- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101240589
感想・レビュー・書評
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購入してだいぶ時間が経ちますが、ようやく読み終わりました。
結果的にはとても良かったです。
十二国記、十数年ぶりの新刊ということで期待してました。一方で長編ではなかったこと、またyomyomの短編はすでに読んでいたため、 果たして満足できるのかという不安もありました。
しかしながら小野さんもその辺りは配慮されたのでしょうか。既刊の背景がうまく活かされた内容であったため、飽きることなく読み進めることができました。中でも『青条の蘭』は終盤まで背景が明かされず、その焦らし方は流石だなと思いました。
新装版を読み進めてる方なら楽しめるはずです。
ただ新作が二篇というのはちょっと物足りないかなと。ファンとしてはそれでも嬉しいのですが。とりあえず次の長編新作、楽しみです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
短編ですが読み応えはありました。
どのお話しも号泣!まではしなくても
切なかったり悲しかったり悔しかったり
ホロリと泣ける要素満載でした。
救われたり救われなかったりするけど
その中でも強く生きようとする人々の姿が
印象的な作品です。
やっぱりこのシリーズは大好きや!! -
新作、12年ぶりですか! すっかり地名を忘れていて、特に「青条の蘭」はどの国の話かわからなくて困りました。
王と麒麟の物語ではない。彼らの国で生きている庶民の物語。賛否あるかと思いますが、私はとても興味深く読みました。
「丕緒の鳥」
ラストシーンの、丕緒が思い描く夜の廷の情景が鮮やか。ラスト2ページのための物語だと思う。結びの一文も素晴らしい。
「落照の獄」
現代の私たちの住む世界にも通じる、罪と罰の物語。死刑の是非もそうだが、柳国が傾く様がずしりと重い。王の関心が薄れたのか、能力が減退するのか、そんな国の終わり方もあるのか、と。
「青条の蘭」
希望の物語。標仲らの努力(と簡単に言えるものではないが)を、市井の人々が次々につないで、国を救う。胸が痛くなるような焦燥。中身がよくわからないままリレーされていく希望は美しいけれど、それまでの絶望的な状況からするとあまりにも簡単すぎるようにも。
「風信」
これまでの3篇もそうだが、「王」は庶民にとっては「王」でしかない。読者は、陽子とか尚隆とか、個人である王の物語を求めるけれど、その世界で暮らす者にとっては、王個人はおろか、偽王かどうかすら問題ではなく、ただ「あるべき王が立つことにより社会が安定する」かどうかだけが重要である。
これまでも十二国記の物語を読んできて、麒麟というのは難儀だなぁと思ってきた。麒麟は本能的に王を選ぶけれど、それが民にとって「良い王」であるとは限らない。王の治世が経年により劣化するならまだしも、短期間で滅ぶ王朝もあるのだから、必ずしも麒麟による王の選定は民の幸いとは結びつかないのだろう。おまけに、王候補が現れるのを何年も待つ麒麟もいれば、異世界まで迎えに行ってしまう麒麟もいるのだから、王よりも、自国がどんな麒麟に恵まれるかの方が、民にとっては重要なのかもしれない。
次作は、王と麒麟の物語になるのだろうか。戴国の行く末が気になる方は、さぞかしじりじりされていることでしょう。私は・・・泰麒も泰王もあまり好きになれないので・・・他の国の物語が読みたいです。 -
十二国記の短編四編が収められた、短編集。
最初の二編は『yom yom』という雑誌に掲載されたもの、残りの二編は書き下ろしです。
十二国記の新作刊行は十二年ぶりということで…本当に待ち遠しかったです。
十二国記といえば各国の王様や麒麟が繰り広げる壮大なお話という印象ですが、今回の短編集は今までと趣向が異なり、市井の人々にスポットが当てられています。
