ごきげんな裏階段 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
3.24
  • (12)
  • (44)
  • (89)
  • (23)
  • (2)
本棚登録 : 470
感想 : 60
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (174ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101237350

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ブクログ仲間さんの魅力的なレビューを目にした途端に
    もう、読まずにいられなくなってしまった本です。

    読み始めてすぐ、第1話の主人公、学とくるみ兄妹の年代まで
    脳内だけは〇十年も一気に若返ってウキウキしてしまう、お得な体質の私♪

    わかるなあ。この、じめじめして薄暗くて、なんだか背筋がぞわっとするのに
    すみずみまで探検してみたくなっちゃう、裏階段。

    裏階段からにょきにょき生えたタマネギをあくあく食べてタマネギねこになり、
    (でも、ほんとうは、猫にタマネギとチョコレートはあげてはいけないのだけれど)
    洗うたびにどんどん縮んで白アリの赤ちゃんくらいになってしまう、猫のノラがかわいい♪
    学くんじゃないけど、耳の穴に入れて、猫らしいわがままな発言を
    「はいはい♪」と、ずっと聞いてあげたくなります。

    2話めに登場するのは、武蔵の二刀流よろしく、背中に2本の笛を背負い
    ドクダミの笛で不運のメロディを奏で、ヒマワリの笛で幸運のメロディを奏でるクモ。
    どうせ『モンシロチョウの初恋』みたいのが聴きたいんだろ、なんて言いながら
    『2007年、ゴキブリの悲劇』などという不吉な曲を聴かせたがる
    人の悪い(クモの悪い?)性格の、このクモが傑作。

    3話めの煙を食べる煙男モクーは、現代の分煙社会に悩む愛煙家にはまさに福音。
    喉から手が出るほど手に入れたい存在なのだろうなと思ったら
    煙草好きのお客が集まるお店では、かえって敬遠されてしまったりして。

    こどもの頃の、楽しくてちょっぴり怖くて秘密の匂いのする
    ワクワクドキドキのエッセンスがぎゅっと詰まった、ごきげんな本です♪

  • □漫画を読むのは人より遅い
    □小説を読むのは人より速い
    □夢見がちな子供だった
    □動物と話したかった
    □児童書が好きだ

    3つ以上あてはまれば読んでください。

    10歳くらいまで、漫画を読ませてもらえませんでした。
    TVゲームももちろんダメ。テレビ番組もNHKか子供向けの教育番組、衛星放送やアニメ、バラエティも罪のないものしか見てはいけませんでした。

    21歳の若さで親になった母。見た目は流行りのファッションに身を包んだオネエチャンでしたが、子供の教育には熱心だったのかなぁ。塾やお稽古に忙しい小学校時代でした。その割におぽんちに育ってしまいましたが…笑

    一番の楽しみは本を読むことで、ご褒美もお誕生日プレゼントもほとんど毎回、児童書をリクエストしていたものです。
    プロイスラー、エンデ、ダール、ケストナー、佐藤さとるや福永令三…他にもたくさん好きな作家さんがいます。

    この作品もかつて「児童文学好きな子供」だった方なら好きだと思うんだけどなぁ…。

    タマネギを食べるネコ、幸せと不幸をつかさどる笛を吹く蜘蛛、あらゆる煙を食べる煙おばけ。
    アパートの裏階段に潜む不思議なものたちとの出会いは大人になった今でもわくわくします。

    「神様がくれた指」「しゃべれどもしゃべれども」など楽しい作品の多い佐藤さんのルーツ、ここにあり!

