チェーン・スモーキング (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235110

作品紹介・あらすじ

古書店で手にした一冊の本に書き込まれていた言葉。公衆電話で演じられた人生の一場。深夜にタクシー・ドライバーと交わした奇妙な会話。…エピソードの断片はさらなるエピソードを呼び寄せ、あたかもチェーン・スモークのように連鎖しながらひとつの世界を形づくる-。同時代人への濃やかな共感とともに都会の息遣いを伝え、極上の短篇小説を思わせる味わいのエッセイ15篇。

感想・レビュー・書評

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  • 沢木さんが四十代の頃書かれたエッセイ集。
    今より若いからかいろんなことに疑問を持ったり興味を示すところが新鮮です。
    とりとめもない話が次から次に飛んで最初は戸惑いましたが、慣れてくるとまるで転調を繰り返す音楽のように軽やかに読めて楽しい読書となりました。

    例えば、死んだらどうなるの?から夢の話になり、なぜか中島みゆきとお酒を飲む話になったり…。
    あるいは、ジョギングの話から小林秀雄の話になり、最後は「メランコリーの妙薬」で落とすという話も印象的でした。

    読み終えると何か得したような一つ賢くなったような気分。(まだなかなか慣れない)毎日の通勤電車が楽しくなる本でした。

    • moboyokohamaさん
      lemさん、私の本棚のチェーンスモーキングにいいねをいただきありがとうございます。

      lemさんの本書の感想を読ませていただき、私の様に放り...
      lemさん、私の本棚のチェーンスモーキングにいいねをいただきありがとうございます。

      lemさんの本書の感想を読ませていただき、私の様に放り出しはしなかったものの、慣れるまでは戸惑いがあったというように書いていらっしゃったので親近感を覚えました。

      「まだなかなか慣れない毎日の通勤電車・・・」
      ともお書きになっていらっしゃったのでもしかしたら社会人になりたてなのでしょうか。
      猛暑のこの夏、ご自愛ください。
      2023/07/29
    • lem@本郷文学散歩編  さん
      コメントありがとうございます!
      親近感を覚えていただき光栄です。
      社会人になり立てではないのですが、転勤で東京にきたばかりなので電車通勤に慣...
      コメントありがとうございます!
      親近感を覚えていただき光栄です。
      社会人になり立てではないのですが、転勤で東京にきたばかりなので電車通勤に慣れていない状況だったのです。
      今年は本当に暑いのでお互い気をつけましょう。
      2023/07/31
  • 「深夜特急」で心を掴まれこの人の作品を読みたいと手にしたこの「チェーン・スモーキング」だったのだけれど、何故か内容に惹かれず途中で投げ出した。
    最近溜まった本を処分しようとしてこの本に再会。パラパラとめくってみて、読み直したくなった。
    誰でも感じることだろうけれど、小説もエッセイも読む側の心情次第で面白くもなり興味無いものになったりする。
    本作品はまさに今の私にピッタリとはまったのだろう。
    途中で投げ出したままにしなくて良かった。

  • 小説のようなエッセイ集。
    煙草一本吸う間に読めてしまう長さの短編が連なります。各話の中に、「そういえば」と言ったよう小さな話が、連鎖しながら繋がっている。唐突に思える思考の飛躍も、読み終わると一人の人の吐息を感じさせる。
    なんてことはない、からこそ素敵。のんびりと、他人の個人的などうでもいい話を聞くことなんて、最近してないからかもしれないけど。

    沢木さんは「不思議に思う力」を持っている人。
    轡田 隆史さんの著書、「桜は花見のできない人のために咲く」を読んだときに、あぁ大事にすべきだな・・・と思った感覚を持っている人。そういう人のエッセイに出会うと、自分の人生における意識の空白が自覚されて、痛気持ちいい。で、この一冊もそういう一冊。
    彼にとって「記憶」は、頭の奥から引っ張り出してきて懐かしむものではなくて、身体の中を川のようにめぐりながら、常に「今」の自分と共にあるんじゃないかな。
    そのたゆたうような思考の流れが持つ深さと淀みなさが、うらやましい。

    これまで何冊か沢木作品を読んできて思ったことですが、
    堀江敏幸が書くものに対する私の感情が憧れを含んだ恋心だとしたら、沢木耕太郎の著書へのそれは、反抗期を終えた子供が父親に抱く、素直になれない愛情のようなものじゃないかと。
    好きって素直に言えない。考え方が似ちゃうのが憎たらしく、誇らしく。いつも考えてるわけでもないのに、なぜか絶対的。そんな感じ。

