りかさん (新潮文庫)

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2003年6月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253343

りかさん (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • すっかり梨木さんにはまってしまい、顔なじみの司書さんに『家守奇譚』や『村田エフェンディ滞土録』が「とってもよかった!」と若干興奮気味に力説したら、こちらを勧めてくださいました。

    読み始めてみると、やっぱりいい!
    リカちゃん人形をねだったようこに祖母の麻子さんから届けられたのは、市松人形のりかさん。
    ようこのやるせない気持ちから物語は始まるのだが、麻子さんからの助言を受けて不思議な力を持つりかさんとの交流が始まるあたりから、梨木さんの世界が動きだす。

    『家守奇譚』の明治時代の空気感や自然との関わり、『村田エフェンディ滞土録』では同時代の日本人の海外での暮らしぶりや異文化との交流が描かれ、その下地となっているのは日本人が自分の周りに存在するものすべてに対して抱いている畏敬の念なのではないかと感じていた。
    本書では祖母と孫の間には世代を超えて、対等に通じ合える言葉を持ち、人形が背負う歴史を理解することができる。人間の世界と人形の世界が融合するあたり、謎めいていながらなぜか心の奥底に届き、少々泣きたい気持ちになる。

    ファンタジーと言ってしまうとなんだか夢物語になってしまいそうなので差し控えようと思うが、遥か昔から日本人の暮らしの中に根付いてきた、自然やもののなかに存在していると感じる八百万の神に対して敬意をはらう気持ちや儚さを愛でる気持ちを丁寧に描いていく。

    私の中に核として存在する、物事に対する捉え方や感じ方、行動原理。これらは生まれた後の環境(両親の思考方法や学校・社会で出会った人々、また、それらを取り巻くもの)によって醸成されてきたわけだが、その感覚が非常に似ていると感じた。

    先日、勤務先のお仲間さんと今読んでいる本の話でひとしきり盛り上がった後に、梨木さんをおすすめしたところ、「私も大好きですよ!特に『村田エフェンディ滞土録』、いいよね~!」と更に話は続いた。
    本を通して人と交流したり、出会ったり。
    楽しみは続いていく。

  • 「リカちゃん人形が欲しい!」とおばあちゃんにお願いしたようこのところに届いたのは市松人形の「りかさん」。
    りかさんがやって来たことでようこの毎日はガラリと変わる。
    人形の存在のなんて大きなこと。
    今まで見えていなかったものが見えるということ。
    人形がみせる数々のこと。楽しいこと。悲しい出来事。
    不思議なことだけではなくて、いつも通る道、友達のお家が急に鮮やかになるような。
    「西の魔女」と梨木香歩さんの本は2冊目だけど、どちらもおばあちゃんが魅力的。主人公の未来を照らすような言葉をたくさんくれる人。
    甘いだけでなく、厳しいことも与える人。
    孫をペット扱いしてない、ちゃんと人と人との付き合いをしている、そんなおばあちゃん。
    こんな風に歳をとれたらいいな。

    「そりゃ、おまえ、価値観の同じ人と結婚したって、修行にはならないじゃないか」

    「澄んだ差別をして、ものごとに区別をつけて行かなければならないよ」
    「自分の濁りを押しつけない。それからどんな【差】や違いでもなんて、かわいい、ってまず思うのさ」

    文庫用書き下ろしの短編「ミケルの庭」は衝撃的。うちは大病しないで来たけれどその描写に心が凍える。
    「からくりからくさ」を読んで改めて読んでみたい。

  • 「からくりからくさ」で主人公が大事にしていたお人形のりかさん。
    しっとりした和風ファンタジーです。

    ようこは友達が持っているリカちゃん人形が欲しくて楽しみに待っていたが、おばあちゃんが送ってきたのは市松人形のりかさん。
    ようこは、がっかり!
    りかさんは、しゃべることのできるお人形で、ようこの元へいくときが来たということだったのだろう。
    最初は手に取らなかったようこだが、おばあちゃんに言われたとおりに朝晩りかさんの世話をし、心を通わせるようになっていく。
    りかさんはほかの人形が抱える過去を感じ取り、ようこも一緒になって、その苦しみも解きほぐしていくようになるのでした。

    「からくりからくさ」は染色や織物にたずさわる女性達が同じ家でともに暮らす話で、人生模様が結構濃くて複雑な作品でした。
    それに比べると、だいぶゆったりしていて、心地よいテンポです。
    人形達の過去には、ずいぶん悲しい物語も秘められていたけれど。

    祖母と孫娘の関係、良いですね。
    祖母が早くなくなったので、私はおばあちゃんを知ってはいるけど話したこともほとんどないので‥
    (あ、でも私のお雛様はもしかしたら、おばあちゃんが何かしてくれたのかしら?選んだのは母のはずだけど)
    市松人形を特に欲しいと思ったことはないけれど、お人形大好きで、着物も好きなので~りかさんが着物を何枚も持っているという点に思わず、よだれが‥(笑)

    「からくりからくさ」の後日談もあり、これは子育ての大変さが出ていて、「りかさん」の次に読むには意外な重さ。
    まあ全体としては、繋がってくる部分もあって、納得ですが‥
    梨木さんはどうしてこんな作品が書けるのか、どれを思い浮かべても、その豊かさにぼうぜんとします。

  • 「からくりからくさ」の蓉子とりかさんの出会い。おばあちゃん。登美子ちゃん。「からくりからくさ」では少ししか感じれなかった人々の様子が伝わってきて、自分の中でとてもしっくりきた。
    アビゲイルという人形の話には切なくなったが、この人形のエピソードに「からくりからくさ」のマーガレット(のお母さん?)が関わっていて、それには嬉しくなってしまった。
    全ての人が繋がっていて、その縁に心がじんと温かくなるのを感じた。「りかさん」から読んでいたら、こんな気持ちにはならなかったかもしれない。「からくりからくさ」を読んでのち「りかさん」を読んだから感じれた気持ち。
    これから再び「からくりからくさ」を読みたいと思う

