異形の大国 中国―彼らに心を許してはならない (新潮文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101272276

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  •  中国は、1971年10月に台湾の中華民国に替わって国連に席を得て以来、自国の領有する空間を陸に限定することなく、宇宙と海洋に向って拡大してきた。彼らの拡大政策を支えるのは、『戦略的境界』という考え方だ。国境線は固定化されているのではなく、軍事力、経済力、政治力、社会や文化の力、国民の意思の力などを合わせた国家の総合力によって変化するという考えだ。総合力が高まれば、戦略的境界は外へと膨らみ、中国の領有する陸も海も空も増えていく。反対の結果は、中国の領有する陸地、海洋、空間を狭めていくと彼らは考える。総合力の最重要の要は、軍事力である。
     中国が海軍力の増強と、宇宙開発に努めてきたのは、まさにこうした考えによる。彼らは貧しかったときも、国家の総合力の礎としての軍事力増強路線をゆるがせにすることはなかった。国民が飢えに苦しもうが、中国全土に内戦の嵐が吹き荒れ、幾千万の人命が失われようが、中国共産党は軍事力を増強し続けた。
     中国共産党の戦略目標は、台湾を併合して、アジアの盟主となり、米国の介入を許さず、日本をも支配することだ。そこに到達するためなら、事実の捏造も、歪曲も、開き直りも責任転嫁も彼らは手段を選ばない。中国伝統芸の2国間外交のみならず、国際社会全般において貫き通す力こそ彼らの政治力である。それはまた、彼らの文化力、文明力といってもよいだろう。そのような中国共産党の対外政策は、中国国民のはけ口となり、強い支持を集める。そこに強力な国民の意志力が形成される。中国共産党の政治のゆがみは、中国の文化、文明をゆがめ、国民の考え方までもゆがめている。そのように歪んだかれらが、強大な軍事力を持っているのである。
     そこで日本がなすべきことは明らかである。自らの力をつけるしかないのだ。日本が中国にも米国にも物を言えないのは、安全保障を米国に頼り、ついでに外交においても米国の意向を忖度しながら後追いをすることを長年続けてきたからだ。安全保障も外交も他国に大きく依存する国が、他国と対等に対峙し、まともに渡り合うことは出来ない。真の意味で独立国で無い国家は、どの国にも相手にされないのである。であれば、日本は真の意味で独立国にならなければならない。そのためには、日本国を構成する私たち日本人には、やり遂げなければならない課題がある。一言で言えば、まともな日本人になることだ。振り返ってみれば、戦後の私たち日本人は、余りにも祖国日本についての知識や理解を欠いてきた。祖国の歴史や価値観に背を向ける教育の中で、まともな日本人がはぐくまれるはずがない。日本の歴史を学び、日本文明を育んだ価値観を知った時、初めて私たちは日本人としての自覚を持つことができる。一人ひとりが日本人としての力を付けるとき、戦後、長きにわたって国家ではなかった日本に国家としての意識が生まれるだろう。国家としての意識があって、初めて日本の再生が可能になる。再生を果たした日本の前に、どんな問題が出来しようとも、日本と日本人は自らの力で問題を解決することができるのである。異形の大国の脅威にも、同盟国の方針転換にも、動じる必要の無い賢く強い国家になれるのである。

  • 中国は異星人なり。尖閣の問題はどうなったのか。民主党は? 自民はくだらない「罷免」論争。どうでも良いと思ったら仕舞だ。

  • 中国の戦略と戦術を説明し、日本の弱腰外交を質す。軍備を背景に威嚇するのではない。正当に話し合い、言いくるめられないようにすべき。それにしても中国の環境汚染はなんとかならないのか。中国産を食す気分が失せる。でも外食すると、絶対と言って良いほど、中国産に当たるのだ。2014.10.1

著者プロフィール

ベトナム生まれ。ハワイ州立大学歴史学部卒業。「クリスチャン・サイエンス・モニター」紙東京支局員、日本テレビ・ニュースキャスター等を経て、フリー・ジャーナリストとして活躍。『エイズ犯罪 血友病患者の悲劇』(中公文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞、『日本の危機』(新潮文庫)を軸とする言論活動で菊池寛賞を受賞。2007年に国家基本問題研究所(国基研)を設立し理事長に就任。2010年、日本再生に向けた精力的な言論活動が高く評価され、正論大賞を受賞した。著書に『何があっても大丈夫』『日本の覚悟』『日本の試練』『日本の決断』『日本の敵』『日本の未来』『一刀両断』『問答無用』『言語道断』(新潮社)『論戦』シリーズ(ダイヤモンド社)『親中派の嘘』『赤い日本』(産経新聞出版)などがある。

「2022年 『わが国に迫る地政学的危機 憲法を今すぐ改正せよ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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