裏庭 (新潮文庫)

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2000年12月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (412ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253312

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裏庭 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • キャロルもボームも、たぶんエンデですら、ここまで現実世界とファンタジー世界を並行して見せ、なおかつ現実での死者がファンタジーでは誰、と厳密にイコール関係を結んだりはしなかった。
    そういう意味でこれは童話ではなく、童話の形式を借りながら、「喪の仕事」を全うする現代小説、にアップデートされている。
    ただし古き良き児童文学を好む人には、あまりにも図式的な寓話、言葉遊びなどの不足、いわば息苦しさが物足りないのではないかと忖度したりもした。
    個人的には童話ではなく小説としてロジカルに読んだ。

    各個人の不思議な体験が表明され、それがひとつの裏庭に端を発し、世代を経て裏庭も更新されていくという推移が描かれるが、
    通底するのは、人の死をうまく悲しめない状態だとわかってくる。すなわち傷。
    これはファンタジックな舞台を使わなければ、たぶん何年何十年かかるし、ちっとも劇的でなく、
    忘れたように受け容れているのか忘れているのか見ない振りをしているのか、極めて不分明な状態になる。
    まあ現実における喪の仕事とはそういうものだ。

    ここにおいて、大人が見て見ぬふりをした傷を、最も年若い者(照美)が自分の傷に向き合うことで「他者の傷への向き合い」を促す。
    それが創作でありファンタジーであり小説の効果だ。
    親子という負の遺産・元凶を断ち切る旅は、創作物でしか成し遂げられまい。

    個人的に最も感動したのが、失踪した照美を探してバーンズ屋敷に入った照美の母幸江が鏡を見て、鏡像に自分の母の姿と自分の娘の姿を見出す場面。

     第1世代。バーンズ夫妻。水島先生。
     第2世代。レベッカ。レイチェル。丈次。夏夜。君島妙子。マーチン。マーサ。
     第3世代。幸江。桐原徹夫。
     第4世代。照美。純。綾子。

    と整理されるが、母娘二代ではなく三代を網羅しなければ、ここまで重厚な感動は得られなかっただろう。
    双子の弟を死なせたという特殊な設定があるが、なぜ死んだのは自分ではないのか、死んだ人に対して生きている自分は何なのか、生きている自分に罪はあるのか、と読み替えていくことで特殊な経験をしていない自分に置き換えることができる。
    きっと他者の死に向き合うという生の根源的な問いがあるのだ。

    それにしても「双子であることが当然の世界」という設定は、彼女の心をどんなにちくちく痛めつけたことだろうか。
    弟と一緒に私がいる、現実の状態ではなく鏡を経ることで、すでに死んだ弟としての私がいる、という状態で、冒険をしなければならない。
    こんなアクロバティックな経験をしたあとの少女が、「自分を取り返」さなくて、何が自己実現といえるのだろう。よかったね。

    父母が死児を思い涙を流すことで裏庭の世界に水が流れるという終盤は、巧み。
    というより、少女ひとりの内面が人類全体の内面と通じているというユング式の世界観は、憎い。

    少女は照美の冒険を、大人は照美の母の生活を、さらに年を重ねればすべてを包括して、読める。
    きっと毎回違った味わい方ができる、とってもおいしい小説。

  • 児童文学ファンタジー大賞受賞作とは、こういう類いのものなのかと途中から思った。庭を扱う小説に「秘密の花園」があるが、今どきのそれは現代の子に合わせて複雑で超自然でおどろ恐ろしいのに興味があって、複雑で難しい。2017.6.18

  • 「家庭って、家の庭って書くんだよ」

    梨木さんの作品はスラスラと読みやすい。しかしこの作品は読むのに時間を要した。自分の想像力が乏しいゆえに、物語に入り込めなかったからだと思う。
    唯一おもしろいと思ったのは、庭いじりが好きなマーサが「裏庭」をバックヤードではなくガーデンと主張するところである。彼女によると「裏庭」こそが人生の本当の舞台であり、生活の営みの根源であると言う。この作品の舞台が裏庭であり、読んだ人にはなるほどと納得する一文であると思う。

