- Amazon.co.jp ・本 (375ページ)
- / ISBN・EAN: 9784101255293
作品紹介・あらすじ
遺産相続から女性の扱い方まで厳格に、でも驚くほど具体的に、イスラム社会を規定する『コーラン』。日本人には理解しにくいと言われるこの書も、アトーダ流に噛み砕けばすらすら頭に入ります。神の言葉『コーラン』は、実は後悔しない人生を送るための親父の説教みたいなものなんです。イスラムとの協調が絶対不可欠な、今だからこそ読みたい『コーラン』の、一番易しい入門書。
感想・レビュー・書評
-
コーランはイスラム教の聖典。アラーの啓示がマホメッドに宿り、マホメッドから語られたものを後に記録された全114章。
コーランの大意を優しく伝えるエッセイ。
読んでは諦め、又読み始めては、放置してかれこれ5年。今回は、古事記の後の一神教を読み切るチャンスかと再びのコーラン。多少気合を入れて読み始めたが、半分くらいからペースダウンして、なかなか理解するには至らない。
第一章は 開扉 7行8節にエッセンスが詰まっている。唯一神の宣言。人間の一生は通過点。最後の審判の後の世界が大切。
マホメッドがどの様な生い立ちで、どうやって啓示を受け、イスラム教を確立していったかを丁寧に追っています。
610年 ラマダーン月の夜 ヒラー山でアラーの啓示を受ける。ここから続く啓示がコーラン。
622年 マホメッド ヤスリブへ大布教活動
ヒジュラと呼ばれ アラビア暦元年
624年 バドルの戦で大勝利 すべてがアラーのおかげ ここから預言者と呼ばれる
632年 メッカ巡礼 マホメッドの最後62歳没
この後の後継者争いが 今日に残るスンニ派とシーア派の原点らしい
かなり省略しました。多少驚きを受けるのは、マホメッドの本格活動は、ヒジュラから10年あまり。その後の影響を考えるとかなり短い。
歴史や経典などよく調べて書かれていて大変だったろうなあと思うけど、遠い世界感と細かい説教でなんとなくで読了とします。ストーリー性が低いところがわかりにくいところかなと。
アラーは凄い!人間も世界も一切神の創造で恵。
最後の審判と賞罰のための人生。
偶像崇拝禁止 六信五行
六信 アラー 天使 経典 預言者 来世 天命
五行 信仰 告白 礼拝 斎戒 喜捨 巡礼 -
世界の人名地名の本を読み、アラブやイスラムの歴史が出てきたので、イスラム教を識るために「知っていますかシリーズ」で本書を読んだつもりになる。
本は図書館に返すので備忘メモとして。
アラーは時間空間を超えた”万有の主”であり、最後の日に審判を行う存在。
人間の一生の概念も、大抵の現代の日本人にとっては生まれてから死ぬまでだが、イスラムの概念はその死んだ後の最後の審判まで。神の教えを守り正しく生きたものには至福が、悪しき行いをしたものには永遠の苦痛に置かれる。
阿刀田さんの知り合いのイスラム教徒の言葉として、「仏教は人間が考えた哲学のようなもので、宗教ではない。イスラム教は神が直接伝えたこと」なのだそうだ。ふーーーん。
【ユダヤ教、キリスト教、イスラム教】
✔ユダヤ教:西暦前600年頃?に確立された。神との契約を交わして聖典を表したもの。
✔キリスト教:ユダヤ教で予言された「救世主」がイエス・キリストであるとし、新しい契約の新約聖書を著した。(旧約聖書、とは古い契約)。
でもユダヤ教の方ではイエスを救世主と認めていないので、新約聖書は認めていない。ユダヤ教にとっては旧約聖書とは言わず「聖典」。
✔イスラム教:西暦600年頃に、マホメットに神の啓示が宿って顕された教え。
✔ユダヤ教もキリスト教も同じ唯一神を仰ぎ、神の言葉を伝える「聖典」「新旧約聖書」がくだされ、預言者としてモーセやイエスがこの世に行われたが、まだまだ不十分なので、最後にマホメットがくだされ、最も充実した経典であるコーランが遣わされましたよ、という考え。
✔最後の審判は、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教全部にあるが、イスラム教の場合は善悪の分かれ目は唯一神なるアラーを信じて教えのままに清く生きたかどうか。
【唯一神】
✔神の御心は人間には推り知れない。しかし神なのだから深い考えがあってのこと、人間が不満を覚えて問いただしたり反抗したりしてはいけない、神の求めに素直に従うのが正しい信仰であり疑問を抱いてはならない。従う振りをして逆らう、疑うのは一番いけない。
