きことわ (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 1591
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  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101251813

作品紹介・あらすじ

貴子(きこ)と永遠子(とわこ)。葉山の別荘で、同じ時間を過ごしたふたりの少女。最後に会ったのは、夏だった……。25年後、別荘の解体をきっかけに、ふたりは再会する。ときにかみ合い、ときに食い違う、思い出。境がゆらぐ現在、過去、夢。記憶は縺れ、時間は混ざり、言葉は解けていく――。やわらかな文章で紡がれる、曖昧で、しかし強かな世界のかたち。小説の愉悦に満ちた、芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • この方の作品のファンになってしまいました。
    独特な文学的な文体で、現実なのか夢なのか、ひらがなもあえて多くしてるんだと思うんどけど、また違った懐かしい描写に成功している。とにかく描写が懐かしいというか、なんとも芸術的な気分にさせる。
    今月表参道の山陽堂書店でで個展もやってるらしいので行きたいとお思いました。

  • 私は、すごく好きです。

    夢と現の曖昧な境目が、とても美しく書かれていて。

    町田康さんの解説がまた、素晴らしいです。

  • 初めて読む作家さん。
    夢っぽい話だった。葉山の別荘いい。

  • 長編を読んでる間に少し疲れてきたので読みやすそうな短編をいくつか挟もうかと思ってこの作品を読み始めましたがこれが意外と骨のある作品で薄さのわりに結構難渋しました。時間こそかかりましたが無事読了。現実と夢、過去と現在の間をたゆたうような作品でした。
    町田康の解説が面白いというレビューを読んで手にとった作品でしたが確かになかなか面白いことが書いてありました。

  • 僕にはとても読みづらい作品で、125ページの中編で読むのに6日間もかかった。もちろん時間の合計ではなく、かかる期間のことだ。
    知らない言葉だらけで、調べたら源氏物語で使用されたとか、とにかく通常に使う言葉の代わりに普段使われない言葉に置き換えて使用されている。
    教養の高さは感心するが、読む側のレベルが問われる。ひらがなも多く使われ、漢字で意味を感じ取るのに慣れた僕にとってこれもまた苦労した。
    とこんなに文句を言うけど、やはり文学として評価されるべき作品だと感じた。知らない言葉を知っている言葉へ、ひらがなの一部を漢字へ置き換えたら、雰囲気そのものも変わってしまうかもしれないので、この雰囲気を出したいからこそこのような書き方になっているのも納得出来たし、主人公2人の裏にいる記憶にしか出てこない2人のお母さんもまた主人公で、短い数日間の話だが、4人の女性のそれぞれの人生、親子の関係性、文章としては軽く触れるのみだが、その度考えさせられる内容ばかりで、読んでいるうちに、なんか不思議な感情になれるという技術力も凄いと思う。
    ある方の書評を見ると、ジブリの映画のような気持ちになれると。まさにそれ!と、とても共感した。時間というテーマをこのような形で表現出来るという発想も、短いからこそ決して簡単ではない構造が崩れずに出来たところも素晴らしい。

  • 第144回芥川賞受賞作
    夢と現、過去と現在を混在させた曖昧な世界を調和させる表現力がすごい。子どもの頃の不確かな淡い記憶や微睡むような感覚。誰しも感じたことがあるけど、言葉にできない塵芥が物語になっている。
    末尾の町田康さんによる解説が秀逸。

  • 「永久子は夢を見る。貴子は夢を見ない」という出出しが凄く魅力的で、その後の展開に大きな布石と仕掛けがなされていたのが素晴らしいと感じました。
    記憶というあまりにも不確かなものを、ひととき共に過ごした二人の女性が共有し合う様子をそばで見させて貰った様な感覚を持ちました。
    初めは永久子側が夢と現実の境界が曖昧なのを貴子の記憶が補正する話かと思っていましたが、物語中盤で、非現実的なことが起こるのが貴子であったり、いるはずのない永久子を服装まで言い当てたりと、貴子が夢を見ないのは、見ている自覚がないだけなのかもしれない、という展開になって驚くと共に、自分の読解力が追いつかず混乱させられました。
    通しで2回読みました。
    改めて読んだ感想は現実、記憶、夢、が折り重なって展開されていた様な気がします。どこがどれかというのは分かりませんでしたが、それこそが作者が使えたかったことかもしれません。

  • とても薄い本なのに、中身は濃密で、それでいて重たくなく、風や波のようにとどまることなく流れていく話。

    頻繁に出てくる恐竜や天文学、そこから続く今。
    過去と現在、二人の少女、生と死、それぞれを行ったり来たりしながら、ゆっくりと話が進む。

    情景描写がとても美しく丁寧に語られる。温もりや手触りもひとつひとつ大切に言語化されて、不思議な感触で伝わってくる。

    「終わりは始まりでもある」
    ありふれた言い回しが、静かに心に浮かぶ。
    通奏低音のように流れていた死の影からの解放。
    人生は続いていく。

  • 夢を見た時の曖昧で不思議な雰囲気と、過去の記憶を思い出す時の実際に体験したはずなのに夢のような感覚が、混ざるように表現されていて好きな文章だった。お話も劇的なことは起こらないのにどんどん読み進めたくなるような展開だった。

  • 144回(2010年下半期)芥川賞受賞作

    純文学ってこういう作品のことをいうのかな
    絵画のような文学
    泉鏡花を読んだ時
    光がきらきらと輝いている
    風景が脳裏に浮かんだ

    ゆめとうつつ
    現在と過去
    あなたとわたし

    の境界線が消失していて
    でもその境界線を探さなくてもよくて
    ただ描写を味わいながら読み進んでいく感じ

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著者プロフィール

1984年、東京生れ。2009年、「流跡」でデビュー。2010年、同作でドゥマゴ文学賞を最年少受賞。2011年、「きことわ」で芥川賞を受賞。

「2022年 『細野晴臣 夢十夜』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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