    • hetarebooksさん
      まろんさん❤
      コメントありがとうございます。

      5つ◎、フフフフ♪
      わぁーい♪
      まろんさんも「一番の楽しみは読書♪」体質になるべく...
      まろんさん❤
      コメントありがとうございます。

      5つ◎、フフフフ♪
      わぁーい♪
      まろんさんも「一番の楽しみは読書♪」体質になるべくして育てられたのですね!!
      そんなふたりがこうやってブクログ仲間になっているなんて…なんとまあ!!
      今となっては母に感謝ですね(*^_^*)

      娘に10歳もサバを読んじゃうまろんさんのお母様、お茶目で素敵です♪

      自分も親になる年頃を迎えて思うのは(絶賛独身ですが…笑)、TVをあまり見せないように育てるのって、実はお母さん自身もあまり自由な時間が取れなかったり「楽できない」ことなんじゃないかなぁって。

      TVやゲームをさせておけば、かまう必要はないところを、敢えてそれだけの労力を使って向き合ってくれたのかなと思います。

      お母様にそんなふうに育てられたのも今の感性豊かで思いやり深いまろんさんのルーツなのでしょうね(#^.^#)
      2012/10/12
    • koshoujiさん
      こんにちは。
      hetarebooksさんとまろんさんのコメントのやりとり、楽しく拝読させていただきました。
      私はさすがに男だったので、反...
      こんにちは。
      hetarebooksさんとまろんさんのコメントのやりとり、楽しく拝読させていただきました。
      私はさすがに男だったので、反抗してマンガはしっかり読んでましたが。
      なんと言っても「巨人の星」「あしたのジョー」「タイガーマスク」など、今でも誇れる名作が目白押しだったので。
      何を隠そう(別に隠してませんが)私は大学時代、「少年文学会」という児童文学のサークルに所属しておりました。
      エンデ、ケストナー、佐藤さとるなど懐かしいですね。
      私はリンドグレーンの大ファンでした。
      後藤竜二、今江祥智なども好きでした。
      2012/10/12
    • hetarebooksさん
      koshoujiさん
      そんな黄金期なら反抗しちゃいますよね~。
      私の頃は「セーラームーン」「姫ちゃんのりぼん」
      「ふしぎ遊戯」「ご近所物語」...
      koshoujiさん
      そんな黄金期なら反抗しちゃいますよね~。
      私の頃は「セーラームーン」「姫ちゃんのりぼん」
      「ふしぎ遊戯」「ご近所物語」とかが人気でした。

      そんな素敵なサークルがあったのですね!
      リンドグレーン大好きです!やかまし村シリーズ!

      ファージョンも個人的にはお気に入りでマーティン・ピピンとかすごく好きでした。
      2012/10/22
  • 児童でなくなると児童文学は遠くなるのかな
    不思議な世界が楽しめなくなっていた

  • 大人の対応の変わりようは ? だけど、子どもたちがかわいい。

  •  絵本の小説版といった感じの3編収録の連作短編集。児童文学から出発した著者の初期作品集であるらしい。
     幻想的ではあるけれど、どこか懐かしい感じがする。昔ながらのアパートの裏階段を舞台に繰り広げられる子ども視点の作品。視点を変えるだけでモノの見え方が変わってしまうから何とも不思議。
     重たい内容の作品の後に読むと、一服の清涼剤という感じ。

  • 今日は児童書なんですが、実はこのお方が児童文学出身だとは知らなかった。


    『ごきげんな裏階段』 佐藤多佳子 (新潮文庫)


    初期の作品集である。
    「タマネギねこ」、「ラッキー・メロディー」、「モクーのひっこし」の3つのお話が収録されている。

    物語の舞台は、“みつばコーポラス”の裏階段である。
    みんなが使う手前の表階段と違い、不便な裏階段は、人がめったに来ないじめじめした寂れた場所だ。

    みつばコーポラスの301号室には、管理組合理事長の“有沢のおばば”が住んでいて、住人を厳しくチェックしている!

    「タマネギねこ」は、306号室の小村学が裏階段で拾ったノラ子猫の話。
    ノラはある日、裏階段の隅に突然生えた謎のタマネギを食べて“タマネギねこ”になってしまう。
    お風呂で洗われるたびに、まるでタマネギの皮をむくように体が縮んでいくタマネギねこ。
    ノラの運命やいかに?

