からくりからくさ (新潮文庫)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253336

感想・レビュー・書評

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  • 昔懐かしいおばあちゃんの家を思わせる、古い日本家屋。住んでいるのはイマドキではない、勉強熱心で深い思いやりを持つ表現者達、かつ草木や生き物、織物、染色に専門性がある。
    空気感が心地よく、夏の終わり、西陽の入る縁側などを思い起こさせる。個性的な4人は二十歳そこそこ、プラス神秘的なリカさんが居る。
    謎解きミステリーのような感じもするが、国際問題や大学や社会の理不尽、古い街や家のしきたりなど、盛り込まれている。彼女たちの前向きな好奇心と素直な性格がホッとする。
    ストーリーは複雑だが、世界観はすきです。

  • 蓉子の祖母が亡くなり、その家に4人が同居することになった。染物修行中の蓉子、東洋文化を学びにきたマーガレット、紬(つむぎ)専門の紀久、キリム(中近東の図柄)に興味を持つ与希子の4人である。蓉子が大切にしている日本人形、りかさんを中心に、蓉子・紀久・与希子の関係が明らかになっていく…。

    日本人形が元々苦手だったから恐る恐る読んでいった。染織に関する専門用語や、複雑な人間関係が話を難しくさせていて、具体的に細かいことを想像するのが困難だった。

  • 再、再、再、再……読
    丁寧な暮らし、手仕事、あこがれるけど…できない…だからこの本を読み返したくなるのかな
    色々な植物、色、歴史が絡まり合って…
    続編が書かれているとの噂、読みたいです

  • からくりからくさ、タイトルどおり。しみわたるおはなし

  • 自然など柔らかい題材を扱いながら、同時に強く濃い情念を感じました。

  • 「りかさん」を先に読んでいたので
    すんなりと物語の世界に入れた。
    大人になった蓉子は染織の世界へ。
    祖母の家での同居人は機を織り、
    織物の研究をし、針灸の勉強とそれぞれ。
    庭の植物や穏やかな暮らしのなかに
    人の思いや現実があり、
    人形や織物が過去を物語る。
    3人の合作の最後の様子は圧倒され
    一瞬の芸術というのもあるのだなと
    思った。

  • テーマは“宿世の縁”。
    その媒体となっているものは“一枚の布”。

    布を織ること。
    古代より脈々と受け継がれてきた手仕事。
    “布”は、俯瞰でみると一つの“物”だけれど、元々は紡がれ染められた“糸”であり、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が丹念に織り上げられて、模様になっていく。
    紡ぎ手の思い、染め手の思い、織り手の思いまでもが織り込まれている、一枚の布。


    『からくりからくさ』 梨木香歩 (新潮文庫)


    梨木さんの書く物語は、どこかしっとりと湿り気を帯びている。
    自然にくるまれ守られて、朝霧の中で静かに呼吸をしているような感じ。

    染色家を志す「蓉子」、機織りを学ぶ大学生の「紀久」と「与紀子」、そして、鍼灸の勉強のため日本に来ている「マーガレット」の四人の女の子たちが、心を持つ不思議な人形「りかさん」とともに共同生活を始める。

    蓉子の亡くなった祖母が住んでいた、冷房も網戸もない古い日本家屋で、彼女たちは自然の営みとともに生活する。
    庭を造り、草花を食し、糸を染め、機を織る。

    「結界が張られているような家」と神崎に言わしめた、世の中の変化の外の、何かに守られているかのようなこの家で、過去の小さな出来事の一つ一つが布を織り上げるように繋がっていく。
    その繋がり方がまたすごいのなんのって。
    ややこしすぎてとても書けないけれど、まさに宿世の縁、定められた運命、断ち切れない何か。

    りかさんを中心にして、蓉子も紀久も与紀子も、本人たちの与り知らぬ地下水脈のような歴史の深みで、実は繋がっていたのだった。

    彼女らの合作が火事で燃え上がった時、定められていた運命とでもいうべき一つの作品が完成するのだが、その場面は凄まじい。

    梨木さんは、“人間の業”を描くのがうまい人だと思う。
    普段は隠れている人の醜い部分を、決してごまかさずストレートに描く。
    時々目をそむけたくなるほどリアルに、心の闇を描き出す。

