屍鬼(五) (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (478ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240275

作品紹介・あらすじ

村人たちはそれぞれに凶器を握り締めた。「屍鬼」を屠る方法は分かっていた。鬼どもを追い立てる男たちの殺意が、村を覆っていく-。白々と明けた暁に切って落とされた「屍鬼狩り」は、焔に彩られていつ果てるともなく続いていった。高鳴る祭囃子の中、神社に積み上げられる累々たる屍。その前でどよめく群れは、果たして鬼か人間か…。血と炎に染められた、壮絶なる完結編。

感想・レビュー・書評

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  • 本巻ではとうとう屍鬼が駆逐されて行きます。静信は屍鬼が人と同じように思考し、言葉を話し、行動できるなら人として「生きている」と見なしているんですかね。彼はそれを理由に屍鬼を狩ることを拒否しましたが、私自身は敏夫と同じく、屍鬼と人とは異なる相容れない存在と考えます。

    なので、屍鬼の多くが言う「食事をしただけ」ということに対しては、家畜だって好んで食料になってるわけないし、もし可能なら人に反撃するだろうから、屍鬼に対して人が反撃するのもアリでしょ?と思う訳です。(私だって黙って食われるくらいなら、戦って死にたいですよ。)

    そんな屍鬼になった者の中で、律子の振る舞いにはちょっと感動しました。「罪を犯すぐらいなら、罪もないのに殺されてしまう可哀想な被害者になった方がまし」というセリフに。人が感じる以上の強烈な飢餓感に襲われても、そのようなセリフを言える精神力に。

    あと気になった点は、終盤の静信のセリフ。神の範疇だとか……小難しい内容を沙子に説く場面。考え過ぎかもしれませんが、殺人という罪に対する“法”の対処の仕方についての暗喩なのかな、と。後に著される「落照の獄」に繋がっているように感じました。

    かなりボリュームのあるシリーズでしたが、何が一番怖いかって、第一巻と五巻とで全く違う世界になっていることかな。この変化が現実に発生した時、それを受け入れられるだろうか、と。それができなければ、気づいたときは首筋を噛まれているんだと思うと……

  • 村人達の屍鬼狩りが始まる。

    屍鬼を狩る人間はむごいと思うか?
    相手は既に死んでいる人間なのだから、葬るのは当然と言える。
    では、屍鬼は悪か?と問われると、必ずしも首肯できない。
    そのあたりの線引きができない人間が、静信なんですよね。

    静信派か、敏夫派か、はっきり分かれそうな所ですが、
    以前読んだ時よりも静信の気持ちが分かるような気がします。

    文庫で5冊という超大作ですが、
    これから先も何度も読み返すであろう作品です。
    やっぱり好き!!!

  • おもしろくない!とは言わないけど…

    長すぎる
    登場人物が多すぎる
    エピソードが多すぎる
    エグイ場面が沢山あると予想していたが外れた。
    どんでん返しもなかった。(最初に提示されていた)

    静信は色々と理屈云ってるけど、
    結局はロリータ趣味のオッサンじゃないか?
    しかも変容とかしてるし(ちょっとご都合な感じ)

    沙子が歳いってるオバサンさんだったら、あーゆー行動とるか疑問だな。
    っーか物語にならないか…

    この巻の始めの頃の敏夫のセリフは、平和ボケした今の日本人に当てはまる気がする。
    屍鬼をカルト教団とかに置き換えると、現実にもあるかな。

    いっぱい、人が死にました。いくらなんでも殺し過ぎだよ。
    生意気盛りの昭も死んじゃった。
    かおりが助かったのが、せめてもの救い…

  • 読了。
    静信がようやく自分の意思で動き出したが、やはりそちら側につくのか…といった思い。結果、何もしていない母達が殺される事になるのだが、それに対して動揺するわけでもなく後悔するわけでもなく、人間も屍鬼のことも、俯瞰する視点になったということか。

