時雨みち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (365ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101247090

作品紹介・あらすじ

にがい思い出だった。若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身篭っていたおひさを捨てた。あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという…。表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 短編11編。
    帰還せず/飛べ、佐五郎/山桜/盗み喰い/滴る汗/幼い声/夜の道/おばさん/亭主の仲間/おさんが呼ぶ/時雨みち

    すこしゾッとする話や、やりきれない話が多め。舞台はお江戸で、200年から昔の人間模様で、この本が書かれたのがだいたい40年そこら昔のこと。なのに今読んでる現代の私の胸の奥が、物語のなかの後悔や不首尾に共鳴してしまっていたりする。うまく生きられないねえ、いまもむかしもにんげんは、、、、
    という溜息とともに閉じる、そんな読後感。となりのひとの話のようで、どこかに自分がいたようで。大人にオススメな短編集。

  •  「おさんが呼ぶ」がとてもよかったです。ラストでおさんが兼七を呼びに走り寄るシーンはその情景が目に浮かびました。人の心の奥底で揺れ動く感情を、文章の「裏側」から感じさせられる、そんな作品ばかりでした。

  • 2023/11/26 読了
     市井もの短編集。え、その後どうなったの?という終わり方の話が多い。無用の殺しで隠密の素性がバレそうになるが、その後どうなるで終わる「滴る汗」など。より現実に迫っている、と解説されているが・・・

  • 藤沢周平の短篇時代小説集『時雨みち』を読みました。
    『三屋清左衛門残日録』に続き、藤沢周平の作品です。

    -----story-------------
    あの時あの女と添い遂げていれば……。
    捨てた女を妓楼に訪ねる男の肩に、時雨が降りかかる。
    取り返しのつかない時の流れを刻む珠玉の藤沢文学11編。

    にがい思い出だった。
    若かったとはいえ、よくあんな残酷な仕打ちが出来たものだ。
    出入りする機屋の婿養子に望まれて、新右衛門は一度は断ったものの、身籠っていたおひさを捨てた。
    あれから二十余年、彼女はいま、苦界に身を沈めているという……。
    表題作「時雨みち」をはじめ、「滴る汗」「幼い声」「亭主の仲間」等、人生のやるせなさ、男女の心の陰翳を、端正な文体で綴った時代小説集。
    映画化 山桜(2008年5月公開)
    -----------------------

    1979年(昭和54年)から1981年(昭和56年)に発表された作品11篇を収録した作品… 『夜の道』、『おさんが呼ぶ』、『時雨みち』は再読、『山桜』は、田中麗奈、東山紀之主演で2008年(平成20年)に映画化されており、1年半くらい前に観たことのある作品です。

     ■帰還せず
     ■飛べ、佐五郎
     ■山桜
     ■盗み喰い
     ■滴る汗
     ■幼い声
     ■夜の道
     ■おばさん
     ■亭主の仲間
     ■おさんが呼ぶ
     ■時雨みち
     ■解説 岡庭昇

    田中麗奈、東山紀之主演映画『山桜』の原作を収録… とり返しのつかない回り道をしてしまった――若くして不幸な結婚を二度経験した野江、、、

    一度目は夫に死なれ、二度目の夫は、野江を出戻りの嫁と蔑んでいる… しかし二度も失敗することなどできず、耐え忍ぶ日々を送っていた。

    そんなある日、山桜をひと枝折ろうと、爪先立って手をのばす野江の頭上から、不意に男の声がした… 「手折って進ぜよう」――薄紅いろの山桜の下、たった一度出会ったその男は……。

    『山桜』をはじめ、全11作品を収録した時代小説集。

    藤沢周平の短篇集はクオリティが高いですねー どの作品も面白かった! 特に主人公・野江や一途に野江のことを想う手塚弥一郎の生き方に共感でき、爽やかな読後感に好感が持てる『山桜』は大好きです。

    それ以外で印象に残ったのは、

    公儀隠密の厳しい生き方が強烈な読後感を残す『帰還せず』、

    殺人は許されないことだけど… 因果応報の結末に納得してしまった『飛べ、佐五郎』、

    汗が滴るほどの緊迫感… そして策を弄することにより、墓穴を掘ってしまった結末が忘れられない『滴る汗』、

    幼い頃を思い出すシーンが、映像に浮かんできそうなほど鮮烈な『夜の道』、

    解決のないエンディングが恐ろしさを増幅させる『亭主の仲間』、

    明るい未来が予感できる結末が心地良い『おさんが呼ぶ』、

    かなー どの作品も面白いんですけどね。

  •  藤沢周平「時雨みち」、1984.5発行。山桜、幼い声、夜の道、おさんが呼ぶ、時雨みち など11話。味わいはあるけど、せつない、やるせない話が多い。「飛べ、佐五郎」や「滴る汗」「おばさん」はダメな男だし、「亭主の仲間」は気持ちが悪い話。最初に紹介した5つの短編がお気に入り。特に、「おさんが呼ぶ」と「夜の道」。

  • 表題作『時雨みち』の物語展開は、藤沢周平ならではのものだと思う。
    過去の過ちに向き合うことの勇敢さ、あるいは偽善性を言い立てるのではなく、取り返しのつかないことを胸に秘めて、それでも生きることの哀しさを物語る。
    時雨みちを歩む主人公と同じように、読者も雨に打たれているように感じる。
    哀しいが、それでも生きることへの絶望を感じさせないのは、さすがの筆力だと思う。

  • 青樹社の単行本で。11篇の短編集だが、読後感幸・辛・幸・辛とテレコで並んでいるような感じ。個人的にはやはり”幸”のほうの「山桜」「おさんが呼ぶ」が好みであるが、どの作品も、ひとの過ちと後悔、苦さが通底していていい。

  • 久しぶりの藤沢周平作品。映画『山桜』を見て原作を読みたくなり手に取った。
    収録された11の短編のうち、お気に入りは『おさんが呼ぶ』。
    ぜい肉をそぎ落とした文章に、情景がありありと浮かぶ様は、さすがの藤沢作品。映画化を望みたい。
    『山桜』については、キーマンとなる手塚弥一郎の出番がほとんどないにも関わらず、その存在感が圧倒的。今更ながらに著者の手腕に驚いた。

  • 2020.9.2(水)¥200(-20%)+税。
    2020.9.7(月)。

  • 2019年3月課題
    収録作品より
    「山桜」

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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