ぐるりのこと (新潮文庫)

  • 1634人登録
  • 3.59評価
    • (124)
    • (143)
    • (271)
    • (32)
    • (8)
  • 145レビュー
著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2007年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253381

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

ぐるりのこと (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 思慮深い、日々を大事に大事に、一歩ずつ踏みしめるような筆者の人柄がうかがえる。一見、枝分かれして浮遊する「考え事」に振り回されるような話題の飛躍が多いけれど、通読すればちゃんと、ひとつの根っこに集約してくる。
    人間や自然の、根本的な本能とか原理とか、、、普遍的な真理みたいなものを探し、受け入れようとするかのようなの彼女の視点は本当に鋭くて、斬新。
    最終値としての答えはどこにもないような命題ではあるけれど、考えさせられることが多く、とても刺激的だった。

    さまざまなテーマが登場する中に、マニュアルやハウツーについて言及した箇所があった。決してそれらを否定するのではないけれど、「立ち止まって深く長く考え続ける思考の習慣が、身に付きにくくなる」という記述があって首肯した。
    どんなマニュアルも、自分で咀嚼して消化することを怠れば、いくら実践してもただの機械と同じである。ディズニーランドのキャストたちが的確な行動を選べるのは、マニュアルの一歩先にある精神を、きちんと各々が理解しているからこそだろう。

    とかく、「考えること」を省かせるようなマニュアル化や信仰のようなもの(宗教に限らず)のあふれる現代で、筆者のように、「生きている途中で感じる小さな違和感」をひとつひとつ、こうしてじっくり考える、という姿勢は、何より、凄い。

  • いままでとは違った視点、物事の考え方を教えてもらった。
    これぞ読書の醍醐味。
    私も誰かやマスコミなんかに惑わされず、自分自身でぐるりのことを丁寧に深くじっくり考えていきたい。

    「もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、様々なことを、一つ一つ丁寧に味わいたい。味わいながら、考えの蔓を伸ばしてゆきたい。」

  • 梨木さん、どれだけ深く、広く、物事をとらえながら生きているんだろう。
    いつもぐるりのことにアンテナをはっており、疲れないのだろうか。
    そんなところの気のゆるめかたもうまいんだろうな。

  • 日々の生、社会の生、時代の生を丁寧に深く生き抜くことを綴る随筆集。
    あらゆる物事と、その背景にある人間の心の動きを明らかにする、その為に選ぶ言葉の的確さに、何度もはっとさせられました。
    自分という個と、世界との境界を自由に行き来する梨木さんの柔軟な思考が、数々の著作の根底にあったのだと実感すると共に、その真の思慮深さに憧れてやみません。

  • その事をやらずには生きられない、
    そういった事をやっているヒトを感じるのが、自分は好きで。
    ニセモノとホンモノがあるのなら、このヒトはホンモノだと思う。

  • てっきり映画の原作だと思っていたら全く関係ないエッセイ集でした。

    目的を設定し、最小の労力でそれに辿り着く最短距離を考えるー(中略)何かをしたい、という情熱が育まれる以前に、「何かをするためのマニュアル」が与えられてしまう。

    ↑ここが一番ぐっときた。日本の教育について考察する場面なのだが、私は正にこの通りに育っていると思う。
    著者はこういった教育を批判し切り捨てるのではなく、一定の理解を示しつつもっとなんとかならないものかと憂いている。
    しかし、この短絡性を援助交際や恐喝などの犯罪に結びつけてしまったのは私には残念だった。
    もっと「情熱を育む」という部分に焦点を当てて欲しかった。

    著者はこれほど意識的に生活していくことに、疲れないのだろうか、と読んでいて心配になった。
    自分で深く深く考えていても結局世界が変わることは(多分)ないのに。
    何か行動を起こさないことに罪悪感を覚えたりしないのだろうか。
    そう思うと同時に、著者にとっては作品を書いて世に発表するということが、行動を起こすことなのだ、と思った。

  • 梨木さんの作品は、静かな空気感のなかに、ひとつひとつに歴史を重ねてきた重みというのが感じられてとても好きなのだが、こちらのエッセー...というには深い思索に驚かされる。常日頃から、自分をとりまく事柄にこんなに思いを馳せている方だったんですね。すごく勉強になりました。

