危険な童話 (新潮文庫 あ 7-16)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101255163

作品紹介・あらすじ

「おばちゃまの目はどうして、そんなに怖く光っているの?」「それはお前を殺すためだよ」…不意に暗転するメルヘンの世界。人間心理の狂暴な衝動を描く表題作。同級会で40年ぶりに会った男が1500万円もの大金をポンと貸してくれるというのだが、その真意は?-「茜色の空」。怠け者の女と結婚した男が女のためにした最後の仕事とは?-「女に向かない仕事」。夢と戦慄の全10編。

感想・レビュー・書評

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  • うーん、イヤミスなタイプだった。
    犯罪が起こる予感を想起させる
    におわせエンドが多くて…。

    昭和の頃の人間の欲のようなものが
    なんとなく思い出される10の短編でした。

  • ブラックな10話。
    タイトルから童話にちなんだブラック小説?と思いがちだけど、このタイトルは最終話からとったもの。
    大体は男と女にちなんだ、大人向けの話となっています。

    「茜色の空」
    子供の頃、茜色の空の下で「死ぬまで友だちでいよう」と誓った二人の少年。
    それから40年ぶりに同窓会で出会った二人は、一人は実業家として成功し、一人は医師になっていたが資金繰りに苦しんでいた。
    そんな事情を聞かされた実業家の男性は40年ぶりに会った友だちに千五百万の金を融通してくれると言う。
    「困った時には必ず助け合おう」と約束したからと-。

    「夜の散歩人」
    主人公の女性は突然、刑事の来訪を受ける。
    刑事は「三年ほど前から首都圏を中心におかしな殺人事件が起きている」と言う。
    そして、犯行の動機は分からないが、殺される人の名前にはある共通点があると。
    それは、ローマ字で書いた時、イニシャルがJCということ。
    主人公の名前も正にイニシャルがJCだった-。

    これは最初に出てくるあるモノから、JCとは何を意味するのか分かってしまいました。
    そして多分・・・と想像した所、ラストはそこからちょっとズレていて、さすが~と思いました。

    「涼しい眼」
    恋人と訪れた事のある軽井沢の別荘を16年ぶりに妻と訪れた男性の話。

    「法則のある死体たち」
    建築の現場監督をしている男性が主人公。
    彼はある日、金魚の死体を見かける。
    その後も、蛙や蛇と立て続けに生き物の死体を見た彼はそこにある法則を見出す。

    「戻り道」
    散歩が趣味の老人はある日、垣根の中から浴衣を着た女性に声をかけられる。
    それから彼は子供の頃の出来事を次々と思いだしていく。

    「女に向かない仕事」
    見栄っ張りで怠け者の妻にうんざりきている男性。
    彼はある日、ゴミ捨てのことで妻と大ケンカして-。

    「窓の灯」
    出張から帰ってきた独身男性はレストランで食事をしている際、点いているはずのない自分の部屋に灯りが点いている事に気づく。
    自分が出張前に電気を点けっぱなしで出たのか、それとも中に誰かいるのか?
    思いめぐらす男は向いに座る男に話かけられる。

    「越前みやげ」
    東尋坊を訪れた男性はそこで岩場に佇む一人の女性を見かけ、「危ない」と声をかける。
    女性が自殺しにここに来たのでは?と心配する彼はその後彼女と観光する事となり、二人は越前みやげを買う。

    女は大きな壺を。
    男は小さな壺を。

    「蛇」
    2月22日だけは絶対に他の女と寝ないで欲しい。
    そんな亡くなった恋人の言葉を守っていた男性。
    しかし、長い年月が流れ、その約束が薄れた時、彼はその日にある女性と関係をもってしまう。

    「危険な童話」
    主人公の主婦に「おばちゃま」となついている同じマンションに住む9歳の女の子。
    女の子の母親はあまり上等な女でなく、「放送局」とあだ名のつく噂好き。
    なるべくつきあいたくはないが、女の子は可愛らしい。
    でもある日、近所にその子しか知らないような我が家の事が噂になっている事を彼女は知り女の子を警戒するようになる。
    そんなある日、彼女は女の子と童話「赤ずきんちゃん」について話合う。

    この話が一番面白いと思いました。
    表紙のイメージがないのが残念ですが、この本の裏表紙もかなりブラック味を出しててイイと思います。

  • 私にとって、阿刀田高と言えば、「旧約聖書を知っていますか」「コーランを知っていますか」などのシリーズの著者である。ユーモアたっぷりな書き口が好きで上記のシリーズは愛読していたが、そういえばこの人の本業は小説家だったな……と思い起こして購入。
    ラストの結末に向けて隅々まで計算が行き届いた構成、過不足ない端正な文章。ユーモアたっぷりのエッセイ集とは全く別の顔を見られた。
    惜しむらくは、昭和の香りを濃厚に漂わせる登場人物たち。彼らの思考は令和の時代からすると古臭く感じられる。時代を超える作品、という評価は難しい。
    個人的に気に入った作品は、一作目の茜色の空。同窓会で再会した男二人が幼い日の美しい約束の時を思い返す。結末の手のひら返しにしてやられたと思う一方、さもありなんと妙に得心もいくラスト。

  • 短編集。なぜか男女の性愛がからむ話が多いが、いやらしさはなかった。どれも現実と主人公の想像(妄想?)の境があいまいになってる部分があって、混乱…はしないけど、はっきりしない話がニガテな人には向かない作品集かも。

  • アマゾンよ、なぜ表紙絵がこんなに小さいの?笑

  • なぜ借りたのか記憶にないアンソロジー

     「茜色の空」はラストが決まるシャープな作品。淡々と進むが怖いエンディングだ。

     「夜の散歩人」は JC はいいんだが、オチがわからない。読み返すほどでもないから放置。

     「涼しい眼」はオカルトかなぁ。好きではないな。

     「法則のある死体たち」も平凡かなぁ。いいオチなんだが、まわりくどいかな。

     「戻り道」は意味不明。わかりにくいから、好きではないな。

     「女に向かない仕事」は既読かな。古い作品の気がする。

     「窓の灯」はなかなかの作品。奥が深いというか、味わい深い。前述の『死体』に近いが、こっちのほうが実態感があって良い。

     「越前みやげ」はワクワクする男女物語の様相から、一気に殺人物語に。この展開がなかなかいい感じ。

     「蛇」は平凡でおもしろくない。

     ラストの「危険な童話」も同様にイマイチ。

  • 短編集に関してはとても面白いと思う。
    恐怖系の作品を読んでみたくなった。

  • 読破したのが昔過ぎて、内容を覚えていない。

  • 短編集。ブラックジョークとちょっぴり怖い要素が満載。全10話。

  • はっきりとした答えは用意されていない。
    もしかして…という考えが先に起こり、ああやっぱりという結末がある。でも、その結論は自分が用意していたものと同じだから「ああ、やっぱり」なのであって、予想外だと驚きの声になる。そんな阿刀田ワールド。

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著者プロフィール

作家
1935年、東京生れ。早稲田大学文学部卒。国立国会図書館に勤務しながら執筆活動を続け、78年『冷蔵庫より愛をこめて』でデビュー。79年「来訪者」で日本推理作家協会賞、短編集『ナポレオン狂』で直木賞。95年『新トロイア物語』で吉川英治文学賞。日本ペンクラブ会長や文化庁文化審議会会長、山梨県立図書館長などを歴任。2018年、文化功労者。

「2019年 『私が作家になった理由』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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