旅する力―深夜特急ノート (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101235189

感想・レビュー・書評

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  • 深夜特急内の旅の背景や後日談などが盛り込まれている。
    そのため、深夜特急読了後に読むとより興味深い。

    エッセイ内に、筆者が感じたことや所感を言語化したことばがとてもイイ。

  • 本編は少し前に読み終えていて、今回積読からついに読む機会ができた。私も著者が旅に出た26歳ごろにこの作品に出会っていたら、一人旅の魅力にハマることができていたか?やっぱりムリだったか?DVDもあるそうなので、機会があったら観てみたい。

  • 70も過ぎる義祖母は、旅が大好き。
    そんな彼女が、同じく旅を愛する私に言った言葉は、『あのとき、旅に使ったお金が、旅をしなかったからといって、今ここにそのお金が残るわけじゃない。』
    旅の適齢期にあった旅を惜しむことなくしておくべきだと。
    70過ぎてから行けるところには限りがあると言っていた。
    また、この本の中で沢木耕太郎は、旅の適齢期は、ズバリ26歳だと言っている。


    ーーーーーー
    つまり、あの当時の私には、未経験という財産つきの若さがあったということなのだろう。もちろん経験は大きな財産だが、未経験もとても重要な財産なのだ。本来、未経験は負の要素だが、旅においては大きな財産になり得る。なぜなら、未経験ということ、経験していないということは、新しいことに遭遇して興奮し、感動できるということであるからだ。
    もしそうだとするなら、旅をするには幼ければ幼いほどいいということにならないか、という疑問が湧いてくるかもしれない。しかし、それはそうならない。極めて逆説的な言い方になるが、未経験者が新たな経験をしてそれに感動することができるためには、あるていどの経験が必要なのだ。経験と未経験とがどのようにバランスされていればいいのか。それは『旅の適齢期』ということに関わってくるのかもしれない。
    ーーーーーーー

    旅の適齢期を過ぎた私の、これからの旅は、一泊300円のシーツに包まり、安いビールをたらふく飲むことではないことは確かだ。
    うーむ、考えさせられた。
    2012年始めに読んで良かった旅の力。

  • 深夜特急を読んだのは随分と前の学生の時で内容はあまり覚えていない、こんな旅は自分には出来そうにもないなと思ったことくらい それからいくつもの旅に出て、海外生活も送って、旅とはなんなのだろうと思うこともあり、本書を読んでみた いくつか心に残るフレーズがある 

    タイの駐在員の言葉である、「外国というのはわからないですね(略ほんとうにわかっているのは、わからないということだけかもしれないな。(略でも中途半端に知っていると、それにとらわれてとんでもない結論を出してしまいかねないんだ。どんなに長くその国にいても、自分にはよくわからないと思っている人の方が結局は誤らない」というところと

    ラストでの「私が旅という学校で学んだことがあるとすれば、それは自分の無力さを自覚するようになったということだったかもしれない。」

    これらは自分も海外にいると感じることだ。

    久々に深夜特急を紐解きたい気分になったが、もっと若いうちにこういう旅をしていればと今度は悔しがるのかもしれない。

  • わかっているのはわこらないということだけ。外国で暮らす日本人の言葉。
    旅をするには、経験があることと経験がないことのバランスが大事。26才ぐらいぎ適齢期。
    旅はひとを変える。しかし変わらないという人というのも間違いなくいる。旅がその人を変えないということは、旅に対するその人の対応の仕方の問題なのだろうと思う。人が変わることができる機会というのが人生のうちにそう何度もあるわけではない。たからやはり、旅には出ていった方がいい。危険はいっぱいあるけれど、困難はいっぱいあるけれど、やはり出ていった方がいい。いろいろなところに行き、いろいろなことを経験した方がいい、と私は思うのだ。