  • 小さい頃、大事にしていた人形やぬいぐるみと、会話していたことがあった。
    もちろんそれは現実ではなくて自分の妄想の中での会話だったのだけど、会話できたらいいのに、という願望も含まれていた気がする。

    そういうことが本当に起こる、言うなれば“和風ファンタジー”。ものすごく不思議な世界観。
    よくよく考えてみればけっこう怖いのだけど(笑)、子どもだからこその澄んだ感性が羨ましくもなる一作。

    リカちゃん人形が欲しいとせがんだ小学生のようこにおばあちゃんから送られてきたのは、黒髪の市松人形だった。名前は“りか”。
    こんなはずじゃ、と落ち込むようこだったが、一晩が明けた頃その市松人形が会話をして人と心を通わせることが出来ることに気づく。人形は言った、「りかさんと呼んでね」。
    りかさんに導かれたようこは、古い人形たちの心を見つめ、かつての持ち主たちの思いに触れていく。

    黒髪の市松人形が喋るってやっぱり怖い(笑)でもこのりかさんは、とても思慮深く頭が良く、少ない言葉でようこを助けていく。
    元々はようこのおばあさんが持ち主で、ずっとおばあさんと暮らしていた。なのでようこは要所要所でおばあさんにも助けを求めるのだけど、りかさんとおばあさんの導きでようこはだんだんと成長していく。

    世の中にある人形の中には、とても深い思いが込められているものがある。何か意味があって作られたものもある。
    そういう人形が廻りめぐって持ち主が変わり、その思いや意味が忘れ去られた後でも、人形たちの中に残されたものは変わらない。
    そこで苦しむ人形たちに手を差しのべて思いを解放させる役割を、ようことりかさんが担う。
    強く信じる心と純粋な精神がなければ出来ない役割。シャーマンとか、そういうものに近いような(この作品にはそういう宗教的なイメージはないけれど)。

    いわゆる青い目の人形がモデルになってるのかな、という人形も出てくるのだけど、この人形と関わった1人の少女の物語はとても切ない。
    青い目の人形のことは、私も高校時代に牧師さんからじっくり聞いたことがあるのだけど、国と国の関わりや争いの中に人形が存在していることもある。
    人形供養というものが実際行われているのだから、人のかたちを模したものに思いが宿るのは、よくよく考えてみればとても自然なことなのかもしれない。

    もう1つ収録された「ミケルの庭」も「りかさん」と繋がっている。
    詳しくは描かれていないけれど、とても深い繋がりが。

    ファンタジックで可愛らしくてちょっぴり怖くて、実はとても重い意味がある物語。
    普段何気なく目にしている人形にも、何かの意味や思いが込められているのかも。

  • 『ミケルの庭』
    マーガレットの子供ミケル(1歳2カ月)。自分を抱っこしてくれる4人について、柔らかい人、面白い人、緊張する人、一番よく抱いてくれる人と感じているらしい。
    柔らかい人=蓉子、明るい人=与希子、一番よく抱いてくれる人=母親・マーガレット、…ということは、緊張する人=紀久さん??? 
    紀久さんどうして。まさか、ここまで紀久さんの心の闇を持ってくるとは。ミケルは最後紀久さんの指を握ろうとした。だから大丈夫、紀久さん蛇をもう吹っ切って。

  • りかちゃん人形が欲しくって、おばあちゃんにりかちゃんがほしいとねだったようこ。
    でもおばあちゃんから送られてきたのは、純和風な市松人形だった。
    すっかり落胆するようこだったが、おばあちゃんの指示にしたがってりかさんのお世話をすることにする。
    りかさんにはようこと話をしたり気持ちを和らげる不思議な力が宿っていた…。

    何年か前にからくりからくさを読んで、いつか読もうと思っていた『りかさん』。
    先にこちらを読んでおくべきでした。
    ようことりかさんの出会いから、人形にまつわる謎解き、草木染めの道に進むきっかけ。
    市松人形って怖くて苦手だったけれど、りかさんには癒されてしまいました。
    でも人形のお話を読むと、私が小さいときに毎日遊び、今はもう箱にいれて眠らせるだけの自分の人形を思い出し、後ろめたさも感じてしまうのだけど。

    からくりからくさの後日談にあたる、ミケルの庭もよかったです。こちらはむしろ、からくりからくさのあとに読まないと。
    マーガレットの娘ミケルを、マーガレット不在の中、三人で育てているお話。
    大変で不安で、頼りなくて可愛くて見つめているだけで幸せになる赤ちゃん。
    インフルエンザをうつしてしまったと後悔でいっぱいになる紀久が辛かったです。ミケルが息を吹き返したときは心底ほっとしました。

  • 幼い頃、日本人形が怖くて、おばあちゃんに「雛人形を買ってあげる」と言われたときに大泣きした私ですが。。。

    りかさんみたいなお人形だったら、ほしかったなぁ!

    りかさんを贈られることで、主人公ようこのように、今までにない怖い体験をすることになっても、青い目のお人形にまつわる哀し過ぎるエピソードを知ることになっても、きっと得がたい素敵な日々が過ごせたことでしょう。

  • いい物語には心を解き放つ力がある。忘れていた思い出を呼び起こし、悲しみを甦らせ、新しいかたちにまたしまい直してくれる。

  • 人形とお話できたら、という素朴な発想から、ここまで響く小説ができるとは。やっぱり作家はすごいな。

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