図南の翼 (となんのつばさ) 十二国記 6 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (419ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101240596

作品紹介・あらすじ

この国の王になるのは、あたし! 恭国(きようこく)は先王が斃(たお)れて27年、王不在のまま治安は乱れ、妖魔までも徘徊(はいかい)していた。首都連檣(れんしよう)に住む少女珠晶(しゆしよう)は豪商の父のもと、なに不自由ない暮らしと教育を与えられ、闊達な娘に育つ。だが、混迷深まる国を憂えた珠晶はついに決断する。「大人が行かないのなら、あたしが蓬山(ほうざん)を目指す」と──12歳の少女は、神獣麒麟(きりん)によって、王として選ばれるのか。

感想・レビュー・書評

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  • 恭国の先王が討たれてから27年、未だ王の不在が続いていた。治世のない国土は乱れ、妖魔は街の中まで徘徊していた。
    裕福な豪商の家庭に育ち不自由なく暮らしていた少女・珠晶は、国を憂い、大人達が国の為行動を取らないことに憤懣していた。そして、遂に、一人蓬山を目指して家出する。
    あの、麒麟を平手打ちした、なかなかの女の子ですね。(於 風の万里) 無計画な家出、ではなく、12歳としては周到な準備と覚悟。強く正しく清く賢く美しく、正統派ヒロイン。この愚痴らない物怖じしない少女が、蓬山昇山の旅でより一層成長していく。
    全く、王たる強運は彼女の覇気がもたらすもの。
    不甲斐ない大人達との対比で、女王としての風格を楽しめる、激しめのロードノベル。
    “更夜”の登場は、感涙。

    次巻いきまーす。

  • 十二国記【図南の翼】EP6

    27年間、王が不在の恭国。
    国が傾き民が苦しむ様子を傍観できなかった12歳の少女"珠晶"(シュショウ)が、王になる為にホウ山を目指す。

    この12歳の珠晶ちゃんのキャラが面白い。
    裕福な家に生れ育ち、かなり癇癪持ちだけど、聡明で人の痛みに敏感で、自分がこうと決めた事は人並外れた行動力で我が道を進む。
    機関銃のように自分の正義や信念を喋りまくり
    まちがっていたら、素直にごめんなさいって…良い子だなぁ。(^^)笑

    十二国の世界では、王不在の国は天災が続き
    妖魔が民を襲う、治安の荒れた国となってしまう。
    王になる為には黄海の真ん中にあるホウ山を目指さなければならないが、妖魔の住処である黄海は人が足を踏み入れて良い場所ではない。

    仲間との危険な旅が少女を真の王の器を持つ者へと変えていく。

    面白かった(^^)
    珠晶ちゃん、なんだか漫画キャラだなぁと思いながら楽しんでいたら最後に二つばかり、
    『おぉ!』っとなる場面があり、
    さすが十二国記だなぁとしかけに感動。

    ことごとく正論の珠晶ちゃんの最後の麒麟に向けた言葉に爆笑(≧∀≦)
    『馬鹿者』のかわりに、『だめだぞっ』にしたらもっと可愛いのになぁ(^^)キャラ変わっちゃうけど…笑

    次はカショの幽夢EP7へGO♪

    • ロカさん
      読書は楽しいのが一番ですから(*^^)v
      因みに資料で興味がおありなら、平凡社ライブラリーの『山海経』を読まれるとよいですよ。

      私は...
      読書は楽しいのが一番ですから(*^^)v
      因みに資料で興味がおありなら、平凡社ライブラリーの『山海経』を読まれるとよいですよ。

