エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (新潮文庫)

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著者 : 梨木香歩
  • 新潮社 (2016年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (212ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101253428

エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 飾ることのないエストニアの歴史と今を、静かだけれど熱をもった文章で伝えてくれる、9日間の旅の記録。

    あとがきを読んでようやく、著者がエストニアに惹かれる理由がわかりました。
    大国の狭間で長き支配に堪えてきた国は、"境界"をテーマのひとつにされている著者にとって、特別な土地だったのでしょう。
    他国の支配の最中でも、祖国への愛情を静かに、けれど確かに抱き続けたエストニアの人々。
    どんなときでもポジティブに日々を楽しむ、という強さ。
    その強さが国の土台を支えていることの頼もしさに打たれました。

    チェルノブイリ原発事故後の汚染地域が、現在は野生動物の聖地となっているという話題に苦しくなりました。
    動物たちは、放射能よりも人間のいる土地を避けたのか。
    「人間が暮らす」ということの地球に与える影響の大きさを思い知らされました。

  •  梨木さんの他作を読んでいた頃にたまたま紀行エッセイが読みたくなったので、おあつらえ向きに購入した。エストニア自体、バルト三国の北の方の国、という程度の認識しかなかった。
     スウェーデン、ドイツ、ロシア、ソ連と、長きに渡り代わるがわる他国からの支配を強いられてきた小国であること、1991年に悲願の独立回復を果たしたことをこの本を通して知った。また、調べてみればIT先進国として非常に発展した国であることも分かった。
     だが、梨木さんが出会ったエストニアの人々は皆、素朴で親しみを持てる人たちばかりで、交流の一つひとつに心が温まった。移動や散策の描写でも、曇天の下、穏やかで静謐な時間を思い浮かべた(ご本人は設定されたスケジュールの中でタイトな行動をせざるを得なかったようだが)。離島の方では他国の支配による影響もなく、古来からの文化がいまだ息づいているようで興味深かった。
     純粋に、もっと世界のことを、歴史のことを知りたいと今更ながら感じた。

  • 数々の自然に対する造詣が深い梨木香歩のエストニア紀行文。エストニアがどこにある国なのか先ず確認する作業は厭うまでもなく、ページを開くと直ぐに地図が現れます。北欧のバルト海に面したロシアと隣合わせた位置でした。その旅の紹介は行きの飛行機内での様子から始まります。副題に「森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」とあり、林の向こうに大きな虹が架かる写真がこの本の表紙。その国の歴史を知らなければ、旅はただ通り過ぎるものだけになってしまうけど、案内人のお話や人柄の紹介もあり臨場感溢れる展開。市街地から郊外へ向かううちに段々と梨木さんの興味ある植物や、渡り鳥や小動物が登場します。森の中に住む蛭で治療するおじいさんのお話や怪談話が似合いそうな不気味なホテルに泊まるお話。そしてバルト海に浮かぶ島々の見事なまでに保たれた自然のこと…本気で後半生をこの島で過ごすことを考えたという梨木さんの言葉にいかに其処が素敵なところなのか…
    旅に携える本のこと。生垣に成る木の実や植物で「12か月の風」を作ってみようと思ったという記述に彼女の優れた感性を改めて感じたのでした。所々に素敵な写真入りで異国情緒が味わえます。

  • くまと化学部隊
    蛭の民間療法

  • 梨木香歩のエストニア紀行を読みました。
    森の苔・庭の木漏れ日・海の葦というサブタイトルがついています。

    梨木香歩がエストニアを旅行して豊富に残されている自然を堪能します。
    エストニアに生きる人たちの生活も描かれていて、なぜか懐かしさを感じてしまいます。

    大量生産・大量消費の生活に慣れてしまった日本人が忘れてしまった自然との共存がまだそこには残っているのでした。

  • 実は女性作家が苦手である。おまけに小説に食指が動かなく
    なってからかなりの年月が経つので、本書の著者の代表作と
    も言える『西の魔女が死んだ』も『裏庭』も読んでいない。