    「ラッキー・メロディー」は、笛を吹くクモの話である。
    これは面白かったー。
    裏階段の2階部分に住んでいるクモは、なんと笛が吹ける。
    ドクダミの茎で作った“不運の笛”と、ヒマワリの茎で作った“幸運の笛”を背中にしょっている。
    ある日、「ひーりんひーりん」という不吉で不気味なドクダミの笛を聞かされた一樹は、次の日てんこ盛りの不幸に見舞われる。
    その曲は「便所コオロギのお葬式に来た厠キリギリスとお手洗い松虫の悲しいすすり泣き」というタイトルなのだった。
    果たして、“めったやたらにゃ吹かない”幸運のヒマワリの笛を、一樹は聞くことができるのか !?
    一樹と笛吹きグモの掛け合いが漫才みたいで笑える。
    口は悪いし態度はでかい笛吹きグモのキャラが最高です。

    「モクーのひっこし」は、煙を食って生きているけむりおばけ・モクーの話。
    モクーは煙草の煙が大好き。
    魚の煙ならサンマが一番。
    バルサンも好き(笑)
    ナナのパパは、おなかをすかせたモクーのために煙草を吸うのだが、煙草ぎらいのママに怒られてしまう。
    そこでパパは、いつも煙草の煙がモクモクしているサンシローさんのお店に、モクーを引っ越しさせることにしたのだが……。
    禁煙をする人が増えたり、家で魚を焼かなくなったりするせいで腹ペコだとモクーが嘆くところが、時世を反映していて面白い。


    この作品のいいところは、この不思議な裏階段の生き物たちが、子供だけじゃなく大人にも見えるということだ。
    大人と違って子供は純粋無垢な天使であるという、なんとなく児童文学の根底にはびこる陰のセオリーのような、鼻につく感じが本書にはない。
    子供と大人の変な垣根がなくて、物語全体がのびのびしている。
    会話文が面白いのもいい。
    ナナの両親の口喧嘩なんて、実際にありそう。


    同じ場所が舞台の3つの物語。
    それぞれの物語がちょっとずつ関連しあっているのが楽しい。
    「タマネギねこ」に風景としてチラッと出てくる2階のクモの巣は、「ラッキー・メロディー」の笛吹きグモの住居だし、「モクーのひっこし」のナナは、「タマネギねこ」のくるみと友達になる。
    有沢のおばばも再登場するしね。(実は結構いい人)

    昔懐かしいいつか見た風景を、みつばコーポラスの子供たちとともに追体験させてもらえて、大人の私もヘンテコな生き物たちと知り合いになれて、ゆったりしたいい気分になれる、素敵な素敵な一冊でした。

  • アパートの裏階段に出る、奇妙な生き物をめぐる短編集。奇妙な生き物(蜘蛛や煙や猫)ですが、それをそのまま受け入れて日常生活を送るアパートの住人。解説に児童文学ですが、「大人の心の中にある子供」へ向けた本という書き方があり、それがぴったりです。

  • 2016/03/26ブックオフ購入
    2016/07/20読了

  • アパートのボロい裏階段には不思議なイキモノがいる

    たまねぎネコや、笛を吹く蜘蛛、姿を変えられる煙おとこ

    そんな不思議な場所と子供たち

    絵本を読んでいるような、ふんわりした気持ちにさせてくれます

  • 「タマネギねこ」頭がタマネギになった猫と家族の話。
    「笛吹きクモ」笛を吹くクモとリコーダーの練習をしているボクの話。
    「クモーの引越し」煙を食べるクモーと家の中では喫煙禁止の家族の話。

全60件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1962年東京都生まれ。1989年、「サマータイムで」月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。『イグアナくんのおじゃまな毎日』で98年、産経児童出版文化賞、日本児童文学者協会賞、99年に路傍の石文学賞を受賞。ほかの著書に『しゃべれども しゃべれども』『神様がくれた指』『黄色い目の魚』日本代表リレーチームを描くノンフィクション『夏から夏へ』などがある。http://www009.upp.sonet.ne.jp/umigarasuto/

「2009年 『一瞬の風になれ 第三部 -ドン-』 で使われていた紹介文から引用しています。」

佐藤多佳子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×