乙女の密告 (新潮文庫)

  • 208人登録
  • 3.21評価
    • (6)
    • (23)
    • (27)
    • (12)
    • (4)
  • 42レビュー
著者 : 赤染晶子
  • 新潮社 (2012年12月24日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (102ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101273518

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
有効な右矢印 無効な右矢印

乙女の密告 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

  • 本の紹介にもある通り、「アンネ・フランクとの邂逅」ということばがぴったりの物語でした。しかも、生の切実感を伴った「邂逅」です。
    意識的なのか、描かれている世界が少女チックな世界で少々とっつきにくかったのですが(笑)、解説の方も書いておられるようにスポ根物に近い背景と、ところどころに繰り出されるユーモア(特に、バッハマン教授の常軌の逸脱ぶりが面白い!)で、何とか物語に馴染むことができました。(笑)中盤の衝撃的告白には、自分もみか子同様、「ええっ!」と思ってしまいました。(笑)
    社会の中で認められ働きたい。しかし、その「社会」は人を「他者」として疎外する側の集団でもある。そして、いったん「他者」と指定されてしまったら・・・。それでも、やはり「社会」の一員でいたい。しかし、名前のない「他者」ではなく、「私」と認めてくれたのは、皮肉にも密告者だった!「ユダヤ人 アンネ・M・フランク」であると!主人公・みか子の現実の世界と、「アンネの日記」のスピーチを通して絡み合う2人の切実な想いを、綺麗に融合した作品だったと思います。

  • 私が初めて、受賞時から読みたいと思った芥川賞作品です。
    外大の女子学生達が繰り広げるお話、
    とのことで、気持ちの上で、
    近年の受賞作より何となく敷居が低いというか。

    そうして「読みたい」「読みたい」とは常々言っていたものの、
    結局、本屋さんで遭遇したのは、文庫本になってから。
    買う予定だった本を戻してしまって(ごめんなさい~!)
    即刻購入ののち、帰宅後一気読みしました。

    まず、執拗に繰り返される、
    「乙女」という言葉が印象的で癖になる。
    そういえば、最近では最早死語のような気もする程、
    歪に聞こえる言葉だけど、私達は乙女なのだー。

    少し前に、アンネの日記を読んだところだったので、
    彼女のユダヤ人としての誇りや葛藤、
    「オランダ人になりたい」という本音、
    アツい叫び声を読む中で圧倒される、
    その気持ちはよく分かりました。

    そして、彼女の周りで起きる「事件」や「密告」と、
    アンネの周りで起きたことやミープの存在等を、
    熱に浮かされたように重ねて、
    突き動かされていく様子は、あまりにリアル。
    読書家って、こういうところがあると思うのです。
    実際起きていることは大した話じゃない。
    だけど脳内では勝手に壮大なドラマになっている。
    誰か、強烈な人物と重ね合わせてみたりして。

    個人的に衝撃を受けた部分として、
    主人公のお友達(貴子さんだっけ、、、)で、
    ドイツからの帰国子女の方のエピソードがあります。
    彼女は、ほぼ母国語と同じようにして、
    ドイツ語を学んだ経緯がありながら、
    長い間触れる機会がなかったために、
    発音なんかは完璧だけど半端に忘れてしまっている。
    その「忘れている」という事実を強烈に恐れている。
    「○○ってドイツ語でなんていうんだっけ」
    に答えられないとき、
    「答えられなかった」「単語を忘れてしまった」
    という事実に驚愕し、おびえる。
    みんなとは異なる結び付き方をしているからこそ、
    日本人目線でのドイツ語の授業には違和感がある。
    これをフランス語に置き換えたら、
    完全に私になりそうなんですもの。
    最も、まだ、私は大学生ではないけれど、
    フランス語を完全に取り戻すために、
    専攻語にするつもりでいます。
    だけど、これを読まなかったら、
    彼女と同じになっていたかもしれない。
    変に、やさぐれていたかもしれません。
    どれだけ意気込んでいても、
    自分の記憶と正面から向き合ったときに、
    失ってしまったものに愕然として、
    背を向けてしまっていたかもしれません。
    今だってふと冷静に、
    自分がどれだけフランス語を覚えているか考えてみて、
    単語が抜け落ちすぎていることを思うと、
    胸が苦しくて、自分の一部がどこかに行ってしまったような、
    喪失感に襲われるものです。
    だけど、今はその事実と、
    わざわざ向き合う必要は無いからいいのです。
    もしも、大学で勉強するとなれば、逃げられなくなるのです。
    その「来る日」を前にこれを読めて良かった。
    勿論、失ったものと対峙するのは、
    どれだけの覚悟があっても足りない位、怖いことです。
    だけど、一度、やさぐれてしまった人を見て、
    それを反面教師にして、自分なりに戦ってみるのと、
    何も無くしてぶつかるのとでは大きな違いです。
    赤染さんがこの作品の中に、そんな人物を生んでくれたこと、
    本当に感謝しています。
    「なり得たなりたくない自分」を見せてくれたこと、
    本当に感謝しています。
    (赤染さん自身外大出身とのことで、ひょっとしたら、
    赤染さんの周りにそんな方がいらしたのでしょうか。)
    ありったけの★を差し上げたいです。

