オーデュボンの祈り (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250212

作品紹介・あらすじ

コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている"荻島"には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂さんのデビュー作。現実味がない設定の物語だが、意外と馴染むことができて、読みやすく、飽きない。怖くて暗い物語だが、読み終わった時には不思議と爽やかな気持ちになる。デビュー作でこんな面白い作品を書けるのは凄い。そして、ファンタジーとミステリーの絶妙な混ざりで、伊坂さんらしい世界観が出来ていると思う。個人的にはこの前読んだ砂漠の方が少し良かった気がするが、この作品もかなり楽しめた。最初にこれを読んだ方が良かったかもしれない。

    コンビニ強盗をしてしまい、外との関わりが一切ない島に逃れた主人公の伊藤。この島で未来を見ることができる優午と出会う。この島には何かが欠けている。島の独特な感じも良く、登場人物のそれぞれバラバラなとても個性的な性格も良かったと思う。異世界に行ったようなとても不思議で面白い作品だった。

  •  伊坂幸太郎さん2000年のデビュー作。今更ですが、未読でした。
     150年間も鎖国状態の荻島を舞台に、辿り着いた主人公が遭遇する事件を描いた物語です。

     特異な状況設定や不思議な人物設定、さらにはストーリー展開など、荒唐無稽に思えるのですが、これらの設定が伏線回収や事件解決の鍵となっています。読み進めるほど面白さが増していきます。加えて、軽妙で洒落た会話に伊坂さんのセンスを感じ、楽しく読み進められました。
     実在したアメリカの画家・鳥類研究家のオーデュボンとリョコウバト(乱獲で絶滅)のエピソードは、寓話のようでもあり、物語に深みを与えてくれている気がします。

     本作は伊坂ワールドの原点とも言えると思いますが、この世界観を楽しめるか否かは、人それぞれかもしれません。予測不能の展開や意味不明な状況を、理解・納得しようと頑張らないことですね。
     一つ一つの小さなエピソード(全部意味があります)、ユニークな表現や登場人物の面ふ白い会話が、伊坂作品を楽しむポイントではないでしょうか?
    (あんた、偉そうに何様?)

     シュールな特異世界ながら、人物の心理描写は繊細でリアルです。また、多くの伏線回収が見事で、計算し尽くされた感もあります。優しさや郷愁も感じさせられる不思議な魅力は、デビュー当時からその異彩を放っていたのだなと思える作品でした。

  • 2023.11.2 読了 ☆9.2/10.0


    伊坂幸太郎さんのデビュー作。


    高校生の時に読み、その時は漠然と「喋るカカシが殺される話」としか読めなかったのが、大人になって再読してみると物語の面白さはもちろん、そもそもの設定の奇抜さに驚かされる。

    鎖国のように外の世界から閉ざされた島「荻島」に仙台からやってきた主人公・伊藤。何故自分がこの島にいるのか、何故カカシが喋るのか、というところから物語が始まるのだ。

    この設定を思いつき、単なるファンタジーで終わらせない手の込んだ要素も散りばめられてる。

    未来のことが分かる喋るカカシ・優午
    反対のことしか言わない元画家・園山
    「島の掟として」殺人を許された、詩と自然を愛する男・桜

    などなど、個性的なキャラクターが多数登場する。


    物語は序盤からゆっくりと、伊藤が島民や未来がわかる案山子と出会い交流していくもの。
    言葉を話すカカシの周りで色々な事件が起きて話題も尽きないが、読み進めるほど各キャラクターの想いが垣間見えて愛おしくなる。
    それはまるで小説版:不思議の国のアリスみたいな雰囲気。


    個人的には、遡ること何百年前の江戸時代、案山子が誕生する徳之助と禄二郎のストーリーに感動…

    あと伊東の祖母・峯のあたたかな言葉も突き刺さり感動…

    そして終盤、P.281のような同じ人間とは思えない城山との対峙の場面の桜、かっこいい!(よくぞやってくれた。)