  • 照美という少女がバーンズ屋敷にある大鏡を通って裏庭に行き、冒険し成長する物語です。梨木さんの小説といえば西の魔女が死んだが有名です。この作品は聞いたことがある人や読んだことがある人が多いのではないでしょうか。西の魔女が死んだでは作中に多くの植物が出てきます。この作品でもタイトルが裏庭というくらいですのでたくさんの植物が出てきます。植物の名前がよく出てくるのも梨木さんの作品の魅力の一つです。ストロベリー・キャンドルやユキヤナギ、コデマリ、ヤマブキ、鶏頭、矢車菊(ヤグルマギク)水仙などたくさんの植物が出てきます。この作品の中で私が特に印象に残っているのはストロベリー・キャンドルと水仙です。植物の名前を新しく知ると花屋さんの前を通るのが楽しくなったりします。裏庭を読んでる時期に花屋さんの前を通ったら、鶏頭が店頭に並んであって、あれが鶏頭なんだなって思った記憶があります。西の魔女が死んだに比べてこの作品はファンタジーの色が強く出ています。それもそのはずで、一九九五年第1回児童文学ファンタジー大賞(絵本・児童文学センター主催)の受賞作なんです。裏庭ではムーミンに出てくるスナフキンのような登場人物が出てきたり、一つ目の竜の化石、小さな翼がついた服、キノコのようなスツールなど異世界的なものが数多く登場して、楽しませてくれます。

  • 昔、英国人一家の別荘だった洋館。今では荒れ放題のその洋館の庭は、近所の子供の遊び場だった。
    少女照美は、その庭で辛い記憶があり、そこへ足を向けることはなくなった。
    そんな照美が、ある出来事をきっかけに再び庭へ入り込み、声を聞く。そして照美は不思議な旅に出る。

    梨木香歩さんらしい、自分の思いを心に秘めて苦しむ少女の解放と成長の物語。
    今回は全編ファンタジーな作品に仕上がっている。

    自分に自信が持てず、忙しい親にかまってもらえない孤独を感じる照美。そんな照美をありのままの姿で受け入れてくれる友達の祖父。
    感じやすいがゆえに自分の心を表に出せず、自分の心を扱いきれない。こういう少女を描くのが本当に梨木さんは上手い。自身もそういう少女だったのかもしれない。
    また、そういう少女だったわたしは、すぐに主人公に気持ちが重なる。わたし以外にも、きっとそういう多くの読者を惹きつけるだろう。

    照美のいるファンタジーな世界と、現実世界が交互に描かれる。
    こういうファンタジーな作品は、普段好んで読むことはない。正直に言うと苦手だ。
    普段読まない種類の作品なので、他と比べてではないけれど、梨木さんは面白く仕上げている。「西の魔女が死んだ」も祖母の家での暮らしなどに夢のようなファンタジーな世界を感じたので、こういう作品を書くことが上手い作家さんなのだろう。

    死というテーマを軸にした、家族の繋がり、感情を持つことの自由さ、過去に繋がる現在、日本と繋がる外国など様々に枝分かれし、ファンタジーに相応しいたスケールの大きな作品になっている。
    この作品からも読者は、自分の中に残るシコリと向き合い、これからの自分への生き方を考える手掛かりを見つけられるだろう。

    作品にあった一文が印象に残った。

    鏡を見ると微笑む
    人に対してと同じように自分にも愛想よくしたかった

    頑張って生きてきた自分に、もっと微笑みかけて、よく頑張ってるね、と労ってあげても良かったのだなと感じた。

  • 世界観が好きだった

  • この訳の分からなさはアリスフォロワー。つまり楽しんだもん勝ちである。今回の自分はたぶん負けである。

  • 小6か中1のときにこれを読んだせいで「ムーミン」大好き人間になった。
    読んだ人にはわかってもらえるはず!

  • ファンタジーをそんなに読まないけどこれは良本。

  • 「傷を、だいじに育んでいくことじゃ。そこからしか自分というものは生まれはせんぞ」

    少女は冒険に出なくてはいけない。鎧を捨てる覚悟を試されなくてはいけない。誰かのためじゃなく、自分が何かを知らなくてはならない。

    すべての人がつながっていく「裏庭」のファンタジーな世界。時に残酷な出来事が起こる寓話の世界を進んでいく女の子「テルミィ」と冒険するうちに、幼いころの、物語にのめり込んでいた自分と出会ったような感覚が芽生えてくる。
    初めて読んだのに懐かしい感覚。

    「傷」を重要なモチーフにして進む裏庭の冒険や、裏庭の登場人物にそれぞれ役目があって、役目があるからこそ孤独でなくちゃいけない描写が心に刺さった。


    誰もが最高の形で愛されて育つわけじゃない。それを乗り越えるのが冒険の物語なんだな、と、救われる。
    非常に素晴らしい小説でした!

