神の棘II (新潮文庫)

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著者 : 須賀しのぶ
  • 新潮社 (2015年6月26日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (661ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101269726

神の棘II (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • Ⅰの続き。
    ナチス時代のドイツ。親衛隊に入隊したアルベルトと、修道士のマティアス。図らずも対立してしまった旧友の物語。

    ドイツのポーランド侵攻から第二次世界大戦、そしてドイツの敗戦。戦後の様子までが書き綴られているのだけど、本当に一言で感想を述べるとすれば、「戦争は人々に何ももたらさない」ということ。
    だからこそ今読めてよかった。プレゼントしてもらえてよかった。
    著者の須賀さんは大学で史実を専攻されていたようだし、この小説を書くにあたってたくさんの文献を読まれたそうなので、この小説を読んだだけで当時のドイツで起こっていたことが分かりやすく理解出来ると思う。
    物語としても、とても面白かった。
    戦中の描写はハラハラするけれど、最後はとても静かに終わったのも印象的。

    アルベルトはとても冷酷な人間の設定だけど、なぜか憎みきれないところがあって、その理由が後になってから明かされるという、枠としてはミステリ小説。
    マティアスはそのまま純粋で真っ直ぐな青年で、読みながら思わず「頑張れ」と応援してしまうような人物。
    その二人が基本は平行線を辿りながら、たまにその道が交錯する。人と人の不思議な縁を感じずにいられない。

    個人的に思うのは、この表紙の感じは作品としてはちょっぴり損しているような。中身はとても硬派でしっかりした歴史ミステリなので、もっと重厚な表紙の方が合ってるような気がする。

    自分ではあまり選ばない小説を読めて、そしてそれがとても面白くて読んでよかったと思えたのもひとつのめぐり逢い。
    時を置いて再び読み返してみたい小説。
    そして関連本にも興味が…。

  • 鉄拳神父マティアスさん素敵です!
    フェルシャーの告白を聞いたうえで分かりやすい棘(拳)を与えてやれるマティアスと、望んだ棘を与えられてなお自分を赦していたのかどうなのかとか考えているフェルシャーの差たるや。左の頬も殴られてろ。

    先が分かっているぶんラストは穏やかに読めたのですが、イルゼへの老婦人の言葉でびっくりするほど涙がでてしまいました。アルベルト夫妻の恋愛描写少ないなーまあ須賀作品では真っ先に削られるところだよなあーと思っててこれだから、もし出会いのくだりをしっかり書かれてたらカサカサになってたかもしれません。命拾いをしました。

  • ハードカバー版を既読。もう何と言ったらいいのか。何と書いたらいいのか。まさに慟哭と呼ばれるかたまりを喉元に詰まらせながら読み進めたⅡ巻は、悲劇と残虐と無力をこれでもかと描いている。すべてを背負って生きることを当然としたアルベルトが民衆の目にどのように映ろうと、彼の生き様はまるで神に仕えるものと同等か、それ以上であると言わざるを得ない。憤怒の嵐のなか苦悩するマティアスの対極で、凪いだ風のように立つアルベルトの姿が脳裏に浮かぶ。信仰と法と戦争。それらを小説というかたちでこうも深く表した作家が他にいるだろうか。

  • イルゼにはビックリ!ユダヤ人だったとは。でもって「浮気」がアルベルト承知だったとは!しかも「サズ」だったなんて、マティアスってばオンナを見る目無さ過ぎw
    フェルシャーの下種な告解にも驚き。じゃあ、そもそもの発端は、お前のジェラシーだったのかあ〜!成る程ね、この告解の伏線でテオのエピソードがあったのね。うーん。物語の構成上の必然性は理解できるけど、キャラクターの重みからするとバランス悪い。後半でもう1つなんかテオ絡みが欲しかった。
    でも、コレで「ミステリ」でござい…は無理がある。「実は…」が発覚するのがミステリ、ではないと思うのよね。
    若い米兵看守のアルベルト評、「悪い奴じゃないのに融通がきかない」が言い得て妙w