    そして何より、タイトルの「オーデュボン」というフランスの動物学者とリョコウバトの話は人間の傲慢さと集団心理の怖さ、世界の大きな流れというものを前にした一人の人間の無力さゆえの「祈り」に心打たれました。



    伊坂さんのセンスあるセリフがデビュー作から存在していたなんて改めて脱帽ですし、やっぱりこのお方はストーリーテリングの天才だ…
    まだ未読の物語も読むのが楽しみです

    • よっぴーさん
      わーーーさん
      こんにちは。

      わーーーさんの感想を読んでみて、面白そうだなーと思い、メッセージを送りました。
      僕は、まだ、首折り男のための協...
      わーーーさん
      こんにちは。

      わーーーさんの感想を読んでみて、面白そうだなーと思い、メッセージを送りました。
      僕は、まだ、首折り男のための協奏曲を読破したばかりで、デビュー作をまだ読んでいません。
      首折り男も、複数の人物が巻き起こるバラバラの事件が1つに繋がっていく所が面白いです。

      事件が繋がってからの結末の驚きは、この作者の特徴だと思いました。

      デビュー作も読んでみますね。
      2023/11/06
    • わーーーーーさん
      よっぴーさん、コメントありがとうございます!

      そうなんですね!逆に『首折り男のための協奏曲』まだ読めてないのですごく気になってます

      この...
      よっぴーさん、コメントありがとうございます!

      そうなんですね!逆に『首折り男のための協奏曲』まだ読めてないのですごく気になってます

      この人の特徴の一つに、さまざまな人たちのそれぞれの事件や日常が収斂して一つに繋がっていく"群青劇"があるので、ぜひデビュー作も読んでみてください!
      2023/11/10
  • 伊坂作品、刊行順に読んでみたくて再読♪
    もう何年も前に読んだ作品だけど、正直その時は、あまりよく分からず入り込めなかったんだよな〜。
    久しぶりにほとんど忘れた状態での再読。

    コンビニ強盗に失敗し逃走していた主人公は、気づくと見知らぬ島に来ていた。
    そこは島民以外誰にも知られていない、遮断された島だった。
    妙な人達が住むその島で起こった奇妙な事件。
    事件の謎と、この島に欠落している何かを探すお話。

    なんとも独創的でダークな話だった。
    現実と虚構が交錯する不思議な感じ。
    ミステリーなのかもだけど、結構ファンタジー要素が強いかも。
    個性的なキャラも勢揃い。
    しゃべるカカシに、反対の事ばかり言う男、人を撃っても許される男、地面の音を聞く女、、。
    そしてマリアビートルで言うなら"王子"の様な極悪サイコキャラも!
    個人的には"桜"推し♡

    非現実的でよく分からないとこもあるけど、今回はそれはそれで面白く読めた。
    私、ちょっと成長したのか?!笑
    なんといっても伊坂さんの作品、色々散りばめられてた伏線が後半に回収されて、あ〜!っとなるのが気持ち良かった✩︎⡱














    • mihiroさん
      ほんとだ、難しすぎて無理かも笑笑
      ほんとだ、難しすぎて無理かも笑笑
      2024/02/06
    • 傍らに珈琲を。さん
      mihiroさん、こんばんは!
      このところ忙しくて疲労困憊、ちょっと読書ペースが落ちておりました。

      オーディュポンの祈りに出てくる伊藤って...
      mihiroさん、こんばんは!
      このところ忙しくて疲労困憊、ちょっと読書ペースが落ちておりました。

      オーディュポンの祈りに出てくる伊藤って、他の伊坂作品にも登場しますよね♪
      重力ピエロとか。
      2024/02/10
    • mihiroさん
      傍らに珈琲をさん、おはようございます(^_^)v
      忙しくてなかなか読む時間がない時ってありますよね〜。
      私はこのところ韓ドラにハマってしまっ...
      傍らに珈琲をさん、おはようございます(^_^)v
      忙しくてなかなか読む時間がない時ってありますよね〜。
      私はこのところ韓ドラにハマってしまって、しばらく読書量減りそうです笑σ(^_^;)