    私の20代は勇気がなく、海外一人旅は経験できなかった。一方、バックパックで出かける友人たちに強い憧れをいただき、沢木さんの本で一人旅への思いを馳せた。

    由真が海外への旅に出たいと望むなら、「恐れずに」「しかし、気を付けて」と言って送り出したい。

  • 私は過去にインドを1人で旅したことがある。すでにあれから4年ほどが経過し、わたし自身まだ若いのにも関わらず少しずつ当時の記憶の細部が失われていっている気がする。しかし、あの旅の間ずっとわたしを包んでいた強烈な感情だけはいまだによく覚えている。心が強く締め付けられるような感覚。いま振り返ればそれは無力感だった気がする。インドは私がいかにちっぽけで、すぐに死んでしまうかもしれない弱々しい生物だということを教えてくれた。
     私はインドを楽しんだというより弾き返されてしまった。そんな自分が恥ずかしくて、私は旅行者に向いていないのではないとか、ふつうの人間より心が弱いのではないかという気がした。だが、本書はあの旅はあれでよかったのかもしれないという気にさせてくれた。まず、わたしの旅を作るのはわたし自身だ。弾き返させるのもまた私の旅だ。またもしかすればあの弱さこそが、わたしの旅を安全にし、危険な領域へ踏み外さないようにしたのかもしれない。

  •  『深夜特急』を読んで丁度10年目、書店で目に止まり購入した。『深夜特急』を読んだ頃は大学を休学して引きこもっている時で、この本を読んで家を飛び出してどこか旅に行ってしまえたらと強く思っていた。当時の自分も、「自分のこの気持ちは現実逃避だな」と気付いていたが、その上で、どうせ何も持っていないのなら、無計画に、がむしゃらになってみたいと思っていた。
     『旅する力』巻末の対談で、「旅に出たのは、やっぱり逃げ出すためだった」とあり、少し救われた気分になった。

     本の内容は、『深夜特急』が生まれる前後の著者の物語。様々なエピソードを楽しみながら、「旅とはなんだろう」という終着点に知らず知らずのうちに向かってゆく構成だ。
     私は著者のような旅をしたことはないが、いわゆる旅行は去年から頻繁におこなっている。その上で、「旅とはなにか」と思いを馳せることもあった。
     先日旅行した際には、旅とは自分にとって大切なものは何なのか見つけに行くためのものなのだと考えた。心の琴線に触れたものを編み直し、自分というものが見えてくるのだと。「自分探しの旅」と、(時に冷笑的に)呼ばれるものの正体は、これなんだろうなと。
     この本では、それだけでなく、自分の力の不足や自分の背丈を示してくれるのだという。旅という不確定要素の多い環境で、危険と安全の分水嶺がどこにあるのか、距離を測ることになる。あえて教訓めいた事を掬い上げるならば、偶然に対し柔らかく対応することが、旅する力の一つのようだ。

     また、『深夜特急』第一便でも触れられていた、「旅の適齢期」についても改めて語られる。何かを始めるのに遅すぎるということはない、という文句はあくまでお年寄り向けのもので、私自身やはり適齢期というものはあると思う。
     例えば本にしてみても、人生経験をある程度積んだからこそ分かる小説というものもあろう(分からないという思いを抱く経験もまた財産、という考え方もアリだとは思うけど)。逆に、まだ若いからこそ胸に刺さり心を揺さぶってくれる小説もあろう。
     この本では、特に若さがクローズアップされる。

    「~経験は大きな財産だが、未経験もとても重要な財産なのだ。本来、未経験は負の要素だが、旅においては大きな財産になり得る。なぜなら、未経験ということ、経験していないということは、新しいことに遭遇して興奮し、感動できるということであるからだ。
     もしそうだとするならば、旅をするには押さなければ幼いほどいいということにならないか、という疑問が湧いてくるかもしれない。しかし、それはそうならない。きわめて逆説的な言い方になるが、未経験者が新たな経験をしてそれに感動することができるためには、あるていどの経験が必要なのだ。」

