日本文学100年の名作第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)

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制作 : 池内 紀  松田 哲夫  川本 三郎 
  • 新潮社 (2015年5月28日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (639ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784101274416

日本文学100年の名作第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 第10巻を突然レビュー!
    本当は第1巻から順番に行くべきなんだけど、そして第1巻は確か読んだはずだけど、まあ細かいことは気にしないでおく。
    ただ、読みたい作家がたくさんいたから、それだけ。

    小川洋子、吉田修一、森見登美彦は読んだことのある話でした。

    一番良かったのは木内昇「てのひら」。
    いじらしいおばあちゃんモノに弱い……。
    おにぎりとソーセージをどうだ!と見せちゃうおばあちゃん(主人公にとってはお母さん)に、心奪われる。

    三浦しをん「冬の一等星」も好き。
    誘拐された女の子、という話を最後あんなにじんわりまとめてしまう所が素敵。

    辻村深月「仁志野町の泥棒」は、多分忘れられない話になると思う。
    かつて小学生時代の、友達の母親の悪事。
    そして、友達自身の悪事。
    それらを知りながら、町としては平穏無事を装う大人たち。
    なんだか、見てはいけない場面を一緒に見ているような辛さを、まるで他愛なく放り出されてしまうようなクライマックス。
    いや。上手いな。

    新潮社が「名作」として数多ある中から選んだだけあって、どれもハッとする面白さ。

  • 好きな作家さんのは再読だけどどれもよかった。木内さんのはリアルで居心地悪い。山白さん、恩田さんのは想像するとゾッとする。桐野さん、道尾さんのはほほぅ、という感じ。

  • 新潮文庫100年記念出版の全10巻も、いよいよ最終巻。2004年から2013年に発表された中短編16編をセレクト。現代に続く10年間…一番の衝撃は東日本大震災であった事は間違いない。

    小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』。新入りタイピストの『私』が医学論文をタイプするうちに姿を見ることのない活字管理人の存在を知る。少しずつ繰り広げられていく『私』と活字管理人の活字を通じたエロティックな交歓…小さな世界の中の極めて小さな冒険。『私』が話す活字の意味と活字管理人が話す活字の形と性格…

    桐野夏生『アンボス・ムンドス』。サスペンスフルな何か嫌な後味を残す作品。女性子供の頃から女として完成しているのか。小学校の若い女性の担任教師が教頭とキューバに不倫旅行に出掛けているうちに担任クラスの女の子が山で死亡する…『蝿の王』『恐るべき子供たち』に描かれたような子供たちの残酷さを暗示的に描いている。

    吉田修一『風来温泉』。社会、会社で身を心を削るようにして泳いできた恭介が、何故か妻をマンションに置き、ひとりで那須塩原のリゾートホテルに向かう…次第に壊れていく恭介の中の正常と異常のバランスに現代社会ならではの真実味がある。教訓めいた物語の中に、あり得そうな恐怖を感じる作品。

    伊集院静『朝顔』。人生の終焉の時を知り、蘇る過去の記憶。ある時から常に孤独と対峙し続け、男としての矜持を保ち、独りで生き続ける。男とは産まれてから死ぬまで、孤独な生き物なのか。傍らに家族の居る有り難さを感じるが、やはり心の何処かで孤独を感じている自分に気付く。

    恩田陸『かたつむり注意報』。SFのようなファンタジーのような設定の作品。抑圧と言い知れぬ不安を感じさせる奇妙な物語。

    三浦しをん『冬の一等星』。なんとも奇妙な物語。誘拐された少女と誘拐犯。

    角田光代『くまちゃん』。連作短編集の1編らしい。大学を卒業し、就職して間もない苑子が出会った風来坊の『くまちゃん』。苑子と『くまちゃん』の恋愛のゆくえは…

    森見登美彦『宵山姉妹』。気紛れの姉と怖がりの妹の二人の幼い姉妹のひと夜の冒険。

    木内昇『てのひら』。戦後の東京を舞台にした母と娘を描いた断片。娘が成長し、母親を越えていく瞬間と娘を思う母親の気持ちが見事に描かれている。

    道尾秀介『春の蝶』。ホッとするようなミステリー。『わたし』の住むアパートの住人の老人の部屋に泥棒が入る。老人と暮らす孫娘は耳が聞こえず、泥棒が浸入した物音に気付かなかった…