      私は他の漫画家さんの影響で読んだのですが、『十二国記』に出てくる妖魔のモデルがここから選ばれてますので(*^^*)
      2022/10/26
    • 松子さん
      山海経∑(゚Д゚)
      いま検索してチラリと見てみました
      妖魔のモデルがここから…はぁ、すごいですっ!
      ロカさん、ありがとうございますっ
      山海経∑(゚Д゚)
      いま検索してチラリと見てみました
      妖魔のモデルがここから…はぁ、すごいですっ!
      ロカさん、ありがとうございますっ
      2022/10/26
    • ロカさん
      そう言っていただけると嬉しいです♪
      そう言っていただけると嬉しいです♪
      2022/10/26
  • 「何故この長編が書かれなければならなかったのか、わかりますか?」
    「当たり前でしょ!とっても魅力的で十二国の主要人物の1人である珠晶が、艱難辛苦の上、登極(王様になる事)する話を、何処かで詳しく書いておかなければいけないのは、理の当然でしょ」
    「珠晶が登極したことは、シリーズを読んできた読者には周知のことでしょう。屋上に屋を架す事ではないでしょうか」
    「では長編の主人公に、私は相応しくない、とでもいうの!」
    「無理しなさんな。勝気な12歳の少女を演じてみても貴女は珠晶じゃない。珠晶は賢いから、私が挑発していることなど直ぐに見通しますよ」
    「‥‥じゃ、貴方は誰?」
    「その前に、貴女は所謂物語をキャラで読もうとするひとたちの魂が形を成した者と観ました」
    「悪い?」
    「悪くない。それも物語を読む方法です。でも私はそれとは真反対の方向から読もうとする者だと言っておきましょう」
    「‥‥じゃ、いいわ。で、何故登極の話が長編になったの?」
    「それは、今迄書かれていなかった黄海の話、否、道の話を書かなくてはならなかったからだと、私は思います」
    「道の話‥‥」
    「今まで長編で描かれたのは主に三ヶ所を舞台にしています。国を司り不老不死の人たちが住む雲上と、普通の人たちが住む雲下と分けた場合、雲下はエピソード1、雲上はエピソード3、そして世界中央の黄海真ん中の五山に住む仙人たちの話がエピソード2、エピソード4の陽子の話は雲上下両方かな。そしてもう1つ2つ書かれなければならない舞台があります。それが黄海だと私は思うのです」
    「十二国の中央に位置して、妖魔の跋扈する人外魔境、人の領分でもなく、神の領分でもない。でも人は黄海を通って蓬山に昇山し、麒麟に王様になる事を願わないと登極できないのよね」
    「この巻で、やっと黄海が実は水のない海であることがわかりました。人は基本的にそこを徒歩か、馬などで苦労して道なき道を行かねばなりません」
    「だから道の話なの?」
    「その道ではない。麒麟と対たる鵬を象徴する道、即ち王の行く道とは何かを明らかにする話、だったのだと私はこの作品を解釈しました」
    「それは今までも描かれてきたわ」
    「国の政治とは全く無関係の舞台で描かれる必要があるのです」
    「わからないわ」
    「それは十二国世界の成り立ちに関することだ、と今はそれしか言えません。ともかく、黄海を舞台にして、抽象的な道の世界を描く必要があった」
    「この巻は、そんな抽象じゃなくて、冒険ものよ」
    「そこが小野不由美女史の凄いところなんでしょう。おそらく漢文で書けば数百字ですむところを四百頁超の大長編にしてしまいました」
    「貴方のそんな全てを見透かしたような物言い、大っ嫌い!私は私の道を行きます。でも‥‥貴方、ちょっとこの巻の利広に似ているわね」
    「さあ、それはどうかな」

    年表(加筆訂正)
    1400年ごろ 奏国宗王先新が登極 妻と3人の子仙籍に入る
    1467年   六太1歳応仁の乱で罹災する。
    1470年 六太4歳延麒となる。
    1479年   瀬戸内海賊村上氏により海辺領主小松氏滅亡
    (大化元年) 雁国延王尚隆が登極
    1500年(大化21年)元州の乱 斡由誅殺

    −X75年  恭国供王珠晶が登極
    X元年   泰麒 胎果として日本に流される
    X4年 才国采王黄姑が登極
    X9年末  慶国予王が登極
    X10年  泰麒 2月蓬山に戻る
    戴国泰王驍宗が登極
    X11年 泰麒 4月日本に戻る
    X 12年 芳国峯王仲韃崩御、娘の祥瓊の仙籍剥奪 
         芳国の麒麟卵果が触により流される
    X14年  5月慶国予王崩御。
    X15年(1992年?)1月?陽子日本より来たる
         10月慶国景王陽子が登極
    X 16年  慶国で和州の乱 
         陽子伏礼を廃す
    X17年  泰麒 9月戴国に戻る

