摩訶不思議な雰囲気漂う12話からなる短編集。
12話全てのタイトルに12星座のマークがついている。
そして話の内容はというと、占いとか予言とか伝説だとか世の中の訳の分からない不確かなものを検証した話がほとんど。
「早過ぎた予言者」
太古、バビロニアにカプタマスという予言者がいた。
彼は、美しい女性と両思いになったにも関わらず行方不明になった兵士の真の姿、放蕩息子の行く末、王の結婚について占い解き明かしていく。
これは最後の種明かし的な話に「な~んだ」となる話。
占いや予言といったものの検証が興味深いお話。
「酔い盗人」
たまたま入ったスナック風の居酒屋。
そこには美しいママがいた。
見た目は30代そこそこだが、何故か古い事をよく知っている彼女は肺活量が少ないのか、いつも話しながら深呼吸をする。
「雪おんな」
ラフカデオ・ハーンの「怪談」の「雪おんな」を題に取った話。
恩師と妻、そして「雪おんな」の話が全て一つに収束された時甦った記憶とは-。
「小暗がりの女」
主人公は誰だか分からない女性から日時を指定され、渋谷のT博物館に来て欲しいと言われる。
そこには「桜狩遊楽図屏風」という屏風が二枚、対となって陳列されてあった。
どうやらその二枚は別々の持ち主により保管されており、一世紀ぶりに一緒になったらしい。
その絵には視線を交わす男女の姿が描かれていた。
「花の器」
姉を亡くした妹とその姉の恋人だった男の会話。
妹は姉が殺された時の状況を見て疑問をもち、彼女なりに推理をした。
そしてそれを姉の恋人の一人だった男に話し始める。
これは唯一ちょっと毛色の違う作品。
まるで刑事ドラマのような話だった。
女性ならではの目線がきている話・・・なんだけど、作者は男性なんだよな~。
「モナ・リザは微笑む」は、モナ・リザのモデルは誰だったのか、彼女はモデルになった時に妊娠していたのではないか?という仮説を立てる夫とそんな夫に飽き飽きしている妻の皮肉な話。
他6話。
ずい分昔に何度も読み返した本ですが、覚えていたのは「ロマンチック街道」という1話だけ。
ロマンチック街道を旅する男性がとある舘で不思議な体験をするという話。
多分、ロマンチック街道という名前を知ったのはこの小説でだったような気がします。
「へぇ~。そうなんだ~」と、真相というか、ラストのある物に関する知識・・・というか雑学に感心したのを覚えています。
同じように、今回読み終えて「花酔い」という話の薔薇の雑学も興味深かった。
そんな風に物語として楽しむだけでなく、古今東西の雑学が詰まっていて、何となく読み終えた時、少し知識が増えたような気になる本です。