ぐるりのこと (新潮文庫)

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2007年6月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253381

ぐるりのこと (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 思慮深い、日々を大事に大事に、一歩ずつ踏みしめるような筆者の人柄がうかがえる。一見、枝分かれして浮遊する「考え事」に振り回されるような話題の飛躍が多いけれど、通読すればちゃんと、ひとつの根っこに集約してくる。
    人間や自然の、根本的な本能とか原理とか、、、普遍的な真理みたいなものを探し、受け入れようとするかのようなの彼女の視点は本当に鋭くて、斬新。
    最終値としての答えはどこにもないような命題ではあるけれど、考えさせられることが多く、とても刺激的だった。

    さまざまなテーマが登場する中に、マニュアルやハウツーについて言及した箇所があった。決してそれらを否定するのではないけれど、「立ち止まって深く長く考え続ける思考の習慣が、身に付きにくくなる」という記述があって首肯した。
    どんなマニュアルも、自分で咀嚼して消化することを怠れば、いくら実践してもただの機械と同じである。ディズニーランドのキャストたちが的確な行動を選べるのは、マニュアルの一歩先にある精神を、きちんと各々が理解しているからこそだろう。

    とかく、「考えること」を省かせるようなマニュアル化や信仰のようなもの(宗教に限らず)のあふれる現代で、筆者のように、「生きている途中で感じる小さな違和感」をひとつひとつ、こうしてじっくり考える、という姿勢は、何より、凄い。

  • いままでとは違った視点、物事の考え方を教えてもらった。
    これぞ読書の醍醐味。
    私も誰かやマスコミなんかに惑わされず、自分自身でぐるりのことを丁寧に深くじっくり考えていきたい。

    「もっと深く、ひたひたと考えたい。生きていて出会う、様々なことを、一つ一つ丁寧に味わいたい。味わいながら、考えの蔓を伸ばしてゆきたい。」

  • 梨木さん、どれだけ深く、広く、物事をとらえながら生きているんだろう。
    いつもぐるりのことにアンテナをはっており、疲れないのだろうか。
    そんなところの気のゆるめかたもうまいんだろうな。

  • 日々の生、社会の生、時代の生を丁寧に深く生き抜くことを綴る随筆集。
    あらゆる物事と、その背景にある人間の心の動きを明らかにする、その為に選ぶ言葉の的確さに、何度もはっとさせられました。
    自分という個と、世界との境界を自由に行き来する梨木さんの柔軟な思考が、数々の著作の根底にあったのだと実感すると共に、その真の思慮深さに憧れてやみません。

  • その事をやらずには生きられない、
    そういった事をやっているヒトを感じるのが、自分は好きで。
    ニセモノとホンモノがあるのなら、このヒトはホンモノだと思う。

  • てっきり映画の原作だと思っていたら全く関係ないエッセイ集でした。

    目的を設定し、最小の労力でそれに辿り着く最短距離を考えるー(中略)何かをしたい、という情熱が育まれる以前に、「何かをするためのマニュアル」が与えられてしまう。

    ↑ここが一番ぐっときた。日本の教育について考察する場面なのだが、私は正にこの通りに育っていると思う。
    著者はこういった教育を批判し切り捨てるのではなく、一定の理解を示しつつもっとなんとかならないものかと憂いている。
    しかし、この短絡性を援助交際や恐喝などの犯罪に結びつけてしまったのは私には残念だった。
    もっと「情熱を育む」という部分に焦点を当てて欲しかった。

    著者はこれほど意識的に生活していくことに、疲れないのだろうか、と読んでいて心配になった。
    自分で深く深く考えていても結局世界が変わることは(多分)ないのに。
    何か行動を起こさないことに罪悪感を覚えたりしないのだろうか。
    そう思うと同時に、著者にとっては作品を書いて世に発表するということが、行動を起こすことなのだ、と思った。

  • 梨木さんの作品は、静かな空気感のなかに、ひとつひとつに歴史を重ねてきた重みというのが感じられてとても好きなのだが、こちらのエッセー...というには深い思索に驚かされる。常日頃から、自分をとりまく事柄にこんなに思いを馳せている方だったんですね。すごく勉強になりました。

  • タイトルから女性作家の随筆、エッセイの類と思って読み始めて、驚く。むしろ評論というべきもの。
    外部と内部、その間にある周辺とか境界といわれる領域。この辺までは教科書的な理解はあった。英国の生垣は動物や昆虫たちが集まる豊潤な世界という。中心あっての周辺と思い込んでいて、そんなことは考えもしなかった。著者自身、幼い頃そこに立て籠もった。遠くからの光に誘われて出てしまったとの告白。光とは何の比喩だろうか。自己と他者を超越する理想だろうか?
    難しい。トンデモナイ疑問を最後にポンと置いたりする。意地悪じゃないけれど、読者についてこれるかと試しているかも知れない。
    境界を行き来せよという。境界を曖昧にすればいいのかと思っていると、群れに埋もれることを糾弾してくる。周囲に捲かれず、遠い外部との境界を超えろという。ベクトルの方向が判らない。日常に埋没するサラリーマンは途方に暮れる。想像力の跳躍が必要だ。
    一つの話題から急に唐突に違う舞台へピョンと飛ぶ。最後に軽々と最初の地点に舞い戻る。その跳躍力と着地の見事さ。ノルマンディーやトルコ、高千穂、近江の地の空気感が素晴らしい。
    共感ではなく、境界を越えることを考えさせられた読書だった。

  • ぐるりのこと −外の世界、境界− について書かれたエッセイです。
    そんなに易しくもなく、難しくもありません。

    ・「個人の生」と「時代の生」
    ・「個」と「群れ」
    ・生け垣と有刺鉄線

    対称的な言葉の組み合わせは色々出てきますが、
    記憶に残っているものはこの3組です。

    大台ヶ原に移住してきた春日山の鹿の話は分かりやすかったです。

    人と人とが関わり合う、文化と文化が触れ合うということを
    考えさせられる一冊。

  • まわりの世界と
    自分の境界
    そういうぐるっとしてことなど
    世界に対してどう開いていくか

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