    尾崎医師は一転攻勢に出るが、今までの流れから、人間が屍鬼を退治しめでたしめでたしとなるわけがなく、狩る側の怒りや狂気、狩られる側の一抹の期待と絶望、屍鬼として生き残る事を拒否した者も、屍鬼だと言うだけで問答無用に狩られる悲哀、読んでいく中で目を背けたくなることも起きる。

    人はいつどこで生まれるかを選ぶことはできず、人としてしか生きられない。屍鬼も、起き上がってしまったからには屍鬼としてしか生きられない。それを拒絶することは生を終わらせること。
    もし、初めから屍鬼として生まれたのならば、まだ割り切ることもできるかもしれないが、人として生きた記憶を持ちながらというのは、あまりにも残酷。
    沙子は、生を終わらせることもできず、屍鬼として神に見放された存在だと開き直って生きることもできず、人として生きていくことももはや叶わない。
    あの廃屋で決着をつけられていた方が良かったのではないかと思ってしまう。

  • 終わり方はとても好きなラストでした。
    反撃が始まる展開は、読んでいて没入する事が出来たが、段々と人間の本性というか怖さみたいな部分がヒリヒリと伝わって来た。

    静信と敏夫は全く違う性格なのに、お互いを理解しているのが良かった。

  • 昨年8月に著者の「ゴーストハント」シリーズを読破、独特の世界観、恐怖とダークファンタジーを楽しませていただいた。今年はこの「屍鬼」を読んで少しでも涼しい夜が過ごせればと手に取ってみる、書店ではいつも気になっていた、表紙から漂う雰囲気に何度も読もうと思ったが、なかなか現実に至らなかった。あまりにも「ホラーの色が濃い」のではないかと不安もあった。実際に読み進めていくと忍び寄る謎と恐怖何とか現代医学で究明しようとする登場人物、村自体が孤立していく閉塞感、大きな闇に物語が覆われていく。自分としても先が気になって仕方ない、夜一人で読んでいると屍鬼が現れるのではないかとゆうような臨場感、非常にスリリングに楽しめた。
    しかし読み進めていくと著書はただ単にホラー小説ではないことがわかってくる、ミステリーかというとまた違う、哲学に近い表現が心にのこる。
    「屍鬼は自らの残虐性に自覚的で、人間は己の残虐性を自覚していない、その分人間の方が恐怖の存在である」(著書引用)なるほどと感心する。
    物語の中で人間は目に見えない恐怖や不安、無力感や憤りを感じながらも耐えに耐えて、終盤では大きく逆襲に転じる爽快感のようなものを感じながら、本当にこれでいいのか?これでいいんだ!と考え不安になるが非常に満足出来た、中盤から終盤にかけての展開にはほぼ一気読みしてしまう。いつの日かまた寝苦しい夏の夜に著者の新たなる恐怖を楽しみたい!

  • 全5巻、長い話をずっと読んできて、はっきり言ってこんなって欲しいと思う結末ではなかった。
    私はやはり屍鬼の殲滅を望んでいたのか。
    元子の愚かな行動がなければ違う結末もあったのかと思わずにいられない。

  • はぁ〜長かった。
    でも、楽しかった。
    レコメンドされての読書。自ら進んで選ばない本。
    こういうのも出会いだよね。

  • ついに屍鬼vs村人の闘いに決着!
    鬼狩りを決めた村人たちが鬼のようだった。
    律子と徹の屍鬼になっても良心を捨てきれなかったシーンがよかった。

    それぞれのキャラクターを通していろんな価値観、考え方が表現されていて、とても考えさせられる話でした。
    とりあえず面白かった!

    室井拝って静信のペンネームかな?