     経験と未経験のバランス。いかにも難しそうだが、そのギリギリを突くことで、きっと心が締め付けられるような何かを心に刻み付けることができるのだろう。
     そして、仕事や生活に忙殺されていれば、きっと時期尚早なことよりも、やり残したことの方が多くなっているのではないかと思う。今しかできないことを、時間の許す限り味わって行けたらと思った。

  • 「深夜特急」を書くにいたるまでの子ども時代の上野松阪屋への旅から始まり、高校時代の12日間・東北一周の旅、日本の辺境離島の旅、初めての海外旅行だった韓国、そしてユーラシア旅行に至るまでのこの人の旅の歴史が明かされる。そしてその後の「深夜特急」著作、TV撮影(大沢たかお主演)と猿岩石「進め!電波少年」の旅番組に関する逸話など、著書の影響の大きさには驚いた。そして、どうしてあんなに詳しい深夜特急を後年に書けたのか、3種の神器(金銭出納記録、心覚えの単語・断章、日本の4人への膨大な手紙)をもとに詳細な記憶が蘇ってきたという秘密が明かされる。これで記憶が鮮やかに呼び覚まされたらしいのだ、旅には適齢期がある、若い日だからこそ深く感じることができた!そして思い出すことができる!その通りだと思う。そして若い日だからこそ、冒険もできたのだろうと思う。小田実「何でも見てやろう」やこの人に影響を与えた旅の本、井上靖「アレキサンダーの道」、檀一雄「風浪の旅」、カネッティ「マラケシュの声」も読んでみると面白そう。海外の旅での必要最小限の7つの単語、「いくら、何、どこ、いつ、こんにちは、ありがとう、さようなら」で全く情報のない土地に放置されても切り抜けられる。またガイドブックは持たない、鉄道や長距離バスではなく、地元の路線バスを利用する、懐に100ドル札を忍ばせ万一に備える、などのノウハウも興味深いことばかりだった。

  • 深夜特急を読んだのはだいぶ前だけど、今更この本を読みました。

    深夜特急にかかわるエッセイ。

    長い旅に出ようとするときに「やっぱり行きたくない」という気持ちになる、という話が良かった。

    やっぱり旅に出ない理由を考えたり、旅を中止しなくてはならないような出来事が何か起こらないかなぁって思っちゃう(^^;

    でも、

    ”ひとたび出発してしまうと、それまでの逡巡は忘れてしまい、まっしぐらに旅の中に入っていってしまう。"

  • 深夜特急の前後の著者の話。読んでいて驚いたのは、当時はまだ小さかったからよく知らなかったけれど、番組の某コンビが旅した企画が、深夜特急の影響を受けていたこと。
    人生経験や社会経験を得るにつれ、心が動かされるもの、琴線に触れるものが変わっていくので各年代にあった旅があるという話はなるほどなと思った。
    私は海外旅行なんて、高校の修学旅行で行った一度きりだけれどその時感じたことを思い出しながら、この本を読んで「そういえばそうだったなぁ」となることが多かった。
    旅をしての著者の考え方の変化や人生観も書かれていて、海外でも国内でも旅した人も、旅したい人も、今後の自分のことで悩んでいる人にも刺さるいい本だと思う。

著者プロフィール

1947年東京生まれ。横浜国立大学卒業。73年『若き実力者たち』で、ルポライターとしてデビュー。79年『テロルの決算』で「大宅壮一ノンフィクション賞」、82年『一瞬の夏』で「新田次郎文学賞」、85年『バーボン・ストリート』で「講談社エッセイ賞」を受賞する。86年から刊行する『深夜特急』3部作では、93年に「JTB紀行文学賞」を受賞する。2000年、初の書き下ろし長編小説『血の味』を刊行し、06年『凍』で「講談社ノンフィクション賞」、14年『キャパの十字架』で「司馬遼太郎賞」、23年『天路の旅人』で「読売文学賞」を受賞する。

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