屍鬼(一) (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101240237

作品紹介・あらすじ

人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで獣が蹂躪したかのように散乱していた-。闇夜をついて越して来た謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。殺人か、未知の疫病か、それとも…。超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

感想・レビュー・書評

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  •  あらすじ
    人口わずか千三百、三方を尾根に囲まれ、未だ古い因習と同衾する外場村。
    猛暑に襲われた夏、悲劇は唐突に幕を開けた。
    山深い集落で発見された三体の腐乱死体。周りには無数の肉片が、まるで
    獣が蹂躙したかのように散乱していた―。
    闇夜をついて越してきた謎の家族は、連続する不審死とどう関わっているのか。
    殺人か、未知の疫病か、それとも・・・・・。
    超弩級の恐怖が夜の帳を侵食し始めた。

     感想
    11月8日午前3時。
    溝辺町北西部の山間に山火事とみられる明かりが発見されたと消防に一報が入る。
    溝辺町北西部の山間とは外場村をさすのだが、外場村はすでに溝辺町に合併されて
    いて外場村という地名はすでにない。しかし、溝辺町の人も村というし外場村の
    住民は「村は村で完結している」ためやはり村だという感覚に縛られている。
    徹底した村意識、よそ者を排除し、村内で孤立団結している、そんな外場村が舞台。
    この小説の冒頭に山火事で外場村は消滅するが、そのそも村が滅びることは
    7月24日に決まっていたことなのだと記されている。
    それなのにそんなことはすっかり忘れて展開をどきどきはらはらしながら読んで
    しまう。
    第一巻は登場人物の紹介もあるが、ひとりひとり主人公にして物語が書けそうだ。
    寺を頂点とした村のなりたちを「田舎暮らしに憧れて」越してきた結城に語られるが
    結城はこの夏初めて「虫送り」という村の行事に参加させてもらえた。
    「虫送り」は悪霊、村では鬼と呼ぶが、疫病や不作などをもたらす鬼を祀り捨てる。
    「鬼は外、福は内」というわけだ。
    そして虫送りの最終鬼を追いだし、供物や各家の不浄を焼きながら休憩しているとき
    引っ越しのトラックが村に入ろうとして引き返していった・・・
    結城の息子結城夏野(戸籍名は小出夏野)は、村を出たい。
    田舎になど来たくはなかったが、中学3年では親についてくるしかなかった。
    高校は村にはなく、バスで溝辺町に通学しているが、溝辺町とて田舎だ。
    大学は何としても都会に戻るのだ、大学も学部も厭わない。
    そのため日々勉強している。バス停に立ちずっと都会の方角をながめてしまう。
    村の病院に勤める看護師、国広律子。更衣室で交わされる看護師同士の仲は良好だ。
    永田清美はブラインドが上がっていてもさばさばと着替える。
    おばさんの下着姿なんか覗きやしないというところに更に年上の橋口が出勤し
    「お恥ずかしいもんだから隠すのが慎みってもんよ。女はそれがなくなっちゃあ
    おしまい。あたしやあんただって、まだトドの群に入りゃ捨てたもんじゃないん
    だから」
    私はこのセリフが好きだ。私もトドの群れに入ればきっとモテるだろう。
    寺の若御院である室井静信の副業は小説家であり、彼の描く「屍鬼」という小説が
    第一章の冒頭から別字体で挿入されている、カインとアベルの物語のような感じで
    兄はなぜ弟を殺したか、弟は屍鬼として毎晩兄にただついてくるのだ。
    は自殺を図ったことがあり、今でもそれに理由がなかったと答え、その理由を
    探すために小説を描いているように思われる、暗示的ではあるが静信の小説を読み
    飛ばしても本編に影響はない。
    そして、村人の死が続く。40代の後藤田秀司に始まり、山入と言われる山頂のほうの
    集落に残された老人3人。秀司の訃報の連絡がつかず、静信が訪れて発見したが
    亡くなったのは山入の3人が先であった。高校生の清水恵、製材所の老人安森義一
    秀司の母、後藤田ふき。毎日のように続く死。みな風邪か夏バテかと寝込んでは
    いたが、特に熱もなく、食欲がなくて眠そうだったというだけなのに3日ほどで
    死の転帰に向かう
    疫病ではないかと疑う静信で一巻は終わる
    山火事は恐ろしい。山火事をテーマにしても読みごたえのある小説になるだろう
    外場村という樅の山で囲まれた閉ざされた村の火事なら
    国広律子には「あんな何もない村。出てくればいい。結婚しよう」という恋人が
    いるが、律子の母は家の建て直しを律子にねだっている。
    律子の稼ぎで生活しているのだ。
    そして夏野が国道にたたずみ都会を恋しがっているのではないかと思ったとき
    「新しい家は樅の木で作ろう」と恋をあきらめるのだ。それだってほんの数行で
    終わっているが、生まれ育った土地も親も捨てて結婚するのか、恋をあきらめるのか
    それだって一冊の本が書けるほどのことだ。とても重要な背景を背負ってこれから
    忙しくなる病院の看護師として登場し続ける律子
    外場村には物語が満載だ。