  • 『風の万里 黎明の空』で供麒の頬をバチンと張る恭国の供王珠晶は、物言い一つとってもなんて気の強いお嬢様(在位九十年だけど)なんだろうと思ってたけど、今回はその珠晶が王として選ばれるまでの旅物語だった。
    珠晶はやっぱり最初から、気が強くて生意気で、なに不自由なく育った十二歳の少女だった。混迷深まる国を憂える彼女は「大人が行かないのなら、あたしが蓬山を目指す」と決断する。
    珠晶は猟尸師頑丘と、乾に来る途中世話になった利広とともに蓬莱を目指す危険な旅に出る。何度も頑丘と、ものの考え方の違いにぶつかり合いながら、珠晶は現実を知り成長していく。
    彼女は決して黙らない。自分がおかしいと思ったことはちゃんと口に出す。答えを求める。そしてまた問いかける。ひもじい、怖い、辛いなんて、愚痴を言って人を妬む暇があれば、自分が行動すればいい。そうして初めて、愚痴を言っても許されるんだと彼女は言う。それもしないで、大人たちは嘆くばかりだと。そして、それは珠晶自身にも当てはまるのだと。
    ああ、私もそうだ。珠晶の問いかけに巻き込まれ、そして何一つ胸を張って答えることの出来ない大人の私がいる。読みながら恥じ入った。
    物語の最後まで、彼女は鼻っ柱が強いままだったけれど、信念のもと行動し成長した珠晶は決してそれだけの少女ではなくなった。
    旅を通じて、周囲にいる皆は王になるのは彼女しかいないと確信する。これから彼女になら恭国を、恭国の民を託したいと誰もが望むことになるだろう。

    また、利広の出自には、なるほどねと納得。これからも彼と供王となった珠晶との絆は続いていくだろう。楽しみだ。
    そして、黄海では思わぬ人物と再会することが出来た。黄海で生きていけると雁国の延麒六太と延王尚隆の元から飛び去った更夜。彼は黄海を往く者を守っている。これは本当に嬉しかったな。

    • やまさん
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      おはようございます。
      きょうは、快晴です。
      体に気を付けていい日にしたいと思います。
      やま
      2019/11/16
    • 地球っこさん
      やまさん、こんにちは。
      こちらも良い天気です。
      楽しい週末を!
      やまさん、こんにちは。
      こちらも良い天気です。
      楽しい週末を!
      2019/11/16
  • 今回は恭国の珠晶が主役の物語。

    高飛車なんだけど、破天荒なんだけど、とても魅力的でファンになってしまった!決してドMではないと思いますが…。

    なんでしょう、覚悟の決め方が気持ち良く、自分もこうありたいと思わせるキャラクターなのかも。

    ますます十二国記のファンになりました!
    オススメ!

  • スカッと爽快の一冊。

    舞台は恭国。あたしが蓬山を目指す…だなんて随分威勢がいい珠晶お嬢様と思いきや全てに納得。

    蓬山への道のりで出会った人たちとの問答から得ていく数々のこと。
    時に衝突しながらも常に自分で考え自分なりに咀嚼し、吸収し、次へと繋げる姿勢。
    随所に見られるこの珠晶の姿勢、実に好感が持てるんだもの。

    彼女の口からほとばしる数々の言葉たちは力強さと共にストレートに響く。

    しっかりとした自分の考えを持ちながらもちらりと見える子供らしさがまた彼女の魅力。

    最後、麒麟に放ったあの一言、可愛いくてスカッと爽快、最高!

  • いやいやいや、小野不由美さんやっぱり凄い…、と読み終えたあとに茫然としてしまいました。

    『風の海 迷宮の岸』は昇山した者たちを迎える麒麟サイドの物語でしたが、今作は王になるべく黄海に足を踏み入れ、数々の危険を乗り越えながら蓬山を目指す昇山者の旅路を描いています。
    しかも昇山を決意したのが、賢さと度胸と行動力を兼ね備えた12歳の少女なのですから目が離せません。
    この少女・珠晶の口達者でこまっしゃくれたところにはらはらしながらも、時折顔を覗かせる大人顔負けの芯のあるところに魅せられました。
    珠晶の護衛として彼女と共に黄海を行く男・頑丘との関係にひやひやしちゃいましたが、彼らを旅の最後まで見守ることができて感無量です。

    1巻から順番に読んでいると、あっちとこっちが繋がって「うお!」と胸が熱くなる瞬間もあり。
    本書で十二国全体の世界が一層ぐぐぐっと広がりと厚みを増して、この先がますます楽しみになりました。