      うわぁ〜よく覚えてますね〜!
      重力ピエロは読んだんですが、分かってなくてᔪ( ᐪᐤᐪ )ᔭᐤᑋᑊ̣
      伊坂さん読んでないのも多くて、リンクも多いって聞くので、そういうの見つけて楽しみながらぼちぼち刊行順に読みたいな〜と思ってます✌︎(๑˃̶͈̀◡︎˂̶͈́๑)✌︎
      2024/02/11
  • 恋人と別れ、会社を辞め、さらにコンビニ強盗にも失敗した主人公、伊藤。
    目を覚ますと見知らぬ島に辿り着いていた…
    初めての伊坂幸太郎さんの作品を手にしました。
    言葉を喋り未来が分かる案山子、真逆の言葉を発する画家、人を殺して許される男・・・。
    ある日、案山子が殺される(壊される)ところから物語が進んでいきます。
    島での話、本土での話、過去の話と視点が変わりながら進んでいきますが、とても読みやすかったです。
    何故、案山子が殺されてしまったのか、犯人は誰なのか、伊藤は何のために島に来たのか。
    終盤にかけて、だんだんと霧が晴れていくようなそんな爽やかな空気と、
    独特な世界感。という言葉だけでは言い表せませんが、不思議な世界感を楽しめました。
    ファンタジーでもあり、ミステリー要素もあるのでいろいろ想像、考察しながら読むのが楽しい作品です。

  • まぁ、何というか独特の世界やな。
    案山子が喋ってもええけど、作ってるとことかが何か知らんけど、気持ち悪かった。脳みその代わり、それでええの?って。
    私が法律や!反対しか言わん!とか、おもろい人ばっかりの世界。
    それには、馴染めんかったけど、しっかりしたミステリーではあるな。
    はじめの方、多少、ペースが遅い感があるけど、色々な伏線が最後に回収されていくのは、なかなかでした。
    でも、全部理解したか?と言われれば微妙な…
    城山とか何しに来たか分からん…

  • 28歳で会社を辞め、コンビニ強盗に失敗した伊藤は、外界から隔絶している島、荻島に逃げてくる。
    パトカーから逃げ出した伊藤を運んでくれたのは、熊みたいな轟という男だった。
    案内してくれた日比野や、噓しか言わない園山という画家、郵便局員の草薙…、そして喋るカカシ優午。

    小さな島の話だと高を括っていたら、思いのほかたくさんの人たちが出てきて、それら島中のありったけの人たちが見事に繋がっていた。

    1855年、開国と荻島が閉鎖された時代に瞬間移動して、優午の誕生秘話が明かされていたが、侍のいた時代から、日本には田圃やカカシはすでに存在していたし、空には鳥も飛んでいたし、もちろん悪人もいたのだろう。
    そのあたりの物語の作り方に違和感もなく、二十億の群れで飛ぶリョコウバトを想像するのは、壮大で気持ちがよかった。

    会話のセンスや伏線回収その他見どころ満載で、記念すべき伊坂作品第一作目を堪能することができて、気分爽快です。

  • 殺し屋3部作を読んで以降、伊坂作品を積極的に読みたい気分になっている。(まことさん、オススメを教えていただき、ありがとうございます!)

    コンビニ強盗に失敗した伊藤が逃げ込んだ荻島は江戸時代以来鎖国をしている。島には、喋ることができて、未来を知っている案山子・優午がいたが、伊藤が来た翌日、バラバラにされ、頭を持ち去られて死んでいた…。誰が、何のために案山子を殺したのか?

    そして、島民は「この島には何かが欠けている」 という。そして、それを外の人が置いていくのだと。荻島に欠けているものとは何か?

