- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101247076
感想・レビュー・書評
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義理ある人のさらわれた娘「およう」を探すために命懸けの探索をする伊之助には自身も岡っ引き時代に妻に裏切られた暗い過去を背負っている。その辛さゆえ女性に対する恐れを持ってしまって、もしももう一度一緒に暮らすならばこの人しかいないと思っている昔馴染みの女性おまさの元に飛び込んでいく度胸が無い。
さらわれた娘の探索に意外な形でこのおまさが関わってくる。
そしてただのかどわかしかと思われた事件も思わぬ大物が絡んで同心の力でも、ましてや元岡っ引きなどでは手が届かない所へ行ってしまい、おようを取り戻すことなどできそうもないと諦めた時、意外な糸口が現れる。
シリーズ1作目の本作品はおよう、おまさ二人の女性に関わりながら伊之助がつらい過去から立ち直るかもしれないきっかけを見出したような気がする。
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今村翔吾先生の「教養としての歴史小説」を読んだ。よし私も何か読んでやろうじゃないの。でも、歴史小説から始めるのは非常にまずい。何故なら過去吉川栄治先生版宮本武蔵は積読で終わっている。時代小説の方が入門にはよかろう。先生のおすすめリストの中から私も知っている作家さんは、、藤沢周平先生だ。名前は聞いたことがあるぞ。今村先生を返却ついでに図書館に行ってみる。藤沢、藤沢と、、、え!!全集を見つけた。がしかしだ。26巻もあるではないか。もうドン引きだよ。途方にくれて藤沢周平を過去持ち歩いていた友人にLINEしておすすめの作品を訊いてみる。彼女は有名どころ(たそがれ清兵衛とか蝉しぐれとか)を推してこない。この辺りは面白いんだが渋いと→時代小説にチャレンジしようとしている私にはコレジャナイ感らしく、そんな彼女がお勧めしてくれたのがこの消えた女なのだ。
想像より全然いけた、なんなら面白くて参った。主人公がかっこよくて強くてもうヒーローものなのかというくらい私のテンションは上がった。これシリーズ化されてるので他の2冊もどうしても読みたい。みなさんに一つおききしたいのだが、読むと自分の言葉も江戸っ子っぽくなってしまうのはみんなもそうですかね?あっしが、、とか、へい、、とか言ってしまいそうになる自分がいる。 -
L 彫師伊之助捕物覚え1
しまった。こんなシリーズを読みのがしていたとは。藤沢周平、やっぱり隙がない。哀愁漂うところも情緒溢れるところも抜かりないし、無駄な文字はない。途中悪態つくことなく一気読み。隙がないから読むの大変だけど充実感で満たされる感じ。
しまいこんでいる藤沢周平本を久々にだしてまた読もう。 -
元岡っ引の伊之助は女房が死んで以来、十手を返し彫師として働いていた。だが恩のある元岡っ引の弥八の娘が行方知れずと知り、探索に乗り出す。
おもしろかった!藤沢周平の捕り物がこんなに面白いなんて!もっと早くに読んでいればよかった!ぐいぐいと引き込まれて一気に読み終わってしまった。頁の残りが少なくなる事を惜しく思える本は久し振りでした。満足!
唯一、解説が不快でした。やすっぽい文章に読後の余韻をぶち壊されてうんざりしました。-
「読後の余韻をぶち壊されて」
それは残念でしたね、単行本には解説は付かないコトが多いのに、どうして文庫には付くんでしょうね?(と言いつつ、私...「読後の余韻をぶち壊されて」
それは残念でしたね、単行本には解説は付かないコトが多いのに、どうして文庫には付くんでしょうね?(と言いつつ、私は先にサラっと読んじゃうコト多し)
それは別として面白そうですね。2012/12/14
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版木彫り職人の伊之助は、元凄腕の岡っ引。逃げた女房が男と心中して以来、浮かない日を送っていたが、弥八親分から娘のおようが失踪したと告げられて、重い腰を上げた。おようの行方を追う先々で起こる怪事件。その裏に、材木商高麗屋と作事奉行の黒いつながりが浮かびあがってきた……。 です。
藤沢周平の読み漏らし作品です。こんな面白い作品を漏らしていたんだ。 -
どんどん深くなる闇にも関わらず突っ込んでいく伊之助がいい。
関わらずにはいられないという感じ。
闘うシーンも迫力と躍動感があって好き。
江戸時代、と言うことで生活様式など異なるところはたくさんあるのに、それでもスラスラ読めてしまう文章でした。 -
「藤沢周平」の長篇時代小説『消えた女―彫師伊之助捕物覚え―』を読みました。
「藤沢周平」作品は、アンソロジー作品『家族の絆』に収録されていた短篇『意気地なし』以来なので、約7年振りですね… 「松本清張」、「近藤史恵」、「井川香四郎」、「泡坂妻夫」の作品に続き、時代小説・捕物帳です。
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元・岡っ引きの「伊之助」の心に去来する、別の男と死んだ女房の面影――。
時代小説の名手が描く、江戸のハードボイルド。
シリーズ第一作。
版木彫り職人の「伊之助」は、元凄腕の岡っ引。
逃げた女房が男と心中して以来、浮かない日を送っていたが、「弥八親分」から娘の「およう」が失踪したと告げられて、重い腰を上げた。
「およう」の行方を追う先々で起こる怪事件。
その裏に、材木商「高麗屋」と作事奉行の黒いつながりが浮かびあがってきた……。
時代小説の名手「藤沢周平」が初めて挑んだ、新趣向の捕物帖――シリーズ第一作!