  • “覚悟”を問いかける物語だと、思います。
    形式はロードムービー、大好物でした。

    “私はやった”と言うからには、実践せねばとの気概と、
    そして王として“人の理”を飛び越えていく覚悟。

    過程を知らず結果しか見ないのは、本質をみないということ、
    これは、今の時代にも通じる話ではないでしょうか。

    これもまた“成長の物語”なんだろうと、思います。

    個人的には、「更夜」が終盤に、
    とある肩書で出てきたのは嬉しかったですね~、なんて。

  • 十二国記シリーズで一番好きな内容だった!

    先代の恭王が倒れて27年。首都にも妖魔が跋扈するようになっていた。12歳の少女珠晶は王になる!と奮起し、黄海の蓬山を目指す大冒険が始まる。

    珠晶の勝気でサバサバした性格がかなり良し。(脳内で勝手にツンデレ変換)
    共に登極する朱黄たちとの確執もありながら、成長していく様、黄海の冒険模様はかなり読み応えあり。
    伏線である黄海の守り神・犬狼真君の正体には驚愕した。なるほどな…と。
    要所要所で挿絵のイラストがあるのだが、その適度がかなり良い。個人的にはイラストが多いと想像力を奪ってしまうため、あまり好みではないが、100ページに1ページぐらいなので、スパイス程度の匙加減でちょうど良い。
    唯一残念だったのが、恭国と珠晶が旅した導線の地図があれば言うことなしだった。笑

  • 豪商の家に生まれて、何不自由なく育てられた11歳の珠晶が昇山し、恭王になるまでの物語。

    先王崩御から27年、恭国は荒れていました。そんな中、珠晶が昇山すると伝えると、大人たちは「まさか子どもが」と笑い飛ばします。私も始めは陽子とは対象的な、勝ち気な女の子だなぁと微笑ましく見ていました。
    しかし終盤、珠晶は言いました。昇山することが義務だと思ったからと。大人たちは自分にできることがあるのに、それをやらないで他人事の顔して安全な場所から世の中を嘆くばかり。そんなの馬鹿みたいと。
    珠晶はまだ11歳の子どもながら、自分のいる場所から世界を見つめ、世界を変えるために何が必要なのか、そして自分に何ができるのかを考え、行動に移したのでした。
    私はまだまだ嘆いたり不平を言ったりしてしまうことが多々あります。もっと自分にできることを見つけて実行していかなければと、珠晶に背中を押されました。

    また、中盤の珠晶と頑丘の会話では、職業や身分の違いから残念ながら生じてしまった差別について考えさせられました。お嬢様として育てられた珠晶。そんな生い立ちの珠晶ですが、黄朱である頑丘のことを理解したいと思い、質問を重ねます。しかし頑丘は浮民になったことのない珠晶に浮民の気持ちはわからないと突っぱね、怒った珠晶は一旦頑丘から離れてしまいます。その後共に旅をしていた利広は頑丘にこう諭します。「あなたは〇〇でないから〇〇である私の気持ちは理解できない」というのは相手を拒絶する言葉だと。理解を拒絶する言葉であると同時に、理解できない相手を責める言葉だと。
    私は研修で部落差別を受けた方のお話を聞くことがありました。長く辛い経験をされている当事者の方が実際に話をされるので、感情的になられる場面もありました。何かを言っても言わなくても地雷を踏んでしまいそうで、当時の私は何も発言できなかったのですが、違う立場の者がお互いに手を取り合っていくためには、時にぶつかり合ってしまってでも対話を重ね、実際は存在しない立場の違いを乗り越えていかなければ、いや、その垣根を消滅させなくてはいけないのだと思いました。それを実践していくのには、相当の覚悟と時間とエネルギーがいることでしょう。時々珠晶のことを思い浮かべながら、今後を生きていきたいです。

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著者プロフィール

大分県出身。講談社X文庫ティーンズハートでデビュー。代表作に『悪霊シリーズ』 『十二国記シリーズ』『東亰異問』『屍鬼』など。重厚な世界観、繊細な人物描写、 怒濤の展開のホラー・ミステリー作品で、幅広いファンを持つ。

「2013年 『悪夢の棲む家 ゴーストハント(1)特装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小野不由美の作品

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