  • 外国語大学に通う「乙女」たちは『アンネの日記』の一部をスピーチコンテストで暗唱することとなっていた。
    『アンネの日記』の決まった一節を必ず忘れてしまうみか子、スピーチを生きがいとしているような麗子、帰国子女の貴代、そして風変りなバッハマン教授。「乙女」たちが見つけるアンネ・フランクとは、そして「自己」とは。

    うーむ…なんというか…とても勿体ない!!という感じの作品だった。
    試みていることもわかる、伝えんとしていることもわかる、でも何もハッキリとは見えてこない。

    思うに、『アンネの日記』の中でもとりわけ彼女のエスニック・アイデンティティが揺らいでいる部分を取り上げて、それを自分は日本人であるというアイデンティティに欠片ほども迷いを抱いていない「乙女」の自意識形成とラップさせようとしたのは失敗だ。
    その溝を、帰国子女である貴代や、日本で教鞭を握るバッハマン教授が埋めてくれるのかと思いきや、彼ら(特に貴代)はこの問題に何ら関与しない。
    他にも母娘の関係など、何かあると匂わせておいて結局なにも起こらない伏線もどきが多かった。

    蛇足ながら、女子校育ちで大学は外国語学部という、この作品で言うところの「乙女」度合は筋金入り(笑)の私から言わせてもらうと、この作品に描かれるような「乙女」らの争いやアイデンティティ・クライシスは大体中学校か高校までには収束し、大学生になる頃にはもう少し地に足がついた?生活を送っている。どうせなら「第二外国語としてドイツ語を習うお嬢様高校の一幕」くらいにしておいた方が、まだ設定にリアリズムがあったのに。
    …と思っていたら、作者自身が京都外国語大のご出身とのことで、もしかしたら世の中にはこういう純粋な外語大生もいるのかもしれない。

  • アンネ・フランクの日記と、現代の女子大生のオーバーラップが見事な作品。
    乙女というのは清らかで、それと同じぐらい汚らわしいものでもある。
    帰国子女である貴代が、かつての言葉を忘れていく様は、アゴタ・クリストフの自伝「文盲」を思い出しました。

  • まずは本が薄くてびっくり。それはどうでもいいか。
    芥川賞受賞のときはけっこう話題になっていておもしろそうと思った記憶があったので即買い。
    うーん、さすが芥川賞っぽい純文っぽい不思議な感じ。わかるようなわからないような。おもしろいようなおもしろくないような。エンタメじゃあないからな。
    たぶん、ささっと読んでおしまいにするのではなく、じっくり何度も読むとよく意味がわかって発見もあるような気がするけれど。
    京都弁が印象的。ユーモアがあって文章は好きかも。

  • 文章のリズムが素晴らしい。アンネの日記を読んでみたいと思った。

  • 麗子様がいいね

  • 登場人物が個性的過ぎて、現実離れしているように感じました。女子大だからという理由で作者の思う乙女らしい世界を描いているのだと思いますが、女子大ってこんなものではないと思います。設定がそもそも…という部分が多く、物語に入り込めませんでした。

  • しゅうこさん、ちゃんさりさん!ぜひこれ読んでみて‼︎めっちゃ面白かったよ!ちょっとした女子校ものみたいで、文体がユーモラスだから笑えます。久々にいい小説読んだよ〜。

  • 読むポイントが散り散りで、最後まで読んで結局どのポイントのオチも弱かった。登場人物は少ないのだけど「乙女」の集団というモブに恐怖を感じた。

  •  赤染晶子が、観光地であるアンネの家を訪れて「アンネは本当はこんなこと望んでいなかった」と思った。それを忘れないでいようと思って書いた……という挿話を読んで手に取ってみました。

     要するに『私』を発見する物語なのですが、自分が自分であることを他人に委ねてはいけないし、委ねることも出来ない。
     他人が奪ってはならない。
     他人が勝手に物語を与えてもいけない。
     そういった尊厳についての物語だと思います。

