こころの最終講義 (新潮文庫)

  • 238人登録
  • 4.17評価
    • (20)
    • (25)
    • (6)
    • (1)
    • (1)
  • 17レビュー
著者 : 河合隼雄
  • 新潮社 (2013年5月27日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252322

こころの最終講義 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 京大での最終講義をメインにした講演集
    主たるテーマは「物語」
    東洋と西洋を比較し、日本人と西洋人の自我を比較している。 隠れキリシタンにおける物語には、聖書とは違う部分がある。「日本霊異記」「とりかえばや物語」「柳田国男」・・・を心理学から解く。

  • ・例えば、高島易断を見て、飛行機が落ちると思ったときに、そんなばかなことを考えるなとか、あるいは易なんていうのは当たるんだとか、当たらないんだとか、そんな議論じゃなくて、それを見て不安に感じた自分にとっての意味、その意味は何かということですね。先ほども言いましたように、自分は祖国というものに対して、あまりにも高いイメージを持ちすぎていなかったか。そして、そこへ今から自分が帰っていくということ、そこを訪ねていくということの意味をどう考えようかという問題になりますので、その人がどう生きていったらいいかということの意味がはっきりわかる。これが、私は大事なことだと思うんです。
    例えば、私が学校に行かない子供に会っていても、学校へなかなか行かない。そして、何とかかんとかするうちに、とうとう行くようになった。ただ、行かなかった子が行ったというだけではなくて、その背後にある母なるものの意味を感じる場合、私がその人に会っているということに、私自身にとってもはっきり意味があるわけです。
    つまり、学校へ行っていないというつまらない人を、私のような健康な人が何とか引き上げて、学校へ連れていってあげるというような意味じゃなくて、中学生としてあなたも日本の母なるものと格闘しているんですか、私もしているんです。格闘のレベルなり、格闘の質なりは違うけれども。そう考えると、私はその人にお会いしていることの意味が非常にはっきりする。
    この意味がわかるということは、人間にとってすごく大事なことじゃないでしょうか。意味がわかるかわからないかで、ほんとうに違う。わけの分からない仕事を長続きさせることは非常に難しいです。意味が分かっているからやるわけですね。そのときに全体を見て、この意味だとわかる。
    そして、そのときに、こういう考え方は因果的な考え方を補うのです。

    ・私のところへこられた学校へ行かない子どものお父さんが次のように言われたことがあります。「先生、科学がこれだけ進んで、ボタン一つ押せば人間が月まで行って帰ってくるこの世の中に、うちの子どもを学校へ行かすボタンはありませんか」と。
    私は、「ボタンはないけど簡単ですよ、さっそく行かせられます」と言うたら、「どうするんですか」と言われる。「ぐるぐるっとすのこ巻きにして放り込んだらええんです」と言うたのです。つまり子どもをモノ扱いすれば行くのです。ところが、子どもが自由意志をもち、自分の意志で、自分の人生のなかで意味あることとして学校へ行くということは、そう簡単ではない。

    ・言葉というのは口から生み出しますね。子どもを生むというのは下から生み出すわけです。だから人間が肉体から生み出すものには、子どもとして下に生み出していくものと、言葉として上から生み出していくものがある。そのことを考えると、言葉というものはすごい魔力を持っているし、すごい力を持っている。

    ・私はまるで私の魂に対して憧れるように、あるいは私が私の魂となんとか接触したいと思うような、ものすごい心のエネルギーが動いて、その人を好きになる。

    ・見ていると、小学校五年か六年ぐらいの子どもというのはすごいと思いませんか、記憶力にしても何にしても、たとえばあるときにサッカーの選手なんかが好きになったりしたら、どこに所属しているだけでなくて、生まれはどこだとか、どんな靴を履いているとか、全部覚えているでしょう。ああいう時期には、ぱあっと読むとか全部覚えられるぐらいすごいんです。ある意味で、人間は十一歳、十二歳ぐらいで完成するところがあるんじゃないかと思っているぐらいです。
    そして、ある程度できたというところで、もういっぺんつくり直して、大人という変なものにならなくてはならない。これは毛虫が蝶になるのと一緒じゃないでしょうか。

