日本文学100年の名作 第9巻 1994-2003 アイロンのある風景 (新潮文庫)

制作 : 池内紀  松田哲夫  川本三郎 
  • 新潮社
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (510ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101274409

作品紹介・あらすじ

阪神大震災の発生と復興。携帯電話の普及。変わるものと変わらないもの。世紀をまたぎ生まれた、至極の16編。辻原登「塩山再訪」/吉村昭「梅の蕾」/浅田次郎「ラブ・レター」/林真理子「年賀状」/村田喜代子「望潮」/津村節子「初天神」/川上弘美「さやさや」/新津きよみ「ホーム・パーティー」/重松清「セッちゃん」/村上春樹「アイロンのある風景」/吉本ばなな「田所さん」/山本文緒「庭」/小池真理子「一角獣」/江國香織「清水夫妻」/堀江敏幸「ピラニア」/乙川優三郎「散り花」

感想・レビュー・書評

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  • 初めて読んだのは辻原登、吉村昭、村田喜代子、津村節子、新津きよみ、乙川優三郎。浅田次郎、重松清は手堅い。

  • 2017/11/12読了

    浅田次郎 ラブ・レター
    重松清 セッちゃん
    山本文緒 庭
    小池真理子 一角獣
    江國香織 清水夫妻

    がよかった!
    ラブ・レターとセッちゃんは読みながらうるっときた、、セッちゃんは心をえぐられる重松清のいじめテーマの短編。

    庭と一角獣と清水夫妻はしっとりした空気がよかった◎

  • 「他薦」によるチョイスで、自分の読んだことのない作家の作品に出会いたくて購入。16編収録してあるが、いつまでも心に残る作品ということであれば、やはり浅田次郎の「ラブ・レター」が秀逸。さすがにうまい。新津きよみの「ホーム・パーティー」も、ありがちな日常を描いていて面白かった。

  • 村上春樹の多くの短編の中から『アイロンのある風景』。これは完璧な選択。
    でもそれ以外で明らかによいと言えるのは、川上弘美ぐらい。なんとか『梅の蕾』『ピラニア』までで、あとは凡作・駄作といったところか。

    • らいとさん
      意味不明な小説取り敢えず好きとか言ってそうw
      意味不明な小説取り敢えず好きとか言ってそうw
      2020/07/01
  • 日本文学100年の歴史を綴る中短編セレクト集の第9巻。第9巻では1994年から2003年に発表された16編をセレクト。この時代は阪神淡路大震災と復興、2000年問題から一転しての情報革命と変化が加速する。

    吉村昭の『梅の蕾』、浅田次郎の『ラブ・レター』、林真理子の『年賀状』、山本文緒の『庭』が良かった。

    辻原登『潮山再訪』。不倫めいた関係と思いきや、純愛関係の二人の中年男女が男の故郷を旅行するストーリー。辻原登の小説を読むのは『闇の奥』に次ぎ2作目であるが、2作に共通するのはストーリーの中に教訓めいたことを無理矢理と押し込んだような感じの作品であることだろうか。

    吉村昭『梅の蕾』。これまでの9巻の中でも一番泣ける作品だった。舞台は岩手県沿岸北部の田野畑村。田野畑村は内陸部と時間的距離のある陸の孤島であり、無医村である。そんな村の村長が何とか常任の医師を探し、奔走する。計らずも、家族で移住して来た医師…吉村昭と言えば、記録文学の名手であり、これまで多くの作品を読んで来たが、このような短編があったとは知らなかった。

    浅田次郎『ラブ・レター』。これもまた泣ける短編。歌舞伎町の裏ビデオ店の店長が逮捕され、留置所から出て来ると偽装結婚した中国人女性が亡くなったことを知らされる。一度の面識も無い中国人女性が店長に宛てたラブ・レター…

    林真理子『年賀状』。これは一種のホラー小説であろうか。美人の妻に二人の子供にも恵まれた主人公の葛西は度々浮気するのだが、過去の浮気相手のかつての部下の田村香織から毎年届く年賀状…ラストの空気が凍るような描写が凄い。

    村田喜代子『望潮』。これも一種のホラー小説だろうか。九州のとある島で当たり屋をする老女たち…

    津村節子『初天神』。母親を亡くし、父親の世話をするうちに婚期を逃した幸世は友人の智子と共に京都旅行へ。幸世が旅行の中で思い出す過去と旅行で知り合った老女に垣間見た人生の機微が重なるように描かれる。

    川上弘美『さやさや』。川上弘美の奏でる優しさあふれるような柔らかい文章と描かれる男女の風景が心地よい。

    新津きよみ『ホーム・パーティー』。女性の怖さを感じるような…ミステリーか、はたまた一種のホラーか。

    重松清『セッちゃん』。学校の陰湿ないじめが問題になり始めたのは、この頃だろうか。いじめに遭う娘の姿が健気であり、娘を救おうとする両親の姿も頼もしい。

    村上春樹『アイロンのある風景』。焚き火を見つめると様々な記憶や自身の人生が見えて来るものだが、そうした情景を見事に描いてみせた短編。読者自身が物語を膨らませることを期待してか、余り多くを語っていない。こういう余白の残し方が村上春樹がウケる理由なのか…かく言う自分も若い頃に村上春樹にハマった口である。

