しゃべれどもしゃべれども (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (421ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101237312

作品紹介・あらすじ

俺は今昔亭三つ葉。当年二十六。三度のメシより落語が好きで、噺家になったはいいが、未だ前座よりちょい上の二ツ目。自慢じゃないが、頑固でめっぽう気が短い。女の気持ちにゃとんと疎い。そんな俺に、落語指南を頼む物好きが現われた。だけどこれが困りもんばっかりで…胸がキュンとして、思わずグッときて、むくむく元気が出てくる。読み終えたらあなたもいい人になってる率100%。

感想・レビュー・書評

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  • 話すことにトラブルを抱えた4人が、話しのプロである落語家に弟子入りして成長する物語。
    4人の性格、原因も色々で、生活に支障が出るぐらいな上に、師匠である落語家で二つ目の今昔亭三つ葉も失恋で話せない状況に。5人の関係もお互いコミュニケーションが取れずに暗い状況が続く。
    強烈な個性を持ったメンバーが変われるかどうか。徐々に関係が改善して行き、最後は皆んなで落語の発表会。全員が改善したわけでも無いが、何とかハッピーエンドでホッとした。

  • 成り行きで落語教室を開くことになった若手の噺家・三つ葉。そこに集まった4人は年齢も境遇もさまざま。回を重ねてもさして仲良くもならない。が、自分の、また相手の弱いところがわかってくるにつれ、不器用ながらお互いをいたわり合う場面も出てくる。その過程の描き方がとても良かった。

    教室解散となったラスト、三つ葉は涙を流す。
    「何もかも、わからなかった。明日が昨日より少しでもマシな保証はどこにもなかった。」
    でもこの5人の内面に変化があったことは確かだ。

  • R1.5.12 読了。

     落語を通した人間模様。おせっかい焼きの今昔亭三つ葉を取り巻くクラスの連中とあくまで戦う姿勢を崩さない小学生村林優、内気なテニスコーチの綾丸良、とことん世間を疑っている不愛想な十河五月、そして日頃は平気で悪態をつくくせにいざとなると無口になる湯河原太一。これらの奇妙な縁で集まった人たちが落語教室を通して、交流していく。他のキャラクターも生き生きしていて様々な味わいを醸し出している。
    ほんとに個性的なキャラが多く、ちょっとした出来事から目が離せない展開に一気読みしてしまった。読み終えた後、ほっこり温かい気持ちになれた作品。

    ・「この6畳の古びた茶の間は、のどかな幸福の空間だった。良い笑いがあった。自然な人の和があった。現在にも未来にも、暖かい光が満ちているように思えた。」
    ・「自信がないなどと泣いていられない。ないものは、作るしかない。作るには、とりあえず努力するしかない。結果がどう出るかなど知ったこっちゃない。」
    ・「自身って、いったい何だろうな。自分の能力が評価される、自分の人柄が愛される。自分の立場が誇れる ― そういうことだが、それより、何より、肝心なのは、自分で自分を『良し』と納得することかもしれない。『良し』の度が過ぎると、ナルシシズムに陥り、『良し』が足りないとコンプレックスにさいなまれる。だが、そんな適量に配合された人間がいるわけがなく、たいていはうぬぼれたり、いじけたり、ぎくしゃくとみっともなく日々を生きている。」
    ・「『一期一会というんだよ。』 ― お茶の心だよ。同じお茶会というのは決してない、どの会も生涯にただ一度限りだという心得さ。その年、季節、天候、顔ぶれ、それぞれの心模様、何もかもが違うんだよ。だからこそ、毎度毎度面倒な手順を踏んで同じことを繰り返し稽古するんだよ。ただ1度きりの、その場に臨むためにね。」
    ・「うまくやろうとすると、とたんにうまくなくなる。これは俺自身、通ってきた道で、今後もぶつかるだろう難所だった。」
    ・「落語は、人が自分よりみっともないと思て、安心して笑うもんやて。」
     