【コーラン】
✔コーランは神の言葉を記したもの。預言者(予言する者ではなく、神の言葉を預かる者)マホメット(ムハンマド)に、アラーの啓示が宿り、20年くらいかけてマホメットの口から人々に伝えられたもの。
そのため、人間の哲学ではなく、神ご自身の言葉。
✔アラブ語で書かれている。
コーランは神の言葉であり神の音楽。アラビア語で朗読してこその厳粛さや荘厳さそのものが神の存在を顕すとして、昔は翻訳禁止だったが、最近は解禁されている。
✔全部で114章。
新しいものが先で古いものが後のようだが、いつ下った啓示かは不明。
最初の啓示は短く、後に連れて長くなる。
編纂がなぜこの順番かは不明らしい。色々研究がある様子。
✔神そのものの言葉ではあるけれど、マホメットの口を通して語られている以上、当時の社会情勢や風俗習慣や、マホメット自身の考えもどうしても出てるよね…と、イスラム教徒以外の研究者は言っている。
✔実際に”コーラン”が編纂されたのは、マホメットの死後、三代目の後継者の時。
✔コーランに継ぐイスラム第二の聖典は「ハディース」。コーランがアラーの言葉であるのに対し、ハディースは預言者マホメットがコーランを踏まえて語ったことや行ったこと。
【コーラン第一章「開扉(かいひ)、または開端(かいたん)」】
✔七節八行という短い章だが、ここにコーランの本質が詰まっていて、イスラム教徒はこの七節を心に留めているのだそうな。
『慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
万有の主、アッラーにこそ凡ての称讃あれ、
慈悲あまねく慈愛深き御方、
最後の審きの日の主宰者に。
わたしたちはあなたにのみ崇め仕え、あなたにのみ御助けを請い願う。
わたしたちを正しい道に導きたまえ、
あなたが御恵みを下された人々の道に、あなたの怒りを受けし者、また踏み迷える人々の道ではなく。』
アラーは「全世界の支配者にして唯一の支配者」「最後の審判がある」「アラーがその主催者」ということで、この神の属性が記される。
【マホメットの生涯】
✔アラビア地方で、ベドウィンの流れをくむ部族社会が構成。血縁を絆とする大小様々な部族が割拠し、自分たちの掟により一族を育み対象を繰り出し敵と戦う。
✔アラビア半島のメッカには、神殿があり、銃例の目的地及び通称の要路として栄えていた。
マホメットは、メッカを支配していたクライシュ部族傘下の小さな部族ハーシム家の出身。
✔マホメットは幼い頃に、父、祖父、母と死別。伯父のもとに身を寄せて隊商で下働きを積んだ。
✔この時期に、天使がマホメットの将来を予言したんだとかなんだとか。
✔徐々に頭角を現し、25歳の時に、資産家未亡人で40歳のハディージャの夫になる。この時代に資産のない若者にとってはありがたい話。アラビアの風習では複数の妻を認められているが、ハディージャが生きている間の20年間は彼女だけを妻としていた。そして二人の間には三男四女が産まれた。←40歳から7人出産?!結婚当時にハディージャは流石にもっと若かったんじゃないの?という説もあるそうな。
✔マホメットが40歳の時に、アラーから最初の啓示を受ける。「コーラン」はその後およそ20年に渡り、マホメットがアラーから受けた啓示。
✔マホメットの啓示は本物だとして、まずは身内の者がイスラム教(と後に称される教え)に帰依する。妻のハディージャ、娘婿のアリー(彼はマホメットの死後4代目のカリフになった)、ハディージャの聡明な奴隷のザイド、マホメットの同年代の親友でアブー・バクル(彼は後にマホメット二番目の妻の父になり、マホメット死後初代の後継者)たち。彼らは戸惑うマホメットを支えたり、教団確率に貢献したりした。
✔この家族集団は徐々に外にも知られてゆく。帰依者もできて本格的に集団は広がっていったが、敵もできた。
✔マホメットは当初はユダヤ教徒はうまくやっていけるんじゃないか?と思っていた様子だが、ユダヤ教は彼を受け入れなかった。
✔マホメットが率いるイスラム集団は戦闘力も優れてた。敵対者との闘争に勝ち(和睦もあるが)そのために、アラーの守護があると信じさせ、経済的に恵まれ、政治的立場を強くして、他の部族より優位に立つようになっていく。(←日本の戦国時代で武将が一気に天下に近づくみたいな?)