  • タイトルから女性作家の随筆、エッセイの類と思って読み始めて、驚く。むしろ評論というべきもの。
    外部と内部、その間にある周辺とか境界といわれる領域。この辺までは教科書的な理解はあった。英国の生垣は動物や昆虫たちが集まる豊潤な世界という。中心あっての周辺と思い込んでいて、そんなことは考えもしなかった。著者自身、幼い頃そこに立て籠もった。遠くからの光に誘われて出てしまったとの告白。光とは何の比喩だろうか。自己と他者を超越する理想だろうか?
    難しい。トンデモナイ疑問を最後にポンと置いたりする。意地悪じゃないけれど、読者についてこれるかと試しているかも知れない。
    境界を行き来せよという。境界を曖昧にすればいいのかと思っていると、群れに埋もれることを糾弾してくる。周囲に捲かれず、遠い外部との境界を超えろという。ベクトルの方向が判らない。日常に埋没するサラリーマンは途方に暮れる。想像力の跳躍が必要だ。
    一つの話題から急に唐突に違う舞台へピョンと飛ぶ。最後に軽々と最初の地点に舞い戻る。その跳躍力と着地の見事さ。ノルマンディーやトルコ、高千穂、近江の地の空気感が素晴らしい。
    共感ではなく、境界を越えることを考えさせられた読書だった。

  • ぐるりのこと −外の世界、境界− について書かれたエッセイです。
    そんなに易しくもなく、難しくもありません。

    ・「個人の生」と「時代の生」
    ・「個」と「群れ」
    ・生け垣と有刺鉄線

    対称的な言葉の組み合わせは色々出てきますが、
    記憶に残っているものはこの3組です。

    大台ヶ原に移住してきた春日山の鹿の話は分かりやすかったです。

    人と人とが関わり合う、文化と文化が触れ合うということを
    考えさせられる一冊。

  • まわりの世界と
    自分の境界
    そういうぐるっとしてことなど
    世界に対してどう開いていくか

  • 物事をふかーく考えるのが大人になって更に苦手になりました。梨木さんは生きるのがある意味でしんどそう。

  • よくわからなかった。
    次々に話題が転換していくエッセイ。
    さーっと流し読みするだけだと、「なんでその話?」って思っちゃってついていけない(多分読み方が間違っている)。
    個人的に文体がちょっと苦手。

  • 私にとって大切な本になった。
    自然のことに精通している梨木さんの人間観察について書いてるところがとても好きだ。
    思慮深くて読みながらうなずいてしまう。
    特に好きなのは西郷隆盛について書いてるところ。通り一辺の分析ではない部分は読みごたえがあった。
    儒教的精神について書かれているところも共感した。
    「春になったら苺を摘みに」も良かったけどこちらの方が読みごたえがあった。

  • おもしろいとの。5分しかあとないって時に、図書館でとにかく目に止まった本を借りた。そしたら、この本。私はこの人の著作を2冊読んだことがあったのだ。

    静かな森のコテージで休息するような旅で読みたいと思った。だから、今回はつまみ読みしかしてない。

    だから、ぐるりのことも、まだわからない。

    またこんど。

    最後の章の
    「物語を」
    よかった。

    「地霊と言霊が、思わぬ形で互いに寄り添ってゆく。」
    という好ましい状態が著者の望みなのだろう。

    「物語を語りたい。
    そのき人が存在する、その大地の由来を。」という強く確かな思いが、響いてくる。


    「大地へ」もよかった。
    93ページ目に「ぐるりのこと」について見つけた。
    スコシズツ、少しずつやってゆけばいい。のくだりがいい。
    今まであった成分の喪われた大地なら、、、のところ。

  • はあ。やっと読み終わった。1か月半以上?くらいかかった。
    わたし、小説と比べてエッセイって苦手なのよ。これ読んでて何でかちょっと分かったわ。この小説の作者ってこーいう人物やったのか、と興醒めするのが嫌なんやわ。
    梨木香歩はいくつか読んだ小説が好きやったし、このエッセイの章題も興味深くて面白そうやったけん買ったけど、面白げな章題からは想像もつかんよーな社会派やったわ。

    うーん…考えてみれば、「西の魔女が死んだ」とか「からくりからくさ」とか、しれっとフェミニズム的な思想ぶっ込んでたし、うん、まあ、そーいう人なんやね。
    私はそーいう、素敵ないい人でしょう!ていう…