  • 今昔亭三ツ葉こと落語家の外山達也26歳は、カッとなると見境がない。ついたあだ名が『坊ちゃん』。
    その三ツ葉がとあるきっかけから、話し方教室もとい落語教室を開くことになります。
    生徒は吃音の従弟のテニスコーチの綾丸良。
    ワープロオペレーターで元劇団の女優で大根と言われた、十河五月。10歳の関西弁しか喋らない、阪神ファンの小学生村林優。
    そして、元阪神タイガースの選手選手で野球解説者もやっていた湯河原太一。

    皆、喋るのが苦手な集まりにしては、小気味よいテンポの会話で話は展開し、落語の発表会まで、話は続きます。
    この小説のレビューを少し拝見したら、ほっこりする、気持ちがあたたまる等々、ありましたが、私はやる気がでました。
    三ツ葉の元に集まって4人が落語を勉強しているのを読んだら、私も何か勉強をしたいと思いました。
    何かやはりことばに関することがいいけれど、落語も面白そうですが、ちょっと違う気がします。
    何か地道に同じテーマの本を読むとかでもいいのですが、すごく勉強したくなりました。

    • やまさん
      まことさん
      おはようございます。
      いいね!有難うございます。
      いま大分怒っています。
      ある方(名前を書くのはルール違反ですね)が「...
      まことさん
      おはようございます。
      いいね!有難うございます。
      いま大分怒っています。
      ある方(名前を書くのはルール違反ですね)が「沈まぬ太陽」を読み始めました、少し書き込みをしたら、私の中で読んだ感動とその理不尽さに怒りが、まだ出ています。
      その方は、ただ読み始めたと書いていただけです。
      誤解のないように、私は、本の内容に感動とその理不尽さに怒っているのです。
      申し訳ないですが、たまたま、その方に書き込みをした、次が、まことさんだったので、つい書いています。
      迷惑な話ですよね。
      やま
      2019/11/18
    • まことさん
      やまさん♪こんにちは!
      こちらこそ、いいね!ありがとうございます(*^^*)
      やまさんは『沈まぬ太陽』の内容の理不尽さに怒っていらっしゃ...
      やまさん♪こんにちは!
      こちらこそ、いいね!ありがとうございます(*^^*)
      やまさんは『沈まぬ太陽』の内容の理不尽さに怒っていらっしゃるのですよね?
      私は、山崎豊子さんは読んだことがないのですが、木村拓哉さん主演の『華麗なる一族』のドラマを観ていました。
      時間があれば、他の作品も拝読してみたいけれど、長編が多いですよね。
      2019/11/18
  • 気が短くて頑固な噺家、今昔亭三つ葉。古典落語にこだわり、今一つスランプから抜けきれない彼は、ひょんなことから落語教室をひらくことになってしまう。
    生徒は三つ葉の従兄弟であがり症の良、美人なのにいつも不機嫌でぶっきらぼうな十河、大阪から引っ越してきて頑なに関西弁を貫き通す小学生の村林、口下手で解説が苦手な元プロ野球選手の湯河原、といった個性的な面々だ。本書はそれぞれに悩みを抱えた彼らが落語を通して少しずつ前に進んでいくストーリーである。

    よくある話といえばそうなのであるが、5人の距離感やそれぞれの悩みとの向き合い方、そこから先へ進む過程がとても自然で、そりゃフィクションだからうまくいくよね、とうがった見方をすることなくするっと物語に入り込める。
    なにしろ、普通に生活を送っていたら出会うことのない、個性が強すぎる面々がいきなり一緒に落語を覚えるのである。口下手(村林はそうでもないが)だけに言葉足らずで、しかもそろって頑固者だから、何かあるとすぐ言い合いになる。でも、誰かが教室を休むとちょっと気になるほどの連帯感は生れている。
    三つ葉は思ったことをすぐに口にするため、ある意味4人とは真逆であるが、自分と女性の気持ちにはとんと疎い。要するにこの落語教室は不器用さんの集まりなのである。不器用な彼らが自分の頑固を曲げることなく、それでもこれまで出会ったことのないタイプの人間との接触を機に、少しだけ自分を前向きにとらえていく姿は、まるで一編の落語をみているようでちょっとおかしく、でもいとおしい。