    2021年3月21日

  • 神だ。
    アニメはラストが血みどろで最低だった。屍鬼の凄さは原作の後半なのに。
    藤崎竜の絵は大好きだ。藤崎竜はすきだが、アニメのラストには憤慨。バクチクの音楽は最高だったのに。音楽は文句なかったのに、アニメのラストが血みどろすぎて、せっかくよかったアニメまで台無しにしてしまった。藤崎竜版の屍鬼読んでなくて、書いとる。藤崎竜まで原作の良さ、壊してたらショックで漫画読めない…悲
    小野不由美すごい。神。そして小野不由美さんが神という萩尾望都は、そしたらなに?神の上をいく神ってなんだ。GODしか思いつかない私。

  • 再読。

    ついに起きる屍鬼狩り。立場逆転のカタストロフィ。
    いままでの鬱憤を晴らすが如くテンションの高いクライマックス、なのに爽快感が一切ない。
    判官贔屓が発動するのか、物語の序盤中盤までは犠牲になる村人の方に、ここに至っては狩られる屍鬼の方に感情移入してしまう不思議。屍鬼に憐れみを感じてしまうやね。

    元ネタだと静信があの神父に対応してそうなんだけどそこまであの神父はグラグラだったっけ?
    やはり一番の謎の人物は静信。どんな逼迫した状況でも小説のことを考えてたから出版できてよかったね。

    これにて外場村での生活もおしまい。寂しい。
    日本の夏を思い出す時にはなぜかこの外場村の描写が頭をよぎる。特に故郷に似てるとかではないんだけど。

    何度読み返してもこの長大な物語を飽きさせずにぐいぐいひっぱってくれる、これぞ名作。

    誰と誰が対応してるか気になったので外場村からネタ元であるセイラムズロットへ引っ越すとしますか。

    何度読んでも、大大満足です。

  • あぁ面白かった!怖かった!!

    シンプルな「起き上がり」と戦う正義の話ではなく、
    読み終わってみると複雑な気持ちになるし
    何が正義なのか悪なのかなんて、白黒つけるのはもはや意味がない。
    「殺意のない殺人はない。殺意のない殺人は事故だ。」
    の言葉は結構ずっと心にひっかかって
    私は沙子に感情移入をしてしまった。

    それを友人に伝えると、私らしいですね。言われたことも面白く。この本の感想は、その人の性格が出るのだろうとも思う。

    物語としてももちろん面白い。
    だけど、どの登場人物にも自分でも理解できる感情があり、自分もどのキャラクターにも、ひょんなことから豹変し得るんじゃないか、、とドキリとする。

    とにかく、いろんな人の感情を一気にかぶって
    「問われている」といった感覚になることだけでも
    読む価値ある。
    これはオススメの小説

  •  文庫本にして全五巻! 長い! でも、ハマるったらありゃしない!
     前半は多すぎる登場人物と、難解な小説中小説のおかげでかなり読み辛いが、それを越えたら後は止まらない。 とにかくページを捲らずにはいられない展開が続くのだ。
     物語が展開するに従って、この小説が普段手をつけないジャンルであることがわかり、この先を読み進められるか一瞬不安になってしまったが、要らぬ心配だった。 それ以降、むしろ面白さは加速し、寝る間も惜しんで最後まで一気に読んでしまった。

     この物語は非常に多くの人物の目線で語られる。 そのため、登場人物の頭をぴょんぴょん跳びまわるように感情移入してしまい、いろんな視点で展開を追うちに、善と悪、生と死の境がどんどん曖昧になってゆく。
     そして、最後には何とも言えない読後感が残る。 傑作。

  • 喰うか喰われるか、生きるということについて深く考えさせられた。
    彼らは元は人間であって、人間を喰らわなければ生きる道はなくて。それでも必死に抵抗し葛藤する者もいれば、人間を殺す特権を得たと嬉嬉として襲う者もいる。
    人間もまた同様に、殺されまいと抵抗する者、自然の成り行きに身を預けた者、敵の存在を知りながらも見て見ぬふりをする者など様々な考えをもった人が登場する。
    私はこの小説で一番おもしろいと思ったのは、見て見ぬふりをする人々だ。彼らは物語の終盤まで何もしない。ただ事態を傍観しているのみ。しかし、作中ではそんな彼らの様子は頻繁に描写される。
    そして物語の終盤、積を切ったように彼らは行動を開始する。それも激烈に、正しいと信じる道を突き進む。この世で最も恐ろしいものは、考えを持たぬ民衆であると思った。
    全五巻であり、長いと思ったのは事実だ。それでも一度読み始めるとそれは丁寧な描写のおかげだとすぐに気づく。そして何よりも続きが気になり、本から目が離せなくなってしまう。過去に一度一巻で挫折したことがあったが、最後まで読んでよかったと思った。