    ・これは私の... 続きを読む

  • 1985年から1993年にわたって行われた講義・講座の記録。
    京都大学の最終講義、『落窪物語』『とりかえばや物語』『日本霊異記』をとりあげた話、隠れキリシタンの話、最後の「アイデンティティの深化」の話、どれもみな読み応えあり。
    河合隼雄さんがいて、こういう話(西洋思想と東洋思想の違いなど)をきくことができて、わたしたちはどんなに救われているか、とあらためて思う。

  • 講演をまとめたものだが、時系列ではなく、最終章が最も古くのものである。そこには日本人と西洋人の自我に対する考えかた、想いの相違が述べられており、物語に関心をもつきっかけになったという。そもそも人に納得してもらうには科学的であることが大事であり、そうでなければ宗教家とみられる危険もある。著者が煩悶したのはいうまでもない。文庫一冊で語りつくせぬものを感じた。2017.3.21

  • 日本の臨床心理学界の第一人者である河合隼雄先生の講義をまとめたもの。日本の神話や昔話、隠れキリシタンの話などから日本人のこころの在り方を探っていて、本当に示唆に富み読みごたえがあった。これからも何度でも読み返していきたい。

  • コンステレーション、という考え方に初めて触れ、人の中で起こっていること、起こりつつあることなど、心理療法の奥深さを垣間見たように思いました。

    アイデンティティの確立についても、断言するのではなく、それがどのようなものなのか、物語られることによって伝わってくる、考えが広がり深まっていく感覚が、読んでいておもしろかったです。

    年数を重ねること、見識を広め深めることで見えてくるものがあることに気付かされ、日々学び、日々考え、そして生きて日々を重ねることの大切さに気付かされました。

  • こころが欠けているときはファンタジーが欠けているのだ。

    こころっていうとよくわかんない感じisやばいけど、その人の持っているファンタジーって読み替えてみるともっとわかりやすくなるし、それをやっているのがユング系の人なんだなと思った次第。

  • 日本霊異記やとりかへばや物語、風土記に関するお話から、当時の人々の価値観が伺えて興味深かった。

  • 亡くなられてからも何冊も本が出る出る。とりあえず、新潮文庫のものだけは買って読んでいる。本書ではトータル40冊の本を取り上げながら、こころについて語られている。夏目漱石は、そういえば、誰か他の人が好きな人を好きになってしまう、そういうシチュエーションが多かったのだ。安部公房「砂の女」は本書をきっかけに読み返した。高校生のとき以来。当時は、話がしんきくさくて面白いと思えなかったけれど、いやはやすごい話だったのだ。イライラしながら読んでいるのは変わりないのだけれど。自身を主人公に投影すると、イーとなる。けれども、あきらめてこれでいいかと思えたら、ひょっとするとそれはそれで、砂の穴の生活でも楽なのかも。児童文学はもっと読んでおくべきだったと、いつも後悔している。しかし今からでも遅くない。河合先生が勧めるものなら読んでみよう。まずは「トムは真夜中の庭で」から。そういえば、30年ほど前は、森毅先生が勧める本をいくつも読んだものだ。私が読んで紹介した本を、「先生あれ読んだで」と言ってくれる生徒が出てくると、うれしくてたまらん。

  • 隠れキリシタンのお話がおもしろかった。
    日本人の心象に合うように、
    丸く丸く収めていったという。

    読み終わり1週間経ち、こころに残ったのは、
    カウンセリングの話。
    すさまじい体験をしている患者に、こんなになってよく耐えられますねと河合先生が言ったら、
    「だって最初に会ったとき先生に、なんで自分はこんなめにあうんでしょうと言ったら、それはあんたの魂が腐ってるからでしょうと言われたから、腐ってるものをよくするんなら相当のことを覚悟しなきゃならないなと思ったんです。」
    と患者に言われた。でも先生自身そんなこと言ったか覚えてない・・・ぽんと出た言葉だったのだろうと。
    腐った魂とはどういうことかよくわからないけれど、腐った部分は私にもあるから、そういうことかなと想像するしかないけれど、この話には驚いてしまった。
    腐ったものはそのまま朽ちるしかないと、私だったら諦めてしまう。
    意識下からでてしまった何気ない言葉ひとつで、患者の気持ちを支えることができる、それに衝撃を受けた。