    物語は三つ葉の噺家らしく小気味いい語り口で進められ、一見ライトな印象を受けるが、よくよく読んでいくと、人間の複雑な感情の交錯が丁寧に描かれていることが見えてくる。
    佐藤多佳子さんの著作は本書以外には読んだことがないが、先日読んだ上橋菜穂子さん、萩原規子さんとの三人の対談で、他の二人から徹底したリアリティを評価されていたことを思い出し、納得した。
    青春小説をメインに書いておられるイメージだったので、これまであまり手に取ることはなかったが、他の著作も読んでみたい。

  • 話し下手で生き方が不器用な人たちが、落語家三つ葉と出会う。テニスコーチの従弟の良、ツンとした美女十河、元野球選手、小生意気な10歳の村林。三つ葉の教えの元、「話し方教室」を開くこととなる。
    年齢も環境も違うバラバラの面々が、最初はぎこちないが、最後の発表会ではまとまりをみせる。一人一人の思いやりと熱意が集大成となる場面は心温まるものがあった。
    上手くいかなくてつまずいている人が登場する。そこが一番読み手に伝わるところではないだろうか。
    個人的には、三つ葉が10歳の村林君を「村林」と苗字で呼ぶところに、「面白い違和感」があった(笑)。
    落語のことが少しわかり良かった。「まんじゅうこわい」が有名な落語の演目だと知った。

    心に残ったところ
    自信って一体何なのだろうな。
    自分の能力が評価される。自分の人柄が愛される、立場が誇れる、それより肝心なのは、自分で自分を「良し」と納得することかもしれない。
    良しの度が過ぎると、ナルシズムに陥り、良しが足りないとコンプレックスにさいなまれる。そんなに適量に配合された人間がいるわけなく、たいていはうぬぼれたり、いじけたり、ぎくしゃくみっともなく日々を生きている。
    (いじけたり、ぎくしゃくみっともない、それでもいいんだ!)

  • 若手噺家の三つ葉と、ひょんなことで彼から落語を教わることになった4人の話。
    落語のこと全然知らなくても楽しめた。
    三つ葉が喧嘩っ早くて熱い男だからか、ちょっとくどいなぁと思ったけど、長さがあるわりにサラッと読めた。
    人の数だけ悩みがあって、毎日色々なことがあるけど、登場人物も、読者も、背中を押してもらえる作品。
    読み終わって歩く自分がたまたま鏡に映ったけど、なかなかいい表情してた。
    背筋伸ばして前向いて歩いて、自分のことを自分が認めてあげれば、事はいい方向に向かっていくのかもしれない。

  • 噺家の三つ葉は、何らかの問題や悩みを抱えている人たちである、従弟の綾丸良、元劇団員の十河五月、小学5年の村林優、元プロ野球選手の湯河原太一に落語を教えることになる。あまり知らなかった落語界の事や井の頭公園の懐かしい雰囲気がうまく重なっていてよい。落語発表会からラストまでがよい。

  • 落語を勉強したいなぁと思っているので、とても面白く読めました。
    ラジオでよく聞く笑福亭銀瓶さんと そのお友だちの桂吉弥さんが登場人物と重なりました。。
    登場人物それぞれがとてもいいキャラクターです。
    特に男の子がいいと思いました。
    恋愛対象としては私は郁子さんの方が好きですが・・。
    読後感もとてもいい本でした。。
    この本のおかげでリフレッシュできたのかしら??

  • 人前で巧く喋れない辛さ。
    言いたいことの半分も言えてない。
    まどろっこしい、じりじりとした情けなさ。
    自分はだめな奴だとため息ばかり。
    無愛想な女に内気な男、いざとなると無口になる男、小生意気な小学生も混じっての話し方教室、ならぬ落語教室。
    この何とも奇妙な会合はやがてなくてはならないものとなる。

    自分の人生から逃げてばかりでコンプレックスの塊だったみんなが、自分に自信を持てるようになっていく様がとてもいい。
    落語の話とあって文章のテンポも実にリズミカルでスッキリ。
    読み手を元気にしてくれる爽快な物語だった。
    「おあとがよろしい」のもさすがである。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤多佳子の作品

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