    マーガレットと神崎の関係を知った紀久が、蓉子に黒を染めてもらう場面は怖かった。
    草木に悲鳴を上げさせてまで色を出したくない、と普段、自然の媒染剤しか使わない蓉子に、紀久は、劇薬の「重クロム酸カリ」を使って黒を出してほしいと言うのだ。
    その、心の闇を染め出したかのような黒糸は、紀久の織る紬の一部となり、そして一枚の布になっていく。

    すべてのものは、一枚の織物のように永遠に繋がる連続模様であり、人はその中を生きている。

    何かすごい物語だったな。
    横に広いというよりは、下に深いという感じ。

    ただ、神崎さんのやりたかったことが、あそこで終わってしまうのはもったいない気がした。
    蓉子、紀久、与紀子と竹田君は魅力的に描かれているんだけど、神崎とマーガレットのキャラクターが少し薄い気がしたな。
    神崎はトルコから、クルド人たちのことを日本にいる彼女らに伝えたのだし、マーガレットは、子供を産むことで破壊の後の再生の役割を担ったのだから、役割は十分に果たしているのに、肝心の人物像がうまく結べなくて、そのあたりがちょっと残念だった。

    ところで、人形の着物の柄の「斧(ヨキ)と琴と菊」が、「ヨキコトキク」だということに、読み終わってしばらく時間がたってから気付いた!
    へーそういうことなのか。

    なぜ作者は、作中人物にそのことについて一言も語らせていないんだろう。
    言っちゃえばただの言葉遊びで終わってしまうからかな。

    まあ、りかさんがいることによって、何が起きても不思議ではない世界が現実にそこにあるわけで、例えばテーブルの上の唐草模様とか、マーガレットの倒れた音が二回したとか、その時には気付かないおかしなことが、後から見えてきたり、きっとこれもそういうことの一つなのだろう。

    「りかさん」という作品があるらしい。
    読んでみよう!

  • りかさん、の主人公のようこが大人になった蓉子としての新たな物語。

    祖母が亡くなって、かつて祖母が住んでいた家を下宿にすることになり集まった若い女性たち。

    孫の蓉子は染色、アメリカ人のマーガレットは鍼灸師を目指し、紀久は機を織り、与希子は機と図案の研究。
    4人とも手仕事を共通にしながらの共同生活。

    蓉子の大切な市松人形のりかさんは
    祖母の喪にふしたまま、ひっそりとしたままだった。

    4人で協力しながらの生活
    紀久の故郷で墓の中から見つかったりかさんそっくりの人形。
    それを辿っていく中でわかる与希子の家系と遠い親戚だったという事実。
    紀久が必死に書いた機織りの原稿を大学教授に横取りされそうになる騒動。
    マーガレットが身籠った子供、その相手の神崎が滞在しているトルコ、クルド人のこと。

    4人の手仕事が集結した作品をお披露目した日。
    与希子の余命僅かの父のタバコの火によって燃えていったりかさんの最後。

    書ききれないほどの話の内容の濃厚さ。
    りかさんの最後、ありがとうだ。

  • 梨木さんの本はどれも好きなのだが今回は情報量が多すぎて疲れてしまった。また少し時間を置いて再読したい本。

  • 高校生で読んだ際は、自分の好きなワードがたくさんあるはずなのに、どうしてか内容が頭に入らずもやもやしていました。
    再読してみて、紀久の心情を通し物語にすんなり入り込めるようになっていました。
    物語がゆったりと進行しているので、一読してから長い時間を置いてみて、また読んだのが良かったのかもしれません。自分の中で上手く消化できた気がします。
    古民家、人形、染織といった日本的なワードが散りばめられていますが、マーガレットの存在や中近東の話題、クルドのことが違和感なく語られていて、織物の縦糸と横糸を丹念に編んでいくような小説です。

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著者プロフィール

1959年生まれ。小説作品に『西の魔女が死んだ 梨木香歩作品集』『丹生都比売 梨木香歩作品集』『裏庭』『沼地のある森を抜けて』『家守綺譚』『冬虫夏草』『ピスタチオ』『海うそ』『f植物園の巣穴』『椿宿の辺りに』など。エッセイに『春になったら莓を摘みに』『水辺にて』『エストニア紀行』『鳥と雲と薬草袋』『やがて満ちてくる光の』など。他に『岸辺のヤービ』『ヤービの深い秋』がある。

「2020年 『風と双眼鏡、膝掛け毛布』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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