「子供を殺してください」という親たち (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101267616

作品紹介・あらすじ

自らは病気の自覚のない、精神を病んだ人を説得して医療につなげてきた著者の許には万策尽きて疲れ果てた親がやってくる。過度の教育圧力に潰れたエリートの息子、酒に溺れて親に刃物を向ける男、母親を奴隷扱いしてゴミに埋もれて生活する娘……。究極の育児・教育の失敗ともいえる事例から見えてくることを分析し、その対策を検討する。現代人必読、衝撃のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 幼少期から本音でぶつかり合ったこともなく、ガラス細工のような脆さで集ってきた、見せかけだけの家族が多いことを痛感させられます。(P.275)

  • 精神医学に分類されていましたが私はこちらもやはり社会問題の分類に入るように思います。

    タイトルと表紙の写真から何となく虐待であるとか、未成年の子供を扱いかねる親の話なのかという印象がありますが、全く違いました。
    人格障害と思われる子供を持った家族の苦悩がこれでもかこれでもかと出てくる一冊です。そして根本的解決は見当たらない。救いが無いと皆さんおっしゃっていますがその通りです。でもこういう現実の家族がいるということを知る必要もあるということでしょう。

    こういう人に対処する場合、医療機関も公的機関も結局たらいまわし的扱いになるでしょう。今の制度のままではそうならざるを得ません。根本的対策がないのですから。
    新しい制度が必要なのだと思いますが、それを誰がどのように決めて施行してくれるのか。一歩間違えば個人情報侵害や人権侵害と言われかねない状況もでてくるでしょうから大変対策は難しいと思われます。

    でも、こういうどうにもならない人間て現実にいます。「殺してください」とまで言わしめる苦悩は当事者でなければおそらく本当にはわかり得ないのではないかと思います。
    どう対処しても無理な人間がいるのは事実なので、親の責任ばかりを問うことは出来ない場合もあると私は思います。
    逆に親が率先して子どもを精神疾患ということにして犯罪の隠れ蓑にしようとしているというケースもあると本文中に指摘があります。それもまた本当のことだと思います。
    そのまた別のケースで、子供が犯罪を犯した後、精神鑑定で精神疾患と認定されて犯罪者として裁かれたほうがまだ良かった、と言った親も私は知っています。
    こういう人間を家族に持ってしまったら、家族は暮らしも認識も、常識とかけ離れた状況になっていってしまうのかもしれませんね。

    アメリカでは人口の15%がパーソナリティ障害だというデータがあると本文中にでてきますが、ショッキングな数字と言ってもいいと思います。(もちろんパーソナリティ障害だからといって犯罪を必ず犯すわけではないのですけれど人には言いにくいことではあります)

    「何かあったら110番を」って何かあってからでは遅いけれども、現実にはそれしかないのでしょうか。
    著者の方が本書中で述べられている警察OB組織による「グレーゾーン」対策、出来たらすごいなと思いますが現実的には無理な気がします。

  • 精神障害を抱えたまま長年引きこもりを続けると、症状が悪化し、やがて固定化してせん妄、薬物・アルコール依存などから抜けられなくなる。男の場合は特に暴力・威嚇によって家族をコントロール下においてしまう。家族はそれを恥として隠そうとしたり、社会も本人の意思を尊重するというのが大原則なので、問題はますます悪化する。パーソナリティ障害のような、認知も治療法も進んでいない病を医療につなげるために尽力してきた著者が、現状を豊富な実例と共に伝える。

    後半には2013年の精神保健福祉法の法改正について触れている。精神病者を家族ではなく社会で広く受け入れる体制へ変更されたが、現場の態勢が脆弱なまま、家族という堤防の決壊を招いている。この現状では、いつ犯罪行動へと患者が向かうか分からない、という危機感も書かれている。対応困難な患者の背景には、必ずといっていいほど親子関係の問題も隠れているという話も示唆的だ。

    自分も青年期までは依存症の患者を家族に抱えていたし、最近ではたまたま仕事で精神障害を抱えていると思われる人の対応に追われることとなった。家族の困難は理解できるし、そうした困難に真正面から立ち向かう著者の仕事は、かけがえのないものだと感じる。

    障碍者のインクルージョンはひと昔前に比べればずいぶん進んでいるが、同時にそこから零れ落ちる闇もますます深くなっているのだろう。他者に対する寛容さを失った社会で、制度や法が人権保護という名の下にそうした人たちの居場所をかろうじて作っている。しかしそれも万能では、もちろんない。他者への不寛容なまなざしは、巡り巡って自分にもかえって来るはずだ。問題についてオープンに話していく土壌を作っていくことが必要だと思う。