  • 反撃に参加する者、村を出る者、他にも様々な選択があって興味深い。加奈美と律子の選択が非常に印象的。自分が加奈美だったらきっと同じことを考えるだろう。誰もが律子のように願いながら、やり遂げるのは至難の業。
    敏夫の執念が実っていよいよ始まった人間側の反撃だが、集団特有の狂気が纏わり付いてどっちが鬼だかわからなくなる。人も屍鬼も自分たちの生きる場所を守るという点においては同じ。自分が人間側なら生き残るために反撃するし、屍鬼側なら自分のできることをして恵のようにしぶとく生き延びようとすると思う。
    怒濤の最終巻。

  • 読了。全てを知り得た満足感と答えが出ない重い気持ち。当初勝手に予想していた話の内容とは全く違う方向へ舵が取られていくのを、ひたすらハラハラしながら読みました。共感したり、嫌悪したりと感情が揺さぶられっぱなし、どうなるのかどうするのか目が離せなくて一気に読みました。登場人物が多く、それぞれの人物に多くのページを割いているので、まるで群像劇のようでもあり、物語に深みと奥行きを与えていました。まるで村全体を俯瞰している観察者のような、そんな気持ちになってすっかり引き込まれたように思います。
    しかし再読までにだいぶ年月が要りそうですね…重いだけに。とりあえずフジリュー先生のマンガ版も読んでみたいと思います。

  • 冗漫。

    予定調和的なラスト。
    ここまで長くする必要があったかな。

    いろいろ考えさせる話ではあるが、静信が、あーも簡単に人間殺しちゃ興ざめでしょう。
    また、村人が幾ら何でも異変に気づくのが遅いし、外界(町)の人もおかしいと思うでしょう。

    夏野をはじめとする純粋で勇気ある子供たちの姿が救いかな。

  • 一気読みしてしまうかと思いきや、最終巻の中ほどでぱたっと飽きてしまった。どうにか一応読んだけど。
    結局私は、人間がいかにして屍鬼を打ち負かすのか、というところに興味をそそられて読んでたんだと思う。
    形成逆転の神社の場面なんか、満員電車の中で高笑いしたくなるほど高楊して敏夫に惚れました。(彼の女性に対する態度って表向きは大人っぽく甘やかなのに根底がとんでもなく冷たく乱暴でゾクゾクする)
    が、その場面をピークに敏夫さんはほぼお役目終了で、村人たちと屍鬼側ばかりが目立つようになるので、つまんなく感じたのかな。
    結局静信は何考えてるんだかわけわかんないまんまだったし。
    人間である私は砂子のやったことが許せないし、徹に対する慰めの言葉なんかかなり白々しい気分で読んでました。
    彼女はもう人間でないのに、人間が人間のために作った価値観に固執して、子供のおままごとみたいな感覚で多くの他者を不幸にしてる。
    とっくに大人のはずなのに、外見も中身も少女のまま。
    静信や辰巳は沙子が少女でなく中年のおっさんの姿であっても、同じように執着して守ったのかしら…というのは下種の勘ぐりかしら。
    じゃあ死ねっていうの?!私が何をしたの?!と沙子は喚くけれど、大体がそういう、どちらが悪いとか可哀相とかいう問題じゃあ全くない。
    村人らの鬼狩り、最初はやってしまええええと興奮して読んでいたけれど、だんだん、断末魔をあげる屍鬼と血みどろになって釘を打つ人間の、どちらがどちらの立場でもおかしくなかったのに、と醒めた気分になってきました。
    感情面では、昭が発見されたところが一大ピークだったな~…一瞬でせりあげる吐き気のような哀しみと遅れてやってくる視界が真っ赤になるほどの怒り。
    別にとりたてて好きな登場人物ではなかったのに、四巻を読み終えたときも昭が捕らえられた時点で読者として決定的にキレたところがあって、なんか、ああいう子は死んじゃいかんだろという自分の常識を覆されたのが耐えられなかったっぽい。
    思い返すと、夏野の死に様はなんと美しく穏やかだったことか。
    しかしこれだけの厚さの本をまたたく間に読ませてしまうとは、すごい引き込み力だったと思う。
    まとめると、面白かったです。

