泣き虫ハァちゃん (新潮文庫)

  • 102人登録
  • 4.14評価
    • (18)
    • (8)
    • (9)
    • (2)
    • (0)
  • 23レビュー
著者 : 河合隼雄
制作 : 岡田 知子 
  • 新潮社 (2010年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252292

泣き虫ハァちゃん (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

並び替え:

表示形式:

表示件数:

  • 河合隼雄さんの遺作となった自伝的小説。河合隼雄さんが意識不明の状態になり、その後亡くなられたことは知っていたが、倒れられる前にこの作品の執筆途中であった、ということは恥ずかしながら知らなかった。

    温かな物語、といっていいと思う。随所に挟まれる岡田知子さんの絵も温かみがある。大人が読むには少々物足りないかもしれないなと思ったが、これを世の中に問おうとした河合隼雄さんの考えの方に、むしろ強い関心があった。河合さんの著作の全てを読んだわけではないが「物語」と「人生」についてのご自身の考えを記すことがテーマの一つだったのではないかと思う。そうすると、この小説を書くことはある意味河合さん自身の集大成のようなものだったのではないかと思えてくる。

    私自身は本を読みだした初めの頃、あまたある小説の「物語性」(ストーリーの面白さ)に惹かれていたのだったと思うが、次第にその「物語性」を読者に阿るための「わかりやすさ」ととらえるようになり、物語としてのわかりやすさを拒否するような力を持つ小説の方がよい小説だと思うようになっていった。そんな中でも中上健次が語る「物語」についての言葉などに、物語のある種の力を意識せざるを得なかったことはあるが、基本的にはストーリー性の強いものは下に見ていたような時期があった気がする。

    しかし、いつの日からかまた物語性の強いものも読むようになっていった。例えば重松清さんとかを好んで読むようになった(奇しくも重松さんは生涯の本として上に出てきた中上健次の「枯木灘」を挙げていたと記憶していますが)。これには「その本が誰に向けて書かれているのか」ということを意識して考えるようになってきた、という自身の変化があると思う。そして物語にはやはりとてつもない力があるのではないか、という思いもある。最近読んでみようという気になっている角田光代さんや西加奈子さんもそんな力を持っている人ではないのだろうかと期待しているところである。

    小川洋子さんが本書の解説を書いているが、その中で「寄り添う」という言葉が使われている。物語の効能としてこの「寄り添う」という感覚はあるのだろうと一つ考える。いい物語というのはわれわれのあずかり知らないところでわれわれの栄養になっているのではないだろうか。そしてそのことを河合さんが実践されようとされたのではないかと思っている。
    今週風邪をひいて体調が悪くほとんど臥せっている冴えない週末に本書を再度開き、その中に添えられている谷川俊太郎さんの「来てくれる」という詩を読んで思わず涙がこぼれそうになった。

  • 環境だけでなく行動も昔の子と随分違ってきているなと思う。一つは兄弟の数だろう。兄弟が多いと喧嘩もするけど思いやりも育つ。いつまでも口をきかないなんてことにはならない。
    さて、河合隼雄さんがこの本を世に出そうとした意図は何だったのだろう。読者の対象はどういう層を想定したのか、そのあたりは訊いてみたかった。また、岡田知子さんの絵が本の内容にマッチしていてすごく良かった。2017.9.14

  • 河合隼雄先生はこんな素敵な環境で両親、兄弟に愛されて育ったんだなぁと読みながら気持ちが温かくなった。サンタクロースをみんなで捕まえる作戦がとても好き。挿絵がまたとても素敵で何度も本をめくりたくなる。

  • 子(小五男子)が国語のテストの問題文で読みかじり、良かったから全部読みたいとのことで図書館で借りてきた。読後、是非父も母も読んでみてというので、私から早速。 何の前情報も先入観もなく読み始めたので、最初の話から盛大に涙腺決壊。ダンナ君にお勧めしようとしてほんの少しあらすじ話そうとしただけでまた涙腺決壊しそうになり「是非読んで。いいから読んで。」ということで結んだ。興味持った人は是非、感受性全開で読んで欲しい。 子にもこのお話の訴えている内容に何か感じるものがあったんだなということを知ることが出来て嬉しい。

  • Tue, 08 Jun 2010

    フィクションらしいが,河合隼雄先生の幼少時代をつづったもの.
    なんか,ちびまるこちゃん みたいな感じ.
    ユング心理学の日本での大家であり,精力的な執筆活動などをされた,河合先生の幼少期,そのパーソナリティがのぞき見られる.

    好奇心旺盛な子供を持つ父となり,自分と重ね合わせるより,
    子供と重ね合わせながら読んだ.