  • 衝撃的な事実の数々。
    もはや言葉の通じない「何モノか」としか思えないような
    人たち・・・・が、現実に多数いるのだという。

    心の病と一言で言うのは簡単だが、彼ら・彼女らの現状を正しく言い表すには不足する。

    そして、著者が言うには・・・・(もちろん皆とは言わないが)彼ら・彼女らをそういう状況に追い込んだ要因の一因は両親の育て方にもある、という。

    うん、一理あると思う。

    さらに・・・ここで紹介される「身勝手な親」の存在にも頭が痛む。心も痛む。

    そして、もちろん、、、、上記のような「ある意味自業自得な親」ではなくても子供が“そう”なって苦しんでいる親もいるであろうという現実。

    去年だったか一昨年だったか、、、、某省庁だかの元エリート官僚が我が子を刺殺した事件が記憶に新しいが、そのため、よりリアリティをもって読むことになり、うすら寒い思いがした。

    ★3つ、7ポイント半。
    2020.02.11.新。

  • 押川剛『「子供を殺してください」という親たち』新潮文庫。

    つまらないノンフィクションであった。読んでいて、著者が行っている事業である精神障害者移送サービスの宣伝と思われるような強かな内容が殆んどであることに辟易するのだ。他人の不幸をビジネスにしているとまでは言わないが、ある種のあざとさを感じる。続編の『子供の死を祈る親たち』と併せて購入したのは失敗か……

    近年、確かに精神障害者による事件や事故を見聞きする。こうしたことの背景にはテレビやゲーム、インターネット、アルコールといった外的な刺激が一段と過剰になっている一方で、近隣社会のみならず家庭内でもコミュニケーションの機会が激減したことがあるのではないだろうか。決して、著者が主張するような育児や教育の失敗ではないと思う。

  • てっきり、世に言う鬼親と呼ばれる親たちの事が書かれていると思ったら、障害や問題行動等を起こす子どもたちを持つ親の話だった。

  • タイトルのインパクトが凄いノンフィクション。
    書店でみかけたときはてっきり育児ノイローゼ関連かと思っていたのですが、精神疾患の子をもつ親の悲痛な叫びでした。
    精神疾患の子、と言っても中年以降のもう手遅れ状態の大人。家族の依頼でそういう人たちを然るべき医療機関へ受診させたり入院させたり、世話をみるのが著者の仕事であるようだった。
    ドキュメントを読む限り、そりゃあ殺してくださいと思うよなぁといった感想しかでてこない。著者は「親はこうなる前にもっと本音で子供と向き合うべきだったのだ」と述べている。
    子育て失敗の成れの果て。無関心や虐待のツケをこうして払わされるのだ、と思うと恐ろしかった。

  • 思っていた内容と違った。
    もうちょっとそれぞれのケースに踏み込んだものを期待してしまった。

    後半は、ただ作者の演説を聞かされてるだけ、みたいな気分になった。

  • 精神障害者移送をしている著者の活動記録のようなもの。
    移送だけじゃなくて面会やら環境調整やら宿泊施設経営やら、とにかく手広くやっている。
    物々しい言葉使いやパターナリスティックな態度などで敵意を持たれやすいと思うが、内容に批判を加えるのは簡単ではなさそうというくらい実情をよく見ている印象。
    本人の問題、家族の問題、病院から制度まで、どれか一つに帰責しないで多角的に分析している。
    別に医療化や入院が最適なソリューションじゃないことを著者自身はわかりつつ現実に対応して支援しているようだ。
    そのうえで敢えて書くけど、ちょっとナイーブ過ぎて被害的。文章のトーンが。そのあたり「頑張っている」と自認する関係者は腹立つかも。
    各種メディアで見る姿と本で読んだ印象はだいぶ違うので、興味のある人は読んでみるといいと思う。

  • もともと警備会社を経営していたという著者。
    従業員の精神疾患から、精神障害者を医療に繋げるという移送サービスを始めたのだそうだ。
    前半が著者が実際に対応した実例が紹介され、後半を5章ほどに分けてケーススタディを交えながら、精神障害者とその家庭における実態、苦難、また社会が抱える問題点などを考察していく。

    著者も言うように、ご家族がこの問題に真摯に向き合う覚悟ができていているならば、なんとか事態を前にすすめることはできる。ただ、本人の抱える問題を、家族の在り方がより悪いほうへと増幅させているケースも少なからずあるようで、このあたりが精神障害というものの置かれている状況の困難さであるとも言えるだろう。社会の制度しかり。世の中の意識しかり。

    単なる無責任な一読者の立場から言わせてもらえば、著者がかかわったケースのその後がどのように変化したか、現在はどうしているのか、などが知りたかったとは思うが、大人の事情もあって難しいのでしょうね。

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