  • 神の棘

    Ⅰ、Ⅱ総じての感想。

    ナチスの支配するドイツにおける、マティアスとアルベルトという、ふたりの男の物語。

    かつては友と呼べる間柄だったふたりの生きざまを、想いを、この小説で追っているうちに、いつの間にか自分の中の「正義」と「信仰」に対峙することになる。

    激動の時代の中で神を信じたマティアス。
    最後まで己に従ったアルベルト。

    信じるものは、神か。己か。

  • 「あぁーーー!!」
    最後の一行を読み終えた直後、慟哭しました。顔を覆って天を仰いでしまいました。あまりにも、あまりにもアルベルト・ラーセンという男はずるい。ずるくて、愛しく、美質にあふれていて、悲しくなるほどです。
    マティアスと同じく、アルベルト・ラーセンという人が、通巻二冊を通しても私にはわかりませんでした。内面は確かに書かれているのに、本心というものがよく掴めませんでした。その、よくわからんアルベルト・ラーセンは、妻から見れば強靭な夫で、マティアスから見れば様変わりしたよくわからん冷徹な男でした。よくわからん強靭で部下からの信頼も厚いアルベルト・ラーセンの内面や憶測が外部の一太刀から語られるたび、ツンデレかよ!と突っ込まずにはいられませんでした。
    マティアスの行く先には、かならずアルベルト・ラーセンがいました。アルベルトはまるでマティアスを導くように先まわりして、マティアスを信仰の道へと先導しました。アルベルト・ラーセンは、マティアスにとって、道を示すような人だと思いました。ラストを読んで、なお、その思いは深まりました。
    アルベルト・ラーセンはずるい男です。友を自分の理想に引き立てたように、私には思えます。アルベルト・ラーセンの思う、マティアス・シェルノが、最後には残されました。アルベルト・ラーセンはひどい男です。
    「なぜおまえばかり」とアルベルトはこぼしました。その先は「神は救うのだろう」と続くのかな、と思いました。もしくは、選ばれるのだろう、かもしれません。
    「神の棘」は、羨望の物語でした。羨望、嫉妬がなければ起きなかったことです。でもそれは、人からは、拭い去れない感情です。
    神の棘とは愛だと語られています。神の愛は試練で、選ばれて痛みを与えられ、それを乗り越えれば、神の愛に応えられる、ということなのかな。なぜおまえばかり。アルベルトの台詞は、ふとした瞬間に頭によぎりました。
    信仰とはいいものだな、とマティアスを見ていて沁み入りました。荒れていたマティアスが手放さなかった信仰、愛は美しく、とてもきれいで、アルベルトの最後の台詞に説得力を持たせています。
    一巻はなんとなく読み終えたのですが、二巻はそれはもうのめり込んで読みました。安楽死施設のくだりから、聖体、謁見、叙階、裁判……めまぐるしく、一気に読みました。アルベルト・ラーセンに降りまわされ、アルベルト・ラーセンの幸福を祈って読みました。
    最後、アルベルトは幸福だと言いました。本心かもしれないな、と、ここまで書いていて思いました。マティアスとすごした、コーヒーの匂いに包まれた時間。切なく、美しい、もどかしいラストが、読み終えた直後に唸るほど、私は好きです。

  • 第二次世界大戦下、ナチスの支配するドイツで対照的な立場にある二人の奇妙な運命を描いた作品。誰もが知る「非道」の代名詞である組織を中心にした話とあれば、どうあっても重い物語にはなりますが、それでも先を読ませる筆力、そして主人公ふたりの荒々しい魅力に満ちた作品でした。
    「時代」のせいばかりとするにしてもあまりに非情な所業を成してきたアルベルトのひとつの真実が最後に明かされるという意外な展開がさらに深みと最後の場面の余韻を深めています。
    余りに多くの命が無碍に失われ、それを自ら執り行ったり、見送るしかなかったという人生は想像することもできない「フィクション」です。
    けれどもかつて…いや、今でもきっと、このようなことは続いてしまっているのでしょう。それを思うと、あまりに平和に生きていることの幸せを思わずにはいられません。

  • ユダヤ人大量殺害という任務により、消えない罪を背負うアルベルト。衛生兵として戦地にあり、神への救済を求めながら死んでいく兵士たちを前に苦しむマティアス。
    ふたりの男は、歴史の流れに呑まれながら運命の悪戯のように巡り会う。

