一瞬の夏 (上) (新潮文庫)

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著者 : 沢木耕太郎
  • 新潮社 (1984年5月発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (348ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235028

一瞬の夏 (上) (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 新潮文庫の発行年が昭和59年。
    なつかしい時期である。

    この作品は、カシアス内藤という元プロボクサーについて書かれている。
    世界チャンピオンになったわけでもないが、そこそこの人気はあったようで、私も名前は知っていた。

  • 世界チャンピオンも狙えると言われたボクサー、カシアス内藤の
    選手生命の終焉を描いた「クレイになれなかった男」から5年。
    カシアス内藤がリングを去ってから4年半。ルポライターとしての
    仕事の上で事実誤認からミスを犯した著者は、しばらく日本を
    離れようとしていた。

    友人との酒の席での他愛ない話の中で、思いもかけない
    ニュースが飛び込んでくる。どうやらカシアス内藤がリングに
    復帰するようだ…と。

    夢が、再び前に進み始める。再起に掛ける元チャンピオン、
    日本のボクシング界を語る時に忘れてはいけない名トレー
    ナーであるエディ・タウンゼント、著者の友人である若き
    カメラマン、そして、著者である沢木氏。

    もう何度、本書を読んだだろうか。結末は分かっているんだ。
    それでも、懸命にトレーニングをするカシアス内藤に感情
    移入し、エディさんの厳しいけれど愛のある言葉に心を
    鷲掴みされ、沢木氏の視点でカシアス内藤を眺める。

    上巻はカシアス内藤の再起第一線までだが、沢木氏が
    アメリカ・ニューオリンズへモハメッド・アリのリターンマッチ
    を観戦する為に訪れる挿話が秀逸だ。

    世界ヘビー級王者であるモハメッド・アリ。その本名である
    カシアス・クレイからリングネームを名付けられた内藤。
    ふたりのボクサーの再起が微妙にシンクロしている。

    やっぱり上手いわ、沢木氏は。試合の描写も勿論だが、
    スパーリングの描写を読んでいると目の前で内藤が
    動いている錯覚に陥る。

    結末は分かっている。それでも下巻を読むのが楽しみだ。

  • 実在したボクサー カシアス内藤の現役復帰を描いたノンフィクション。この作品を読んでボクシングの興業に少し興味がわいた。機会があったら生で観戦してみたい。

  • エスノグラフィーガイドブックから選んで読んでみたものの、普通のフィクション小説みたいで、これってエスノグラフィーなの!?って思った。

    ボクシングをやめた人がまた再びボクシングを始め、著者や周りの人が支えていく。
    途中で様々なことがおこる。
    ボクシング選手にとって、ブランクがあるということはとても難しい。ボクシング選手であるけど、気弱な性格で、なんかそこが面白い。

  • 才能があるのに努力しないボクサーが5年のブランクを経て再帰する物語。
    若干29才で年を取っていると言われてしまうボクシング界。
    人生経験や試合経験よりも、瞬発力、運動神経、目の良さ、そして絶対に勝つ気迫が重要な要素だ。
    若いときに自分の才能に気づき、それに溺れることないように努力させるには、本人の性格もあるが周りの協力者の力が非常に重要だ。
    沢木さんは一度見捨てたボクサーの再帰を知り、ふたたび力を貸すようになる。
    主人公が練習に打ち込めるよう環境を整えたり、試合をスケジュールするが、ボクシング界の背後には腹黒い人間や、欲深い人達が渦巻き、一筋縄ではいかない。

  • ボクサー、カシアス内藤の復活をめぐるドキュメンタリー。ドキュメンタリーなのだが、小説かと錯覚させるなめらかな展開で、全く押し付けがましくない。

    実のところ、この前半部の途中までは、架空の話だとばっかり思って読んでいた(紹介などは読まずに読み始める質なので)し、小説にしてもなかなか良く出来た話ではないかと思う。

    カシアス内藤の復活のために尽力する作者が、カシアスの名前の由来にもなった、モハメド・アリの復活戦を見にアメリカへ渡る。このへんが小説なら「なんでよ?」となるわけで、そこで調べてドキュメントだとわかったわけです。

    全体に、ボクシングと関係のない部分が語られることが多く、やきもきしたり、逆にホッとしたりする。アメリカに渡ってからも、割とどうでもいい話がたくさん書かれる。

    しかし、最終的にダメだったんじゃないのかな?というのが透けて見えてくるので、長く引っ張られるのは、救いが有るのではないのかな?と思われる。

  • 本書はルポとはいえないかもしれない。筆者が被写体に入り込み自分の抱える閉塞感や焦燥感を内藤へ重ね託す。才能ある者は湯水の如く湧く才能を浪費し才能が疲弊し喪失しかかったときに取り返しの付かなさに気付き再起を図るのかもしれない。ニューオリンズでのカシアス・クレイ(アリ)の復帰戦はショービジネスと化した何とも言えない物悲しい残骸感が漂う。試合前の計量者やマネージャーの態度は戦う者への敬意が欠如した見世物に成り下がった実情を感じさせられる。

    一方、カシアス内藤や大戸のボクシングへの真摯な姿勢に対して本番でのある種期待はずれの不完全燃焼な出来は弥が上にも現実は常にドラマチックとは限らない現実を突きつけられる。筆者の昇華しきれぬ想いを抱え下巻に向かう。

  • 濃密な人生の中の時間がうらやましい・・・

    沢木さんのバイタリティーはすごい

  • もう40年前の出来事であるのに、全然古めかしい感じはしない。才能があるが今は落ちぶれたボクサーと、不遇なトレーナー、自分の人生に思いを重ねた私が、再起をかけて闘いをいどむ物語。
    私ノンフィクションの金字塔と評価される作品だが、小説としても評価できる作品。

  • [丁半の定め刻]圧倒的な才能を有しながらも、ボクシングに本気になれず、その世界から惨めな敗北とともに脚を洗ったカシアス内藤。そんな彼が4年ぶりに復活するという話を耳にした著者は、引退前の彼に取り憑かれたときのように、またジムへと訪れ、彼の再起をその眼で見たいと願うのであるが......。男たちの一世一代の賭けを追ったノンフィクション。著者は、私がもっとも好きなライターの1人である沢木耕太郎。


    人生で一度は震えの起こるような勝負をしてみたいと思ったことがある方なら、本書を読んで間違いなく震えが走るはず。ボクシングに「かたをつける」ためにリングに上がるカシアス内藤、その内藤に形容し難い夢を見る沢木氏、そして内藤で自らも一花咲かせたいと思うトレーナーのエディ......。1人1人の「これが最後」が弾け飛ぶ見事な作品だと思います。


    本書の事実上の準主役となっている沢木氏自身の心模様が、筆遣いにも若干の影響を与えているところに読み応えがあります。竹を割ったようなすっきりとした話ではないのですが、それ故に勝負の面白さ、不思議さ、蠱惑さにハッとさせられます。自身が仕事でも生活でも守りに入りつつあると感じる今日この頃、それ故に余計に胸動かされる作品でした。

    〜いい博奕よ……これはいい博奕よ……〜

    沢木さんの文章はいつ読んでも良い☆5つ

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