✔マホメットは、自分が孤児に近かったためか生涯孤児を大切にした。コーランにも繰り返しアラーが「授けられた幸福を孤児に与えるように」との神託を述べている。
これはその後もイスラム社会で指標の一つとなっていく。
✔とりあえずマホメットは人を惹きつける素質が有り、公平で、周りの親戚や友人に恵まれ、政治、商才があり、軍事能力もあり、経済にも強く、孤児や女性も大切にするよう説いたらしい。
しかし死後起きた信者同士の抗争やら、今日にまで続くイスラム闘争やら、あまりの男女不平等やらを考えると、何がどうしてこうなった…。
【旧約聖書との相違】
阿刀田さんによる「旧約聖書」解説はこちら。
https://booklog.jp/item/1/4101255199
✔コーランの立場はユダヤ教、キリスト教を否定するわけではなく完成するもの。
時間を超え空間を超え、同じ唯一神の支配が続いている。その神は何人もの預言者を送って警告を続けてきたが、その最後の絶対の教えを告げる者としてマホメットを遣わした。
✔旧約聖書と同じような登場人物やエピソード。
アダム⇔アーダム:旧約聖書ではイブが蛇に唆されて楽園追放となるが、コーランでは悪魔に唆されたのは二人一緒。
コーランのほうが女性に罪をなすりつけていない?!
カインとアベル⇔カービルとハービール
アブラハム⇔イブラーヒーム:旧約聖書でのアブラハムは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、世界三大宗教の開祖。
正妻サラが生んだ長男がイサクを生贄に捧げよと言われて実行しようとして信仰心を認められた。
コーランでのイブラーヒームは、邪教のはびこる土地で唯一神の啓示を聞き神の教えに従った創始者。
イシュマエル⇔イスマーイール:イシュマエルはアブラハムの長子だが庶子だったため、その母ハガルとともに砂漠に追いやられる。だが神の庇護を受けアラブ人の開祖(つまりマホメットの先祖)になった。
コーランではイブラーヒーム(アブラハム)が神から「生贄に捧げよ」と言われたのはこのイスマーイールとなっている。その後イブラーヒームとイスマーイールはメッカに旅してカアバ神殿建立に携わったようだ。なんかすごい重要人物ではないか。その後弟(イサク⇔イスハーク)が生まれて砂漠に追いやられる。
イサク⇔イスハーク
モーセ⇔ムーサー:エジプト脱出はアラブ人にとっても身近なエピソードで、コーランでも出番が多い。
聖母マリア⇔マルヤム:天使のお告げにより処女懐妊というのは旧約聖書と同じだが、マルヤムは親の元から隠れて一人で子供を産む。両親はマルヤムを非難するが、赤子のイーサーが「私はアラーのしもべです」などと喋ったため、預言者として認められた。
イエス⇔イーサー:旧約聖書では「神の子」だが、コーランでは重要な預言者だがあくまでも人間であり神性はない。
【女性】
✔コーランでは、「アラーは男を女より上位に作った。男は金銭を作り出すからそれは当たり前。女は貞淑に従順にすること」となっているが、しかしそのため弱い女性を労り保護しよう、という考え。(←現代のイスラムニュースを聞いているとそうとは思えないのだが…)
✔多妻でよいが公平に扱うこと。(←現代のイスラムニュースを聞いているとそうとも思えんのだが…)
✔夫が戦闘などで死んだ場合、複数の寡婦と複数の孤児ができてしまう。そのため女達と子供たちを公平に扱える男は多妻しても良い。
✔遺産分与もかなり細かく決められている。妻子を放り出すようなことはするな!…と、案外きめ細かいな、コーラン(というかマホメット)。
✔マホメット以前のアラビアの習慣では、夫が妻に突然離婚を申し出て召使いのようにこき使われるということがあった。