     まあアンネの尊厳についてドイツ人と日本人が語るなと言われればそれまでなんですが。
     逆にアンネがみずから密告したアイデンティティを尊重せねばならぬと、ドイツ人が日本人に教えるというのは……まあやっぱつまらんギャグかもしれんがしかし、アンネを語るバッハマン教授の言葉は胸に迫りました。

     再読だったのですが1回目と違って面白く読みました。

  • あっさり読めたけれども、実は多面的な読みができる、手強い本なのかもしれない。

  • この作品は、芥川賞をとったころに雑誌に載ったのを読んだ。その後、単行本になり、いつのまにか文庫にもなっていたのかと、久しぶりに借りて読んでみる。関東の図書館や本屋で『アンネの日記』が破られたり切り裂かれたりしているという事件が気になっていたせいもある。

    この小説の舞台となっている京都の外国語大学で、ドイツ語のスピーチのゼミを担当するバッハマン教授は、テキストに『ヘト アハテルハイス』(つまりは『アンネの日記』)のドイツ語版を使っている。

    教授はゼミの学生たち(全員が女子学生だという)を「乙女」と呼び、スピーチコンテストに向けて「乙女の皆さん、血を吐いてください」とのたまう。指定されたページは、「1944年4月9日 日曜日の夜」だ。隠れ家の隠しドアのすぐ後ろまで警察がやってきた日だ。教授はこの日が『ヘト アハテルハイス』の中で最も重要な日だと言う。「乙女の皆さん、アンネ・フランクをちゃんと思い出してください!」と言う。

    みか子は、4月9日の日記を暗記しながら、少女の頃に『アンネの日記』を読んだときには、こんなアンネを全くおぼえていなかった、と思う。みか子たち乙女がスピーチのための暗記に懸命になり、スピーチの練習でつかえ、忘れてしまうことを怖れる、そんな大学生の日々が描かれる。乙女たちの目前には、『ヘト アハテルハイス』のスピーチコンテストしかないかのようだ。

    そんな中で、教授と麗子様についての"不潔な"噂が流れる。

    ▼乙女の噂とは恐ろしいものなのだ。何の根拠もなく、一人の乙女を異質な存在に変えてしまう。自分達の集団にとって徹底した他者にしてしまう。その時、真実なんか全く関係ない。何よりも、「乙女らしからぬ」噂ほど、乙女にとって恐ろしいものはない。乙女を乙女ではないと決めつけてしまう。同時に、これほど乙女を魅了する噂もないのだ。(p.32)

    乙女たちは、スピーチの練習よりも熱心に噂を囁いた。みか子は、黙っていた。「自分から噂を囁くことはどうしてもできなかった。」(pp.34-35) 友から、噂を信じてへんの?と問われると、「わからへんねん」「噂が信じられへん。あたしはほんまのことが知りたいねん!」とみか子は答えた。

    そして、こんどはみか子が噂されるようになっていた。密告者はだれなのか。いったい自分はどうなるのか。密告されたアンネは二度と帰ったこなかった、とみか子は思い出す。

    4月9日の日記を暗唱する練習をくりかえしながら、いつもみか子は同じところで忘れてしまう。教授は言う「忘れることを恐れてはいけません。アンネ・フランクという名前だけを覚えていれば十分です」(p.86)と。一番大事なのはアンネの名前だと言って、「アンネ・フランク」という名前をどの単語よりも丁寧に発音練習させている。

    このアンネの名前についての、バッハマン教授の話が、強く強く印象にのこる。

    ▼「ミカコ。アンネがわたしたちに残した言葉があります。『アンネ・フランク』。アンネの名前です。『ヘト アハテルハイス』の中で何度も何度も書かれた名前です。ホロコーストが奪ったのは人の命や財産だけではありません。名前です。一人一人の名前が奪われてしまいました。人々はもう『わたし』でいることが許されませんでした。代わりに、人々に付けられたのは『他者』というたったひとつの名前です。異質な存在は『他者』という名前のもとで、世界から疎外されたのです。ユダヤ人であれ、ジプシーであれ、敵であれ、政治犯であれ、同性愛者であれ、他の理由であれ、迫害された人達の名前はただひとつ『他者』でした。『ヘト アハテルハイス』は時を超えてアンネに名前を取り戻しました。アンネだけではありません。『ヘト アハテルハイス』はあの名も無き人たち全てに名前... 続きを読む