    一度もお会いしたことは無いが,私は河合隼雄先生から多大な影響を受けている.
    母が,大学時代に河合隼雄先生に師事したこともあり,
    小さな頃から家の母の本棚に,「こどもの宇宙」など河合先生の著作が並んでいた.
    中学生や高校生のころから,勝手にこれを読んで.子供の教育について考えていた.

    学校で得意な科目は数学で,完全な理系っ子だったのだが,
    多分,「心理学」に対する関心は,このころからあった.
    しかも,僕の関心のコアは知覚心理学や,認知心理学ではなく,ユング,フロイト,ラカンなどの深層心理学,精神分析的なものだ.

    これらと知能研究が交わる日はいつのことになるのか・・・.

    だから,僕が知能研究の中で「感覚・運動」「認知」「記憶」なんて心理学ワードをつかっていても
    心の中には,ずっと,満たされないものがあるわけで・・・.

    エスってなんだ,とか,ラカンのいう「大文字の他者が~」みたいなことを,本気で構成論的に取り組みたいと思っている自分が,どこかにいるわけで.

    まぁ,とくに本書はそういう内容ではないのですが.

    心理学という,一番私達に身近な,というか,内部な研究に携わる人間というのは
    幼少期から存在するパーソナリティに,なにかその根源がある気がする.

    というわけで,なんとなーく,河合先生のパーソナリティに浸れた一冊でした.

    ちびまるこちゃん的読み物として普通に読む分にも可

  • 河合先生の遺作となった自伝的小説。おもしろい。抜群におもしろい。ユーモアがあちこちにちりばめられていて、しかも幼い頃の隼雄くんのせつない思いが伝わってくる。小学4年生になる娘に読み聞かせました。娘にとっても大好きな1冊になったようです。その中から1節。「みそしるサンタ」6人兄弟のうち中学生になっている2人は別として、残りの4人はサンタがいつどのようにしてプレゼントを運んでくるか知りたくて興味津々。タト兄ちゃんが「サンタを捕まえる」と寝ずの番。お父さんも付き合うことに。2時頃までは起きていたはずだが、ついうとうとと寝ているうちにサンタはやってきてプレゼントをおいていった。どうしてサンタは2人がちょっと寝入ったすきが分かったのか。我が家の娘も興味津々。横で聞いていた6年生の長男は・・・。読みながら私はひやひやしていたのだけれど、さすがは河合先生。子どもたちの思いが良く分かっていらっしゃる。うまく切り抜けた。マト兄ちゃん(雅雄先生)の本もおもしろかったし、おそるべし河合兄弟。まだまだ書き足りなかっただろうに、続きが読めないのは残念です。

  • 泣き虫なはあちゃんの話

  • 河合隼雄さんの自伝的お話。なんで六人兄弟の中で僕だけ泣き虫なの?って聞いたらお母さんの意外な答え…どんぐりコロコロの歌でも泣いちゃう優しい子。(考えた事もなかった…)。お母さんの珠玉の言葉の数々… なんとこの作品連載中に倒れられたのだとか。もっと色々読みたかった。谷川俊太郎さんのステキな詩が捧げられています。

  • 「臨床心理士」の創設者である河合隼雄先生の最後の著作であり、

    最初の(自伝的)小説である。

    主人公のハァちゃんが河合先生なのだが、心優しいく泣き虫、

    けれどいざというときは芯が強く頼りになる。

    6人の兄弟、父、母がとても魅力的で、こんなユーモアが飛び交う温かい家庭で、

    彼が子供時代どんなにたっぷり愛情を充電したかが伺える。

    河合先生が人を見つめる温かい視線は、こんな環境から育まれてきたのかなぁと、

    講演会での言葉の数々が思い浮かんだ。

    また、子供のこころを写し出している児童文学は今こそ再読すべきだなぁ、とも思った。

    とりあえず、彼が講演会で紹介していた「シャーロットのおくりもの」から

    読んでみようかな。

  • ノンフィクションのような暖かいフィクション。
    大きな小4という壁を抜けてはぁちゃんがどうかわっていくのか、
    どう変わって行くように書くのかを見たかった、
    残念。
    心が温まる、まさにそんなお話。はぁちゃんの素直な涙は複雑に入り組んでしまった大人の感情がちょっとバカバカしいのを思い出させてくれる感じ。

全23件中 1 - 10件を表示

河合隼雄の作品

泣き虫ハァちゃん (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

泣き虫ハァちゃん (新潮文庫)はこんな本です

泣き虫ハァちゃん (新潮文庫)のKindle版

泣き虫ハァちゃん (新潮文庫)の単行本

ツイートする