  • 沙子はなぜ大川に「私は食事をしただけ。それの何が悪いの?」と言わなかったのか。言えよ。なんで罪悪感や虚無感を抱くの?静信は母親を殺した者を憎んだけど、そもそも自分の軽率な行動が悪いんでしょうが。村人がどういう心理状態か解らんかったのかね。観念だけで生き、リアルを知らんのかね。この幼稚な二人がどうやって生きてくのかね。辰巳はまだリアルが解ってたよ。いつか成長したかおりと遭遇し、最期を迎えればいいと思うよ。どうもこの二人嫌いだわ。辰巳は開き直れない沙子を純粋だと言うけど、そうだろうか。単なる甘ったれでしょ。姿は子どもでも、何十年も生きてるくせに。自分が死にたくないなら、人間だって死にたくないんだよ。人間だって搾取して生きてるんだから殺して構わないっていうなら、屍鬼だって同じ理屈で殺されたって構わないじゃん。人間は、って言うけど、それこそ自己正当化に過ぎないじゃん。静信を誰かぶん殴ってやれ。どうせ考え直すような能はなかろうが。

  • 1~5巻通しての感想です。
    非常に読み応えのある、良い小説だと思います。

    分類上はホラーに区分していますが、単に怖がらせるだけのホラーやエンターテイメントを超えたく(実際に怖さはあまり感じない)、生きるということ、生きるために殺すということについての苦悩と苦痛を描き出した「小説」である感じました。

    これだけの長い間この小説を放っておいたのが悔やまれるくらい、面白く読ませてもらいました。

    少し残念だったのが、特に序盤の文章が硬めで若干の読みづらさがあったことと、登場人物が多すぎて焦点が少しぼやけてしまったことでしょうか。
    しかし基本的に文章の上手い作家であるだけに、説明パートを終わる頃には硬質な文章が気にならなくなってきます。
    ただ、登場人物に関しては、やはりごく簡単でいいので一覧が欲しかった気がします。

    ラストの部分も個人的には不満が残りますが、総じて言えばかなり高評価の作品といえるでしょう。

    (以下ネタバレあり)










    ここから少しネタバレあり。

    いくつかの点で描写不足・説明不足を感じました。

    まず尾崎(医師)が屍鬼の存在を確信する部分が説明不足だと思います。
    それまで科学的に思考していた人物だったため、いささか唐突であった感が否めません。
    尾崎の思考の転換がこの作品のひとつのターニングポイントである以上、もう少し自然な流れにして欲しかったと思います。

    また、クライマックスの屍鬼への逆襲からラストまでも、筆が足りないように感じました。
    疫病を疑うパートや屍鬼が跋扈するパートなど、それまでは描写が丁寧で細にいっていたのに、そこからは雪崩を打つような急展開となってしまいました。

    急展開であっても、例えばそこに疾走感が感じられるようならまだ良かったのかもしれませんが、そういったカタルシスはなく、むしろページ数に合わせるために一気に詰め込んだような感覚を覚えてしまいます。

    もう少し、人間と屍鬼の争いを描いて欲しかったのが正直な感想です。
    それまでせっかく村人の何人かに焦点を合わせて描写してきたのですから、このパートでも個々人の葛藤と狂気に焦点を当ててほしかった。

    この部分が星5つに出来ない点です。
    このパートが前半と同じような描写であったなら、おそらく5つ星の傑作と感じたと思われます。


    ただ、全体としては非常に良くできた作品ですので、多少なりとも興味がある方には一読をお勧めします。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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