工学部ヒラノ教授 (新潮文庫 こ 57-1)

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  • Amazon.co.jp ・本 (245ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101251615

作品紹介・あらすじ

朝令暮改の文科省に翻弄され、会議と書類の山に埋もれながらも研究、講義に勤しむ工学部平教授。安給料で身体を酷使する「女工哀史」さながらの毎日。累々たる屍を踏み越えつつ頂上を目指す大学出世スゴロク。そして技術立国日本の屋台骨を支える「納期厳守」「頼まれたことは断らない」等エンジニア七つの鉄則。理系裏話がユーモアたっぷりに語られる、前代未聞の工学部実録秘話。

感想・レビュー・書評

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  • いいよね~エンジニア魂。
    7つの鉄則。これって、エンジニアしていたら当たり前の心がけなんだけどね。
    日本のエンジニアはとっても優秀なのです。

    ちょっと昔に、2番じゃだめなんですか、といった政治家がいましたが、
    あの人、科学技術をまったくわかっていないなー、と思いました。
    いまはどう思ってはるのかな?
    20170531

  • 『文学部唯野教授』に出てくる人物たちは揃いも揃っておかしな人物ばかりだったが、本作も同様な感じかと思ってると全く違うのでご注意を。
    大学の発展に意味があるのか不明瞭な改革、ドクターを持っていても就職出来ない人達の大量発生、本当に世界と対等に戦う気概があるのか見えない研究費や交付金の毎年の削減等、文科省の役人の考えることは日本の教育を貶めている政策ばかりだと思えてならない。
    それでも教授という職業はおいしいとは思うけど。筆者もそう書いておられた。今野先生は一流の研究者・教育者であるのでしょうが、大学には本当に世のため人のためになることやってんのか?と思わされるような人がいる(主観です)。そういう人が科研費使って学会があるからと言って海外に出張に行くが、遊びに行ってるようにしか思えない事例もあるわけで(これも主観です)、教授というのはホントピンキリです。常に一生懸命で人間的にも素晴らしい人がいる一方、横柄で周囲の補助者をただの雑用としか思っていないような嫌な人もいますからね。
    文系には馴染みない、工学系の実態が見えてくる大変面白い一冊と思います。将来研究者を目指す人も、大学関係者にもお勧めします。

  • 導入部が正直、詰らない本、買っちゃったかなと思ったが、読み進めると、これが実に面白い。つまり、導入部の自嘲気味に語る老教授の姿より若い頃のそれなりの波瀾万丈の人生の方が具体的で面白いということ。

    民間研究所から出来たばかりの筑波大に戻るが、教育・雑用マシーンと化し、研究から遠ざかる。
    東工大から招聘され、しばらくのリハビリ期間を経て、研究の鉱脈を発見し、学究に邁進。本来、優秀な人なのだろうが、研究者ってこんな極端な運不運に付き纏われるんだろうか。
    研究には金がかかる。コンピュータを使うのも、論文をまとめるのも、その論文を掲載してもらうのも、学会に出るのも、兎も角先立つものがなければ。研究費獲得の内訳話など、なかなか聞けない話もある。

    エンジニアは理系の中でも人文に近い学術でもあり、また当時の東工大には人文系スター教授が綺羅星のごとく輝いていて、そうしたスター教授をはじめとするその分野の人にも触れている。
    工学部の教え7か条は、納期厳守、人を貶さない、頼まれてことは断らない等、多少身贔屓な感もあるが、他の理系学部や経済学の人間との比較は面白い。特に、人文系スター教授達は、相手を論破するため必ずしも本音を言わない、その場で首尾一貫していれば良いと思っている、など中々痛烈な論評がされている。

    文科省の要求で改革に右往左往する大学の姿など、成程、あれはそういうことだったのかと理系にほど遠い僕にも納得する話が多かった。

    解説は、本書にも登場する東工大の元学長。なるほど、エンジニアは頼まれたら断らないんだなあ。

  • 金大生のための読書案内で展示していた図書です。
    ▼先生の推薦文はこちら
    https://library.kanazawa-u.ac.jp/?page_id=18358

    ▼金沢大学附属図書館の所蔵情報
    http://www1.lib.kanazawa-u.ac.jp/recordID/catalog.bib/BN04267675

  • 5年前に購入して読み切れていなかった。
    大学の中の話がヒラノ教授の体験談を踏まえ、読みやすく書かれていた。そうか、エンジニアにはエンジニアのルールがあるんだな。

  • 東工大と言う日本の頂点層に君臨する学府の人間模様 面白く読みました。妥協を知らない数学者 期限を守る工学部 言い得て妙 スッキリ愉快な文章にテンポ良く読める作品です

  • 工学部の教授の実態を小説仕立てで。

  • 非常に面白かった。
    理系というか工学系のある意味 ピュアで頑固一徹な、そして素直でお人よしなエピソードが満載で、共感する点がタップリでした。
    生徒から学生に変化する大学は、自ら学びたいという点と、教官の研究を進めたいという点が、トレードオフの関係ですが、既に社会の縮図が出来ていて痛快です。
    エンジニアという職業に身を置く自分の環境を客観視することもでき、いろいろな気づきをもらいました。

  • 東工大を中心とした、工学部の組織運営の実態、文科省が進める大学改革に翻弄され、右往左往する大学当局の姿、利害得失で動くドロドロとした研究者達の姿が赤裸々に描かれていて、面白かった。まあ、一流の研究成果を産み出すための必要悪のようなものなのだろうな。
    個人的には、大学運営の効率化や透明化は好ましいと思う一方、教養学部の廃止や大学院重視、短期的成果重視の独法化、優良大学の優遇等の一連の施策が、大学の多様性を奪ってしまっているようで、かなり心配。

  • 工学部の教授になりたい人は読んだ方がいい

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著者プロフィール

中大

「1992年 『数理決定法入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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