    エッセイって言うからには自身の経験が元なんでしょう。よく自分の言動をああいう綺麗なことばで飾って表現できるよね。

  • 友達が昔、この本の話をしていた。ほとんど意味を解さず、確かに聞き流してしまった。しかし、どこかに薄っすらと記憶が残っていたのだろう。同じ音を聞いた時、それを思い出した。

    ぐるりのこと。身の回りのこと。何気ない日常に現れる風景、情景、人、事件。それを歴史や芸術、政治に繋げ、語る。どこか物憂げな語り口調でもあり、直截に導入されぬ核心からも、日々日常における関心事の比率が伺える。ぐるりのことは同じでも、感じたものが繋がる先は、その人の興味なのだ。

  • 矛盾を抱えて、生きていこう。考え続けて、生きていこう。

    梨木香歩が好きだ、と思った。この前読んだ『沼地のある〜』を構想していた頃のエッセイ。あの話に至るまでの思考の流れ、渦巻きを知って、より『沼地のある〜』が気になってきた。

    単純には割り切れない。違和感を感じる。だからといって、それを声高に叫ぶこともない。物語の力とは。「心を動かす」ことの危険性。「泣ける話」「全米が泣いた」という文句が嫌いなので、梨木香歩のとまどいが自分のことのように感じられた。梨木香歩の描く、「優しい冷たさ」は、私にとって心地よい。全員がわかってくれるなんて、怖い。でも、閉じこもらず、理解を得られるよう、働きかけること、考えることは、止めないでいたい。人と関わることはエネルギーがいるけれど、敬遠せず、さらっとしたことばだけを語って過ごすのではなくて、きちんと傷つくことばから逃げずにいたい。

  • 大切な本。
    人との諸々の付き合いや、時代の大きな流れで自分を見失いそうになると、この本に帰ってきてすとんと自分の足下に落ち着く。
    静けさに包まれ、それでいて開いている。
    その生き方に、憧れをもった。

    しかし生垣的な、ダルな境界を保とうとするからこそ、「そと」の流れは自分の近くまでに影響して、自分の足下はたやすくぐらつく。

    開かれたまま、自分のぐるりのことに足をつけて、生活する方法を、自分のもとに手繰り寄せようと、繰り返し開く。

    「春になったら苺を摘みに」の「夜行列車」で描かれたモンゴメリは、その方法を手にすることができず、境界をクリアにし、自分を守ったのであろうか。

    わかる。人との境界をクリアに区切ったほうが、ずっとラクだ。
    だけど、なぁ。

    この「ぐるりのこと」と、「春になったら苺を摘み」を読んで、その境界をあいまいに。
    クリアなものと、あいまいなもの。
    二つの別方向のベクトルをなんとか、使い分けてみたくて…

  • ☆4 水無瀬
    咀嚼に物凄く時間をかけるととても美味しい、実にスローフードな名エッセイ。甘くない。が、渋くない。昨今流行りのレモンジーナではないが、「土の味」がします。

  • 簡単に読み進められない。1ページ読むのに何回か留まり、思考を巡らし納得しながら読んでいく。ふだんの倍以上の読後感が残り、また何回も反芻する。何かの答えがドンと用意されているワケでは無いけれど、その答えを探しな読み手もまた"ぐるり"する。

  • 「ぐるりのこと」とは身の回りの事。九州、イギリス、トルコ等で出会った出来事を綴ったエッセイ。トルコ編は「からくりからくさ」で著者が見せたキリム等への造詣もうかがえます。著者の作品を読むたびに、自分も梨木さんのように、真摯に周りを見なければと反省させられます。

  • 再読。なかなか生垣の中から出られないわたしに梨木さんの言葉は沁みました。

  • 言葉にしづらいことを丁寧に自然と結びつけるように書いているエッセイだなあーと。
    ディテールがとてもクリアだとかんじる。こういう話ってすごくぼんやり書く人もいるけど、輪郭がくっきりしてる気がした。
    でもクレヨンとかじゃなくて、あくまでも細いペンみたいなかんじ。
    潔く落ち着いた知性みたいなもの?しんとした雪原とか、暖かな日差しのなかとか、そんなかんじ
    よみかえすといいな

全145件中 1 - 25件を表示

ぐるりのこと (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

ツイートする