    性についての話もこれは個々人の経験や年齢にもよるものだろうけれど、からだも心も超えてしまう大変なことだということも、こうして言葉にされると・・・
    改めて、これは大変なことであると思う。からだも心も超えてしまうことを経験できるのは幸せでもあるけれど怖い。それはいくつになっても、幸せであるほど恐ろしいことだ。

  • 河合さんの言葉はなんとも、暖かいな。厳しさの中に暖かさがあるというか、人間ってこうだよな、と漠然と思う。

  • [24][131001]<ao 同氏の『ユング心理学入門』でとらえどころがないと感じたアニムスについて、本書の中で落窪物語を引きながら軽く言及されていて少し理解が深まった気がする。他にそんなに目新しいことはなかったが、やわらかく読みやすくおもしろい。氏のもっている様々なテーマが総論的に紹介されているので、これをブックガイドにして著作を読んでいくのも楽しそう。

  • constellationをメインとしたお話。ちょっとむずかしかった。

  • 久々の河合隼雄先生の書。
    講義・講演をまとめたもので、もともとは『物語と人間の科学』として1993年に出版されたものを改題文庫化したものとなる。

    久々に心理療法や精神医学についての本を読んだんだけども、かなり多くの発見があった。

    コンステレーションという語の解説解説から始まり、なぜ、そのことに河合先生が惹かれたのか、そして、宗教や風土記にみる物語から「心」の有り様を解説されていることは非常に興味深かった。「物語」ということに対する認識が自分の中で変わったと思う。

    解説本ではなくて、講義・講演を書籍化したもので、時にコミカルに、時に目から鱗の内容で、スルスル読めながらも刺激的だった。
    河合先生の後年の書籍をまた読んでみたいと思た。

    ----------------
    【内容紹介(amazonより)】
    心理療法家・河合隼雄はロールシャッハ・テストや箱庭療法などを通じて、人間のこころの理解について新たな方法を開拓した。また、隠れキリシタン神話や『日本霊異記』、『とりかへばや物語』、『落窪物語』等の物語を鮮やかに読み解き、日本人のこころの在り処と人間の根源を深く問い続けた。伝説の京都大学退官記念講義「コンステレーション」を始め、貴重な講義と講演を集めた一冊。
    ----------------
    【目次】
    はじめに
    第1章 コンステレーション―京都大学最終講義
    ・言語連想テストからの出発
    ・「元型がコンステレートしている」
     ほか
    第2章 物語と心理療法
    ・「リアライゼーシヨン」
    ・「語る」ということ
     ほか
    第3章 物語にみる東洋と西洋
    ・隠れキリシタン神話の変容過程
    ・『日本霊異記』にみる宗教性)
    第4章 物語のなかの男性と女性―思春期の性と関連して
    ・男と女という分類
    ・平安時代の物語にみる男と女
     ほか
    第5章 アイデンティティの深化
    ・深層心理学の仕事
    ・アイデンティティとは
     ほか
    あとがき
    解説(河合俊雄)
    ----------------

  • オーディオブックにならないかな?

    新潮社のPR
    「心理療法家・河合隼雄はロールシャッハ・テストや箱庭療法などを通じて、人間のこころの理解について新たな方法を開拓した。また、隠れキリシタン神話や『日本霊異記』、『とりかへばや物語』、『落窪物語』等の物語を鮮やかに読み解き、日本人のこころの在り処と人間の根源を深く問い続けた。伝説の京都大学退官記念講義「コンステレーション」を始め、貴重な講義と講演を集めた一冊。 」

全17件中 1 - 17件を表示

こころの最終講義 (新潮文庫)の作品紹介

心理療法家・河合隼雄はロールシャッハ・テストや箱庭療法などを通じて、人間のこころの理解について新たな方法を開拓した。また、隠れキリシタン神話や『日本霊異記』、『とりかへばや物語』、『落窪物語』等の物語を鮮やかに読み解き、日本人のこころの在り処と人間の根源を深く問い続けた。伝説の京都大学退官記念講義「コンステレーション」を始め、貴重な講義と講演を集めた一冊。

こころの最終講義 (新潮文庫)のKindle版

ツイートする