    この作品は物語の進行それ自体は、ほぼ想像通りに進む。
    その点だけを見れば、意外性のないつまらない作品とも言える。しかしこの作品に意外性を特に求めず読んでいたため、そこに問題は余り感じなかった。

    カトリック教会が時代にあわせナチスを否定したり、ヒトラーを祝福したりと態度を変えたことは、やはり残念だ。
    教皇や司教たちであっても人間であり、カトリック教会の総本山であるバチカンが、余りにも巨大でありすぎるために矛盾としか思えないことが起きてしまう。神様はそんな哀れな人間をどのようにご覧になっていただろう。

    カトリック教会に矛盾があっても人々は、辛く苦しいときにこそ神の救いを求める。そのときに神のかわりに神の言葉によって救いと癒しを与えるのは、カトリック教会司教や司祭だ。
    信仰は欠かせない。
    そう改めて感じたのはマティアスが衛生兵として加わった戦地での描写だった。普段とても敬虔とは言えない、自分がキリスト教徒であることさえ忘れてしまっているような人であっても、死ぬ前には自分の行いを赦してもらいたい、心安らかに命を終えたい。きっとそう思う。
    たとえ矛盾があってもバチカンの存在は大きな意味がある。

    キリスト教徒であればイエスの受難がユダヤ人によるものということはわかっている。しかし、だからユダヤ人は迫害されても仕方ないと考えるキリスト教徒は殆どいないと信じている。
    教皇がユダヤ人迫害に対して何らかの苦言を呈してくれたならと思ってしまう。

    この作品を読みながら考え、なるほどと腑に落ちることと更なる疑問を持ったりと大変愉しく読んだ。
    物語の進行に面白さがないと書いたが、最後には、ああ、そうきたか、と思う場面があり、最後まで愉しませる作品だった。
    他の作品にも興味が出てくる良い作品と出合えて嬉しく思う。

  • 上下巻一気に読み終わってしまった。須賀しのぶらしい、骨太な作品で、読み終わったあとの充足感はひとしお。第二次大戦前から戦後にかけてのドイツの、社会や人々の生活がリアルで、映画を見ているような気分にもなった。
    修道士・マティアスと、軍人・アルベルトの軌跡をたどっていると、作者はドイツを舞台にしたかったのではなくて、『神』とはなにか、『赦し』とはなにかというテーマを描くために、この時代のドイツを選んだのではないかと思えてくる。その問いかけがはっきりと示されるのはマティアス視点の話のときだけだし、カトリックの神に問いかけを続けるマティアスとは違って、アルベルトは棄教しているし、自分の行動の結果とそのための救済を自分自身に負わせる。でもアルベルトのこの考え方も、○○教の神と名はついていなくても、1つの信仰の形のように見えた。『神の前に何も持たずに立つことと、実はとてもよく似ている』とあるし。
    タイトルの『神の棘』とはなんなのか、その発言をするヨアヒム・ フェルシャーの告解に鳥肌が立った。棘は神の愛情の証だと彼は捉えていたけれど、その棘は果たして神から与えられるものなのか、それとも罪悪感をきれいな言葉に言い換えただけなのか、なんだかすっきりしない気持ちが残る。それも踏まえて、何度も読みたい小説。電子書籍ではなく、紙の本でおいておきたい。

  • 戦闘や信仰や隠れた真実など、読み応えがあってとてもよかった。
    アルベルトの闘争と信念を知るにつれ、苦しくなってしまう。でも暗い気持ちにはならずに静かに読めた。
    手紙やラストの会話に心が震えた。

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神の棘II (新潮文庫)の作品紹介

ユダヤ人虐殺という任務を与えられ、北の大地で生涯消せぬ汚名を背負ったアルベルト。救済を求めながら死にゆく兵の前でただ立ち尽くしていた、マティアス。激戦が続くイタリアで、彼らは道行きを共にすることに。聖都ヴァチカンにて二人を待ち受ける“奇跡”とは。廃墟と化した祖国に響きわたるのは、死者たちの昏き詠唱か、明日への希望を織り込めた聖歌か――。慟哭の完結編。

神の棘II (新潮文庫)のKindle版

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