    優午の死の真相と島に欠けているものの謎。
    大きな二つのテーマを解き明かしていく物語。

    この小説は伊坂さんのデビュー作。
    まだまだ荒削りというか、洗練されていない印象。
    読みはじめの方で感じたのは、文体がゴツゴツしていて、しかも随分地味な話だな、と。
    途中からどんどん物語に引き込まれていきましたが。

    まだ洗練されていないだけに、ありのままというか、むき出しの伊坂さんを見た気がした。

    たとえば、主人公の伊藤は、この小説の中で最も悪いヤツである城山を思い出しながらこんなことを言う。

    ー 僕は、勧善懲悪の物語が好きだ。天網恢恢疎にして洩らさず、という諺だって、好きだ。なぜなら、現実はそうじゃないからだ。

    作品からそこはかとなく感じていた伊坂さんの思いを、デビュー作でこんな赤裸々に主人公に語らせていたことに、深い感慨を覚えた。

    • まことさん
      たけさん♪こんにちは。

      早速、読んでくださったのですね。
      こんな、素敵なレビューにしていただき嬉しいです。ありがとうございます!
      ...
      たけさん♪こんにちは。

      早速、読んでくださったのですね。
      こんな、素敵なレビューにしていただき嬉しいです。ありがとうございます!

      この間、お薦めするのを後から、思い出したのですが、もし未読であれば『魔王』、あとほのぼの系で『アイネクライネナハトムジーク』なども面白いと思います。
      2020/07/07
    • たけさん
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      お褒めいただきとても嬉しいです!

      オススメいただいたものを中心に伊坂作品...
      まことさん、こんにちは!
      コメントありがとうございます!
      お褒めいただきとても嬉しいです!

      オススメいただいたものを中心に伊坂作品読んでいきたいと思っています。新たなオススメもありがとうございます!
      2020/07/07
  • 不思議で夢中になれる1冊。
    ファンタジー?の世界ってこんな感じ?
    なのに妙にリアリティがあったり(仙台っていう地名とか)
    そこにさらにミステリー!?すごい。
    設定が不思議で、ファンタジーとかSFとか?そういう系はあまり手が出なかったけど、これは面白い。素晴らしい。

    ミステリー要素もすごくよかったけど、出てくる人の人間味とか、そういうのもよかった。

  • 伊坂幸太郎のデビュー作。2000年発売。

    文庫版の裏表紙には非常に好奇心をそそる文が書かれていた為、とてもわくわくして読み始めた。

    ファンタジーとミステリーが融合した不思議な世界観が魅力だ。島の住民の生活感は、どうもピンとこないところがあるが、全体的に見ればそこまで気にはならない。

    物語は後半に、辻褄合わせが一気にやってくる。
    それまでは、一見必要の無い件に見えたものが、全て仕組まれている部分は、思わず唸る。

    出来事の全容は、あくまで主人公等の推察に留まるため、本当のところは不明ではあるが、概ね納得。

    以下、ネタバレ有り。

    壮大な自殺であり、プレゼントを送る物語でもある。
    個人的には、伊藤の祖母についての、伊藤の内情を後半にもっと掘り下げるのも有りだったのではないだろうか、と思う。

    園山の件についても、もっと深く知りたい部分だ。

    桜の存在は、非常に独特であり、この島以外の価値観と最も遠いところにある。殺人を許される者として、秩序を維持する為にあるのか、どうか。いつも詩を読んでいるため、知識や哲学はどのように形成されているのか気になる。

    命の吹き込まれた案山子。優午は様々な生命体を宿し、心優しくも、残酷な一面を内包し、人間を殺し人間を救った。鳥達からオーデュボンの祈りを受け継ぎ、リョコウバトを守り続けた。
    彼は鳥達と友達だった。人間は…

    案山子の優午の思惑はいつからあったのだろう。
    百年もの歳月に、何が優午の手から溢れたのだろう。

    どうせ人は変わらない。優午自身は最後、生きていたのだろうか。重荷から解放されたのだろうか。
    何か少し悲しさが残る物語であった。

    読了。

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著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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