心の深みへ―「うつ社会」脱出のために (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252315

作品紹介・あらすじ

二十世紀における科学の進歩と物質的豊かさの広がりは、果たして私たちを本当の意味でしあわせにしたのか?生と性の問題、死と死後の世界、信仰、たましいの存在…心理学者にして心理療法家であった河合隼雄氏が生前、ノンフィクション作家の柳田邦男氏と縦越無尽の議論を繰り広げ、心の問題をとことん掘り下げた珠玉の対談集。昏迷をきわめる現代だからこそ、胸に沁みる一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 柳田邦男さんの著書を片っ端から読んでいる。
    ものごとを深く考え探究していくことは、知識を詰め込む勉強とはことなる。

  • 『犠牲』からの流れで。対談第四話で『死ぬ瞬間』著者であり、聖女と言われたキューブラー ロスを取り上げる。脳梗塞を起こして以後、孤独な生活をしながら死に対して否定的な言動をするようになった彼女について、河合先生が精神分析を展開。この対談が行われたのは1998年。その後彼女はどうしているのか。数年前のBS番組を視聴したら、彼女は2004年に亡くなっていました。そして、なんと河合先生が分析した通りのことを書いた『ライフ レッスン』という本を遺していました。すごいなー河合先生!

  • 柳田氏の「共時性(シンクロニシティ)」の具体的な経験がたくさん語られていて、私自身も改めて「共時性」について深く考えを巡らせました。
    アメリカの精神科医エリザベス・キューブラー=ロスとイギリスでホスピスを創設した医師シシリー・ソンダースの話は特に深く引き込まれる内容でした。

    柳田氏が文庫化にあたってのまえがきで
    「ただ知識を深めるとか、物知りになるというのとは違う、自分自身の人生にかかわる人間の心の深いところに蠢くものとか、「生と死」の深遠な世界とか、人間の心の形成・発達や成熟に関することとか、そういった事柄について、人から話を聞いたり関連の本を読んだりして、自分なりに咀嚼して考えを深める営みが《学び》である」と記しているけれど、まさにこの本は私にとって多くの《学び》を得られるものでした。
    対談は1985年~2002年のものですが、普遍性に溢れ過去のものであるとまったく感じさせません。

  • 身体が疲れていると気がついたときは心も疲れていて、
    心が摩耗してしまって気力のないときは身体の存在を忘れている。
    それでも身体の電気は切れることなく死ぬまで生きるために生きている。
    河合先生は云う
    「死を前提にして人間の一生を見るということを人々は忘れ過ぎているんですね。」
    柳田さんは云う「死を前提としてどう生きるかどういう軌跡を残すか」
    柳田さんの「サクリファイスー犠牲」を読んだときはどれほどに苦しみこれをお書きになったのだろうかと辛くなった。読めば誰でもそうだろう。
    なぜ自分の息子が死ななきゃならないのか― 自死をして脳死して・・・そういう事柄ではなく、子供・自分・家族の歴史の中で、無数の無秩序の星の中からいくつかをつなぎ星座を作っていくように物語を作っていかなければなりませんという、柳田さんの言葉に頷いた。
    人はみな、それぞれの物語が必要でそこからまた自分がどう生きていくか、さまざまな形で見つけたり諦めたり。

    キューブラー・ロスの話がきけて良かった、本当にスッキリした。
    「死ぬ瞬間」で有名な彼女が実際自分の死に臨んでみて、自分の考えを否定しているというニュースに耳を疑ったきり数十年経って、それがいまこの対談(10年前だが)でどういうことかよくわかった。

    「仏教というのは関係性から出発している。 私 というのはない。
    私 はないけれどもあらゆる関係性の中で私が存在しているかのごとく見えると。時々刻々変わっていく中で自分と周囲の人との関係が、いまはこうでもしばらく経ったら別の形になるかもしれない。それでもすべてがずっと関係しながら動いている。」
    河合先生の言葉がすうっと胸に入っていく。
    そうだなあ、明日からもまた・・・そういう気持ちを忘れないように生活していこうと思う。

  • 日々の仕事に忙殺される中で忘れかけていたことを認識させてくれた。知識も重要だが、人と人との関わりの中で見出されるものを疎かにしないようにしていこうと感じた。

  • 対談の書き起こしなのでわかりやすい。
    いくつもの気づきが得られた。
    本の中で紹介されているものも読んでみたい。

  •  15年前に刊行された本。文庫版で読む。
    1つ1つの談話が濃いため、なかなか咀嚼にきついが、じっくりと読んでいくものなのだろう。すぐに理解する必要もないかもしれない。柳田氏のノンフィクション物はいくつか読んだが、対談集は初めて。新鮮で面白かった。大人こそ絵本、というのがまず印象に残る。

  • 現代は衣食住が満たされているために、青年がもつ悩みがまるで仏や神が扱うような生存レベルの悩みという大きなものになっているというのはなるほどなと思った。

  • 何が幸福か、人生で何が大事かを考えさせてくれる。生きることに精いっぱいの必要が無くなると、こころの問題が出てくる。対談はずいぶん以前だが、全く古びていない。2015.4.4

  • 2人の対談は初めて読んだ。ほとんどが20世紀末に行われている。1話を除いて9.11の前である。しかしながら、21世紀がどういう時代になるのかをお見通しのようである。「心の自然破壊」そういうことが実際に起こってきているのだと思う。先日子どもを連れて少し大きな病院に行った。断続的に微熱が2ヶ月ほど続いた。近所の医院では風邪ですと、3回行っても同じように薬を出すだけだった。何か悪いものが隠れていないかと心配になって訪れた病院だ。血液検査はしてくれた。けれど、どこにも問題はない。こちらはそれで少しは安心するわけだけれど、医者の態度が気に入らない。「こんな微熱くらいでわざわざ来るな」と言わんばかり。こちらが、「藁をもすがる思いで」ということに気付いていない。その医者にとっては3人称の出来事でしかないのだろう。自分の子どもならどう思うのか、どうするのかという発想が欲しい。それは、私自身の仕事についても言えることだ。本書を読みながらそんなことを考えた。
    河合先生がなくなってからもうずいぶん経つのに、こうしてまた新たに(文庫になっただけだけれど)本が出る。そして買って読む。不思議な感じだ。

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