  • 解釈の余地の多いお話という印象。高校などでこの本を題材に議論をしたら、きっと色々な意見が出て、面白いのではないかと思った。
    自己が確立されてきているけれど、まだ揺らいでいる、20歳前後の少女 …作中では「乙女」という呼称になっている…達が主人公。作者の出身校でもあるらしい京都外語大学のドイツ語学科に通う彼女達は「アンネの日記」を題材に、スピーチコンテストの練習に余念が無い。スピーチコンテストを主導する個性的なドイツ人教授や、スピーチコンテストに人生を掛けているかの如き女学生を巡る噂。
    色々なテーマが読み取れるが、やはり一番強く考えさせられたのは、自己…アイデンティティ…ということについて。アンネと同世代の女の子達の純粋や潔癖、真実よりも美しいフィクションを愛してしまう心、本当の自分を探し求める心などが、アンネと共振したり対象の位置に置かれたりしながら、たくさんの問いをあたりにキラキラ撒き散らしていく。

  • 久しぶりに衝動買いで大当たりの小説!
    アンネの日記の暗唱スピーチ大会で、アンネの心にシンクロさせるという話。

    この民族感とか祖国感は、最初あんまりピンと来なかった(たぶん読了後も作者の意図した半分も伝わってないと思うけど)。それに主人公と周囲の「乙女」への執着は、「女子高生か!?」ってつっこみたい。

    ただ、ユダヤ人の自己とそれを否定したい自己、それを完全に処理できないアンネの年齢がみえて、面白かった!「アンネの日記」を読みたくなる。

  • 悲劇のアンネ・フランクを女子大生の不純な噂話とユーモアを交えて重ねるのも乙女たるゆえ。

  • 理想の小説です。他者からすれば全くもって非なるようなもの同士のなかにたった一点見出した共通点。そこから自然と生まれる立体世界。真似たい手法です。

  • 本日読了。

    外大あるある。
    留年から逃れるだけで必死の4年間を思い出す。

  • 2010年上半期の芥川賞受賞作。小説の舞台は、著者自身の体験に基づく京都外国語大学のドイツ語科。『アンネの日記』を軸に物語が展開してゆく。そして「真実は乙女の祈りの言葉ではない」と、「アンネは密告された―わたしは密告される」という2つがキー・コードとなっている。選考委員の中でも、特に『アンネの日記』に深い思い入れを持つ小川洋子氏はこの作品に好意的だが、インパクトが弱い上に随所に素人っぽさが目立つ。しかも、これでは共学の外大というよりは、もう全くの女子大だ。そもそも「乙女」が作品のキーワードになるようでは。

  • 文体がミュージカルみたいで何か面白かった。
    舞台は現代の外語大ですが、女子大生達は古き良き大正時代のハイカラな女学生を思わせます。
    しかし、お人形を持ち歩くドイツ語学教授(中年男性)ってどうなんだろう(笑

  • 芥川賞受賞作。
    新刊で出た時は何となくスルーしたけど、『きことわ』を買ったついでにふと思い出して購入した。
    『乙女』『乙女』を連発する文章にはちょっと苦笑したが、文体がリズミカルで引き込まれる。京都弁も違和感なく文章になっているのは好印象。

  • 独特の世界観というか、今どきこんな女子大生いるのか?と言うのが率直な感想。乙女乙女と連発されるのになんだか疲れて読了した。日頃「文学」と呼ばれる作品を読んでいないせいかも知れない。

  • 事前に読んでいた評通りで、やたらに「乙女」と出てきた。

    近年の芥川賞の受賞者の作品は面白いものが多いなあと個人的に感じていたのだけれど、赤染さんは普通ぐらいか。「アンネの日記」はやはりいつか読みたいと改めて思った。

    最後の盛り上がり方がよかった。やや長めだけれど、何かのオムニバス中の一編として編まれると光る作品のような気がする、という感想を持った。

全42件中 1 - 25件を表示

乙女の密告 (新潮文庫)に関連するまとめ

乙女の密告 (新潮文庫)を本棚に登録しているひと

乙女の密告 (新潮文庫)を本棚に「いま読んでる」で登録しているひと

乙女の密告 (新潮文庫)を本棚に「読み終わった」で登録しているひと

乙女の密告 (新潮文庫)を本棚に「積読」で登録しているひと

乙女の密告 (新潮文庫)の作品紹介

ある外国語大学で流れた教授と女学生にまつわる黒い噂。乙女達が騒然とするなか、みか子はスピーチコンテストの課題『アンネの日記』のドイツ語のテキストの暗記に懸命になる。そこには、少女時代に読んだときは気づかなかったアンネの心の叫びが記されていた。やがて噂の真相も明らかとなり…。悲劇の少女アンネ・フランクと現代女性の奇跡の邂逅を描く、感動の芥川賞受賞作。

乙女の密告 (新潮文庫)のKindle版

乙女の密告 (新潮文庫)のハードカバー

ツイートする