    それなのにいきなり紀行文に手を出してしまった。お隣のラトビア
    のリガにはしょうもない理由で行ったことがあるのだが、エストニア
    は行きたいと思いつつ、未だに訪れたことがない国だからだ。

    申し訳ないのだが、私にはこの著者の文体がまったく合わなかった。
    倒置法と括弧書きの多用でいらついた。

    そして文章を繋ぐのに「でも」でもなく、「しかし」でもなく、「だが」でも
    なく、「が」で繋ぐ書き方。これが私は大嫌いである。アナウンサーが
    話し言葉で「で」を多用するのと同じくらいに嫌いである。

    そもそもなんでエストニアなのかが分からないんだな。一応、仕事
    で訪れているのだがこの紀行文を書くための仕事なのかな。編集者
    が同行しているのでそうなのだろうけれど。

    著者が動植物に詳しく、自然を愛している人だというのは分かるの
    だ。だが、肝心の自然を表現する描写に弱さを感じる。

    紀行文というのは読んでいるうちに自分が一緒に旅をしている錯覚
    に陥る楽しみがあると思うんだ。本書にはそれが一切なかった。

    文章の向こう側に拡がるエストニアの風景が立ち上がって来ない。
    風の強さが感じられない。空の色が見えてこない。森や林の匂い
    が漂って来ない。そうして、訪れた街の温度が伝わってこない。

    出会った人に対しても、食べた料理に対しても、建築物に関しても
    「素朴」という言葉がどれだけ繰り返されていることか。

    残念だ。女性たちの民族衣装の肌触りくらいは書いて欲しかったの
    だけれどね。

    大国に翻弄されて来たエストニアの歴史や、著者自身の自然に対
    する考えなども記されているのだが、どうも深みが足りない。

    気軽に行けない国や地域であるからこそ、紀行文を読んで行った気
    になって楽しむのが常なんだが、エストニアは自分で行かなきゃダメ
    かしらね。

    それにしてもプロの作家さんが「損得感情」って書いてしまうのはどう
    なのかしら。誤植?それとも造語?

    尚、私はエストニア出身の元大関・把瑠都が好きだった。横綱になって
    欲しかったのだけれど、優し過ぎたのかな。

  • とても良かった!後半は鳥の話が多くてちょっと着いて行けなかったけど、全体を流れる雰囲気がふんわりしていて、森や島を感じさせる没入感を感じた。エストニアにぜひ行きたくなった

  • 私の気持ちのお薬。疲れたときに安心させてくれる気がする、梨木香歩さんのエッセイ。彼女のレンズを通して伝わる世界は、時折残酷なところもあるが、概して「ありのまま」に優しい。エストニアで出会うひとびとを捉えるときも、歴史についての述考を書く際も、レンズは誠実に(歪んだり、遠近をドラマティックに演出したり、色を付けることなく!)あり続ける。異国の風景を近くに、においをすぐそばに感じてうれしかった。

  • エストニアというあまり馴染みでない国の紀行文であること、表紙の虹、著者の小説が好きなことが本書を手に取ったきっかけ。

    ターシャテューダーのように植物や自然と暮らしているような印象。そこに来て作家であるということで文章が面白い。
    笑い転げるような類の面白みではないけれど。
    さらりと読めない文を書く人。よく吟味して書かれているのだと思う。一字一句丁寧に読みたくなるし無駄もない。

  • この人の感じ方、考え方、表現の仕方に憧れる。

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エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (新潮文庫)の作品紹介

昔の生活が残る小さな島の老婆たち。古いホテルの幽霊。海辺の葦原。カヌーで渡る運河の涼やかな風。そして密かに願ったコウノトリとの邂逅は叶うのか……。北ヨーロッパの小国エストニア。長い被支配の歴史を持つこの国を訪れた著者が出会い、感じたものは。祖国への熱情を静かに抱き続ける人々と、彼らが愛する自然をつぶさに見つめた九日間の旅。

エストニア紀行: 森の苔・庭の木漏れ日・海の葦 (新潮文庫)はこんな本です

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