ラッシュライフ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (469ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101250229

感想・レビュー・書評

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  • 本作は4つの物語が並走するスタイルで、時間軸を巧妙にずらしながら、最終的に絡み合った物語の全体像が映し出されるという緻密で計算し尽くされた作品。

    読後改めてみると、表紙見開きのエッシャーの挿画に本作の特徴が上手く表現されていると感じた。作品全体がまるで1つの大きな騙し絵のような構成になっているためだろう。

    並行する物語のなかでも、それぞれの登場人物の人生に、意外な所で接点が見え隠れしたり、危険な目にあったり、逆に助け合ったり、騙したり騙されたり、と展開していく面白さに読み手が振り回される感じも心地よい。更に、一筋縄ではいかない登場人物それぞれの人生と、丁寧な人物描写で、時には感情移入してしまった。

    中でも私は、プロの泥棒である黒澤の人間性が気に入ってしまった。伊坂幸太郎さんの作品は、殺し屋とか泥棒とか、犯罪に手を染める方々を極悪非道に仕立て上げずに、どこか魅力的な人物として描くのが本当に上手いと思う。それの方が現実的なのかもしれない。

    散りばめられた伏線が回収されていく様子は勿論のこと、読み手の想像を超え、予想外の方向から繰り出される展開の巧みさが1番の見所だと思う。

    こんなに悲惨で残酷な事件や事故は起きていないながらも、普段の何気ない日常で、人と人が繋がり関わっていることの究極の縮図が本作なんだろうなぁと感じた。

    読後は、パズルが完成した後のような爽快さは味わえたが、負のオーラ漂う登場人物達に感情移入したせいか、はたまた人との繋がりの縮図を垣間見たからか、虚無感に近い感覚が残った。
    その意味で、展開自体はとても面白いが、パワーダウンしている時にはあまりオススメしたくない作品だった笑

  • 個性豊かな魅力的なキャラが沢山登場
    人物相関図みたいなのを書きながら読んでみた
    同じ仙台に居ながら、みんながそれぞれ色々な事があって人生を模索する
    全く繋がっていない様に見えたキャラ達が最後の方は繋がる、繋がる、あっちでもこっちで繋がるー!
    人生を影響したり、ちょっとだけ接点があったり
    そしてそれぞれズレていた時間もわかって納得
    個人的には黒澤と豊田&老犬がお気に入り
    黒澤はなんで泥棒?
    老犬を守り、高慢チキな戸田の鼻の頭をへし折ってやった豊田、いいね!

    そういえば、オーデュポンの祈りの喋るカカシの話も出て来た(^O^)

  • 5つの物語がいろいろ交錯して進んでいくお話。

    それぞれの物語も登場人物も魅力的で楽しかったです。
    リストラにあった人、傲慢な画商、泥棒、新興宗教、不倫...の話が何故か交わり展開していきます。
    一体最後はどう終わるのかしら?と思いながら読み進めました。

  • 伊坂幸太郎さんは何冊目だろう…読みやすいので読ませてもらってます。
    今回も独特な世界観で、4つの物語りが微妙に絡むというか、繋がるというか、かする感じがおもしろい。
    最後はやっぱり、老犬を連れた方で締めくくりましたネ! ラストのあの方の対応は天晴れですね

  • 友人に勧められて、初めて伊坂幸太郎を読みました。巧みなストーリーの仕立てがすごいですね。最後の方は、戻って読み返しながらあぁ、あそこの時か!と組み立て直しながら読んで楽しみました。小説ならではの楽しみ方。
    何か解決したり結末があるわけではないけど、生きている限り人は知らずの内に影響を受けたり与えたりしてると思うと、日常の視点に面白みが出てくるのかも。
    伊坂幸太郎らしさみたいを知るために、もう1作品ほど読んでみようかなと思います。

  • 初期伊坂さんの作品。人生になんとなく疲れた連中の群像劇。トランクの中の死体がバラバラになったり、蘇ったりする不可能ミステリっぽいが、本格ではないかも。各パートの視点転換の果てに、ミッシッングリングが繋がるらしい仕掛け。映画的です。
    丁寧に読めば、仕掛けがよくわかるのかもしれないのだが、正直あまりそそられなかった。登場人物も結構嫌なヤツが多くて、爽やかさも少し足りない。

  • 後半部分の物語の収斂の仕方は上手かった。めちゃくちゃ面白かったとは言わないけど、上手いな、と思った。泥棒の掛け合いの"思い込み"をうまく利用して二転三転されたのはマジで天晴れ。頭上がらんかったけど、正直そこしか記憶にないかも…
    物語の繋ぎ合わせ方や謎の見せ方(あらかじめ情報としてあるものを読者には言わずに隠しておく方法)は上手いんだけど、実は物語のドライブが無くて読むの結構しんどかったんだよね。伊坂幸太郎にある程度の信頼感があるから最後まで読めるんだけど、中盤読むのエネルギーかなり必要だった。泥棒黒沢のエピソードはキャラが立っていて読みやすかったけど、例えば河原崎ってキャラと不倫の精神科医は狂人でキャラに魅了がないから、筆の器用さでさっさか物語をとにかく前に進めてる感じ。キャラがやっぱ見えない。河原崎のお父さんのエピソードも取ってつけたようなもので、あまり記憶に残るものはなかったし、自殺する理由もよくわかんない。顔が見えない。豊田の人もただリストラ喰らっただけのおっさんだし、どうも人間が舞台装置のように見えてしょうがなかったかな。
    だから、面白いかっていうと微妙。上手いとは思うけどね。(ただ未回収の伏線は多いし、それを他の作品で補うのはあんまり感心しない。その作品はその作品だけでも成立するものじゃないといけないと思うから。

  • 仙台駅前、展望台タワー、オープンしたての喫茶店、<あなたの好きな日本語を教えてください>というプラカードを持った白人女性、野良犬を定点に、さまざまな人々の人生が交差する。
    読解力不足のため、最後にキチンと解説してくれている時系列をあまり理解出来なかった。
    泥棒の黒澤がすてき。

  • 10年ぶりに再読。寸分違わぬパズルの様な緻密さで構築された物語に改めて舌を巻くしかない。作中に登場するエッシャー展と「巧妙な騙し絵」という紹介文は何とも心憎く、バラバラに進む時系列を途中で読み返しながら読み進めるのもまた一興。ミステリーとして扱うには【動くバラバラ死体】のトリックに無理があり過ぎたり、登場人物の言動どれもが突拍子もなく記号的なので物足りなさも感じるのだが、巧妙な会話劇(特に黒澤×佐々岡)や独特の人生訓はやはりこの人の作品ならではの醍醐味だろう。豊田・佐々岡両氏の再生にエールを贈りたい。

  • 最初はメモを取って読み始めた。4つの物語が交差するのだが、読み終わるとどれもみんな印象が薄い。

著者プロフィール

1971年千葉県生まれ。東北大学法学部卒業。2000年『オーデュボンの祈り』で、「新潮ミステリー倶楽部賞」を受賞し、デビューする。04年『アヒルと鴨のコインロッカー』で、「吉川英治文学新人賞」、短編『死神の精度』で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞。08年『ゴールデンスランバー』で、「本屋大賞」「山本周五郎賞」のW受賞を果たす。その他著書に、『グラスホッパー』『マリアビートル』『AX アックス』『重力ピエロ』『フーガはユーガ』『クジラアタマの王様』『逆ソクラテス』『ペッパーズ・ゴースト』『777 トリプルセブン』等がある。

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