コーランではそれを禁じて、離婚に関しても妻には財産保証をするようにとしている。(←マホメットは、この時代の男性優位の価値観ではあっても、それまでの風習よりは平等で、人を思いやる悪い人ではないようだ)
【六信五行】
✔イスラム教徒が信じるべき6つのもの。
アラー:アラビア語で神を顕す言葉に冠詞のアルをつけたので、英語で「ザ・ゴッド」に当たる。アラーはイスラム教だけの神ではなく、神そのもので神なるものがアラー。アラーは自ずと存在するものであり人間的な属性はない。
日本の多神教(しかも神様は人間的)は神として認められない、未開の宗教らしい^^;
天使:光から作った精霊的な存在。アラーの意志を人間に伝える。
啓典:コーラン、旧約聖書、新約聖書など、アラーが人間に与えた啓示
預言者:神の言葉を預かって伝える者。マホメット、イブラーヒーム、ムーサー、イーサーなど。
来世:来世とそれに続く最後の審判。
天命:この世にある一切はアラーにより定められている。
✔六信を胸に抱き実際に実践すべき5つの行為
信仰告白:イスラム教への帰依
礼拝:礼拝を行う聖地は最初はイブラーヒームと縁の深いエルサレムだったがメッカになった。イスラム教第一の聖地がメッカ、第二はマホメットの没したメディナ、エルサレムが第三の聖地。
阿刀田さんが2002年にサウジアラビアへ行き礼拝を目撃したが、一人ひとりが神と向き合うその真剣な厳粛さを感じたのだそうな。
斎戒:日数を定めて心身を戒め慎む。断食もこの一つ。
喜捨:義務的な喜捨(税金)と、献納や奉仕の喜捨とがある。
巡礼:メッカのカアバ神殿に詣でる。
【マホメットの死後】
コーランは神の神託とはいえ、マホメット本人の意見もどうしても入っているだろう。
実際にやったこと、語られていることを見ると、マホメットは政治、商才があり、軍事能力もあり、経済にも強く、孤児や女性への考え方も、男性優位価値観内ではあるが、保護しようとしている。
そんなマホメットの死後にはイスラム教は分裂して混乱して戦闘が起きる。
ええー、何がどうしてそうなるの…。
✔マホメット死後の後継者(預言者の代理人、カリフ)の継承として、初代カリフには親友で布教の貢献者でマホメット第二夫人アーイシャの父のアバー・バクル。二代目三代目カリフには初代と同じ系列の者が着いた。
そして四代目カリフに娘婿のアリーが着いたが、当初から「アリーこそ第一後続者となるべき」との声もあった。このとき生まれた抗争により、後続者たちも反対派信徒に殺害されたりしていく。(←預言者の代理人を殺すのか…これもアラーのご意思なのか…)
✔イスラム国家は領土を広げ、ウマイヤ朝、アッバース朝などに分断し、戦闘を繰り返し、衰退したり飛躍したりしてゆく。
✔スンニ派:イスラムの習慣を守って仲良くやっていこう。イスラム教徒の9割を占める。
シーア派:四代目カリフのシーア・アリーの名前をとっている。マホメット後筋にイスラム主張を求める。
マホメットの死後から今日まで続いている抗争…(←根深すぎて…)
原理主義:スンニ派にもシーア派にもいる。当初から変化しすぎて「当初の原理原則に帰ろう」
【経済】
✔商売でお金を得ることは良いが、利子を取る金貸しはダメ。
✔そのためイスラム国家での銀行経営などがかなり独自…ですがあまり理解できずです^^;
【エピソード】
ダニロ・キシュ短編「眠れる者たちの伝説」では、コーランのエピソードを小説化している。
https://booklog.jp/item/1/4488070779
ローマの支配下でキリスト教が禁じられていた頃、経験な若者が迫害を逃れて洞窟に隠れ、そのままキリスト教が許される700年後まで眠り続けたという話。
この眠り続けて目覚めたときは、現世ではなく最後の審判を寓話としているらしい。ふーーん。 -
阿刀田高のこのシリーズは好んで読むが、その中でも特に面白かった。逆説的だが、コーラン自体が面白くないからだと思う。
