何者 (新潮文庫)

著者 :
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101269313

感想・レビュー・書評

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  • 記憶の底をえぐられて、あったかも定かでない傷のカサブタがこそばゆい。

    何者かに見せたいのか
    何者かになりたいのか。

    人と係わりをもって生きている以上、何者かに見られなければならないし、何者かにならないといけない。そこで生まれる理想と現実。SNSというツールを通し、描かれる繊細な人間関係。

    「何者」を求めるならば、自分は「何者だったのか」ということに向き合うことから始まるのかも。そして、いつか「何者」を求めなくなる。

    漱石の『こころ』の先生が、ツイッターやってたら、あれ、どんな結末になったのかなぁ。

  • 大学生って高校生より自由だけど、社会人より守られていて。
    何でもできるようで、だからこそ不安定な気がします。

    就活になった途端、みんなが髪の毛黒くして、同じようなスーツ着て、不思議な空気感がありますね。
    一緒にがんばろうと言いつつも、心の底からそうは思ってないとか。
    誰かが一歩先へ進むと、喜びよりも焦りが勝ってしまったりとか。
    SNSに書くのは本音だったり綺麗事だったり、使い方は人それぞれ。

    普段見て見ぬふりをしてるような、人間の、自分の嫌なところを突きつけられるような感覚。
    小説だからと客観的に見ていたのに、急にぐっと追い詰められるような。

    タイトルに納得でした。

  • 多くの人が一度は経験するであろう就活をテーマに人のいやーな部分を炙りだした作品。

    中盤までの一種の青春小説のようでありながら、危ういバランスで成立しているグループの人間関係はハラハラとした面白さがある。

    クライマックスには中盤までのモヤモヤを色んな意味でぶち壊してくれる仕掛けもあり、最後まで楽しめる作品。

    露悪的になりすぎない作者のバランス感覚の為せる技か、読後感は不思議と少しの爽やかさが駆け巡る。

  • 就活という舞台にあまり惹かれず、夫から映画の感想も聞いていたのでなんとなく手が出なかった作品。最近朝井リョウ氏のラジオを再び聴いていて、これは読まねばと。

    主人公と一緒に相手をこき下ろしてみていたので、終盤一気に自分の立っている場所が分からなくなる衝撃が。相手に向けていた銃口がぐるりと自分の方に向かう感じ。
    モノローグで語っているときはそうでもないのにTwitterの裏垢で発信しているのを読むと一気に悪意が強くなる。それを知人に、しかも対象者に見られてたなんて想像したらぞわっとする。リスクは承知だったのに、自己顕示欲が勝つのかー。
    自分ができないことをやれてしまう人を斜めからみて批判する、って身に覚えがなくはない。
    何者かになりたいという夢を見る時期は過ぎたけど、こうやってなにかを記録に残すことで何者かになろうとしているのかもしれないのかな…とうすら寒くなりながら感じた。

  • あーこういう人いるよねー。意識高い系?って人?拓人に共感できるわー。なんて読んでいたら、最後の最後里香の言葉がグサリと胸に突き刺さりました。
    里香は拓人に向けて言っているのですが、お前も私のこと笑って馬鹿にしていただろう!と言われている気分になるほどでした。


    こんなに共感できるというかのめり込める小説ははじめてです。
    直木賞すげぇ笑


    改めて自分はどうなんだと省みようと思わせてくれる作品です。

  • 拓人クン うじうじし過ぎ。
    就職活動……
    そらそぅか、みんな仲間の様でライバルなんだ。
    自分を否定されて行く感じをSNSで憂さ晴らししてゆく なんだか 殺伐とし過ぎてて辛くなった。

    オッサンになった私も何者にも成れていなぃので 10点でも否 1点でも何か?自分から生み出そうと思えた。

    アナザーストーリーの【何様】も読んでみよぅ。

  • 初の朝井リョウ作品。桐島、部活やめるってよ。の作者。直木賞を獲った作品なので、かなり期待して読みました。でも…終盤まで就活をする大学生の青春話しみたいに感じて私にはあまり響きませんでした。終盤からの人間推理、心理描写はさすがと思った。他人の言葉で語るのではなく、自分の中から何かを出す。映像でみたらまた感想が変わるかも。

  • 面白かったー。
    一気に読みました。しかも、読んでいるあいだ、これほど自分の感情がかき回された小説はまれと思います。おそらく、多くの読者がそういう読書体験をされたのではないでしょうか?

    就活を控えた5人の男女。海外ボランティアの経験、サークル活動、手作り名刺などのさまざまなツールを駆使して就活に臨み、それぞれの思いや悩みが吐き出されるSNSが現実とは別の舞台になり、物語が展開します。
    SNSは140文字制限。登場人物のひとりが「選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表してるんだと思う」と語っているようにSNSの発言と、登場人物の現実や自意識の齟齬によって、5人の関係が次第に変化していきます。
    この小説は就活が主題ですが、中盤以降の展開はサスペンス小説並に激しいという印象でした。物語の終盤に(おそらく)2箇所のクライマックスがあります。しかも、そのクライマックスは突然やってきます。詳細は書けませんが、忘れられないシーンでした。
    著者の朝井リョウさんが本書で直木賞を受賞したのは2013年。24歳という年齢は社会的には熟成されていない年齢と思います。24歳でこれを書いたのがすごいのか、24歳だからこそこれが書けたのかはわかりませんが、これからどんな作品を出してくれるのか楽しみな作家さんです。
    お勧めの小説。ブックオフの110円コーナーに何冊も置かれていたので甘くみていました。以前に買ったことすら忘れ、合計3冊買ってしまい、うち2冊は行方不明になっています。本当に申し訳ありません。

  • 主人公の二宮拓人の目線で語られるこの物語。読者は必然的に彼の目線になって、彼の思考を追うようにして就活と周りの環境に対峙していくことになる。だからこそ、後半の流れによって読者は打ちのめされる。かっこ悪くても、馬鹿らしくてもそれを自覚した上でやり続けなければならないというメッセージを感じた。心にズンと来る言葉が多々あったので又読み直したい。

  • ラストがすごかった。惹きこまれた。ありのままの自分をさらけ出すってのがいいことなのはわかるんですけどね、怖いんですよね。就活やだなあ。

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著者プロフィール

1989年岐阜県生まれ。2009年『桐島、部活やめるってよ』で、「小説すばる新人賞」を受賞し、デビュー。11年『チア男子!!』で、高校生が選ぶ「天竜文学賞」を受賞。13年『何者』で「直木賞」、14年『世界地図の下書き』で「坪田譲治文学賞」を受賞する。その他著書に、『どうしても生きてる』『死にがいを求めて生きているの』『スター』『正欲』等がある。

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