橋ものがたり (新潮文庫)

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  • / ISBN・EAN: 9784101247052

感想・レビュー・書評

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  • 過去の読書ノート第5弾

    藤沢周平を最初に何を読むかと勧めるとしたら、長編ならば7月にレビューした『蝉しぐれ』、短編集ならば本書『橋ものがたり』を勧めるだろう。今回連続紹介した藤沢周平短編集は、3冊ともいわゆる市井ものと言われる分野である。歴史上の人物はまず出てこない。名もなき庶民の喜怒哀楽を描く。そういう意味では、ほとんど現代小説のようだが、藤沢周平はそこからさらに絞り込んで人間模様を描く。この3冊に限って言えば、基本的に「男と女」の話である。しかも女は幸薄いし、男は甲斐性なしが多い。じゃあ全部同じ話なのか?ところが、私は同じ話を読んだと思ったことは、この3冊に限らず、一度もない。膨大な数の短編を書いて、彼はどうしてこうも濃密な人生をバラエティー豊かに描けるのか。それは、一節一節の文章がこの上もなく磨き上げられているし、言葉にならない想いが詰まっているからではないか?藤沢周平は若い頃、俳句を良くした。俳句は言葉を削り取ってゆく文学だ。だからこそ溢れるほどの想いを、行間に詰めることができるのだろう。

    藤沢周平にサイコキラーは登場しないし、壮大な夢を実現する波瀾万丈の人物も登場しない。けれども、その時々の登場人物の「選択」が、きっと貴方の「選択」のヒントになると違いないと思っている。

    (以下ネットなき時代なので全て自分用覚えです)
    『橋ものがたり』95.1.3読了 
    藤沢周平著 新潮文庫 440円
    88年4月発行 85年単行本

    「約束」
    5年前、橋の上で会おうといった約束、
    身を売る女は幸助をいつまでも待たせて
    自らは行かない。13才から18才へ。
    15才から20才一人前の大人になった幸助も、ほかの女とあやまちを犯している。
    幸助は次の日やってきた。
    お蝶は幸助と会えたか
    もうひとつの「蝉しぐれ」

    浅草北馬道の餝り師 酌取り女中
             照り降り町 下駄屋 おすみ

    両国橋  八名川町 指物師 源作
         入江町      おゆう

    永代橋  若狭屋のおもん

    大川橋  山伏町の吉兵衛

    橋の向こうに違う世界がある
    駅のように出会いと別れがある

    • ひまわりめろんさん
      ( ゚д゚)ハッ!
      もう第5弾、順調ですねw

      最近時代小説に目覚めて藤沢周平さんも絶対読まねば!と心に決めているんですが、色々手を広げすぎ...
      ( ゚д゚)ハッ!
      もう第5弾、順調ですねw

      最近時代小説に目覚めて藤沢周平さんも絶対読まねば!と心に決めているんですが、色々手を広げすぎて収集つかなくなってます
      収集つかない状況が結構楽しかったりもしますがw
      うーんとりあえず『蝉しぐれ』ですね!(なんの確認に来たのか)
      2022/11/23
    • kuma0504さん
      ひまわりメロンさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます♪

      うん、とりあえず『蝉しぐれ』!間違いない!
      でもね、考えてみれば、藤沢周...
      ひまわりメロンさん、こんにちは。
      コメントありがとうございます♪

      うん、とりあえず『蝉しぐれ』!間違いない!
      でもね、考えてみれば、藤沢周平の短編て、凄いんですよ。
      時代小説で映画化されているのは、司馬遼太郎か、藤沢周平が兎に角多いと思うのですが、『蝉しぐれ』を除くと、もしかしたら全部短編だったような気がする。山田洋次三部作もそうですし、「山桜」「花のあと」「必死剣鳥刺し」「小川の辺」「帰郷」全部そうです!
      それだけ行間を読み取って、丁寧に丁寧に描きたくなるものがあるということなんだと、今気がつきました!

      是非藤沢周平レビューが増えますように!
      2022/11/23
    • ひまわりめろんさん
      おお!なんか良いこと聞いた気がします

      映像化って読書の動機付けのひとつでもあると思うんですが、短編で多いと聞いて尚の事興味が湧きました
      余...
      おお!なんか良いこと聞いた気がします

      映像化って読書の動機付けのひとつでもあると思うんですが、短編で多いと聞いて尚の事興味が湧きました
      余白で語る作家さんなんですね
      お!なんかいい表現じゃないですか?(自分で言うから価値が下がるw)
      『蝉しぐれ』を読んだら、短編も読んでみたいと思います