    桜木紫乃『海へ』。桜木紫乃が描く女性には逞しさと強さを感じる。この短編に登場する千鶴もまた…

    高樹のぶ子『トモスイ』。筒井康隆の初期作品にも似た奇妙な短編。高樹のぶ子の違う一面か…

    山白朝子『〆』。江戸時代を舞台に描かれたホラー短編。仕方無いと解ってはいるが、考えてみれば、人間が生きるために他の生き物を犠牲にする事の残酷さに驚く。

    辻内深月『仁志野町の泥棒』。幼い頃のなんとも言えない苦い思い出…成長してもなお、なかなか忘れる事が出来ないもどかしさ。

    伊坂幸太郎『ルックスライク』。一見つながりが無さそうな話がつながりを見せる妙。熱狂的なファンの多い伊坂幸太郎であるが、自分は何故か苦手である。

    絲川秋子『神と増田喜十郎』。よく解らないが、奇妙な短編ではある。絲山秋子なら、他に素晴らしい短編があると思うのだが…

  • 変な話が多い。。

  • 11/11(ポッキーの日!)に開催した第38回ブッククラブ白山夜で辻村深月の「仁志野町の泥棒」を読みました。

    レポートはこちら>>
    http://hakusan-yoru.jimdo.com/2015/11/11/%E7%AC%AC%EF%BC%93%EF%BC%98%E5%9B%9E-%E8%BE%BB%E6%9D%91%E6%B7%B1%E6%9C%88-%E4%BB%81%E5%BF%97%E9%87%8E%E7%94%BA%E3%81%AE%E6%B3%A5%E6%A3%92/

  • あまりにひどい。文学なんて楽しくないもの、わざわざそういう印象を植え付けようとしているのではないか、と言いがかりをつけたくなるほどにひどい。今までの9冊にしても『100年の名作』なんて看板を背負えるようなものでは決してなかったけれど、それでも「普通の」アンソロジーとしては許容できるものだった。
    けど、これは違う。これが本当にこの10年の日本文学で最高のものだというのであれば、もはや日本文学など読む価値がないし、そうでないのなら選んだ老人たちは引退すべきだ、本気でそう思っていた。最後の1作を読むまでは。


    とりあえず最後に全10巻で特によかったものだけ挙げてみる。

    利根の渡 岡本綺堂
    地下室アントンの一夜 尾崎翠
    麦藁帽子 堀辰雄
    マルスの歌 石川淳
    鮨 岡本かの子
    島の果て 島尾敏雄
    補陀落渡海記 井上靖
    片腕 川端康成
    空の怪物アグイー 大江健三郎
    ポロポロ 田中小実昌
    神無月 宮部みゆき
    ものがたり 北村薫
    さやさや 川上弘美
    アイロンのある風景 村上春樹
    神と増田喜十郎 絲山秋子

  • 小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』A
    これは卑猥。植字がシームレスに性交へと移行する。素晴らしい。

    桐野夏生『アンボス・ムンドス』B+
    教え子女子たちの結託。JSの空恐ろしさ。

    吉田修一『風来温泉』B
    妻を置いて旅へ。そこで女と会い、思い出すのは……。
    割りとありふれた小説だなーと思った。

    伊集院静『朝顔』C
    どうにもこの作者には嫌悪を感じてしまう。それを覆せず。

    恩田陸『かたつむり注意報』B+
    幻想譚。

    三浦しをん『冬の一等星』A
    二十分ほどのロードムービーを見て素敵なシガレットを味わったかのような。
    語り手の現在も、少女の頃も、誤って少女を誘拐してしまった男も、みなよい。

    角田光代『くまちゃん』A-
    ヨユーの表情でセクースしまくる大学生を描写する小説ほど唾棄すべきものはない。
    が、本作はそれをぎりぎりのところで回避して、「ヨユーじゃない」という点を浮き彫りにしている。

    森見登美彦『宵山姉妹』B
    らしい、幻想譚。

    木内昇『てのひら』C
    好きな漫画に似た話がある(自分が大人になってお母さんが完璧じゃないと知る)が、どうもせせこましい。

    道尾秀介『春の蝶』B
    結局は親子の情を感じさせるいいお話に着地させれば読者は安心するんだろ、それを作者も狙ってるんだろ、と若干意地悪に読んでしまった。
    まあまあ。

    桜木紫乃『海へ』A-
    この女は、悲観も楽観もしすぎることなく、諦めも希望もなく、少しどちらかに揺れてはすぐに大きな軸に戻る。
    これは「ただ単に生きている人」と言ってもいい。

    高樹のぶ子『トモスイ』B+
    どうしても川上弘美を思い出さずにはいられない幻想譚。
    トモスイを間にしてわたしとユヒラさんがひとつになる。

    山白朝子『〆』B+
    すてきなすてきなグロテスクなイメージ。

    辻内深月『仁志野町の泥棒』B
    語り手はいわば渦中の観察者。立場設定が巧み。だが小ぢんまり。

    伊坂幸太郎『ルックスライク』B
    いつもの伊坂。

    絲川秋子『神と増田喜十郎』A
    いやーこれは脱帽。
    わかるわからないだけなく、凄いことがわかる。
    神。増田。なんでもない他人に神を感じてしまう瞬間。

    ★★★

    1巻から10巻まで、A以上に採点した作品をまとめてみた。
    好きな作家単位ではなく好きな作品単位。
    限りなくAに近いBもあったが、読了後の採点は変えずA以上で。

    佐藤春夫「指紋」
    谷崎潤一郎「小さな王国」
    芥川龍之介「妙な話」
    内田百閒「件」
    宇野浩二「夢見る部屋」
    稲垣足穂「黄漠奇聞」
    江戸川乱歩「二銭銅貨」

