オオカミの護符 (新潮文庫)

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著者 : 小倉美惠子
  • 新潮社 (2014年11月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101262918

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オオカミの護符 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • つい先日、東京の国立科学博物館に行ってきたばかりだ。
    そこには、世界各地の動植物のはく製も展示されていて、その一つに、ニホンオオカミがいる。
    骨格は確かにオオカミらしい。
    けれど、目がひどく優しくて、とてもじゃないが獰猛さは感じられなかった。
    はく製であって、本当の、生きたオオカミではないのだけれど。
    その面立ちは、やはり生きているときに見ても、人を害するものには思えないだろう。
    その後に読んだ話だからだろうか、御嶽のあたりでオイヌさまが百姓の守り神とされてきたという事実に、すとんと納得がいった。
    死してなお、あんなやわらかな面差しを持つ存在が、カミでなくて何だというのか。
    そんな気持ちがした。

    だが、だからといって自然と手を合わせられるかと言えば、それは難しい。
    武蔵御嶽から遠く離れた場所に暮らす私にとって、彼らは馴染みのカミにはなりえない。
    だが、この話を読んでいて、ふと思い出したものがあった。
    それは、近くのスーパーに向かう途中、ひっそりと埋もれるようにあったお地蔵さまに手を合わせていた祖母の姿。
    それから、犬の散歩の途中、坂道の先にあった古い墓か祠の前で必ず合掌していた祖父の姿だ。
    それぞれ相手は違っていたけれど、二人とも、自然と頭を下げていたこと(そして、時には促されて見よう見まねで拝んでいた自分)を覚えている。
    きっと、二人にとってはそれが、それぞれの「オイヌさま」のような存在だったのだろう。
    じゃあ、今、この私にとってのそれは何なのだろう。
    マンションの一室に住み、普段はせいぜい車窓越しに海を見る程度しか自然と触れ合わない私に、おのずと手を合わせてしまう相手はいるのだろうか。
    神社や祠の前を通る時に何となく遠慮してしまう程度には信仰心のある私でも、すぐには思いつかない。
    そう考えるほどに、近代日本の自然離れの罪深さを感じずにはいられない。

  • 自宅に貼られたオオカミの護符から失われつつある農村の信仰を追うドキュメンタリー。
    狼の信仰に関する知識は三峯神社しか無かったので関東各地に信仰があるとは知りませんでした。
    狼が猪や鹿を食料とすることから農村部で大切に崇められ、今尚(取材当時ですが)講まであり地域の住民を纏めるものの一つになっていることに驚きました。『講』は時代物の小説の世界のものだとばかり…。
    取材をする先々の、その土地に古くから住み信仰を続ける人々の言葉や生活の端々に自然と共に暮らす昔ながらの日本の農村の真直ぐな姿を垣間見ました。
    過疎化でその信仰や生活が失われつつある現在、このように映像や文字でそれらを残すことはとても意義のあることだと思います。

  • 「首都圏」という言葉は明らかに都心に向けて凝縮していくが「武蔵国」はむしろ山に向かって柔らかに開けていく音がする。

    神奈川県川崎市土橋。
    偶然にもわたしの住んでいる場所の近所で、興味を引かれた。ファンタジーではなく、地道な聴き込みと記録による硬派な作品である。

    越してきた頃から、このあたりの神社仏閣のみならず道祖神にいたるまで、よく手入れが行き届いており、なんと生活に神仏の息づいた土地なんだろうと感心していました。

    その背景であるオオカミの護符を巡る旅は、遠く遥かな御嶽山そして関東一円のオオカミ信仰を浮かび上がらせます。
    生まれ故郷の調布のお百姓さんが太占の骨を読みとくくだりは完全に予想外で同郷の方の話はうれしく誇らしく、また新しいぼんやりとした故郷に新しい色をくれました。

    ださいと見下してきた日本の農民の文化。
    その深い深い智慧にため息が出るような1冊です。
    御嶽山へお詣りに行こうと思っています♪

  • 軽い切り口でするする読めるけれど私が求めたのとはちょっと違ったかな。
    ですが足を使い古老に教えを乞う姿が尊いなと思う。近代化し失われてゆく人の住む土地とか信仰の何かを問いかけているような本でした。

  • この本のことは平山夢明・京極夏彦がやっていたラジオの中で紹介されて知りました。普段の読書傾向から通常ならば目にすることのなかった本なれど、読んで良かったと思う。

    埼玉生まれで東京の端に住む私にとって、この本で紹介される秩父や奥多摩の山々は馴染み深いにもかかわらず、そこにある信仰やお百姓についてまるで無知だったことに気づかされた。山や土地の恵みを受けて暮らし、それに感謝し土地に根付いて生きてきた人たちの声に触れることのできるとても貴重な本だと思う。簡単に里山やら山岳信仰やらでまとめて表現してしまうけれど、その土地ごとの言葉や習慣・信仰がこんなに豊かで異なっていたとは。その豊かさの一端に触れることができて良かった。