      行間を読み取れる読書人であるといいなぁ
      2022/11/23
  • 時代小説まだまだ初心者の自分としてはちょっと驚きの短編集でした
    こんなんがあったんだ!とね

    橋を基点にした男女の機微を描いてるんですが、ううむ、なんか 大人だ
    大人な短編集だ
    そしてスパッとしたお話が多かった
    スパッとで伝わるか知らんけど

    現代を、舞台にした作品だとこういった趣の短編集はよくみかけたけど、時代小説でも出来るんだなぁと新鮮な驚きを感じつつ、でも考えたら江戸の町を舞台にしてるだけで、男と女のあれやこれやは今の時代も実はそんなに変わらんのかもね
    惚れた女が出来ると男は大概他のことが手につかなくなるところとかね
    今も昔も男はダメだなぁ

    そしてもしこの短編集が現代だったら舞台はBARなんじゃなかろうかなんて思ったりしました逆に
    こじゃれたBARで出会う男女の物語
    橋の欄干がカウンターのイメージ
    そんな大人な短編集ありそういやないわ!

    • ひまわりめろんさん
      よし、分かった!
      金と銀行こう!w
      (かねとぎんこうこう?)
      よし、分かった!
      金と銀行こう!w
      (かねとぎんこうこう?)
      2023/01/29
    • kuma0504さん
      ひまわりめろんさん、
      カウンターの数だけ人生がある。
      同じような人生模様ならば『驟り雨』、
      暗いけど原点を探るならば直木賞受賞作等が載ってい...
      ひまわりめろんさん、
      カウンターの数だけ人生がある。
      同じような人生模様ならば『驟り雨』、
      暗いけど原点を探るならば直木賞受賞作等が載っている『暗殺の年輪』、
      仄かなユーモア求めてエンタメ的な小説ならば『用心棒日月抄』
      かな。
      2023/01/29
    • ひまわりめろんさん
      クマさん

      おすすめありがとうございます
      もちろんわたくしは常にユーモアを求めておりますので『用心棒日月抄』に行きますぞよ
      クマさん

      おすすめありがとうございます
      もちろんわたくしは常にユーモアを求めておりますので『用心棒日月抄』に行きますぞよ
      2023/02/07
  • 逸品の一冊。

    10篇の橋を舞台に描かれた物語はしっとりした味わいの逸品。
    この言葉がしっくりくる。

    さまざまな思いを胸に抱えて、橋を渡る市井の人々。
    その橋の上で行き交う男女の心の掬い合いと交じり合い。

    会話だけでも痛いほど伝わる心情なのに情景描写がさらに拍車をかける。
    そこが何とも味わい深い。

    各話最後は雫が一滴、心を潤すような感覚がたまらなかった。

    橋を渡る後ろは闇、橋の向こうに待ち受けるのは仄かな灯か…。

    いつの世も悩める心の始発と終着は常に橋を渡るようなものなのかも。

    特に男女の心はゆらゆら…吊り橋のような気がする。

  • 心があったかくなる人情ものの短編集。人を信じたくなる話です。

  • 藤沢周平で一番好きだった橋物語を十数年ぶりに再読。
    あの頃は小糠雨の行き着く先は行き止まりの恋が残酷で儚さが美しくて好きだった。
    今回読んでも好きだったけど、約束の方が心にじわじわきたかなあ。

    藤沢周平は心にじわじわと響いてやっぱりいいなあ。
    曇りとか雨の日に読みたい。

  • 短編なのだけど、それぞれ読み出したらすっと入り込める。
    特に好きなのは 小さな橋で 。

  • 江戸時代、橋を舞台に、男女の情を書いた短編集。
    『ヨイ豊』の梶よう子推薦本。

    出てくるモチーフもシンプルな時代、浮気や不倫や人に言えない事情も暗黙の了解として人と人が繋がりあっていた。
    そういうのが人間で、しかたがないことなんだよ、と言っているような穏やかな一作。

  • 藤沢周平の小説、好きだなぁ、と思えるようになると、大人になったなぁと感じる。想いが通じて一緒になることが必ずしもハッピーエンドではないこともある。そんなことを感じた一冊。

  • 様々な人間が日毎行き交う江戸の橋を舞台に演じられる、出会いと別れ。男女の喜怒哀楽の表情を瑞々しい筆致に描く傑作時代小説。

  • でもちょっと飽きてきたかな、このストーリー展開、って感じ
    飽きてきたとは言うものの、藤沢周平好きですよ、読み続けています。

    先に『男性に都合の良い、男性が好むような女性像で、そこに違和感を感じました』と、感想がありましたが、言われればそうだなと思いました。
    師の小説には、いろいろな女性が出てきますが、「男性から見た女性」ですね。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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