こころの最終講義 (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252322

感想・レビュー・書評

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  • 「人の心などわかるはずがない」と知り抜いているユング派心理学者の河合氏の講演録。
    冒頭の言葉は河合氏の著書「こころの処方箋」からの引用だが、「わかるはずがない=諦める」ということではないのである。
    分からないことについての講演だから「答え」はどこにも書いていないが、考えるヒントをたくさん受けとることができた。
    本書のキーワードは「物語」である。

  • コンステレーション、という考え方に初めて触れ、人の中で起こっていること、起こりつつあることなど、心理療法の奥深さを垣間見たように思いました。

    アイデンティティの確立についても、断言するのではなく、それがどのようなものなのか、物語られることによって伝わってくる、考えが広がり深まっていく感覚が、読んでいておもしろかったです。

    年数を重ねること、見識を広め深めることで見えてくるものがあることに気付かされ、日々学び、日々考え、そして生きて日々を重ねることの大切さに気付かされました。

  • 京大での最終講義をメインにした講演集
    主たるテーマは「物語」
    東洋と西洋を比較し、日本人と西洋人の自我を比較している。 隠れキリシタンにおける物語には、聖書とは違う部分がある。「日本霊異記」「とりかえばや物語」「柳田国男」・・・を心理学から解く。

  • 1985年から1993年にわたって行われた講義・講座の記録。
    京都大学の最終講義、『落窪物語』『とりかえばや物語』『日本霊異記』をとりあげた話、隠れキリシタンの話、最後の「アイデンティティの深化」の話、どれもみな読み応えあり。
    河合隼雄さんがいて、こういう話(西洋思想と東洋思想の違いなど)をきくことができて、わたしたちはどんなに救われているか、とあらためて思う。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「どんなに救われているか」
      それは、よく判ります!
      「どんなに救われているか」
      それは、よく判ります!
      2014/03/14
  • 口で喋ってる訳だし河合さんなのでそんなに難しくはなく、さくさく読めた。
    コンステレーションの話が一番面白く、確かになんとなく有耶無耶に場を、なんというかなんとか持っていこうとする時もあるし、自分が定期的に気持ち悪いくらいの共時性を感じることもある。そういう時はそういうものなんだろうと大人しく黙っている。
    蝶を追いかける心理学者の話が面白く、また口語体なので真芯に捉えてソコという時を捉えるべきなのか、ソコという時を的確に外すべきなのかわからないが、真芯に捉えてバシッと打ったらどっちかが死ぬのでこれは「雷に打たれない技法」の話をしてるんだろうとなんとなく思った。まあ使う予定は無いのだが。

  • 面白い!大事だなぁと思う所が沢山あるので、2度目を読み始めました。

  • こころが欠けているときはファンタジーが欠けているのだ。

    こころっていうとよくわかんない感じisやばいけど、その人の持っているファンタジーって読み替えてみるともっとわかりやすくなるし、それをやっているのがユング系の人なんだなと思った次第。

  • 隠れキリシタンのお話がおもしろかった。
    日本人の心象に合うように、
    丸く丸く収めていったという。

    読み終わり1週間経ち、こころに残ったのは、
    カウンセリングの話。
    すさまじい体験をしている患者に、こんなになってよく耐えられますねと河合先生が言ったら、
    「だって最初に会ったとき先生に、なんで自分はこんなめにあうんでしょうと言ったら、それはあんたの魂が腐ってるからでしょうと言われたから、腐ってるものをよくするんなら相当のことを覚悟しなきゃならないなと思ったんです。」
    と患者に言われた。でも先生自身そんなこと言ったか覚えてない・・・ぽんと出た言葉だったのだろうと。
    腐った魂とはどういうことかよくわからないけれど、腐った部分は私にもあるから、そういうことかなと想像するしかないけれど、この話には驚いてしまった。
    腐ったものはそのまま朽ちるしかないと、私だったら諦めてしまう。
    意識下からでてしまった何気ない言葉ひとつで、患者の気持ちを支えることができる、それに衝撃を受けた。

    性についての話もこれは個々人の経験や年齢にもよるものだろうけれど、からだも心も超えてしまう大変なことだということも、こうして言葉にされると・・・
    改めて、これは大変なことであると思う。からだも心も超えてしまうことを経験できるのは幸せでもあるけれど怖い。それはいくつになっても、幸せであるほど恐ろしいことだ。

  • 河合さんの言葉はなんとも、暖かいな。厳しさの中に暖かさがあるというか、人間ってこうだよな、と漠然と思う。

  • 久々の河合隼雄先生の書。
    講義・講演をまとめたもので、もともとは『物語と人間の科学』として1993年に出版されたものを改題文庫化したものとなる。

    久々に心理療法や精神医学についての本を読んだんだけども、かなり多くの発見があった。

    コンステレーションという語の解説解説から始まり、なぜ、そのことに河合先生が惹かれたのか、そして、宗教や風土記にみる物語から「心」の有り様を解説されていることは非常に興味深かった。「物語」ということに対する認識が自分の中で変わったと思う。

    解説本ではなくて、講義・講演を書籍化したもので、時にコミカルに、時に目から鱗の内容で、スルスル読めながらも刺激的だった。
    河合先生の後年の書籍をまた読んでみたいと思た。

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    【内容紹介(amazonより)】
    心理療法家・河合隼雄はロールシャッハ・テストや箱庭療法などを通じて、人間のこころの理解について新たな方法を開拓した。また、隠れキリシタン神話や『日本霊異記』、『とりかへばや物語』、『落窪物語』等の物語を鮮やかに読み解き、日本人のこころの在り処と人間の根源を深く問い続けた。伝説の京都大学退官記念講義「コンステレーション」を始め、貴重な講義と講演を集めた一冊。
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    【目次】
    はじめに
    第1章 コンステレーション―京都大学最終講義
    ・言語連想テストからの出発
    ・「元型がコンステレートしている」
     ほか
    第2章 物語と心理療法
    ・「リアライゼーシヨン」
    ・「語る」ということ
     ほか
    第3章 物語にみる東洋と西洋
    ・隠れキリシタン神話の変容過程
    ・『日本霊異記』にみる宗教性)
    第4章 物語のなかの男性と女性―思春期の性と関連して
    ・男と女という分類
    ・平安時代の物語にみる男と女
     ほか
    第5章 アイデンティティの深化
    ・深層心理学の仕事
    ・アイデンティティとは
     ほか
    あとがき
    解説(河合俊雄)
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