
    際立つ登場人物がいないことで、さらにみのりの存在が希薄になっていくような気がする。
    それも青春なんてそんなものと言ってしまうなら、確かにそうなんだろうけど。
    とはいえ、これは小説なわけでw
    個人的には、みのりと久子の二人を主人公に書いたら、ストーリーがもっと締まったんじゃないのかなーなんて思った。

  • 田舎とかだとよくありそうな感じの内容です。
    登場人物の魅力がたまりません!!
    皆んなどこか大人っぽい感じで私個人としては好きなストーリーと登場人物の性格に惹かれてしまいます!!

  •  サヨコに続く恩田陸の2作目。ある東北の地方都市の高校生たちの何でもないひと夏の物語。どこにでもいそうな生徒たちそれぞれが垣間見せる心の深淵。過去、現在、未来への漠然とした不安が、日常と非日常、現実と非現実のあわいをさまよいだし、言霊、まじない、神隠し、超常能力まで紙一重のところまで揺れ動く。両極端に位置するみのりと晋の対比。そのどちらもが誰の心にも棲んでいることに気づいていながら、長ずるにつれ人はフタをしてしまう。なるほどなあと感心。こういうところからスタートしたのか。ここをへて常野物語へと発展していったのだという流れがすんなりと腑に落ちる。それにしても恐るべき才能だ。

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著者プロフィール

1964年宮城県生まれ。92年『六番目の小夜子』で、「日本ファンタジーノベル大賞」の最終候補作となり、デビュー。2005年『夜のピクニック』で「吉川英治文学新人賞」および「本屋大賞」、06年『ユージニア』で「日本推理作家協会賞」、07年『中庭の出来事』で「山本周五郎賞」、17年『蜜蜂と遠雷』で「直木賞」「本屋大賞」を受賞する。その他著書に、『ブラック・ベルベット』『なんとかしなくちゃ。青雲編』『鈍色幻視行』等がある。

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