瑞穂の国うた: 句歌で味わう十二か月 (新潮文庫 お 83-1)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (381ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101273310

作品紹介・あらすじ

大きな節目を皆でいっせいに迎える、おごそかでめでたいお正月。日本人の美意識に深く根差した桜の花。夏にかかせぬ青空に響く蜩の声。実りの秋に詠まれた恋。孤独な心に滴る酒-。詩情あふれる言葉で書きとめられた、時を経ても変わることのない日本人の心、そして芭蕉、子規、漱石、虚子についての珠玉の論考。

感想・レビュー・書評

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  • 前半は一年の12の月毎の詩歌を巡るエッセイで、後半は、芭蕉、子規、漱石、虚子を巡るエッセイで構成されている。
    この著者ほど、古今の名歌を取り上げて、難しい事を簡単・平易に述べてくれる人はそうはいない。そういった意味で私のような詩歌に疎い者でも、詩歌の世界の贅沢な散歩が楽しめます。
    例えば、こんな例があります。
     「秋来ぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる」
    という和歌を取り上げて、「この歌が、及ぼした影響は甚大なものがありました。立秋とは、すなわち秋風が吹くことだということになった・・・(略)・・・秋の季節感を人々に告げ知らせるものは『風』だった、という訳です。『時』の移り変わりを、目ではなく『風』という気配によって知るという、より、内面的な発見が、後世の美学に影響を与えた」
    と言うように、日本の文学の花鳥風月と言った美意識がフィクションの上に成り立っている。「それをばかばかしいと思うことも結構だけれど、そういうばかばかしさの上に立って、日本人のある意味では壮大な美意識の体系が作りあげられてきたという事実の方が、もっと大切なのではないか」という風に具体的に解かり易く、さらりと説明してくれます。
    また、「喋るという事と文章を書く事の違い」についてや、芭蕉の項では「上島鬼貫の再評価」、「レトリック一辺倒の子規に対する漱石の危惧」など、他にもいろいろあるのですが、私の能力では書き尽くせないので、これ位にしておきますが、是非一度手に取って欲しい本です。

  • すごくわかりやすい。素人ながら外観がわかってきた気がする、ようになる。歳時記というのでしょうか。
    高浜虚子はとても面白いんですね。読んでみよう。
    あと、お雛様はヒトガタだったんですね。昔は。今の時代で失われたものは多いなあ。新しい季節感とかを、新しい言葉で作ることは可能なのだろうか。実感は得られるのだろうか。

  • 前半は詩人大岡 信の歳時記、後半は芭蕉、子規、虚子を中心とした俳句論。
    前半の面白さは言わずもがな、圧巻は後半の子規、虚子についての論述であろう。俳句はアイディアが命、一瞬を切り取る事と言い切った見識の高さに脱帽する。

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著者プロフィール

昭和6年、静岡県三島市生まれ。詩人。東京芸術大学名誉教授。日本芸術院会員。昭和28年、東京大学国文学科卒業。『読売新聞』外報部記者を経て昭和45年、明治大学教授、63年東京芸大教授。平成2年、芸術選奨文部大臣賞受賞。平成7年恩賜賞・日本芸術院賞、8年、1996年度朝日賞受賞。平成 9年文化功労者。平成15年、文化勲章受章。著書に『大岡信詩集』(平16 岩波書店)、『折々のうた』(昭55〜平4 岩波書店)など多数。

「2012年 『久保田淳座談集 空ゆく雲 王朝から中世へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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