龍を見た男 (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (366ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101247182

感想・レビュー・書評

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  • 解説に「味読」とあるが、藤沢周平の小説はその言葉といい文章といい、味わって読むという表現がとてもふさわしい。
    本書は、市井もの7篇武家もの2篇をおさめた短編集だが、読後こころにポッと灯りがともるような作品ばかり。
    『帰ってきた女』『おつぎ』は、こうなってほしいという読者の藻いを裏切らない結末にホッと。
    『女下駄』は、女房に男がいるのではと疑った夫(その心の揺れ動く描写に親近感さえ)が、その疑惑が解消された様にも、ホッと。
    武家もののひとつ『切腹』は、葉室麟の小説を連想。
    どれも、再読再再読したくなる作品ばかり。

  •  ♪~下駄を鳴らして奴が来る 腰に手ぬぐいぶらさけて~♪ かまやつひろしさん、我が良き友よ、2017.3.1没、享年78。藤沢周平「龍を見た男」、短編9話、1983.8刊行、1987.9文庫。下駄を預けられた感じの作品(余韻を残す作品)、「おつぎ」と「弾む声」、とてもよかったです。「弾む声」が一番です。「逃走」は面白かったですw。

  • 悲しい涙ではなく、熱い涙が出た。

  • 2018.7.2(月)¥180(-2割引き)+税。
    2018.8.25(土)。

  • 帰って来た女
    おつぎ
    龍を見た男
    逃走
    弾む声
    女下駄
    遠い別れ
    失踪
    切腹
    市井の人々の仕合せと喜怒哀楽を描いて卓越な技倆を示す傑作時代小説集。

  • 短編9作。盛り上がりのない普段の話に、じわっと迫るものがある。「失踪」「切腹」が良かった。2015.3.28

  • 意味深な終わり方やさらっとしたものまで,素晴らしい短編です。

  • 天に駆けのぼる龍の火柱のおかげで、見失った方角を知り、あやうく遭難を免れた漁師の因縁(表題作「龍を見た男」)。駆け落ちに失敗して苦界に沈んだ娘と、幼馴染で彼女をしたう口がきけない男との心の交流(「帰って来た女」)。絶縁しながらも、相手が危難の際には味方となって筋を通す両剣士の意地(「切腹」)。その他、市井の人々の仕合せと喜怒哀楽を描いて卓抜な技りょうを示す傑作時代小説集。

    1.帰ってきた女(★★★★☆)
    2.おつぎ(★★★☆☆)
    3.龍を見た男(★★☆☆☆)
    4.逃走(★★☆☆☆)
    5.弾む声(★★★★☆)
    6.女下駄(★★★☆☆)
    7.遠い別れ((★★★★☆)
    8.失踪(★★☆☆☆)
    9.切腹(★★★★★)

    切腹はいい!

  • 市井の人々の生活がいいね〜
    心にしみます

  • 短編集。
    「帰ってきた女」
    藤次郎の妹おきぬは破落戸と駆け落ちした。女郎として死に掛けている事を知り藤次郎は助けに行くべきか躊躇する。子飼の職人音吉は生来言葉が喋れなかったが、おきぬだけとはやりとりが可能だった。音吉はおきぬを助けに行ってくれと話せぬながらも頼み込む。良い結末。

    「おつぎ」
    三之助は借金を綺麗にするためにと大店の出戻り娘との縁談を進められる。迷う最中、料理茶屋で働く幼馴染おつぎと再会する。相思相愛となるが、おつぎは三之助の事情を知って姿を消す。三之助には幼い頃に人殺しの嫌疑を掛けられたおつぎの祖父を救う証言をしなかった後悔があった。二度と後悔はしないとおつぎを探す決意をしたところで終わる。どうなるのかな…。

    「龍を見た男」
    漁師の源四郎は村の仲間とは協力せず一匹狼で漁に出る。己の腕のみを頼みとし、勝手気ままに生きていたが、甥を死なせ、自らも海に呑まれそうになった時、龍神に助けを乞う。源四郎に従うばかりに見える妻が時折見せる強さが頼もしかった。

    「逃走」
    銀助は小間物売りの姿で金のある家を物色する盗人。ある日、夫婦喧嘩の末に男が出て行くところに居合わせる。残された女と赤ん坊を気にかけているとどうやら女は新しい男を連れ込み赤子を始末しかねない様子。自らが捨て子であった銀助は堪らず赤子を盗み出す。結末もいい。銀助がどこかでヘマをしませんように、と思わず祈ってしまう。

    「弾む声」
    隣家からいつも聞こえてくる元気な女の子の声は隠居した身である助左衛門夫婦にとって毎日の彩りだった。しかしその声が聞こえなくなり心配した夫婦は事情を知って…。優しい話。女の子が幸せになれるといい。

    「女下駄」
    下駄職人の清兵衛は女房お仲が若い男と歩いていたと知らされる。疑心暗鬼で仕事も手につかず、お仲のために作った下駄を捨てそうになる。拗れることなく誤解が解けてよかった。

    「遠い別れ」
    糸問屋の主である新太郎は借財を返しきれず、店を畳むことになった。かつて捨てた女おぬいに救いの手を差し伸べられ、散々に迷った末に…。

    「失踪」
    呉服屋を営む徳蔵夫婦。商いは順調だったが徳蔵の父・芳平が呆け始め徘徊するようになってしまう。女房のおとしは疲労困憊、奉公人を雇おうかと話しているうちに芳平がかどわかされる。犯人から身代金を要求されるが、徳蔵はそれを値切り続ける。テーマは重いがどこかコミカル。

    「切腹」
    助太夫と甚左衛門は道場仲間だった。かつては親密な交流があったが、根っこのところでどうも相性が悪い。互いに納得ずくで決裂していたが、甚左衛門が切腹したと聞くなり助太夫は事の真相を探り、甚左衛門の汚名を晴らす。相性が悪いながらも上役に推挙したり、命をかけたり。最後まで互いを認め合っていた。厄介な友情というか、絆。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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