東亰異聞 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240220

感想・レビュー・書評

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  • 物語の舞台は東京ならぬ、帝都「とうけい」。闇が濃く残るこの街に跋扈する異形のものたち。おぞましく、また悲しい陰謀。赤く焼けた空、黒い板塀…どこか郷愁をさそわれる風景には汚猥の臭い。連続殺人の謎が明らかにされたと思いきや、予想もしなかった悪意が正体を現す。悪夢と酩酊のエンディング。

  • あらすじ読んで面白そうと購入。
    思っていた感じとは違ったけれど
    帝都東京の雰囲気は味わえてなかなか良かった。
    パラレルワールドだったのね…。

  • 架空の東京・トウケイ。
    文明開花が進み明るく開けた世界になった一方で、闇に蠢く魑魅魍魎。人間の業。
    そんなものが時折姿を見せ、人間を襲う。
    ホラー?ミステリー?色んな表情が楽しめる作品。

    ◉レトロで怪しい雰囲気満載の闇の者たち
    発火しながら高所より人を突き落とす『火炎魔神』
    白塗りに赤い着物に隠した爪で切り裂く『闇御前』
    生きている様な精緻な娘の人形と会話する『人形遣い』
    特に人形遣いと娘の人形とがイチャイチャしながら闇の者たちについて語らい合う場面はエロく怪しく濃密な雰囲気。
    これで人形遣いがただの人だったら単なる危ないおじさんだな…と読者を戦慄させる。

    ◉嘘か本当か分からない…曖昧だから面白い
    これは主要人物のひとりのセリフ。
    その小説はこの言葉を正に体現している。

    ガス灯のあかりが届かないところで殺人を行なっているのは、妖怪か、人の仕業か…
    鷹司家のお家騒動絡み?犯人候補も簡単には絞れない…そんな時、説明がつかない様な不可解な事件が起こってやっぱり心霊現象?
    と、読者も翻弄される。

    ◉とにかく小野先生は凄かった
    途中推理もののような理路整然と犯人を絞っていく場面は面白かった。
    小道具の用意や、演出が凝りすぎていること
    その割に動機がなんか弱く感じること
    個人的にはそこに引っかかったけど良かったわぁ…と思っていたら。
    あらあらどうして…

    言えないけど、キッチリキッチリ積み上げてきたものを完成間近で自らブチ壊して
    その跡に凄く個性的な作品をズダダダっと即興で作り上げ
    そしてワハハハと残響を残して去っていった…
    そんな感じ。やっぱり小野先生すげえや。
    これは…何かトリックがどうとか、細かいことを気にする作品ではないね。
    どうでもいいか、と何か幻でも見ていた気分。

    曖昧なものに翻弄される。
    作品の雰囲気を楽しむ。
    自由民権運動など、史実が登場するところもありもう一度勉強したくなった。
    ドップリと怪しい世界に浸れました!

  •  帝都・東亰では火炎魔人や闇御前といった、人とは思えない者たちの起こす事件で不安に包まれていた。一連の事件に興味を持った新聞記者の平川は、大道芸師の万蔵とともに調査を開始するが…

     面白い要素はいろいろあったものの、不満点も多かったのが正直な印象。

     ミステリとして面白かったのは、犯行の動機。お家騒動が裏にあるのは、平川の調査の過程で分かってくるのですが、なるほど、そっちか! と虚を突かれました。

     ただ、動機については伏線はあったものの、ややとってつけた感があったのも事実。本の中ではさらりと触れられたくらいにしか書かれていなかったので、「え? そんなに追い込まれていたの」と、ちょっとぽかんとなってしまったのがもったいなかったです。もうちょっとその部分の書き込みがほしかったかなあ。

     平川と万蔵のキャラも今一つ伝わってこない。読んでいて、どっちがどっちか分からなくなることもあって、少し感情移入しにくかったです。

     そして、この本の評価を分けるのはラストだと思います。これをどうとらえるかによって作品の印象は、大きく変わると思います。

     個人的には、風呂敷広げるだけ広げて、終わらせたという印象。読んでいて「残りページ少ないのに、こんな展開にして大丈夫?」と思ったのですが、その不安が当たってしまった、という感じでしょうか。

     読み終えた後のもやもや感が、どこか同じ小野不由美さんの作品『魔性の子』に通じるものがあります。

     十二国記シリーズの序章的作品ということで読んだ『魔性の子』だったのですが、描写力はすごいものの、作中よくわからないワードや回収されない伏線、唐突な展開などが多く、読み終えて非常にモヤモヤしたのを覚えています。(こうしたもやもやはのちに本編を読んで解消されたのですが)

     そのもやもやと、この『東亰異聞』を重ね合わせると、もしかして東亰の物語はもっと続きがあって、これはプロローグだったのではないか、とも思えてしまいます。

     東亰の話がこれ一冊で終わっているのが、もったいなく思えてしまいました。

  • お互いを思いやった結果、一番悲しい結末になってしまった。他にやりようはなかったのだろうか?

    ホラー感な出だしではあるものの、お家騒動に絡んだミステリー要素が強い。しかし最後は驚く展開となり、続きも読んでみたかったなと思う。

  • 五摂家の一つ鷹司家が出てくるあたり歴史好きのツボをくすぐるのだけれど、もう少し史実を織り交ぜた物語展開だとなお良かったかも。個人的には。

  • 魑魅魍魎が跋扈すると思わせてやっぱり人の手によるものか…と見せかけて実は…!みたいに、芝居を見ているような展開だった。
    わりと現実的な話が展開されていたのに、最後の方で陰陽道とかがいきなり出てきて「???」となったのが残念だった。もう少し前からそういうのを絡めて欲しかったかも。
    シリーズものとかになれば面白そうなのになぁ。

  • 架空の「帝都 東亰(とうけい)」を舞台にした伝奇ミステリー。不気味で妖艶な世界を醸し出す文体と時代設定は和ミステリーファンの読者を惹きつける。一方でミステリーともサスペンスともつかない展開はやや消化不良。登場人物の個性ももう少し立っていると良かった。

  • 時は明治、帝都の夜を蠢く異形の者が引き起こす怪事件を追う雑誌記者&便利屋コンビは、とある華族のお家騒動に行き当たる。果たして事件は人の仕業か、妖の仕業か―?紹介文の『伝奇ミステリ』に従い、推理小説と捉えると、真相やトリックは流石に物足りないが、本書の売りは謎解きよりも、怪しく艶かしい演劇的な外連味。暗転、明転、BGM、効果音etc.が観えるくらい(良い意味で)芝居掛かっている。終盤こそ正にその真骨頂。舞台が【東亰】故にホラーでなく、ミステリに成り得るという解説は中々目から鱗。ミステリの懐は思いの外深い…。

  • ミステリ(?)

    オチがオチだけにトリックもぶん投げてるのでミステリではない。
    ミステリの体裁を借りた大正怪奇物ものとして読むが吉。

    犯行動機が許せなさすぎる。劇中では悲しい話みたいな雰囲気になっているが、無関係な人間まで殺す理由としては最低。

    人形遣いと娘人形のあだっぽい遣り取りやら、複数の怪人が跋扈する帝都という舞台設定など大正っぽい雰囲気は好き。星1つ。

著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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