  • 1998年の小野不由美作品。
    ハードカバーで上下2分冊だった本作を、文庫化に際し5分冊に。これはその1冊目。

    収録されているのは序章と第一部ではあるものの、ずっと序章のような雰囲気でもあります。
    ホラーとして見ると、まだ、ほとんど何も起こっていないともいえますから。
    それでも飽きずに読めるのは、舞台となる外場村の人々を丁寧に描いているから。決定的に厭なヤツはいないから、ぬるーい雰囲気でまったり読めるということもあります。
    次巻もこのまま低空飛行なのかという不安と、急展開を見せるのかという期待と半々な終わりかたで第一巻は終了します。

  • 小野不由美さんの残穢が面白かったので読んでみた作品。
    ある村が舞台の、奇妙な死…そんな話が続くのですが…
    しかし登場人物の多さ、事件までの長さ、が多すぎ長すぎて怖さがあまりありませんでした。その1ということだからでしょうか、まだまだこの一冊では怖さは分からずです…。
    感じたのは、これが現実な話だとして、住みにくさは多少あるものの都会に住んでいて良かった〜ということ笑。昔からある村などは、あらゆるいわくがあるでしょうからね、村はリアルに怖いのです。

  • 勢いで驚かせる海外製のホラーと違って
    如何にも和のじっとりひたひた襲ってくる恐ろしさ。
    読み手は理由ははっきり分からなくても
    それはまずい、ということが起きていて
    きっとこれをやってはいけないと分かっても
    登場人物たちは気づけず行動を変えないのを
    ただ見守るしか無く、ぞわぞわする。

    閉鎖的な村社会の様々な問題を折り込みつつ、
    野犬、いつまでも越してこない住人、
    車に載っている棺、など単独では通常であれば
    そこまで問題にならないようなことが
    心の底に積もり不安を煽っていく。
    村人たちの噂や関係値など、
    実際の事件を小説にしているのかと思うほどリアリティがあった。

    舞台設定はどこなのだろう。
    軍手を履け、という台詞があったので、東北以北なのかと個人的に思った。

  • 再読感想です。

    先が分かっているが故に、起こる事一つ一つに「あぁ〜…」と、納得と、もどかしさと、ハラハラ感が次から次へと押し寄せてきて、面白かった。

    1巻は、舞台と人物の紹介をじっくりをじっくりやってくれるおかげて、後半の面白さが映えている気がする。

    登場人物が多いけど、藤崎竜さんの漫画版も既読なので、人物把握がしやすかった。

  • 怖くなってきた…けれど、まだ序の口のような印象。

  • 再読。
    登場人物の名前を覚えておくのが大変。
    初登場の名前に付箋をつけていったら、付箋だらけになってしまった。

    寺の若御院が書いている、聖書をもとにした小説の部分と、屍鬼の本文とが混ざっている箇所があるので、初読の時は読みづらく感じたが、今回は慣れたのか、スムーズに読める。

    1巻目は村の概要を掴むにとどまり、感染症の拡大を予感しつつ次巻へ。

  • この作品の怖さの一つは、一旦死んで屍鬼(起き上がり)になると、人を襲って吸血しないと生きられなくなり、しかも“生前”の記憶、意識は保持され、狭い村の設定故、必然的に襲う相手が家族や知人になってしまう、という所にある。数多い登場人物の中で、同業故か尾崎敏夫に肩入れしてしまうが、屍鬼になった妻を実験台にして抹殺方法を調べるなど、手段の問わなさっぷりがアブナイ。極限状況に追い詰められたら、人も鬼も変わらない、という所がまた別の怖さである。

  • 辻村美月さんのエッセイに影響されて読み始めました。元々気になってはいた本。
    めっちゃ怖いのかと思ってたけど、まだまだ序盤、普通の日常に少し違和感が出始める程度。
    副住職の書いてる本が難しくて、そこからスタートしたから理解できるか心配だったけど大丈夫そう。
    越してきた家族が何かあるのか、どうして亡くなる人が続くのか、これからこれから

  • 導入部分。登場人物が多い。一覧でもあれば。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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