細かい、くどい、権威主義的?、ムハンマドに都合良過ぎ!、という感じ。旧約聖書や新訳聖書、ギリシャ神話や古事記の方が物語性に富んでいて遥かに面白い。コーランに遺族の相続割合について記載されているとは夢にも思わなかった。
しかしその分「コーランってこんなに詰まんないの!?」という面白さがあった。
聖書に比べて全く馴染みがないし、罷り間違ってもいきなりコーランを読むことはないだろうから、これを読むと良いと思う。コーランにモーセやイエスは結構出て来るので、聖書の前知識はあった方が良い。 -
2017.6.24
阿刀田流解説書のコーラン編。イスラム教、ひいてはコーランについての解説書をほとんど見かけたことがない中で、本書は間違いなく秀逸な解説書となる。
内容は、①コーランについて、②イスラム地域の国々(イスラム教)についてを阿刀田流のバランス感覚のユーモアによって解説していく。
①コーランとは、先ずストーリー性は乏しい親父の説教のようなものである。アラーという一神教の教えをひたすら守っていくものである。
②イスラム教の起源としては、旧約聖書と起源を同じくしていて、ユダヤ教、キリスト教をブラッシュアップしたものをマホメットが預言者となり広めたものであるという。しかも異教徒に対する寛容さが乏しく、この点が現在でも戦争や対立を生む根源思想になるのではないか。イスラム教の主義には二流派あり、①保守思想(慣例を守る)のスンニ派と、正統カリフを信奉する急進派のシーア派の二派がある。一義的にイスラム派を括ることはできないし、現在起きているIS派の行動=イスラム教の原理性=危険思想と捉えることは相互理解の観点が欠けている。
本書読んで気に止まったコーラン関するキーワードを記しておこう。雌牛、アラー=一神教、カリフ、異教徒⇨改宗、マホメット、キリスト=唯一認めれた異教徒=しかし預言者ではない、男尊女卑思想、礼拝、六信五行、モスク、豚肉=禁止、アルコール=禁止
イスラム教の根幹を楽しく学ぶ
現代でもキリストVSイスラムの対立は頻発している。融和の精神があるのか。
偏見無しに宗教を見たい -
2016年10月5日読了。阿刀田高によるコーランの解説書。「日本人はイスラム教について漠然とした知識しかない」という前提で(私もそうだが)書かれており、大変分りやすく、我々素人目線で時折入るアラーの神さまへのツッコミも、「イスラム教徒が読んだら怒るのでは…」という後ろめたさも相まって、すこぶる面白い。イスラム教がユダヤ教・キリスト教をいわば「後出し」で取り込んでいったこと、何の後ろ盾もなかったイスラム教は激しい戦闘を経て広まり、その途中で部族の結束や未亡人・孤児や戦勝金、離縁の手続きなどの詳細を決めていく必要があったこと、などを踏まえると、イスラム教やコーランに対しても入信するとまではいかないが、親近感を覚えられる気もする。「親父の説教に似た」と言われるコーランを読む気は起こらないが…。
-
【75】
旧約聖書、新約聖書に続き読了。
以下メモ
1.全世界の支配者にして唯一の支配者であること
2.最後の審判という総決算が存在すること
3.アラーがその支配者であること。
ユダヤ教、キリスト教と同じ唯一神を仰ぐ
マホメットは最大の預言者
コーランの解り辛さはマホメットに二十余年かけて下った啓示であり、周辺状況の理解が必須
コーランの最後の審判における賞罰はユダヤ教、キリスト教と較べてひときわ克明で顕著
聖地メッカ/カアバ神殿
孤児救済
全ては神によって決定されている
コーランは神の言葉であり、神の音楽(朗読)→翻訳の禁止
イサク・イシュマイルとユダヤ人・アラブ人の関係が逆
メッカ啓示1/2、メディナ啓示
六信(アラー/天使/啓典/預言者/来世/天命)五行(信仰告白/礼拝/斎戒/喜捨/巡礼)
偶像崇拝の禁止
利子収入の禁止=対ユダヤ人?