お馴染みの王様達も、出て来るには出て来ますが、あくまでも主役は一般市民の、いつもであれば所謂「脇役」な人々。
この短編集の最初の一編『丕緒の鳥』を初めて『yom yom』で読んだ時、WH版『風の万里 黎明の空』下巻の、小野主上のあとがきを思い出しました。
今回、たくさんの人が死にました。「死んだ」と明記していない名もない人々も、行の隙間でばたばたと死んでます。あえて多くは書き込みませんでしたが、それはこれ以上登場人物が増えたり、エピソードが増えると、本の横幅より厚い本になりかねなかったからです。
本人達には人生の終焉という、一大事です。でも、主要登場人物じゃないから、死んだと明記さえされない。なんて、理不尽なんでしょうね。理不尽を分かっていながら物語の都合上、切り捨てないといけない。辛いところです。
ですからそこは読者の想像力におすがりしたい。すべての人間にとって、本人こそが主人公なのだということを、ゆめゆめお忘れなく。本を閉じたあとにでも、ふっと思い出していただけると幸いです。
(ホワイトハート版『風の万里 黎明の空』下巻 あとがき 369-370頁)
このあとがきを読んだ当時、そんなところまで想定して書かれているなんて凄いなぁと思った記憶があります。
そしていつかそういうお話も読んでみたいなと思いました。
今回の短編集はまさしく、名もなきキャラクターたちが国の流れに翻弄されたり抗ったりしながら懸命に生きている様子が描かれています。
王様や麒麟が主人公な本編は、胸のすくような展開が多く、ドラマチックです。
今回は、大きな流れに立ち向かうイチ個人、なので一国の歴史の中では、記録もされないようなほんの些細なことなのかもしれません。
けれど、そういう人々や物事に焦点が当たることで物語全体に血が通っているように感じました。
何というか「現実的にあり得そう」な話だよなと思ってしまいます。
それは描写だけでなく、扱っている題材のせいもあるのでしょうが。
特に二作目の『落照の獄』は死刑制度の是非という、現代のこの日本においても決して他人事ではない重いテーマを扱っていますし。
ファンタジーを銘打ったシリーズではありますが、そういうところに、リアリティとシンパシーを感じてしまう。
書き下ろしである『青条の蘭』と『風信』は、どこの国の話なのか、具体的な国名は記されていません。
ですが読み進めて行くと、馴染みのある地名や、国の情勢が朧気ながら分かって来て、いつの時代でどこの国の話なのかが分かります。
こういう書き方が嬉しいと感じてしまうのは自分だけでしょうか。
一つ前に出た『風の万里 黎明の空』にあった「王が新しい作物を里木に願う」という話が、『青条の蘭』で詳しく描かれているんですよね。
本当に細かいところまできっちり設定が作られているんだなぁ…とひたすらに感心するばかりです。
主上凄いです。
『落照の獄』を除いては、希望が見えるような終わり方です。
他の国は新王が立ったけれど、『落照の獄』の舞台である柳は今まさに沈みゆく国だから行く末が不透明な終わり方なのかな…そう思うと切ないです。 -
12年ぶりの十二国記新刊!!
とはいえ本編の続きではないので、
嬉しいながらももどかしい、でも胸が高鳴る。そんな複雑な心境(笑)
「丕緒の鳥」「落照の獄」「青条の蘭」「風信」の4つの短編を収録。
どれも決して幸せな物語ではなく、
理不尽な世界で必死に生きていく人間達の姿を描いています。
戦争、貧困、疫病…傾きかけた国で、どうやって命を繋いでいくのか?
yomyomで読んだので表題作「丕緒の鳥」は再読だったけれど、
やはり十二国記の世界観は素晴らしいと、改めて実感しました。
そして文章自体がとても美しいのですよね、、、
泰麒のその後が刊行される前に(いつになるだろう…?汗)
新潮の完全版で既刊本を再読しておこうと思います! -
にわか十二国記ファンでございます。
読み始めたのは今年に入ってからでございますが!
今、新潮社で刊行している作品は何度も読み返しております。
そんな愛しき十二国記の新刊。。。
味わって読ませていただきました。
民たちの信念を持った行動。
見習いたい。