こころの最終講義 (新潮文庫)

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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101252322

感想・レビュー・書評

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  • 人が物語ることの意味について考えている。

    河合隼雄がこのテーマについて幾つかの本を出してくださっていることが、本当にありがたい。
    坂部恵『かたり』も引用されている。

    自分と「もの」との繋がりは、語られることによって、出て来るのだろうか。
    世の中が個人に責任を帰すようになって、そうした繋がりが見えなくなってしまっている。

    でも、そもそも日本は繋がりを感じる文化を多く持っている。例えば「我が」ではなく「我々」であったり「みんな」という意識が強い。
    言葉の端々で、私たちは、なんて代表的に言ってしまうのも、きっとそんな意識から来ているのだろう。

    小学二年生の女の子が、神さまに手紙を書くという話があって。
    一緒に住んでいるおばあちゃんは、やがて死んで神さまになるんだということや、自分自身もやがて死んで神さまになるという内容を綴っている。

    小学生で、自分はいつか死んで、違う存在になると認識していることは確かにすごい。
    そこには、生きている世界やおばあちゃんとの繋がりもあれば、死ぬことや死んだあとの世界との繋がりも感じられる。
    こうしたお話は、恐らく年が経てば変わるファンタジーだと言ってしまえばそれまでかもしれない。

    でも、自分の中の世界を、その都度変化させながら認識していく。
    こういうのが、ナラティブ・アプローチなのかなぁとも思うのだった。

    反対に、自分に物語を持っていない状態。
    弱い繋がりしか描けない状態のときに、誰かから強い物語を与えられると、どうなるのか。
    いわゆるオウム真理教事件の時のように、それを救いにしてしまうことになるのかもしれない。

    ただ。確かに誰かから認められるではなく、自給自足していくこと、それを精神的にクリアしていくことのハードルは高いように思う。

    だからこそ、私はあらためて人の語りという原型を見直していきたいと思っているのかもしれない。
    紆余曲折したレビューになってしまった。ごめん。

  • 「村上春樹、河合隼雄に会いにいく」を読んで以来、河合先生の本を読むようになった。

    先生のお話は、軽快なリズムと言葉選びの優しさの中に、深い洞察と、安易に結論しない我慢強さというか、心というものへの敬意が感じられる。そして時には、ドキッとするような表現で、私たちに心との向き合い方を教えてくれる。

    思春期の子と親の関係、特に、男の子と母親の関係についての描写は秀逸。

  • 日本霊異記やとりかへばや物語、風土記に関するお話から、当時の人々の価値観が伺えて興味深かった。

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