  • 繰り返して読んでいる本。

    ファンタジーである、ファンタジーであるがとても心に刺さる描写が多くて、


    意識のあるなしは置いておいて誰もが裏庭を持っている、少なくとも私は。

    裏庭での出来事を乗り越えて成長したテルミがそれまでぎこちなく過ごしてきた家族との関係を客観視もして受け入れて歩き出すところに落ち着いて良かった。


    これはまだまだ読み込まないとレビュー書けないよー_(:3 」∠)_

  • テルミィが鏡の中の世界を冒険するファンタジー

  • 照美とTell me。……。不思議なお話だった。最後の方に出てきた虫が気持ち悪かったな。虫だっけ?掌より大きく、全身が黒光りしていて紫がかっているような、這って移動する虫のようなものがいた気がする。

  • 傑作。何を言っても余計。

  • 読み進んでいて、高楼方子の『時計坂の家』と一部混同してたことに気づく。

    「裏庭」の冒険から戻った主人公が、相変わらずな両親と再会して、「自分はもう母親や父親の役にたたなくってもいいのだ」と寂しさと清々しさを感じる、そこに著者の甘さがなく、子どもへの強くて温かい気持ちを感じる。

  • 不思議な気持ちになる。
    ちょこちょこと読んでたからか、話がうまく繋がらない時もあったけど、後半はだーっと一気に読んだ。
    梨木さんのふわっと不思議な、でもずんと心にくる感じが好き。

  • 私にとって大切な本になる気がする。

    誰もが一つや二つ、生い立ちの中で傷を受ける。
    自分自身の傷にどう向き合い、受け入れていくかが、照美(テルミィ)の冒険を通して語られていく。
    傷を癒すのではなく、受け入れる。
    もちろん実際にはこの上なく難しいことだろう。
    安易な癒しの物語でないところがすばらしい。

  • 難しい内容だったことは覚えていますが、細部は忘れてしまったので再読しようと思います。

  • 読み始め…11.7.1
    読み終わり…11.7.15

    梨木果歩さんの小説は「西の魔女が死んだ」に続いての二作目。英国人の別荘だった洋館の秘密の裏庭から入り込んでいくファンタジーな世界の物語です。

    秘密。謎。知らなかった過去。そして未来...。現実と空想とが交差しあって展開していきます。

  • 梨木さんの小説は以前『西の魔女が死んだ』を読んだことがあったので、読んでみました。内容は、、、個人的に、かもしれませんけど、わかりにくかったです。現実世界と裏庭の非現実世界があって、どちらもつながっているところはあるのですが、、、庭から白骨死体が出るやら、裏庭の世界で正体不明の餓鬼などが出てきたり・・・

  • 高校時代の友人が、高校生のときにオススメしていて、ずっと気にはなっていた本。
    たまたま見つけて、あ、高校生のとき読みたかったっけ。と思って読んでみた。
    まあ、高校生くらいまでに読むのが、ちょうどいいかもしれない・・・

  • 小学生の頃に読んでいたら、おそらく忘れられない本になっただろう。

  • 中学生くらいの時に一度読んだけど、抽象的でいまいち意味がわからなかった。
    でも大人になってからもう一度読んだら、心に響くものがいっぱいあって、この本が伝えていることがわかるようになってた。びっくりするほど今の自分には心に刺さったー。

    「自分の傷に支配されてはいけない」

    自分の中でもんもんと悩んでたことを言い当てられて、向き合わなきゃだめよと言われた気分?

  • むずかしい。
    じっくり考えても、なお難しい。

    これが「児童文学」とは。

  • 「物語」の持つ意味や力を感じさせる1冊。

    正直ファンタジーの描写の部分には少し入り込めずに読み流してしまった。もしかしたら子供のほうがすんなり入っていけるのかもしれない。
    「私は、もう、だれの役にも立たなくていいんだ」
    自分で自分を受け入れる、認める。理屈ではなく感覚として。照美は旅の途中でたくさんの傷を受ける。現実は必ずしも自分の見えているものだえではないことを知る。それを全て受けて受け入れることができる。その過程と気づきに力強さを感じる。
    みなそれぞれ一人一人違う傷を抱えている。
    同じ出来事に遭遇しても全く同じ傷を抱える訳ではない。
    傷は個性
    「傷を恐れるな」
    「傷に支配されるな」
    「傷を育め」

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