コーラン/マホメットの言葉は含まれない
ハディース/マホメットによる示唆
シャリーア(法学者)、イジュマー(共同体)/教義についての正当とされる解釈
⇨コーランが何を示しているかによって様々な解釈が生じ得る
マホメットの生涯
ジャーヒリーヤ時代▷遊牧民族にとって略奪は当たり前
クライシュ部族(メッカを支配)のハシーム家▷正統な血筋だが、大商人中心の主流派に対する抵抗勢力
隊商で頭角
ハディージャと結婚、末娘ファーティマ
四十歳の時、初めての啓示
迫害された理由
メッカ/カアバ神殿は原始多神教の聖地であり、巡礼者はクライシュ部族の収益源
部族内ヒエラルキーの否定
血族の結束を崩す
アカバの誓い→ジハード思想
ヤスリブ(現メディナ)移住=ヒジュラ、アラビア暦元年
バドルの戦い、大勝利の意味
1経済的自立
2アラーへの信仰強化
3マホメットの地位向上→預言者4クライシュ部族の衰退
イスラム教の確立⇔ユダヤ教との対立
メッカ入城
マホメットの死
正統カリフ
第一代アブーバクル(親友)
第四代アリー(従弟、ファーティマの夫
勢力争いの中で、三代、四代は暗殺→スンニ派とシーア派の対立へ
ウマイヤ朝以降のイスラム王朝時代へ
スンニ派:穏健派の緩やかな連合体/9割を占める/現実主義
シーア派:シーア=シーア・アリー(第四代正統カリフ)/アリーのみが正統カリフ/理想主義/過激派/分裂
2011.10.13読了 -
これは面白い。
日本に居るとなかなか縁の無いイスラム教/ムスリムの人々の風習について、
極めて平易で噛み砕いた感じで説明をしてくれる一冊。
より正確に言うなら、イスラム教の聖典であるコーランについての解説ということになる。
時代背景からして、ユダヤ教・キリスト教・イスラム教にはそれぞれ共有している点があり(というかユダヤ教がベース言うべきなのだろう)、登場人物や天使の類は意外と同じだったりするという(名前の読みはアラビア風になっているようだけど)。ユダヤ教、キリスト教と関係が深く、かつ後発となるイスラム教は、いかにして自分たちの神様(アラー)の正当さを主張するかということに随分骨を折ったらしい。実際のところ、始祖マホメットの仕事は宗教家としての布教活動だけではなく、共同体の指揮官として戦争に当たる、なんてことも含まれているので、地続きの世界のなかで自らの地位を確立してきたプロセスがよく伝わってくる。
あと、コーランはあんまり時間軸上のストーリー性を持たず、項目ごとに並べているという感じの書物だそうだ。これも意外な感じ。解釈が大変そうだな…と察せられるが、やはり宗教は解釈学と切っても切れない縁があるのだろう。
終章(第10話)には著者が2002年に実際にサウジアラビアを訪問したときの簡単な紀行文も付いているので、現代的な空気もちょっと感じられたりする。
今後、人生のどこかでイスラム圏の人と会うこともあるでしょうから、今のうちに一読しておくのが良いのでは。良書です。 -
イスラム教の聖典を、阿刀田流にわかりやすく読み解く、世界一わかりやすいコーラン入門書。
大学の授業でキリスト教・仏教・ユダヤ教などは一通り講義を受けたのだが、イスラム教だけはなぜか全く触れられなかったので、ちょっとお勉強のつもりで手に取った。
数ある宗教の中でも、イスラム教は聖典を大切にすることで有名みたいだし、これを読めば「さわり」だけでもわかるかなー、と。
私のように大まかにイスラム教のことを知りたい、という人間には、大変読みやすい本だった。
解説でイスラム教の専門家(ちょっとうろ覚え・・・)も、太鼓判を押しているくらいだから、著者はコーランのことをかなり勉強しているようだし、これ一冊読めば、コーランの全体像もなんとなくわかったような気になれる。
