十九、二十 (新潮文庫 は 22-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101254210

感想・レビュー・書評

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  •  ちょうど十九から二十歳になる月だったのと、図書館の本棚でふと目に留まったので読み始めた。クリープハイプ の二十九、三十のタイトルのモデルである小説だということも知っていたので、いつか読もうと思っていた。
     小説を読むこと自体久しぶりだったので、情景が見えるような描写の力に驚いた。でも普通に考えたら小説って文字だけだからそんなもんだよね。特にネコ氏の写真集の描写は、短いけれど写真が目に浮かんでくるようだった。
     私も読んでいるとき十九歳だったので、主人公の大人の見方に共感した。年上に気を遣い、そのことに嫌悪するのも、大人になった自分に恐れを抱くのも。十九にもなると、大人が自分が思っていたよりもずっと幼稚で、滑稽な生き物であることに気づく。大人にがっかりすることが増えて、そしてその大人に自分が近づいているという恐れがある。それが滲んでくる描写がいくつもあった。
     また、主人公の恋愛に関する、甘い予感、胸が冷たく痛いという表現がすごく好きだったし、共感した。
     解説にあったように、父と子との役割や立場が転倒する場合がある、ということが深刻で普遍的なテーマとなっている。保護者としての息子、被保護者としての父親。一見、救いのない物語ように見えるが、主人公にとっては刹那的なバッドエンドだなと感じられた。十九、二十って若いからね。主人公は若さを持っているので、良いこと一つもなかった夏に、深刻な絶望は感じられない。それと対比するように主人公の父親の絶望の深刻さが際立つ。ネコ氏とかアツコとかせっかくいろいろ愉快な仲間たちが出てきたのにそれらの登場人物の影が薄れるほど、父親から伝わる絶望感は深刻だった。
     
     

  • クリープハイプのある曲の元になった本だと知り読むことに。
    10代の終わり、ただただ報われない。
    「いつかはきっと報われる。いつでもないいつかを待った。」という歌詞も「前に進め 前に進め」という歌詞も主人公のどん底ながら未来へ期待を寄せたり頑張らなければならないという心情をすごく的確に表していると感じた。

    • しんしんさん
      「二十九、三十」の元になったやつなのか…
      「二十九、三十」の元になったやつなのか…
      2020/10/10
  • クリープハイプの「二十九、三十」から。
    19歳から20歳になるまでのひと夏の話。
    元カノへの思いやそれを埋めるようにする同僚とのセックス、家族の問題、性病、、など大学生のリアルな描写が多く、最後の最後まで報われない主人公に感情移入しながら食い入るように読んでしまった。「水を焦がす」というキーワードが気に入り、主人公に足りていないものであり自分にはもっと足りていないものだと感じた。20歳のうちに読めて良かった。

  • いきなりネタバレですが、なにも解決せず、何も始まらないという終わり方がありがたかった。

    青すぎる春。

    若い時に苦しいとか辛い小説は読んだけれど、終わりにいつも問題を乗り越えたり助けられて再スタートするものが多かった。主人公や作者に裏切られたとか置いてきぼりにされた感じがしていた。

    それがないこの本は、中途半端さだけは妙にリアルだと思っていました。

    久々の再読だけど、やはり何とも言えない感情を持ったまま終わる。
    「うん」としか言えない。

    ひどく私に影響を与えた本だけど、何がどうとはうまく言えません。
    おりにつけまた読み返すべき本だと思います。

  • 夏のじめっとした感じのお話。クリープハイプの「二十九、三十」から気になって。
    最後終わり方が、「あぁー...」って何とも言えない...。

  • 19歳の時に読みたかった

  • クリープハイプの「二十九、三十」が良すぎて、好きすぎて。そのもととなった、小説らしいから読んだ。

    ほぉ。曲の歌詞を浮かべながら読んでたんだけど、分かるとこもあったり、尾崎世界観の解釈なんだろうなぁと思うとこもあったり。でも、この小説読んで、あんな曲が書けるなんて、やっぱりすごいね彼の方。

    二十歳だからこその輝き。いい意味でも悪い意味でも。その煌めきを今持ってるから、大切にしたい楽しみたいと思う反面、恐れや不安があって。でも、だからこその輝き煌めきなんだろうな、と思う。あーぁ、もう二十歳すぎたよどーしよう。

  • 主人公と同じ歳なので読んだ。同い年の男の子って何も考えてないように見えるけど実は色々考えてるのかな。そんなことどうでもいいか。

  • どうしようもないやるせ無さと焦燥感に見舞われた。
    私は今主人公と似たような年頃だが、すでに自分が主人公の父親のようになってないか心配している状態に虚しくなった。
    俯瞰的に見ているようで、実は心が落ち着いておらず、どうしようと慌てふためいている主人公の心情にかなり共感した。人の顔色を見て、つまらない相槌ばかり打って、悲しくなる。
    もっと大人になってから読めば、「あの頃は若かったな」と思いながら気楽に読めるようになるのだろうか。
    苦虫を潰したような顔をしながら読まずに済むのだろうか。けど、この焦燥感をまだ、忘れたくはないな。

  • 収録内容は以下の通り。

    本編
    川村湊: 解説

    一般的な青年の悩みと自立を描いているのかと思い読み始めたが、登場するのはかなり特殊な状況の青年である。現在の一般的な男性が似たような経験をするとしたら、20代になって以降では無かろうか。
    主人公の周りの人物たちの無責任さと、そのような人たちに振り回されることの虚しさが表れている。
    川村湊の解説は偏っているように感じたため、却って作品世界への理解から遠ざかってしまった。
    後日談として、主人公がこれから、周りの人々に右顧左眄しないようになるのを望んでやまない。

    装幀は原研哉、装画はかとうゆめこ。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベスト・エッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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