    中勘助『島守』
    梶井基次郎『Kの昇天』
    夢野久作『瓶詰地獄』S
    水上瀧太郎『遺産』
    龍胆寺雄『機関車に巣喰う』
    尾崎翠『地下室アントンの一夜』
    堀辰雄『麦藁帽子』
    大佛次郎『詩人』

    萩原朔太郎『猫町』
    石川淳『マルスの歌』
    中山義秀『厚物咲』
    岡本かの子『鮨』
    中島敦『夫婦』

    豊島与志雄『沼のほとり』
    坂口安吾『白痴』
    島尾敏雄『島の果て』
    小山清『落穂拾い』
    室生犀星『生涯の垣根』

    吉行淳之介『寝台の舟』
    井上靖『補陀落渡海記』
    河野多惠子『幼児狩り』
    山川方夫『待っている女』

    川端康成『片腕』
    野坂昭如『ベトナム姐ちゃん』
    小松左京『くだんのはは』
    古山高麗雄『蟻の自由』
    野呂邦暢『鳥たちの河口』

    筒井康隆『五郎八航空』
    安部公房『公然の秘密』
    富田多恵子『動物の葬禮』
    田中小実昌『ポロポロ』
    井上ひさし『唐来参和』
    色川武大『善人ハム』

    深沢七郎『極楽まくらおとし図』
    佐藤泰志『美しい夏』
    尾辻克彦『出口』
    山田詠美『ひよこの眼』
    大城立裕『夏草』

    辻原登『潮山再訪』
    川上弘美『さやさや』
    村上春樹『アイロンのある風景』
    10
    小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』
    三浦しをん『冬の一等星』
    角田光代『くまちゃん』
    桜木紫乃『海へ』
    絲川秋子『神と増田喜十郎』

  • ラストを飾る絲山「神と増田喜十郎」、解説に「一度目は、わからない。/二度目も、よくわからなかった。/三度目は打ってかわっておもしろく…」とあるように、話は妙でわからない。しかし文章に強い確信があって、とてつもない吸引力がある。自分の知らない面白さがそこにあるはず、という面白さ。

    伊集院、三浦はやはり嫌いで、小川、桐野、木内、森見、伊坂は○。唯一山白が未知の作家だった。

  • 泥棒の話がふわふわふわふわとしたファンタジーのようでありながら、突きつけられていく現実に鈍い痛みを感じた。大人の世界は真綿でくるまれたふかふかとした心もとないもの。そんな雲から落ちないようにバランスをとりながら生きている大人たちが滑稽でもあり、まっすぐな子供の主人公が感じた苦さがあとを引いた。

  • 第10巻は2004年〜2013年発表の短編を収録。アンソロジーとしても完結。
    ここまで来ると現役の作家ばかりになるのは当然として、純文学、一般文芸、娯楽小説といった区分は、既に名目上のことになっていることを実感する。
    比較的新しいものなので、全体的に文章もすっきりしていて読みやすく、伊坂幸太郎の『ルックスライク』を始め、凝った構成のものが多い。反面、古い作品に比べると、あっさりし過ぎているというか、余り『濃い』文体というのは流行らなくなったのかなぁ……とも思ってしまう。

    表題作ともなっている小川洋子『バタフライ和文タイプ事務所』はちょっとレトロな雰囲気の漂う短編。小川洋子の短編はフェティッシュな官能性に溢れているものが多いが(「薬指の標本」「まぶた」等々)、本作もそう。活字という無機質な物体と、人間の一部の器官に対するフェティシズムが違和感なく同居している。
    桐野夏生『アンボス・ムンドス』は、現在だと『イヤミス』に分類されそうな、後味の悪〜い短編。読み終えた後、背中の辺りがざわざわする余韻を残す。
    恩田陸『かたつむり注意報』は『異色作家短篇集』に対するオマージュ短編。元々、本作が収録されていた『いのちのパレード』も面白く読んだが、改めて読んでみると、当時はあまり意識していなかった主人公の破滅願望のようなものを強く感じた。

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日本文学100年の名作第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)の作品紹介

自衛隊のイラク派遣、東日本大震災と原発事故。激動の現代を鮮やかに映し出す傑作16編。小川洋子 「バタフライ和文タイプ事務所」/桐野夏生 「アンボス・ムンドス」/吉田修一 「風来温泉」/伊集院静 「朝顔」/恩田陸  「かたつむり注意報」/三浦しをん「冬の一等星」/角田光代 「くまちゃん」/森見登美彦「宵山姉妹」/木内昇  「てのひら」/道尾秀介 「春の蝶」/桜木紫乃 「海へ」/髙樹のぶ子「トモスイ」/山白朝子 「〆」/辻村深月 「仁志野町の泥棒」/伊坂幸太郎「ルックスライク」/絲山秋子 「神と増田喜十郎」

日本文学100年の名作第10巻 2004-2013 バタフライ和文タイプ事務所 (新潮文庫)はこんな本です

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