    吉本ばなな『田所さん』。奇妙な風合いの、どこかホッとするような短編。いつまでも変わらぬ存在と変わっていく、或いは変わらざるを得ない存在との対比…

    山本文緒『庭』。急逝した母親と取り残された父親…ある出来事をきっかけに知る父親の母親への愛情。見事だ。

    小池真理子『一角獣』。ホラーっぽいテイストの中に純愛と退廃の両者を感じる奇妙な短編。

    江國香織『清水夫妻』。葬式マニアの清水夫妻と付き合ううちに私に訪れた変化…川上弘美にも似た優しさあふれる柔らかい文章が心地よい。

    堀江敏幸『ピラニア』。不器用な二人の普通の男の物語。何故にこの短編がセレクトされたのか…

    乙川優三郎『散り花』。この巻に収録された唯一の時代小説。十四歳の少女が女に成長する過程を描く。

  • 辻原登『潮山再訪』B
    「教えてやろうか」「結婚してやろう」といった居丈高のちょっとした傲慢を、うまく掬い上げて題材に。
    つい最近文芸誌で「渡鹿野島」を読んで同じテイストを感じた。

    吉村昭『梅の蕾』B
    結構ぐっとくる人情もの。
    こういう想像をした人がいたというだけでめっけもん。

    浅田次郎『ラブ・レター』B+
    たどたどしい手紙の文面にぐっとくる。
    「私を吾郎さんのお墓に入れてくれますか。吾郎さんのお嫁さんのまま死んでもいいですか。」

    林真理子『年賀状』B
    中島らもなんかが好みそうな短編だなー。

    村田喜代子『望潮』B+
    村田喜代子といえば。鉄類。バイク。遊女。そこにワカメと老女が加わった。
    伝聞の伝聞の伝聞の、という形式も効果的だ。

    津村節子『初天神』B-
    皮肉。

    川上弘美『さやさや』A-
    この作者の本を集中的に読めないのはこちらの欠落だが、文芸誌や何かで時々触れるとどきっとする。
    接吻とおしっこがこんなに鮮烈とは。

    新津きよみ『ホーム・パーティー』B-
    これもまた中島らもが、ちょっと無理して想像したアーバンな浮気の話、と感じた。
    どんだけ引き出しが狭いんだ、おれ。

    重松清『セッちゃん』B+
    娘がしきりに、嫌われているセッちゃんの話をするようになった。
    娘目線からすれば覚えのある経験。

    村上春樹『アイロンのある風景』A
    「基本的にはこの男が死を求めている」という記述を臆面もなく繰り出せるのは今や春樹くらいだ。
    が、この舞台立ての的確さとは何か。
    「予感というのはな、ある場合には一種の身代わりなんや」
    「私ってからっぽなんだよ」
    何か。何か深いもの。何か遠いところ。何かわからない。
    等々「指し示す人差し指だけ」をこんなに魅力的に描けるのは、やはり春樹。(……「1Q84」であんなに凡庸になったのはなんでだろう。)

    吉本ばなな『田所さん』B
    なんでいるのかわからないけどなぜか必要な中年男。会社のマスコットのような存在。
    これを読んでどう思えばいいのかわからないけど、吉本ばななについて語るときにはどうしても平易な言葉づかいになってしまう。これは今回の発見。

    山本文緒『庭』B
    死んだ妻の庭いじりを引き継ぐ父。それを娘が知る。
    短いのもあるが直球でこれだけ深く書けるとは。

    小池真理子『一角獣』B
    この巻では特に、混同しがちな作者が並んでいる。
    だれとだれとは詳細に書かないが、小池と林は時折り混同していた。
    つまり小池「恋」の耽美を、林が書いたのかー、あの「VOW!」で「大きな林真理子と一緒に」と誤植キャプチャされて大いに笑わせてもらった女が書いたのかー不細工なのによくもまあ、と完全勘違いしていた。
    いま改めてぐぐり、その鮮麗なお顔を拝見し、謝罪する。

    江國香織『清水夫妻』B+
    葬式の清さ。
    「でも死の強烈さを知ってしまったら、ちょっとやそっとの恋じゃおもしろくないだろうねえ」
    至言。

    堀江敏幸『ピラニア』B-
    「なにもしないでこんなに大きくなるんだ」「特別なことはしてないんですよ」
    この会話に収斂されていく短編。

    乙川優三郎『散り花』

    びっくりするくらい平均点ばっかり。
    そしてまたアーバンな暮らしや大衆小説の文法をしっかり中島らもがトレースしていたのだと気づく。
    Aをつけたのが村上春樹と川上弘美だけ、というのでも自分の好みが浮かび上がってきた。

  • 吉村、新津→◎

    江國香織は、一時期は集中して読み、結構好きな作家だったのだけれど、今読むと「?」である。ふざけんなーと言いながら読んだ。登場人物誰1人としてリアルな現実を生きていない。綿菓子でも食って生きてんのか!と言いたくなる。これでは中年のフシギちゃん。その中年のフシギちゃんをわざわざ書く意味がわからない。

    川上も、これはあまり好きじゃないなあ。男が好きになれない。

    林はわからない。

    浅田、重松、村上、吉本、小池、堀江は安定。両面の意味で安定。

    村田、津村→○

    ちょっと意外だったのが山本。こんなのも書くんだーと。

    乙川は読みにくかった。時代ものが駄目なので。時代ものの情感やメンタリティが私にはないらしく、論理に乗ること自体に手間取ってしまう。

    好きなものがあったり、「?」があったり、好きになれないものがあったり、ブツブツ文句言いながら、アンソロジーは1つでも2つでも発見があれば、それでよし。

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