  • 「沢木耕太郎」のエッセイ『チェーン・スモーキング』を読みました。

    『バーボン・ストリート』に続いて、「沢木耕太郎」エッセイ集です。

    -----story-------------
    古書店で手にした一冊の本に書き込まれていた言葉。
    公衆電話で演じられた人生の一場。
    深夜にタクシー・ドライバーと交わした奇妙な会話。
    …エピソードの断片はさらなるエピソードを呼び寄せ、あたかもチェーン・スモークのように連鎖しながらひとつの世界を形づくる―。
    同時代人への濃やかな共感とともに都会の息遣いを伝え、極上の短篇小説を思わせる味わいのエッセイ15篇。
    -----------------------

    「沢木耕太郎」と年代は少し異なりますが、不思議と共感できる部分が多く、とても読みやすいんですよね。

    以下の15篇が収録されています。

     ■鳥でもなく魚でもなく
     ■逆転、逆転、また逆転
     ■老いすぎて
     ■タクシー・ドライバー 東京篇
     ■君だけが知っている
     ■わたしに似た人
     ■メランコリーの妙薬
     ■走らない男
     ■アフリカ大使館を探せ
     ■赤や緑や青や黄や
     ■ナセルとマリリン
     ■信じられない
     ■消えた言葉
     ■シナイの国からの亡命者
     ■懐かしむには早すぎる

    ひとつのエッセイの中で、彼方此方と色んなところに話題が飛ぶのですが、それでも起承転結がしっかりしているのか、最後には話がまとまっている… そんな作品群で愉しめるエッセイ集でしたね。


    印象に残っている内容と感想を書き留めておきます。

    『鳥でもなく魚でもなく』
    空から墜ちる夢なら見るけど、飛ぶ夢も泳ぐ夢も見ないので、オレも祖先はサルなのかなぁ。

    『君だけが知っている』
    小説の題字とか献辞って、あまり気にしたことなかったけど、読者ではなく、他の人に捧げられてるって、良く考えると変な感じがしますね。
    そういえば「アガサ・クリスティ」の作品も、献辞が書いてあることが多いような気がする。
    今度、注意して読んでみよう。

    『アフリカ大使館を探せ』
    思い込み、勘違いってありますよね。
    唱歌"赤い靴"の「異人さんに連れられて~」って、幼少の頃は『良い(いい)爺さんに連れられて~』と全く同じ勘違いをしてました。
    でも、アフリカ大使館はないよなぁ。

    このエッセイには「向田邦子」と一緒に飲んだことも紹介されているのですが、、、

    その際に「沢木耕太郎」が結局最後まで切り出すことのできなかった、『阿修羅のごとく』でのワンシーンでの疑問点、

    ~ 四女「咲子」が同棲中のボクサー「陣内」のロードワーク後にボロアパートの流しでジョーロでお湯をかけて頭を洗うシーン ~

    そう言われれば不自然な感じがしますね。

    二度と確認することはできませんが、もし「向田邦子」に天国で会うことができたら尋ねてみたいな。

    『赤や緑や青や黄や』
    タイトルからは想像できなかったのですが、読み終わったあと、公衆電話の色だとわかり納得。
    携帯電話の普及で街中から急速に減っている公衆電話ですが、若い頃は随分お世話になったなぁ。
    懐かしく読みました。

  • お洒落な文体に憧れます。

  • ほどよく自制が効いた、ストイックな美学の産物としての文章が心地よい。沢木耕太郎にしか生み出せない独自の世界が立ち上がっているように見える。悪く言えば彼の世界はそれだけ閉じている、とも言える。なにをどう見てもどう感じても彼の世界を砕く方向に作用するのではなく、彼の美学の中に呑み込まれていくように感じるのだ。多い日も安心。と、半畳を入れるようなことを書いてしまったがこの美学の生々しさ/強度は侮れない。どこか哲学的でもあり、彼の目線の動き方は「なにを書くか」ではなく「どう書くか」が大事だと教えてくれる作用がある

  • 読んだことも買ったことも覚えていない。。。
    まぁさておき、ノンフィクションの立ち位置から当然と言えば当然なんですが、この作家、意外に文壇とか色んな人とつながってるのね。匹狼的な人物で、文壇とは距離置いているのかと勝手に思い込んでおりましたわ。
    そして随分昔の話というか、スパコンに違和感を覚えるなんて正直よく分からないですもん。風俗史としても楽しめる読み物かなと思います。

  • 解説にて、高見浩は本書から「自分も楽しみながら読書を楽しませようとする明瞭な意志」を感じると記している。
    硬派な文章だけでなく、柔らかな口語表現や心情が入ることで柔和な雰囲気を作っている。
    空港で、タクシーで、バスで、散歩中で、沢木耕太郎の人間らしさを感じることができる。

  • 沢木耕太郎のエッセイ集。オリジナルの掲載誌は異なるが、バーボンストリートと同じ系統。続編と言ってもいいだろう。日頃身近に起こることが綴られており、純粋にとても楽しい。話の繋げ方、流れが本当にうまいと思う。

  • 良い文章は、当然のように、読むたびに新鮮に染み入ってくる。シナイの国から、亡命したい。著者はできたんだろうか?

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著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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