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「彫師伊之助捕物覚え」三部作の第1作にあたる作品で1979年(昭和54年)に刊行された作品です、、、
元凄腕の岡っ引で彫師の「伊之助」が十手を持たない一職人の身で難事件に挑むシリーズ物で、ハードボイルドタッチの時代小説という独特の世界観が愉しめる作品でした。
■かんざし
■やくざ者
■ながれ星
■離れの客
■おうの
■遠い記憶
■闇に跳ぶ
■凶刃
■春のひかり
■解説 長部日出雄
版木彫り職人の「伊之助」は、元凄腕の岡っ引きだが、女房が男と駆け落ちした挙句に無理心中してしまった心の痛手から、岡っ引きをやめ、一人暮し… 版木彫りの職人になり、職場と裏店を往復する平凡な暮らしをしていたが、岡っ引きをしていた頃の恩義のある元親分の「弥八」から、行方不明になっている一人娘「およう」の捜索を頼まれ、断り切れず捜索を開始する、、、
「伊之助」は、職場である彫藤に通いながらも、定待ち回り同心「半沢清次郎」等と情報交換しながら捜索を進めますが、「およう」の行方は知れず、行く手には材木商「高麗屋」と工事奉行「臼井」の絡む巨悪と、不正を怒り復讐を誓う怪盗「ながれ星」が立ちはだかる… それでも「伊之助」は、岡っ引き時代に培われた読みや勘を駆使し、制剛流のやわらを仕込まれた体術で身を守り、「およう」救出に執念を燃やす。
「およう」の失踪、「高麗屋」と「臼井」の暗い関係、怪盗「ながれ星」の正体と目的… 「伊之助」は、命の危険も顧みず単身巨悪に挑み、緻密かつ複雑に絡み合う相関関係を地道に洗い出し、一歩ずつ真相に近付いていく、、、
可哀そうな女「およう」、「高麗屋」の女房で哀れな女「おうの」、「伊之助」に憧れ、彼を支える健気な女「おまさ」… 三人の女それぞれの運命にも思いを巡らせることのできる作品でした。
門前仲間町等江戸下町を舞台にした、ハードボイルド的ミステリ小説として愉しめる作品でした、、、
一気読みでしたね… 面白かったです。
そして、「藤沢周平」の文章の巧さを感じた作品でもありましたね… 簡素できめのこまかい文章で、江戸の町のたたずまいや、そこに生きる人間の風貌を目に見えるように描き出し、独特の雰囲気と情緒が醸し出されていると感じました、、、
読みやすくて、その情景が自然と頭に浮かんでくる… 理想的な文章ですよね。 -
1983(昭和58)年発行、新潮社の新潮文庫。この人が主人公の話って年代別代表作アンソロジーで読まなかったっけ。違う主人公かな。こちらはハードボイルドを思わせる主人公。アンソロジーの方はそこまでハードボイルの味はなかったような気が。それはともかく、ハードボイルドらしく、悪役(少なくとも黒幕)はこの人だろうという人が悪役ですし。ヒロインもハードボイルドのヒロインらしい人かな。とはいえ、(解説にもあるが)模倣ではなくちゃんと江戸時代してます。
他:「解説」長部日出雄(昭和58年8月、作家)、備考:昭和54年12月に立風書房より刊行されたもの