  • 犬とは違うのだよ。崇めたまえ。

  • ●:引用。→:感想
    ●神官が厳かに「オーー」と発声する警蹕とともに「大口真神社」の扉が開かれる。警蹕とは声を発することによって神が通る道を清め、邪気を祓うものとされている。→以前に宮廷行事か、皇室行事に関連して読んだ記憶があるのだが、書名が思い出せない。
    ●さらに余談を続ければ、関東の山々の世界は侠客博徒を多く輩出した土地柄でもあるという。(略)幕末から明治初期にかけて、「武州一揆」や「秩父事件」「群馬事件」「加波山事件」といった自由民権運動と絡んだ農民反乱が関東の地にも相次いだ。これには百姓をはじめ、侠客博徒にいたるまでさまざまな職業、階層の人々が深くかかわっていたということだ。 →昨夏、小海線で旅をした時、線路沿いに秩父事件に関係した石碑を見た。その時は何で信州に秩父事件の石碑がと思った。後日調べてみて、秩父困民党が警察・軍隊に追われて?信州までやってきたことを知った。その時は気がつかなかったが、本書を読んで秩父と信州は峠、十石峠をはさんで隣会わせであったことを思い出した。中学から大学まで自転車で旅をしていた頃は、当たり前の知識であったのに、そこから遠ざかり、いつの間にか忘れてしまっていた。「ヤクザと日本」、「アウトローの近代史」参照。
    ●ある日、テレビに映し出される悲惨な光景の中で、お百姓さんであろう一人の女性の姿と言葉に私は釘付けになった。「他人の作った街じゃダメなんだべね・・・」。瓦礫の山と化した故郷を目のあたりにして発せられた言葉である。津波に呑まれ、あるいは放射性物質に侵された故郷に、なお強く、その紐帯をつなぎ止めようとする人々の顔を見たとき、かつての土橋のお百姓の風貌と重なり合った。→「震災学入門」
    ●オオカミの護符(山岳宗教)→「東京「消えた山」発掘散歩」参照
    ●御師、直会[ナオライ]→「江戸の旅文化」参照

  • 秩父、多摩に伝わるオオカミの護符を追いながら、それがふるさとの再発見につながっている。
    ハセツネという山岳耐久レースのために、高尾、五日市、秩父の山を走っていると山の中に村人たちが大事にしているであろう神社や道祖神にであう。同じぐらい朽ちた村落や神社にも出会うのだが、確かにそこには人々の生活があったと思わされる。そこにあった物語を彷彿とさせる作品である。もちろん、ぼくの家にもオオカミの護符は貼ってある。

  • <目次>
    まえがき 地元の子供たちへの手紙
    第1章  三つ子の魂百まで
    第2章  武蔵の國へ
    第3章  オイヌさまの源流
    第4章  山奥の秘儀
    第5章  「黒い獣」の正体
    第6章  関東一円をめぐる
    第7章  オオカミ信仰
    第8章  神々の山へ
    第9章  神々の居場所

    <内容>
    まさに民俗学の本。タイトル通りのオオカミの護符の原点を求めて、奥多摩の武蔵御嶽神社(御嶽山)、秩父の宝登山神社、三峯神社、猪狩神社へと向かう。その間に出会った人々(神主・御師・地域住民=氏子)、著者の出身の川崎、奥多摩、秩父の農業の話へと広がっていく。私の求めていた「大口真神」のことは触れられなかったが、関東近郊の産地での農業や生活の様子が、滅びる直前に記録された(この本の元はドキュメント映画)のは良かったと思う。
    また、第9章にある「村では労働を「稼ぎ」と「仕事」とに使い分けていたということ」の一節は、例えば岡田斗司夫の本にも、ちきりんの本にも出てきたことで、われわれはまたそうした世界へ戻るというか、資本主義の次の時代にはそうした点がポイントになるような気がして「ドキッ」とした。

  • 今の私たちが失ってしまったものは、想像以上に大きく深いのかもしれない。
    そして一度手放してしまったそれは、二度と私たちの元には戻らないのだ

  • 一枚の護符から広がる、素朴な人々の信仰の世界や、日々の営み。
    私達がなくしてきたものを、丁寧に探し求めていった作者の姿勢に、大変共感しました❗️

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オオカミの護符 (新潮文庫)の作品紹介

川崎の農家で著者が目にした一枚の護符。描かれた「オイヌさま」の正体とは何か。高度成長期に、小さな村から住宅街へと変貌を遂げた神奈川県川崎市宮前区土橋。古くから農業を営んできた小倉家の古い土蔵に貼られた「オイヌさま」に導かれ、御岳山をはじめ関東甲信の山々へ──護符をめぐる謎解きの旅が始まる。都会に今もひっそりと息づく山岳信仰の神秘の世界に触れる名著。

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