いいなと思ったのは、イスラム教の始祖マホメットのついて多くのページが費やされていたこと。コーランはあまりストーリー性がなく、同じようなことが何回も出てくるそうだが、マホメットの生涯を辿ることで、イスラム教の教えにストーリー性が生まれて読みやすくなっていたと思う。
それにしても、イスラムのことについて私たちはあまりにも関心がないな、と改めて自覚した。
ニュースや新聞の報道だけがイメージとして定着していて、イスラムというと、そのイメージしか思い浮かばない。
それがいい悪いという問題ではなく、それ以上のことを知る気がない、ということに、私は反省の念を覚えたのである。イスラムの人々だって、日常生活はあるはずなのに、そういうことを知ろうという気がしないのだ。イスラム教国に「なんだか怖い国だ」、というラベルをとりあえず貼っておけば、それ以上のことは考えなくていいや、という意識(無意識?)が問題だなぁ、と思ったのである。
というわけで、「今だからこそ読みたい」と帯にも書いてあるように、こういうわかりやすくとっつきやすいイスラム入門書が書かれているということは、とてもありがたいことだと思ったのだった。
理解しようとすることはもちろん大切だけど、それ以上に、テレビの画面から与えられた情報が全てのはずがない、ということに多くの人が気づいてほしいなぁと(森達也氏の著作を読んだ私は)偉そうに考えたりしたのだった。 -
「コーランは神の言葉であると同時に神の音楽でもある。」
とてもわかりやすく読みやすい。阿刀田さんの言葉やジョークや表現は、時代をかんじずにはいられず、たまにちょっぴりはずかしくなっちゃうけれど、愉快でたのしい。
コーランの引用部分の訳も、そのままなのかちょっとふざけてるのか、わからない。あるいはアラーがユーモアあふれたかたなのかもしれない。
読んでいると、コーランは民族の掟といったかんじだった。旧約聖書は歴史、新約聖書は哲学、コーランは法律、のような。
最終章は「聖典の故里を訪ねて」という阿刀田さんがサウジとヨルダンを訪ねたときの旅の記録や、他のイスラム圏についてのあれこれが綴られていて、とても興味深くたのしかった。
あぁ、満天の星の下、岩のドームを眺めながら、アラビア語で、神の音楽であるコーランが詠じられるのを聴けたなら。
-
Amazonオーディブルにて。
コーランそのものを直訳するというのではなく、コーランを中心にイスラム教、中東文化への理解を深めることができる一冊だった。
コーランは新約聖書などと違ってあまり物語めいたところがないらしく、苦慮しながら構成を考えたんだろうなと感じた。
たとえばコーランがアラビア語での詩的な響きを重視していることを、額田王の「あかねさす…」の歌に関連付けて説明するなど、アクロバティックなことをしているけど、一般的日本人にはとても分かりやすかった。
京極さんの本はあのぶ厚さや字数が魅力だと思ってるんだけど。
厚ければ厚いほど嬉しい^^
変?
京極さんの本はあのぶ厚さや字数が魅力だと思ってるんだけど。
厚ければ厚いほど嬉しい^^
変?
ちっとも。
同感です。
嬉しいがゆえ、ぶ厚いから~!と突っ込みたくなるのです♪
ちっとも。
同感です。
嬉しいがゆえ、ぶ厚いから~!と突っ込みたくなるのです♪
【白丘亮一が10歳くらいのときに、鍵取明神で目撃した4人の神官(神主?)。志宇神...
【白丘亮一が10歳くらいのときに、鍵取明神で目撃した4人の神官(神主?)。志宇神社(鍵取明神)、越後の平潟神社(知賢様)、信濃の善光寺、下之郷の生島足島神社、(里山辺の薄水神社)を巡っていた模様。】