静かな木 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (123ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101247243

作品紹介・あらすじ

藩の勘定方を退いてはや五年、孫左衛門もあと二年で還暦を迎える。城下の寺にたつ欅の大木に心ひかれた彼は、見あげるたびにわが身を重ね合せ、平穏であるべき老境の日々を想い描いていた。ところが…。舞台は東北の小藩、著者が数々の物語を紡ぎだしてきた、かの海坂。澹々としたなかに気迫あり、滑稽味もある練達の筆がとらえた人の世の哀歓。藤沢周平最晩年の境地を伝える三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 静かな木
    2015.09発行。字の大きさは…小。
    岡安家の犬、静かな木、偉丈夫、海坂藩の地図の短編4話。

    【岡安家の犬】
    海坂藩の岡安甚之丞は、仲間と犬鍋を食べていたら、野地金之助は、この赤犬は俺が甚之丞が可愛がっている愛犬のアカを捕まえて料理したのだと言う。甚之丞は、あまりのことに激怒して絶交し、妹・八寿との縁談を断る。
    始め犬を煮て食べる犬鍋には、ビックリしました。金之助が、甚之丞を怒らして甚之丞の妹・八寿との縁談が壊れてからの動きが、滑稽で笑いを誘います。

    【静かな木】
    藤沢周平さんらしい作品に仕上がっています。この作品は、省略の上手さです。あれと思っても、次にはその情景が頭に浮かびます。最初に書いた文が、後で生きて来ます。短編ならではの見事な書き方です。まさに作品と呼ぶに相応しい物語に仕上がっています。

    【偉丈夫】
    13ページの文章ですが、驚きと楽しさの詰った物語です。

    【海坂藩の地図】
    落語家・立川談四楼が、解説を書いたものです。
    2021.01.14読了

  • H29.4.9 読了。

  • 藤沢周平作品は何故こんなに心落ち着くのだろう。特に最晩年の作品だからかとても洗練された文章で全く無駄なものがない。 確かにガツンとこない作品もあるがどんな内容でも心に響くのはやはりこの作者の持つ筆力なんだろうと思う。 短い作品だからと言って内容が薄いわけでは決してなく、兎に角読んでる時間に幸福感を感じれるのは凄い! 心落ち着きたい時にふっと読みたくなる作者。 かなりの作品数があるので他作品も一気ではなくゆっくり読み進めていこうかと思う。

  • 著者最晩年の作品だそう。どの作品もなかなか屈託があって、爽快痛快というわけではなく、マニア好みなのかもしれない。

    表題作の「静かな木」。
    優秀で人格者の夫妻の息子が必ずしも優秀な人格者とは限らず、親へのコンプレックスから悪意を抱えるということはよくあることだが、この作品の息子はてらてらとした赤ら顔で腐敗しきった脇の甘い権力者として描かれ、背景経緯や複雑な心理描写が全くないので、「恩ある人のために自らも手を汚したが悪辣なその息子に冷や飯を食わされて巻き返しを図る」というのがなんかこう、ピンとこなかった・・

  • 多分に同じ日本人としてバックグラウンドを共有している、というのがあるんだろうけど、めっさ薄い本なのに、短い文章なのに、なんかいろいろと理解できて、いろんな裏にあるものまで想像できて、ああ分かるわ、良いわーってなる本。
    偉丈夫なんか、こんな上司は嫌だ!ランキング上位になりそうなタイプなのに、なんとなく良い話っぽくなってて、それでも良いかって思ってしまうし。
    まぁおとぎ話って言われちゃそれまでよ。

  • 藩の勘定方を退いてはや五年、孫左衛門もあと二年で還暦を迎える。城下の寺にたつ欅の大木に心ひかれた彼は、見あげるたびにわが身を重ね合せ、平穏であるべき老境の日々を想い描いていた。ところが……。舞台は東北の小藩、著者が数々の物語を紡ぎだしてきた、かの海坂。澹々としたなかに気迫あり、滑稽味もある練達の筆がとらえた人の世の哀歓。藤沢周平最晩年の境地を伝える三篇。

  • 表題の静かな木の他に、岡安家の犬と偉丈夫の3編の短編集。いずれも読者の期待を裏切らない安心して読める展開。架空の藤沢周平空間にすっと入り込まされる。作中人物の感情と同化させる作風は心憎い。息抜きの時間に読み始めても最後まで読ませる誘導と苦にならない分量、短編の使い方がうまい。

  • 藤沢周平の短編集。
    文字も大きく、30分くらいで読めてしまう。
    薄っぺらい本。

    しかし侮るなかれ。
    藤沢ワールド炸裂。


    「岡安家の犬」では散々読者をひやひやわくわくさせておいて、ラストはあっさり。
    でもこれがまたいいのだ。
    このラストで読者は心和ませるのだ。
    人間と人間のつき合いはこうでなくちゃ。

    「静かな木」では欅の木のすっと立つ潔さに隠居した自分の人生を見つめるきっかけを得る孫左衛門。藤沢周平らしい安心感のあるストーリー展開と、
    頑張って腰が痛くなってしまう主人公の人間くささに親しみを持つ。

    とにもかくにも短編でこれだけ読者を満足させるとは、さすが藤沢周平。

  • 藤沢周平の短編集。
    江戸時代も、人は生まれ、育ち、何かをなし、老いて、死んでいく。それを漠然と感じさせてくれる話。
    不自由な中の自由、自由の中な不自由を考えた。

  • 晩年の三作品が納められた短篇集。
    短い分ぎゅっと詰まった味わい深さ、そして架空の藩である海坂藩の地理を違和感なく想像させられる筆の力のすごさに感服しました。

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著者プロフィール

1927-1997。山形県生まれ。山形師範学校卒業後、教員となる。結核を発病、闘病生活の後、業界紙記者を経て、71年『溟い海』で「オール讀物新人賞」を受賞し、73年『暗殺の年輪』で「直木賞」を受賞する。時代小説作家として幅広く活躍し、今なお多くの読者を集める。主な著書に、『用心棒日月抄』シリーズ、『密謀』『白き瓶』『市塵』等がある。

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